それでは前回のあらすじ
自己嫌悪に陥り、諦めかけるレミリア。
そんな彼女を鼓舞したのは彼女の母親、リリルカ・スカーレットだった。
死んだはずだった彼女はレミリアの精神だけを呼び出し、鼓舞したのだ。
励まされたレミリアは考えを一新、守りたい人達のために最後まで戦い続けることを選んだのだった。
それではどうぞ!
side黒葉
「ああああああああああああああああ、僕の、僕の腕がああああああああああああああ」
姉貴のグングニルが空間断絶を貫通して龍の腕を切り飛ばした? いや違う、答えはもっと単純だ。
多分、龍は攻撃をする瞬間、俺を殴る腕だけ空間断絶を解除して俺を殴り飛ばしていたんだろう。そうじゃないと、龍自身も俺に打撃を与えることができないから。
だから、姉貴はそのタイミングを見計らってグングニルで貫いた。
龍も油断していたんだろう。
姉貴は落ちて行ったし、俺はもう反撃する余力すらも残っていない。
もうどっちも体力の限界だと、だから未来視も使っておらず、姉貴の攻撃に気が付くことができなかった。
さて、どうする?
その腕を直したら俺達の攻撃を防御するための空間断絶用の霊力まで使い切ってしまうかもしれないぞ?
龍は俺達を追い詰めたと思っていた。
だが、はなから追い詰めているのは俺達の方だ。島を破壊し、霊力の供給源も絶たれた。さすがにもう紫さんならこの島の俺と姉貴以外、全ての人の避難が完了していることだろう。
「もう誰もお前を助けてくれる人はいない、もうお前は誰にも頼ることができない。さぁ、どうする? お前はここからどう反撃に出るっ!」
「クソガキがぁぁぁぁぁぁっ!」
とは言いつつも、俺にはもう体力というものが残されていない。
とりあえず、龍が怯んだ隙に龍の目の前から退避したものの、もう刀を握る握力も無くなっていて、刀を構えた状態では腕が上がらなくなってしまっていた。
視界もぐらりと揺らいでしまう。
霊力が枯渇している……。
さすがに妖力ではこの安定度で
「腕一本くらいくれてやる! 君達を殺した後にゆっくりと治させてもらうよ!」
俺と姉貴に対してドラゴン頭を打ちだしてくる龍。さすがに俺に回避する体力は無いため、攻撃を受け止めようとして、グングニルがその前に飛んできてドラゴン頭を破壊した。
見ると、姉貴は自分に向かってきたドラゴン頭もグングニルで破壊し、凌いでいた。
「っ、やっぱり君は厄介だな。先に対処させてもらうよ」
動けない俺よりも姉貴の方が龍の邪魔をすることができる。だから姉貴に向き直って、先に姉貴を殺そうとする龍。
なんとか戦いに参戦したい。だけど、今こうして刀を地面に刺して身体を支えるので精いっぱいだ。
姉貴が一人で戦ったらまたさっきのように――
「なに!?」
なることはなかった。
まるで姉貴はどこからドラゴン頭が来るかわかっているかのようにグングニルで次々とドラゴン頭を破壊していく。
目がキラリと光ったような気がした。グングニルを回避したドラゴン頭は別角度から姉貴を狙うが、その先は読めていたようで、姉貴はそれすらも対処する。
まるで未来が見えているかのような。
「な、き、君、まさか、まさか未来が見えているのか! 未来がころころと変わっている」
「あなたの未来は残念だけど相変わらず見えていないわ」
「なら、なぜ対処できる! 僕の未来をぐちゃぐちゃに乱してくる!」
「私はあなたではなく、ほかのすべての未来を見ているのよ。風、大地、光、全ての未来を見てあなたのこの後の動きを予測しているだけよ」
「そんな馬鹿な!」
「私ならあなたよりも未来視を上手く使える。あなた一人の未来が見えなかったからと言って、何の問題もないのよ!」
すごい。
次々と狙われているのに、全然動きが乱れることなく、的確にドラゴン頭を破壊している。姉貴は本当に未来が見えているんだ。
姉貴はこの土壇場で覚醒したということなんだろう。龍という強敵を前に、姉貴はもう一つ上のステージに上った。
だけど、それまでだ。
姉貴の様子を見るに、攻撃の対処はできても反撃をする暇というものが無いらしい。あと一歩足りない。このままじゃじり貧だ。
姉貴の疲労も全然小さくない。早く龍との決着をつけなければいけない。
「どうしたんだい? 僕を殺すんじゃなかったのか? 守ってばかりじゃ話にならないよっ!」
龍が飛び出した。
ドラゴン頭に加え、猛スピードの龍。それに、空間断絶で足場まで作って姉貴に急接近していった。
これだけ使っていたらすぐに霊力切れを起こしてしまいそうなものなんだが、龍はまだ霊力が枯渇しないのか!?
