それでは前回のあらすじ
霊夢、妹紅の連携によってついにゲンを退けることに成功した黒葉たち。
しかし、まだ安心してはいけない。必ず奴は再度やってくる。
その日に向けて黒葉はさらに強くなることを心に決めたのだった。
それではどうぞ!
side黒葉
俺はふらふらとした足取りで紅魔館へと向かっていた。
結局姉貴に頼まれたパックなど見当たらなかったわけで、帰ったら問い詰めなければいけないのだが、今はこの状況の方が大事だ。
「なぁルーミア……」
「なんなのだー?」
「なんでついてきてるんだ?」
「ついていきたいからなのだ~」
答えになっていない。
先からルーミアはこんな調子だ。
俺は帰ろうとしているのにルーミアは自分の家へと帰ることはせずに俺のあとをずっとついてきている。
そのくせ、俺がルーミアの事を見ると顔をそらすのだ。訳が分からない。
それに、未だに俺の周囲は真っ暗なままだ。これは一体何なんだろうか?
「もうそろそろつくんだけど、どこまでついてくるつもりだ?」
「黒葉の家までなのだ~」
どういうつもりなのかがさっぱりだ。
俺は特に連れていくことは抵抗はないが、姉貴たちがどう思うか、それとルーミアの家族は心配していないのかとか、いろいろな不安要素が入り混じっているので、俺としてはこのままUターンして帰ってほしいのだが、それは叶わなそうだ。
「あ、黒葉。おかえりなさいませ––って、どうしたんですか、その怪我は⁉」
珍しく起きている美鈴が挨拶をしてくれた。
すると俺がかなりぼろぼろになっているのを見てかなり驚いた様子の美鈴。
そんな美鈴に俺は優しく微笑みながら言った。
「ちょっと野犬に襲われてさ」
「つまり黒葉は咲夜さんに鍛えられているのに、野犬と互角の戦いをしたということですか?」
「ぐっ」
そういわれると修行を付けてくれた師匠や姉貴に申し訳なくなってくるが、あまり心配はかけたくなかったため、俺は嘘を貫き通そうと口を開いた瞬間だった。
「とても強い敵に襲われたのだ~」
「ちょ、ルーミア!」
「あ、ルーミア。来てたのですね。それで、強い敵とは?」
俺は見ていられなくなって目を隠すように頭を抱えて空を仰ぎ見る。
「炎を纏った敵なのだ。人里もかなり焼かれて、人里を守るために黒葉、霊夢、妹紅の三人で戦ったけど、黒葉はこの通り、妹紅もかなりの大けがをしていて、霊夢がいなかったら全滅もあり得たのだ~。私もいたけど、私は黒葉に守られてばかりで、何もできなかったのだ」
「そうだったんですね」
そんなことはない。俺はずっと博麗様と妹紅さんに守られていたし、博麗様にはルーミアの事を守れと言われたけど、実際に俺とルーミアの事を守っていたのは博麗様だった。
俺たちの方へ攻撃が飛んでこないように攻撃を誘導していたのを俺は知っている。
結局、あいつを退けるのには俺は必要なかったんだ。博麗様と妹紅さんだけでもあいつを退けることができた。それが事実である。
「ルーミア。実際に戦っていたのは博麗様と妹紅さんの二人だけだよ。俺のは戦ったうちには入らない」
「戦ってた! かっこよかった! 確かに黒葉の力ではあいつを倒せなかったけど、それでも私にとっては一番かっこよく見えたよ!」
ルーミアの顔が朱色に染まる。
その表情を見て俺もドキッとしてしまうものの、俺はそんなかっこいいことなんてしていないと考えて冷静に戻る。
「俺はかっこよくなんてないよ。ずっと博麗様や妹紅さんに守られていてばかりで、勝手に首を突っ込んだくせに大けがを負うことしかできなかったんだ」
今の俺にはどんな言葉も響かない。
俺は念願の来る日も来る日も恨み続けた因縁の相手にようやく会えてようやく姉ちゃんの敵を討てると思った。だけど、現実はそうは甘くなかった。ゲンは強かった。俺の想像するより何倍も何十倍もゲンは強かった。
今の俺の力ではゲンを倒すことはできない。それが事実。それ以外の事は今の俺にとってはどうでもいいことだった。
「そう、あなたは弱い」
「っ!」
突如として背後から声が聞こえてくる。
慌てて振り返るとそこには師匠がいて、振り返った瞬間、額を人差し指で突かれた。
「今の敵の特徴なら私も知っている。今幻想郷を騒がせている異変の主犯だから。あいつに黒葉が挑むのは鬼になんの力もない人間が挑むようなものよ。身の程をわきまえなさいというのが私の見解なのだけど、どう?」
「ちょ、ちょっと、咲夜さん! そんな言い方は––」
