それでは前回のあらすじ
ルーミアを連れて紅魔館に帰ってきた黒葉。
ルーミアは黒葉からチョコをもらったのに美味しいと感じなかったことにショックを受ける。
するとルーミアはトイレに行くと嘘をついて紅魔館から飛び出していった。
果たして、どうなってしまうのか?
それではどうぞ!
side黒葉
あれから数分が経過した。未だにルーミアは戻ってきてはいない。まぁ、ここからトイレまでは少し距離があるから戻ってくるまで時間がかかっているのだろう。
だが、それにしても遅いような気がする。それに、何か胸騒ぎのようなものがある。まるであの運命の夜のように胸騒ぎがする。なにか、大切なものを失ってしまいそうな、そしてもう取り返しがつかないような、そんな予感が走り、何も突然焦りのようなものが芽生えてしまう。
その時、突然俺の部屋の扉がノックされた。
「私よ」
「パチュリー?」
扉の向こうから聞こえてきた声の主は俺が返事をする前に扉を開けて部屋の中に入ってきた。
その部屋の中に入ってきた人物はパチュリーだった。だが、今回はパチュリーが俺の部屋に赴くようなことをした記憶がない。特に怪我をしたわけではない。たしかに大妖精にボコボコにされて少し怪我をしたが、パチュリーがわざわざ来るほどの怪我ではない。
だが、パチュリーは普段、大図書館から出てこない。それは俺が清掃をしている時にも何度も見かけているが、俺の傷を治す時以外に大図書館以外で見たことがない。
そんなパチュリーが俺の部屋にやってきたと言うことは何かがあったのだろう。
「…………ルーミアからの言葉よ。今まで楽しかった、ありがとう。さようなら、そしてごめん」
「え?」
「それだけよ」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
それだけ言うとパチュリーは踵を返して俺の部屋から出て行ってしまった。
今のパチュリーの言葉、素直に受け取るとしたら俺に別れを告げて出ていったと言うことになるよな。どうして急にそんなことをしたんだ?
……いや、勘づいてはいた。何かを悩んでいると言うのをわかっていた。だが、俺が察しが良くないばかりにルーミアの悩みをわかってあげられなくて、限界まで自分で溜め込んで、そして今回どうしようもできなくなって出ていったんだろう。
いや、その悩みの正体もなんとなくわかっていた。俺自身、そのこと認めたくなかったから気がつかないフリをしていた。所詮、ルーミアのことを考えているように見せていただけで、俺は自分のことが可愛かっただけなんだ。信じたくなかったんだ。こっちに来て初めてできた友達だから。
――だけど、もう覚悟は決めた。
「ルーミアのその悩み、俺が喰らってやる」
俺は吹雪を手に取ると乱雑に部屋の扉を開けて紅魔館を飛び出した。
目的地は不明だ。だけど、絶対に離してやるものか。あいつはもう、俺の大切な――友達なんだからな!
sideルーミア
走り続けてどこまで来たんだろう。真っ暗な森の中、私は常闇の妖怪だから特に何も思わない。それどころか闇は好き。
闇は何も言わない。何も思わない。私の行いを隠して、そして肯定してくれているような気がする。
「あぁ、黒葉ともっと一緒にいたかったな……」
だけど、これはもう終わったこと、気に病んでいても仕方がない。もうあの場所に帰ることはできない。
恐らく私が我慢できずに妖怪を食べたら黒葉は私を殺してくれるだろう。確かにそれはそれでいい。黒葉に最後を看取ってもらえるなら本望。だけど、私が黒葉のことを捕食対象として見るのは絶対に嫌だ。
もうそろそろ限界だった。今日出ないといつ黒葉を見てお腹を空かせてしまうのかがわからなかった。それだけは我慢できない。
もう、あの頃には戻れないんだ。
あぁ、今更気がついたよ。私は黒葉のことが好きだったんだ。黒葉のことを考えると胸がちくちくするんだ。
「…………私、自分で思うよりもずっと黒葉のことが好きだった。もう会えなくなるの、寂しいな……」
私はフラフラとした足取りでどこへ向かうと言う目的もなく森の中を彷徨っていく。
お腹が空いた。さっき、黒葉からチョコをもらったけど、やっぱり人間を食べないと満たされない。
このまま餓死したらどうなるんだろう。そもそも、妖怪はそう簡単に死なないんだから、餓死とかするのかな?
妖怪にも必要なエネルギーがあるから私の場合は人を食べて得ていたエネルギーだからそれを絶っている今なら、餓死できるのかな?
その瞬間、突如近くの茂みが揺れ動き、葉っぱが擦れる音がしだした。
風かと一瞬思ったけど、どうやらそうではなさそうだ。
「だ、誰」
「妖怪は死すべし!」
突如正面の茂みから飛び出してきた人影に驚いたけど、咄嗟の妖怪の反射神経でその人影が振るってきた斧を回避する。
間一髪だった。
回避した後、背後を見てみて私はゾッとした。なぜなら背後にあった木がたったの一撃で切り倒されてしまったのだから。
「躱されたか。だが、次は外さない。妖怪は死すべしだ!」
一撃で木を切り倒しておいて平然とこっちへ振り返る大斧を担いだ大男。
この時、明確なる死を感じ取った。
この人のこの殺気、並の妖怪だったら失神してしまうほどの殺気だ。どれほど妖怪に恨みを持っていたらこれほどの殺気を帯びることができるのだろう。
あぁ、私はここで死ぬのか。この人に殺されて私は一生を終える。もう、生に意味を見出せないから、どうだっていいかな。
でも、できるなら、贅沢を言ってもいいなら――
「黒葉に斬られて……死にたかったぁ」
――俺を頼れ!
「え?」
「死ねぇ! 《
振り下ろされる大斧。今の私に回避する気力は残されていなかった。目を瞑って死を待つ。
さようなら、黒葉。
「《爆炎斬》!」
いくら待っても私に斧が振り下ろされることはなかった。
恐る恐る目を開けてみるとそこには――
「き、貴様! 吸血鬼!」
「俺の大切な人に、何をしている。事と次第によっては、人間であるあんたを殺さなくてはならなくなる」
黒葉が刀で大斧を受け止めていた。
はい!第39話終了
実はなんとなく察していた黒葉。しかし、ついにその現実に向き合う覚悟を決めたようですね。
次回は黒葉対斧使いの大男です。
それでは!
さようなら