それでは前回のあらすじ
やっと地上へ降り立った黒葉とレミリア。
ルーミアと天音の二人は特に黒葉の事を心配していたようで、降り立った途端に抱きついてきた。
二人を心配させたお詫びに黒葉は責任を取ることに。
ルーミアは吸血を要求。そして天音は黒葉との赤ちゃんを要求した。
そう、天音は暴走し、インモラル方面へおかしくなっていたのだ。
それを収めるためにレミリアは口を出したはずなのだが、なぜかレミリアも天音に張り合い始めたのだった。
それではどうぞ!
side黒葉
「なんでそうなるんだよ、姉貴」
「さっき、島で私が言ったこと、覚えてる?」
島で言ったこと?
そう言えば確か、生きて帰れたら俺に話したいことがあるとかなんとか言っていたような気がするな。
正直、戦いが激しすぎて今の今まで忘れていたまである。
「今からその内容を言うから、ちゃんと聞きなさいよ。一回しか……言わないから」
なんだろう、姉貴が何を言おうとしているのか分かったような気がするぞ。というか、この状況で分からないほうがおかしいまである。
俺の前に回り込むと姉貴は俺の手をしっかりギュッと握り込むと俺に潤んだ瞳を向けてくる。
紫色で、とてもとても澄んだ綺麗な瞳だ。
「黒葉……結婚して」
うん……うん……うん? なんで?
「私、黒葉と共闘して思ったんだ。このまま黒葉と一緒に人生を歩んでいくのも悪くないなって。ほら、丁度黒葉は吸血鬼なわけだし」
「丁度ってなんだよ、丁度って」
龍を前にしてそんな事を考えていたとかクレイジーすぎるだろ。
「そんなわけで、黒葉と結婚するのは私よ」
どこにも論理的な部分というのが無かったんですが!?
でも、姉貴の様な可愛い人に求婚されたというのは悪くはない気分だ。だけど、時と場合を考えてほしいものだ。
こんなところでそんな宣言をしてしまえば、どうなるか。
「お嬢様、イケません! お嬢様にはもっとふさわしいお方がいらっしゃるはずです。なにもこんな小僧を選ばなくて」
駆け寄ってくる師匠。
師匠の言葉がいつになく辛辣だ。今まで築いてきた俺と師匠の信頼関係が今の一瞬で崩れ去ったような気さえする。
「そうだよ、お兄ちゃんと結婚するのは私なの!」
なんか我が妹が駄々をこね始めた。キャラ作りのための一人称を忘れ、本来の一人称に戻ってしまっていることから、これが天音の素何だということが分かる。
素じゃないほうが良かったな。
「黒葉君は凄いなぁ。こんなに女の子をはべらせるなんて。僕には出来ないよ」
おいそこの風来坊、感心している暇があったらどうにか助けてくれないか?