「君達に絶望を与えてあげるよ。実はね、僕の霊力というのはまだ蓄えられてるんだよ。クリスタルが破壊されたからと言って僕の霊力源がゼロになるというわけじゃない。僕は今まで回収した霊力を僕に送り込むと同時に、貯蔵していたんだ。貯蔵分は僕の体に蓄えられる霊力量の何倍もの容量がある。つまり、僕はまだまだ戦うことができるんだよ。それも、あと一日中戦い続けることができる分だけある」
「……出鱈目ね」
あまりの出鱈目具合に眩暈がしてきた。
俺達はもう限界だというのに、龍はまだ一日中戦い続けることができる。もしそれが本当なのだとしたら耐久戦になったらまず間違いなく俺達は勝てない。
どうにかして龍の霊力を人為的に減らす方法が無ければ……。
人為的?
俺は天魔と戦ったときのことを思い出した。
あの時、天魔は
それだけじゃない。船でも俺の炎は簡単にドラゴン頭を焼き切っていた。
俺の炎は霊力を焼きつくす力があるんだ。
でも、俺はもう戦えない。姉貴を助けることはできない。
……一つだけ方法を思いついた。だけど、正直これは賭けで、もしこの賭けに負けたら姉貴は俺が殺してしまうことになる。
だけど、万が一これを成功させることができたなら、俺達は勝てる可能性がグンと上がる。
やってみる価値はある。
「姉貴ぃぃぃぃぃぃぃぃっ!」
「っ!?」
そう叫ぶと、俺は掌に霊力弾を作り出し、燃え上がらせるとそれを姉貴に向けて投げつけた。
自棄になったわけじゃない。どうせ勝てないなら姉貴も一緒にとかいうヤバい思考の元、行動したというわけではない。
その霊力弾に姉貴は直撃、爆発を引き起こし姉貴の体が炎によって包まれた。
「はっはっは、本当に面白いね。自棄かい? 僕に勝てないからって彼女を殺すことはないじゃないか。それじゃあ、レミリア嬢が可哀そうだよ」
「……」
「本当にひどいね。レミリア嬢は今頑張ろうとしていたでしょ? それを燃やすだなんて、僕は君のことを軽蔑するよ。大切な人にする扱いじゃないよね。君は彼女を連れ帰りたくてここまで来たんでしょ? それなのに自分の手で殺すなんて、本末転倒だよね」
笑うなら笑えばいいさ。
どうせすぐに俺達の考えがわかるんだから。
「でも、君に殺される最後というのは可哀そうだからね、僕がとどめを刺してあげるよ」
僕の考えが正しければ姉貴は――
「さようなら、レミリア嬢。君は生意気な娘だったけど、顔はきれいだったよ」
ドラゴン頭が姉貴に射出される。
これでうまくいっていなかったら確実に俺が戦犯だ。腹を切るでも何でもやるつもりだ。
だけど、これが上手くいっていれば、確実に龍を倒すことができるはずだ。俺はそう信じている。
俺の場合、
俺はそれを他人に付与することはできないのかと考えた。
それはそれは難しい事だろう。一歩間違えたら死んでしまうし、それを維持するというのはとても大変だ。
だけど、姉貴を俺は信じているし、姉貴も多分俺のことを信じてくれている。だから俺からの霊力弾を回避せずに受けてくれたんだろう。
このお互いの信頼関係があるからこそなせる業。
これこそ、名付けて――
「「未来《
姉貴と俺の声が重なった。
姉貴に迫るドラゴン頭が一瞬にして切り伏せられた。そしてそれは燃え上がり、焼き焦げて消滅する。
炎がだんだんと収まっていき、だんだんと姉貴の輪郭に沿って形作られていく。その姿はまるで俺の
轟々と燃え盛るその姿はまるで太陽神。
「な、なにぃぃぃぃぃぃっ!」
「ありがとう、黒葉。この力、借りさせてもらうわね……さて、龍。覚悟はいいかしら? そろそろおねんねの時間よ」
はい!第302話終了
この話、早く書きたかったんですよね。
この未来《黒天紅武》の構想自体は二章を書いている時から既にありまして、ストーリー構成事態も大まかなのはすでにその時三章まで出来上がっていたので、早く書きたくて書きたくて仕方がありませんでした。
さて、おそらく次回決着。
長かったこの戦いもついに終焉を迎えます!
それでは!
さようなら