東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 ゲンとの戦いは白熱していく。

 不死身の女性と黒葉の攻撃によってゲンにダメージを与えていく。

 しかし、状況は一転し、大ピンチになってしまった。

 そこへ助けに現れたのはぶっ飛ばされたはずの博麗の巫女、霊夢だった。

 果たしてゲンを倒すことができるのか?



 それではどうぞ!


第30話 博麗の力

side黒葉

 

「ねぇ、黒葉」

「なんですか?」

「あんた、もう朝だけど大丈夫なの?」

「え?」

 

 そう言われて空を見てみる。

 うっすらと空が青いのがあ見えるので、恐らく朝なのだろうと思うが、俺の周囲は何故か真っ暗なので、全く陽の光が俺に届かなくて俺にダメージはない。

 それどころか、身体能力も夜と大して変わらないんだ。

 

「大丈夫っぽいですね」

「ふーん……ルーミアのおかげかしらね」

「え?」

「まぁ、いいわ。それよりも、あんたはルーミアのことを守ることに徹してあげて。あいつは私と妹紅で戦う。あんたはあいつに対する有効だが少ないでしょ?」

 

 たしかに俺は有効打が少ない。

 このまま一緒に戦って足手まといになるくらいなら、ルーミアのことを奴の攻撃から守ることに専念する方がいいのかもしれない。

 

「わかりました」

 

 俺は素直に指示に従ってルーミアの近くに寄る。

 

「黒葉、大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だ。っ!」

 

 足に激痛が走り、声にならない声を漏らす。

 

 ––嘘だ。本当は大丈夫じゃない。こうしているだけでも全身に激痛が走って立っているだけでもやっとだった。

 もしかしたら博麗様は俺のダメージの受け具合からも判断してルーミアの護衛というポジションに立たせたのかもしれない。

 すると博麗様はゲンへと向き直ると、お祓い棒を構えた。

 

「あんた、さっきは油断しちゃったけど今度はそうはいかないわよ」

「ふん、博麗の巫女だかなんだかしらねぇが、俺に勝てると思うなよ!」

 

 博麗様とゲンは同時に走り出した。

 ゲンは拳に炎を纏わせ、博麗様は左右に陰陽玉を出現させる。

 そしてついに両者ともに射程圏内に入った。その瞬間にお互いに拳を繰り出す。

 

 ゲンの燃え盛る拳と博麗様の霊力をまとった拳。その二つがものすごい威力でぶつかり合ったため、周囲に衝撃波が生じた。

 

「きゃっ」

「く、捕まれ!」

 

 俺とルーミアは少し衝撃波によってぶっ飛ばされそうになったものの、何とか二人で手をつないで堪える。

 

「大丈夫だったか?」

「う、うん。大丈夫だったのだ~」

 

 ならよかった。

 あの二人の戦い。確かに俺が入っていける余地はない。

 するとその直後、不死身の女性も炎を見に纏うと火の鳥をかたどった炎を発射した。

 

「霊夢、よけろ!」

「りょーかい」

「ぐっ」

 

 炎の攻撃はゲンには効かない。

 俺の視点から見たら何の意味もない行為に見える。だが、どうやらその炎は目くらましになったようだ。

 ゲンに炎が直撃している間に博麗様はゲンの背後に回り込む。

 

「しまっ!」

「遅い! はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

「ぐあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

 手のひらに陰陽玉を作り出した博麗様はゲンの背に押し当て、どんどんと威力を上げていく。

 やがてそれは発射され、ゲンは陰陽玉に巻き込まれて一緒にはるか彼方へとぶっ飛ばされていった。

 

 ゲンがこの場から消えたことによってこの場には炎が燃え盛るチリチリという音が残り、静かになった。

 俺は目の当たりにしてしまった。博麗様のその強さを、俺があの時、あの森で見たのは博麗様の力のほんの一部でしかなかったことを思い知らされてしまった。

 強い。強すぎる。

 もしあの時、魔理沙さんが来てくれていなかったらと考えるだけで恐ろしくて震えが止まらなくなる。

 

 これほど仲間にして心強く、敵にすると恐ろしいと思う人はいないだろう。

 

「はぁ……面倒ね。どこまで飛んで行ったか分からないわ。それに、里もこんなにめちゃくちゃになって……」

 

 博麗様は一息つくと周囲を見回して再度ため息を突いた。

 家屋は焼け崩れ、俺たちの通っている寺子屋はもう少し離れた場所にあるからまだ無事だが、里は半壊してしまっており、かなり再建するのが大変そうな感じだ。

 おそらく幻想郷の管理も巫女の仕事のため、こうなってしまった里を放置しておくわけにもいかないのだろう。大変面倒だとでも言わんばかりに肩を落とした。

 

「まぁ、再建の事はあとで考えるとして、あんたたちは無事?」

「は、はい」

「無事なのだ~」

「私には効かないのかよ」

「あんたはこの程度で死ぬような奴じゃないでしょ?」

 

 博麗様の対応に不死身の女性は不服なのか、言い合いをしている。

 

「あの……あなたは?」

「あ、そういや自己紹介をしていなかったな」

 

 さっきまではゲンという敵がいて、交戦中だったからそんな余裕なかったもんな。仕方がない。

 

「私の名前は藤原(ふじわらの)妹紅(もこう)。ここに知り合いがいてな、たまに会いに来ていたんだが、こんな場面に遭遇するとは全く思っていなかったからびっくりしたな」

「俺は冬夏黒葉です。博麗様の知り合いです」

「そうか。一緒にこの里を守ろうとしてくれてありがとな」

 

 そう言って握手を求めてくる妹紅さん。

 その手を見て俺も手を伸ばして握手を交わす。

 

 最後の方には俺は全く戦いには参戦していなかったものの、途中まで一緒に戦って博麗様が戻ってくるまでの時間を稼いだ事で認めてくれたようだ。

 

「さて、あんた達。勝利したことを喜ぶのはいいけど、喜ぶのはまだ早いわよ。あいつは恐らくまた来る。それまでに準備を整えておかないといけない。はぁ……本当に面倒なことになったわね」

 

 博麗様は地面に敷いた御札を一枚一枚回収していく。

 ゲンは離れたことによって能力が解除され、結界がなくても炎が噴出してくることは無かった。

 

 博麗様が放った言葉に俺は気を引き締めた。

 そうだ。あいつは死んだわけじゃない。いずれまたここにやってくる。そんなやつだ。

 それまでに俺もアイツと対等に戦えるレベルまでに強くなっておかないとまた守りたい人を守れない。

 

 俺は姉ちゃんの敵を打たないといけない。

 

「絶対に強くなる」

「黒葉、無茶はしちゃダメなのだ〜」

「分かってる」




 はい!第30話終了

 長かったゲンとの戦いが一旦終わりました。

 またまた黒葉の修行編が始まります。

 それでは!

 さようなら

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