というか、風魔はちゃんとみんなに仲間として認められたんだな。この場に一緒に居るということはそういうことなんだろう。
「どうなの? お兄ちゃん。もちろんシスコンのお兄ちゃんが選ぶのは私だよね!」
「まさか、花嫁を結婚式から連れ去っておいて、ほったらかすっていうことは無いわよね?」
「……」
どうしよう、全力でここから逃げたい。今すぐに逃げたい。
分かった、今この場に俺の味方というものは居ないらしい。ルーミアもこれと言った助け舟を出してくれる気配はないし、なんだかおどおどして二人の様子を交互に眺めるだけだ。
さっきからずっと俺は助けてと目で訴えているのに全然助けてくれないな。…………なんだか俺の中の悪戯心がうずいてしまった。
ルーミアも多分、この二人には絡まれたくないから俺を助けてくれないのだろう。ならば、強制的に巻き込んでしまえば良い。
俺は天音と姉貴の二人を押しのけ、ルーミアの正面に立つと、俺の突然の行動に困惑している様子のルーミアを他所に俺はルーミアの肩を抱いて抱き寄せた。
ちょっと、これを言うのは勇気がいるな。しかも、今二人にプロポーズをされたばかりだし。
でも、俺の悪戯心は止められない。だから、俺は言い放ってしまった。
「俺はルーミアと結婚するから」
「なっ」
「えっ」
「…………ふえっ!?」
隣でぼふんという音を鳴らして顔を真っ赤に染め、ぐるぐる回した目で俺の事を見上げてくるルーミア。
どうだルーミア、俺を助けてくれなかった仕返しだ。
俺を助けてくれなかったんだからこれくらいは許してもらうぞ。
だが、俺は許されない。特に特定の二人からは。
「お兄ちゃん、どういうこと!? 私と結婚するって言ったよね」
言ってないです。
「黒葉と結婚する未来が私には見えているのよ!」
それは妄想か頭の病気なので永遠亭に行きましょうね。
天音は言わずもがなだが、姉貴に関してはマジで家族としか見れないんだよな。本当の姉の用にしか思えないと言うか、恋愛対象として見れないんだよな。
まぁ、アプローチされ続けたらどうなるかは分からないけど。
俺に詰め寄ってくる二人。
俺はようやくここで最悪手を選んだことに気がついた。
「こうなったら実力行使するしか」
「お兄ちゃん、私達を弄んだこと、後悔してももう遅いよ」
あぁ、神よ。なぜ私にこの様な試練をお与えになるのですか。
「面白そう! あたいもやるぅっ!」
「ち、チルノちゃん、ダメだよ! 修羅場に割り込んだら大怪我じゃ済まないんだよ!?」
「大ちゃん、今更だろ。それよりも、私達も混ざろうよ」
「……大ちゃん、考えるのはもう止めましょう? 私はもう疲れたよ」
「み、みすちーまでそっち側に行ったら私はもう対処できないよぉっ!」
突然の救世主。
姉貴と天音が俺に掴みかかってくると、それを遊んでいると勘違いしたのであろう
そしてそれを皮切りにリグル、諦めのミスティア、ヤケクソの大妖精までもが飛び込んできたため、俺は押しつぶされてしまうのだった。
これが三人の女の子の心を弄んだ俺への罰、ということなのだろう。
side三人称
「か、はぁ…………」
ぐちゃ、ぐちゃぐちゃ。
「ぐ、あああああ」
ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ。
肉が擦れる音が響き、男の苦痛の声が響く。
「どう、して、僕が、こんな、目に」
手足はあらぬ方向へと向き、骨まで飛び出ている、顔は血だらけぐちゃぐちゃで、身体はひしゃげてもはや原型を留めていない肉塊と言っても差し支えのない生物かどうかも怪しい存在。
これはレミリアに敗れた直後の桑間龍。
天空都市スカイから地上へと落下した龍はそのままの勢いで地上へ叩きつけられ、更には瓦礫の下敷きになってしまったことによって身体がこんなにも無惨な状態になってしまった。
それでも尚、生きているのは『暴食の加護』による副産物だろう。
この加護はエネルギーを奪い取るだけあって、生命力は他の人とは大違い。それこそ、これだけぐちゃぐちゃで生きているのか死んでいるのかわからない状態になっていたとしても、息があった。
だが、龍のこの状態では放っておいても数十分もあれば確実に死ぬだろう。
ダメージを無効化出来なかった。今、龍の身体には全身に激痛が走っており、麻痺して感じなくなってしまうほどだ。
内蔵もこぼれ、龍が動く度に内蔵が地面に擦られ、どんどんと削れていく。
正直、生きているのが不思議な程の生き物だった。
