それでは前回のあらすじ
スカイでの問題も片付き、ついに紅魔館へと変える黒葉たち。
しかし、龍によって破壊された紅魔館はそのまま放置されていたため、紅魔館は大破していた。
そこへカッパ工房の面々が紅魔館の修理に手を上げてくれて、その間は別の場所で寝泊まりをしなければいけないことに。
そこで黒葉は提案をした。
それではどうぞ!
side黒葉
俺の家というのはもちろん鍛冶師の人里にある俺の実家だ。
天魔組との闘争で半壊してしまった鍛冶師の人里だが、里の端の方に位置していた俺の家は奇跡的に何の被害も受けることはなく、きれいな形を保っていた。
奇跡と言わざるを得ないが、お陰でこういう時に頼ることが出来る。
紅魔館に関しては恐らく河童たちがちゃんとやってくれるだろうから、俺たちは河童たちの作業が終わるのを祈って待つだけだ。
そんなわけで俺たちは鍛冶師の人里へやってきた。
まだ復興は完了しておらず、ところどころにまだ崩れたままの家屋が見えるが、それでも活気はかなり戻ってきたように感じる。戦いでの怪我が癒えてきて仕事に復帰しようとしている職人の姿もちらほら。
この回復の早さは永琳先生の薬の賜物だな。
「ここが黒葉の故郷、ですか?」
「なんだか忙しそうだけど、本当に私たちがおじゃましても良かったの?」
「まぁ、大丈夫だと思う。俺の父さんと母さんはそんな断るような人じゃないから」
そう言えば美鈴とパチュリーの二人はこの里に来るのは初めてだよな。
姉貴に関しては俺を連れて行く時に一度この里に来ているから今回で二回目だ。天音に関しては言わずもがな。
一度天魔たちに破壊されたとは言え、この里の豊かな自然はそのままだ。川に落ちてしまった瓦礫などは軒並み回収され、見る限りではキラキラと輝く美しい川という姿を取り戻していた。
それに、この里は森に囲まれているというだけあって空気が澄んでいる。戦いの疲れを癒すには丁度いい環境だ。
「壮絶な戦いがあったみたいね」
「はは……死ぬかと思いました」
実際、俺は死にかけたからな。
みんなが居なければ俺はあのまま死んでいたと思う。それに、姉貴や炎帝なんかも俺を助けてくれた。
「それじゃ、俺の家に行きましょう。と言っても、父さんと母さんが居るかはわかりませんが、一先ず俺の家を紹介します」
俺の父さんは鍛冶師だ。そして、母さんは父さんの側にいることが多い。
仕事場と家が離れている以上、仕方がないことだが、姉ちゃんが行きていた時はほとんど俺と姉ちゃんの二人暮らしのような状態だったからな。
だから、俺の好き勝手してしまっても大丈夫だろう。
そう思ってたのだが――
「あれが俺の家です――あれ」
なんと、家の外には父さんと母さんの姿があった。
きっと二人共仕事に出ているのだろうと思っていたからここで二人に合うのは想定外。
俺が固まっていると父さんと母さんも俺の姿に気がついたようで、こっちに駆け寄ってきた。
「あら、黒葉。帰ってきてたの?」
「なんだ、黒葉。随分と大所帯じゃないか」
「はは、色々あったんだ」
そう、この場で立ち話では済ませられないほどに濃厚な色々が――
「俺、てっきり二人共仕事場に行っているんだと思っていたんだけど」
「あぁ、僕も仕事はしているよ。ただ、この間の戦いが気がかりでね」
言うと、手に握りしめている刀に力を込め、そして刀に視線を落とした。
その表情は悔しげに歪み、闘争心で満たされているように見える。
「僕は勝てなかった。天魔に手も足もでなかったよ」
「そんな事無いわよ。だって、傷をつけることだって出来ていたでしょ?」
「でも、あんなのは浅い。致命傷にはどう足掻いても届かなかった。僕の剣技ではあいつには届かなかったんだ。その事を博麗様の戦いでよく分かったよ。だけど、僕もこれで黙っているわけじゃない。僕だっていずれあの次元に追いついて見せる。そして、僕は僕の家族を守り抜いてみせるって、そう誓ったんだ」
つまり、今は鍛冶師としての仕事よりも特訓の方を優先しているということか。
母さんと父さんが組めば大抵の敵には対抗できるようになるだろうけど、天魔の様な圧倒的強者の前には屈することしか出来ない。
それが父さんには悔しかったんだろうな。
俺もよく分かる。
天魔、そして龍も俺一人じゃ届かなかった相手だ。だが、博麗様の戦いを基準にすると苦しくなってしまう。
だって、博麗様は最強なんだから。
でも、父さんだって当然分かっていることだろう。
父さんはわざわざ自分と博麗様の実力を比べ、そして追いついてみせるって言っているんだ。
ストイックな人だよな。
「あ――と、そうだったね。君たちは黒葉の友達かな? ようこそ我が家へ。何にもないところだけどゆっくりしていってほしい。僕は黒葉の父の冬夏烈夏、そしてこの人が妻の冬夏雪姫だ。よろしくね」
「ご丁寧にどうも……私は紅魔館の主、レミリア・スカーレット。こっちは友達のパチュリー・ノーレッジと従者の紅美鈴よ。どうぞお見知りおきを」
「うん、よろしく。天音ちゃんもよろしくね」
「え、あ、よろしく……?」
まぁ、天音からしたら複雑な気分だろうな。
なにせ、天音も一応敵としてこの人里に来て戦っていたんだから。最終的に俺たち側についたとはいえ、優しくされるのに違和感があるんだろう。
確かに天音はもっと責められても良いことはしただろうが、父さんと母さんはそんな事、長々と気にする質ではない。
優しくて強い、自慢の両親だ。
「父さん、実は紅魔館が崩壊しちゃってさ、今直せる人にお願いしているんだけど、直るまでみんなを家に泊めてもいいかな」
俺の言葉に父さんは目を白黒させ、そして母さんへと一瞬視線を送った。
「そっか、きっと大変なことがあったんだろうね。あとでその話を聞かせてくれるかな?」
「え、と……つまり?」
「もちろんオーケーだ。君たちには息子がお世話になっているからね。こういう時は僕らを頼ってほしい。持ちつ持たれつってね」
「ありがとう父さん」
いい笑顔で親指を立てて見せてくれる父さん。
よかった。これで紅魔館が直るまでの間、みんなが過ごす場所を用意することが出来た。
あとは……俺個人的に挨拶に行きたい場所がある。
みんなにはとりあえず家でゆっくりしておいてもらうとして……俺はそこに行くとしようか。
はい!第307話終了
幕間ということで、こんな風に緩い雰囲気で進めていきます。
久しぶりの日常パートというわけですね。
もう、二章からずっと殺伐とした雰囲気が続いていたので、ここでしっかり息抜きをしましょう。
じゃないと、四章からの地獄には耐えられませんよ?
恐らくこの幕間が最後の日常パートになると思いますので。
それでは!
さようなら