それでは前回のあらすじ
黒葉と大男の戦いは突然終わりを告げた。
突如として季節外れの吹雪が吹き荒れ、白愛の形見である吹雪の力を強め、黒葉は白愛の必殺技である吹雪を成功させる。
そして回雪も成功させ、黒葉はなんとか勝利を納めた。
それではどうぞ!
sideルーミア
私は気を失った黒葉を背負って森の中を歩いていた。
紅魔館へ気を失った黒葉を送り届けるために歩いているけど、たぶん黒葉は急いできてくれたんだろうし、あんまりいろんな人に今回のことを伝えていないだろうから、こんなにボロボロになった黒葉を見たらみんなビックリしてしまいそうだな……。
でも、どうしよう。今回の件で黒葉への思いがさらに強くなってしまった。もう絶対に離れたくないって思うようになってしまった。ダメなのに……。
さっきの人は恐らく妖怪ハンターっていう妖怪を殺して回っている人なんだろうけど、あの人も美味しそうに見えてしまっていた。
そして感じる、もうそろそろ黒葉のことも美味しそうに見えてしまいそうだと……。大好きな黒葉を食料としてみるのは絶対嫌なのに、本能が判断してしまって美味しそうに見えてしまう。
「はぁ……」
「あれ、ルーミア?」
「ん? あ、みすちー」
森のなかを歩いていると偶然屋台を引いて歩いているみすちーを見かけた。
どうやらこれから人里の方で屋台を出しに行こうとしていたんだろう。
「え、どうしたの黒葉のその傷!」
「さっき、妖怪ハンターに襲われちゃって……。黒葉が助けてくれたんだけど、黒葉の傷がひどくて……。黒葉は紅魔館に住んでいるから紅魔館の人に助けてもらえないかなって」
「そ、そうだったのね。大変だったでしょう」
たぶんみずちーも変だなっていうのは思っているだろうけど、黒葉が吸血鬼だと言うことは確信していないだろうし、私が黒葉から離れるために紅魔館から飛び出したと言うのは伏せることにする。
「黒葉、かっこいいところあるじゃん。ということは、これは名誉の傷って言うことだね」
「うん、黒葉はかっこいのだ」
黒葉のことを語るとどんどんと自分の顔が赤くなっていくのを感じる。こうしているとどんどんと離れたくなくなってしまう。だけど、やっぱり黒葉の側には私は居ちゃダメなんだよ。私は一緒に居ればいるほど黒葉と別れたくなくなってしまう。求めればどこまでも求めてしまう。
だからここらへんで終わりにしないといけない。
「ねぇ、みすちー。ちょっと急用ができちゃったから黒葉を紅魔館まで送るのを頼まれてくれない?」
「……はぁ、まぁ私は覚り妖怪じゃないからルーミアが何を考えているのかは分からないけど、仲直りしなさいよ」
「うん、わかったのだ」
私は背負っていた黒葉をみすちーに受け渡すと踵を返した。
正直辛かった。傷つき、流れ出た黒葉の血の臭いがしていて、それがとてもおいしそうと思ってしまっていた。
黒葉はさっき、私の事を妖怪だとわかっていた、そしてその上で私の事が好きだと言ってくれた。だけど、ダメなんだよ。
私の周りには人間を食べなくても何とかなっている妖怪はいる。みすちーもその一人だ。
だけど、私は人間を食べないとどんどんと飢えてきて理性が崩壊していく。そうなってしまったら見境なく人を襲ってあまつさえ、黒葉の事も捕食対象として見て襲われてしまうだろう。
黒葉に殺されるのなら私は何も不満はない。だけど、黒葉を捕食対象として見るのは絶対に嫌だ。そして黒葉に嫌われるのも耐えられない。だから私はこの場所から離れてひっそりと……。
––ルーミアは俺の大切な人だから!
ドクンと胸が高鳴った。
「どうして……どうしてこんな時に思い出すの……」
私は膝から崩れ落ちてしまった。
私は自分で思っていた以上に心が弱かったみたい。近づくことも離れることも許されない。
どうしたら……。
「ルーミア……」
後ろから心配そうなみすちーの声が聞こえてくる。
「ルーミア、泣きたいときは泣いていいんだよ」
「みすちー……」
みすちーのその言葉に耐え切れなくなった私は嗚咽をこぼしながら今までにないくらいに涙を流した。
その間は何も言わすに優しく背中をさすってくれたみすちーはまるで聖母のようだった。
友人に恥ずかしい姿を見せてしまっているが、今の私にはそんなことは関係なかった。ついにはみすちーに抱き着いて胸を借りながら泣きじゃくった。
そして私はそのまま眠りについてしまった。
side黒葉
「う、うーん……」
俺はカーテン越しにあたたかな光を感じて目を覚ました。
気分は案外悪くはなかった。だが、やはりというか全身が痛くて包帯が体中にまかれている状態だった。
周囲を見渡してみると俺がいつも使っている部屋そのものだった。家具の配置とかもそのままだ。おそらく誰かが運んでくれたのだろう。
そう思って隣を見てみると隣ではルーミアが寝ていた。すやすやと寝息を立て、とても気持ちよさそうに寝ている。
可愛かったので思わず髪をなでるとルーミアはくすぐったそうに身をよじった。
「あ、黒葉。目が覚めたのね」
「師匠……?」
ドアの方へと目をやると師匠が物音ひとつ立てずに俺の部屋に入ってきていた。これはいつもの師匠お得意の瞬間移動マジックといったところだろうが、いつも思うが突然現れないでほしい。かなり心臓に悪い。
だが、とりあえず聞きたいことがあったからちょうどいいだろう。
「師匠。今はどういう状況なんですか?」
「昨日の夜、黒葉の友人を名乗るミスティア・ローレライという方が屋台に荷台をつなげて黒葉とルーミアを乗せてきて、さすがに私もかなりびっくりしたわ」
師匠でもびっくりすることがあるんだ……。
それにしても俺は戦いの後、すぐに意識を無くしたからてっきりルーミアが連れ帰ってくれたのかと思ったけど、ミスティアが運んでくれたのか。今度しっかりとお礼をしなければいけないな。
それにしてもよく俺たち、五体満足で帰ることができたな。まぁ、俺の場合は左腕が無いんだけど。
「よく状況が分からなかったけど、とりあえず妖怪ハンターと戦ったっていうのは聞いたわ。本当に無茶するわね」
「……どうしてもルーミアを助けたかったから」
「そう……黒葉の癖に生意気ね。妹様だけじゃなく、その子まで……もしかしてハーレムを作る気? 言っておくけど、私は安い女じゃないわよ」
「そんな気は一切ないですから!」
人聞きの悪いことを言ってくる。
フランとはただの遊び相手だし、俺が本当に好きなのはルーミアただ一人だ。確かにフランが命の危機に瀕しても命を懸けて救いたいとは思うが、ルーミアとはまた別だ。ルーミアは何を犠牲にしても絶対に守る。
「まぁ、いいわ。たぶん、ルーミアの悩みを解決できるのは黒葉だけだから、あとは頑張りなさい」
「頑張ってみる。それでだめだったらもっと頑張るよ」
「……」
俺の言葉を聞くと師匠はにっこりと口元をゆがめたような気がした。
そしてそれを最後に師匠は目の前からパッと消えてしまった。
師匠に言われた通りに頑張らないと。またルーミアが突然紅魔館を飛び出していくなんてことが無いように。俺がつなぎとめるために。安心させるために。
はい!第43話終了
いつも通りに可愛いルーミアと苦悩。
黒葉はどのようにしてルーミアの悩みを解決するのでしょうか?
それでは!
さようなら