「おやおや、随分とこっぴどくやられたご様子」
「か、はぁ……」
「それにしても、そんな肉塊の姿でまだ生きているとは凄い生命力ですね」
龍の眼の前に一人の男が現れた。
仮面を被っており、黒髪和服の嫌味なやつ。そんな奴、龍には一人しか心当たりがなかった。
「ホロウか……そ、んな事はいいから、早く俺を助けろ。ごはっ、ごほっ、早くあの小僧共を皆殺しにしろ!」
喋ると喉の奥から血が上ってきて、龍は咳き込んでしまった。
その様子にホロウは面白そうに目を細めた。
「ん〜ん、実に実に実に、君は状況をなぁ〜んにも理解していない」
「……なにが、言いたい」
「君は今、地面を這いつくばるのみで、僕に助けを求めている状況だ。誰かに襲われたとしても反撃することさえ叶わないだろう。つまり、君の生殺与奪については今、僕が権利を握っていると言っても過言ではないんだよ」
「は? ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
「ほら、他人を信用するものじゃない」
ホロウは懐に隠していたナイフを思い切り体重を駆けながら龍の肉体に突き刺した。
苦痛に叫ぶ龍を見て、ホロウは更にケタケタと笑い声を上げる。それは完全に狂気の所業だった。
「僕には君を助ける理由がない。それどころか、僕は君が死んでくれた方が都合がいいんですよ」
「どう、言うことだっ」
「まだわからないんですか? あなたは僕にとって目の上のたんこぶ、死んで欲しかったんですねぇ〜」
「なっ」
龍は再度絶望した。
自分の死というのは逃れられない運命なのだと、理解した。
「でも、あなたは今の僕よりも強い。どう殺そうか悩みました。でも、今って絶好の機会! しかもまだ息の根がある。僕にとってこれ以上無い絶好のチャァァァァ〜〜〜〜ンス。そうは思いませんか?」
だが、そこで龍に希望が見える。
少し離れた場所から二人の影がこちらへ駆け寄ってくるのが見えたからだ。その二人の影というのは、龍が信頼していた仲間である越前力と羅堂由麻の二人。
既に由麻に関しては
この大惨事でこの二人がどうして生きているのかは分からないが、龍はこれを好機と捉えた。
「全力、魔導! この眼の前の男を殺せ!」
命令を聞き、由麻と力の二人は同時に攻撃の体制に入る。二人共、距離が離れていたとしても攻撃できる技を持っている。
ホロウ相手だったら充分撃退出来るだろうと、そう考えたのだ。
だが、龍は気がつくべきだった。どうして二人が死んでもおかしくないほどの大惨事なのに、これほどピンピン動いているのかということを。
「ご、はぁっ」
突如上から衝撃が降ってきて、なおかつ見えない斬撃によって身体の一部が切り落とされてしまった。
これは紛うことなき力と由麻の能力。
「な、ぜぇ……」
「忘れたのかい? 僕の能力」
「お前の能力は、くそ、そういう事か! ホロウ、お前は!」
「はい、そこまでぇ。これ以上のお喋りは許しませーん」
ガンッとホロウは龍の顎を踏み砕くことによって一言も喋ることができなくなってしまった。
龍の目から涙が溢れる。眼の前に見える確実の死に怯え、涙が出てきてしまったのだ。
「ま、僕の計画にどれだけ君が勘づこうが、どうでもいいんですよ。だって、死人に口なし、ですからね? あーっひゃっひゃっひゃっひゃっ」
龍が最期に見た景色は由麻から借りた鎌を笑いながら自分へ振り下ろすホロウの姿だった。
はい!第305話終了
これにて龍完全退場。そして、ホロウの目的は?
ここら辺が四章、五章の要となるわけですね。
とりあえず、スカイ編が終わって一段落したので、暫くは日常回に戻りますよ。
久しぶりの日常回ですからね、ずっと張り詰めていた心をここで解してあげましょう。
そして、これで三章、完。ということで、次回から四章に入る前の閑話をやっていきますよ。
それでは!
さようなら
3章ではどの戦いが好きでしたか?
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天空都市スカイ突入
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力戦
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由麻戦
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龍戦