「いえ、いいんです。自分で戦ってみて感じました。師匠の言葉どおりでした。俺は何の役にも立たなかった。それどころか足を引っ張ってしまった。はははは」
完全に自暴自棄だった。
俺はやはり人を守る資格なんてないんだ。
いつまで経っても変わらない。俺は最弱の冬夏黒葉なんだ。
無駄に戦いに首を突っ込んでは無駄な犠牲を出してしまう。俺の姉ちゃんがそうだったように。
今思えば姉ちゃんも俺が殺したようなものだ。俺が行かなければ姉ちゃんは死ななかったかもしれない。俺が行かなければ吸血鬼になって多くの人に迷惑をかけることもなかった。
今まで通りにあの人里で穏やかな生活を––
「違うもん!」
突然俺の思考を遮るような大声に驚き、大声の発生源であるルーミアを見る。
「違うもん。確かに霊夢や妹紅と比べたら黒葉の実力は至らないかもしれない。だけど、それが何⁉ 強さは肉体的強さだけじゃないよ! 黒葉はしっかりと強いよ、心の方が!」
「心?」
「黒葉は死ぬかもしれない危険を冒してまで二回も私を救ってくれた」
一回目は森の中で妖怪に襲われそうになっているとき、二回目はゲンの炎から救ったときのことを言っているのだろうか。
だが、あんなのは博麗様や妹紅ならもっと完璧に行えた。
「私にとっては黒葉の方が霊夢や妹紅よりもかっこよかったし、強かったよ」
「っ」
ルーミアが俺の事を抱きしめて頭を撫でてくれる。
まるで赤子をあやすかのような優しい手つきに俺は思わず我慢できなくなってしまって、その場に崩れ落ちる。
それに合わせてルーミアも地面に座り込んだ。
「っ、だれも、守ることが、できなかった。悔しい。苦しい。大切な人を誰一人……守れない……」
「守れてるよ。だから私がここにいるんだよ。誰かのためになってるんだよ。そんなに自分を卑下しないで、ね?」
俺はいつの間にかルーミアの胸の中で涙を流してしまっていた。
今まで溜まっていた分をすべてルーミアにぶつけるように嗚咽をこぼした。
そんな俺をルーミアは優しくなでてくれる。
いつの間にか美鈴と師匠はその場からいなくなっていた。
俺としては都合がよかった。なにせ、こんな同級生の胸に縋り付いて嗚咽をこぼす姿なんてあまり見られたくないものだからな。
side三人称
「失礼します」
レミリアの部屋に咲夜がやってきた。その面持ちは少々怖いものとなっている。
いつも通りの表情で椅子に座っているレミリアだが、咲夜の考えを悟ってかいつもよりも雰囲気が重いものとなっている。
「お嬢様」
「なに? 咲夜」
「お嬢様は知っていたのですね。黒葉が昨晩、人里へ行くとどうなっていたか」
「そうね」
あっけらかんと答えるレミリアに対して怒りが込み上げてきた咲夜は拳をわなわなと振るわせて主に向かって言い放った。
「それがあなたのやることですか! お嬢様は運命を操れる。この先の運命を見て奴が、炎の魔人が人里にやってくることを知っていてなお、黒葉を人里へ向かわせた! おかげで黒葉は大けがを負い、見た感じ、辛うじて立ってはいましたが、それでも、いつ倒れてもおかしくないような傷でした。お嬢様は弟のようにかわいがっていた黒葉を危険な目に遭わせたのです!」
「咲夜、随分と黒葉の事を考えているのね。びっくりしたわ」
「当たり前です。大事な部下であり弟子ですから!」
咲夜の怒りはもっともなことだった。そのため、レミリアは何も言わず、その言葉をすべて受け止める。
レミリアは運命を操る程度の能力の持ち主であるがため、何度も運命を選択し、行動してきた。そのたびに自身の選択してきたその運命は本当に正解だったのだろうかと考えるが、今回のが一番正解だったのか怪しいと感じていた。
ただ、一つだけレミリアはこれだけは正解だったと呼べる出来事が今回の件に合った。
(黒葉が行かなかったら今の犠牲者よりもずっと多くのものが犠牲になり、
ルーミアと霊夢が死んでいた)
はい!第31話終了
今回は紅魔館に戻ってきたという話ですね。
ここら辺からタグのルーミアヒロインを回収していきます。
ルーミアの口調がしっくりこないという方がいらっしゃると思いますが、この場面ではこの口調がいいと考えてこの口調にしました。
そして衝撃の事実。黒葉は自分なんていらないと言っていたのですが、黒葉が行かなかったらルーミアと霊夢が死んでしまっていたんですね。
その事実を知っているのはレミリアだけですが、この先、黒葉は強くなってゲンを倒すことができるのでしょうか?
それでは!
さようなら