それでは前回のあらすじ
ルーミアが目を覚まし、黒葉はルーミアの悩みを知ることとなる。
どうしたらルーミアの飢餓を解消することが出来るかと考えた結果、黒葉は血を飲むことを提案するのだった。
それではどうぞ!
side黒葉
「黒葉の血を?」
「あぁ」
多分、本当は血ではなく肉の方がエネルギー吸収効率もいいし、飢餓感もなくなるのだろう。だが、肉を用意することはできない。肉は食われたら再生するわけではない。それは吸血鬼である俺たちも同じことだ。特に俺は半吸血鬼のような状態だから姉貴よりも再生能力が低く、普通の人間よりは回復は早いが、それでも一般レベルだ。とてもじゃないが、一かじりも与えることはできない。
だが、ちならば生命活動の上で、減った分は鉄分を接種したりすることによって増やすことが可能だ。そうなってくると血には多くの鉄分が含まれているから、俺ももしかしたら血を飲まなければいけなくなる可能性はあるが、それでも理性を失って人を襲うよりは数億倍マシと言えるだろう。
「でも、黒葉から血を吸うのは嫌だな……」
「そ、そうだよな。こんな吸血鬼交じりの血を吸うのなんて嫌だよな……」
「ち、違うよ! そういう意味じゃないよ!」
俺がものすごくショックを受けた様子を見てルーミアは慌てて否定した。
ルーミアが言った言葉の意味も分かってはいるが、それでも俺の心は傷ついてしまうというところが大変女々しくて自分が嫌になってくる。
恐らく俺から血を吸うのを躊躇っているのだろう。俺もルーミアから血を吸わなければならないと言われたらかなり躊躇ってしまう。
幸いにも俺は純粋な吸血鬼じゃないから血を必要としていないようだが、俺も同じような状況に立たされたら吸いたくないと思うだろう。なにせ、俺たちは友達なのだから。
「ルーミア、お前には非常に酷なことを言っているとは思うが、俺はお前に人に危害を加えてほしくないと思っている。大切な人だからな。まぁ、人じゃないけどな」
「た、大切……」
「そうだ。だから、どうか俺の血を吸ってくれ」
俺が言ったことは恐らくわかってはいるのだろう。だが、ルーミアは渋い顔をして一向に俺の血を吸おうとはしなかった。
「私、黒葉を捕食対象として見たくなくてここを飛び出したんだ。だから、黒葉を食料として血を吸うのはかなり抵抗があるっていうか……私にとっても黒葉は大切だし……」
「そ、そっか……」
なるほど……。最近は俺のことを食料として見てしまうって言うことを憂いていたようだし、それなら俺の血を吸うって言うのはダメか……。
しかし、そうなると非常に困った。
俺の血を吸ってもらえないとなると、後はもう方法がない。何とかしてエネルギーの補給方法を見つけ出さないとルーミアが死んでしまうことになる。それだけは絶対に避けたい。
だからといって他の人に危害を加えることはできないし……。
「あ、そうだ。ここに……」
俺は部屋にある冷蔵庫の中から輸血パックを取り出した。
これは姉貴に勧められて押し付けられたものだが、俺は飲む気がせず、放置していたため、まだ未開封の新品だ。
これはかなり保存に向いているようで、開封さえしなければ結構長持ちするらしい。
「これを飲んでみてくれないか? 一応食用の血液だ」
「……うん、わかった」
ルーミアは恐る恐ると食用の血液を受け取ると、慎重に開封してゆっくりとストローに口をつけて吸い始めた。
そういえば、これを人が飲んでいるところを見たことがないな。姉貴にはこれを勧められたから飲んでいるって言うのは知っているけど、飲んでいる場面に遭遇したことはないし、どちらかと言えば紅茶を飲んでいるイメージが強い。
フランに至ってはプリンを食べているところくらいしか見たことがない。
ルーミアはしばらくチューチューと吸ったあと、ゆっくりと口を開いた。
「うーん……確かにこの血、栄養もあるし、飲みやすいような味にされていて美味しいには美味しいんだけど、それは吸血鬼に必要な栄養素を集めましたって言う感じで、人食い妖怪としてはあまりエネルギーを吸収できなかったよ。そもそも、この血にはあまり生のエネルギーが無いから、あまりエネルギーは吸収できないみたい」
「なるほど、となると本当に人間の、それも生きているもしくは死んで間もない人の血肉が必要になってくると言うことか」
となるといよいよ厄介だ。
生きている人間はもちろん、死んで間もないとはいえ、拐ってきて食料にするのは倫理的にアウトだ。
となると、本格的に手がなくなってきた。
言い方的にはその血液でもエネルギーを吸収することができないわけではないのだろうが、効率が悪すぎてこれを飲むのはあまり良くないのだろう。
どうにかしてルーミアを救いたい。だけど、その手が全然見つからない。
どうしたものか……。
「ねぇ、黒葉」
「なんだ?」
「黒葉の血を吸わせてもらっても良い?」
「え、だが、俺の血を吸うのは嫌なんじゃ」
「うん、嫌だけど、それでも黒葉の悲しむ顔を見たくないから」
「ルーミア……」
ルーミアには本当に酷な選択をさせてしまったと思う。
でも、確かに他にも手がなかったのは確かなので、助かったには助かった。
ルーミアは覚悟を決めた目で俺のことを見てきているので、俺はゆっくりと首筋を露にしてルーミアに差し出した。
するとルーミアはゆっくりと俺に近寄ってきて俺の首に牙を突き立ててきた。
ちくっとした痛みが首筋に走る。この感覚はとても懐かしいと思ってしまい、少し涙が出てきてしまう。
レミリアに吸血されて吸血鬼になってしまったとき以来の感触だが、なんだが不思議と今回はあまり気分は悪くなかった。
むしろなんだか安心するような気すらもしてくる。
しかし、よかった……これがうまく行けばルーミアの飢餓問題も解決しそうだ。
それにしても、一向にルーミアが俺の首筋から離れる気配はない。
俺は半分とはいえ、吸血鬼だから人間よりは強いがそれでも血を吸われ過ぎると貧血になるんだが……。
「お、おいルーミア?」
「はっ! 危うく我を失うところだった」
俺が声をかけたことによってハッと気がついたようで俺の首筋からはなれて口に付いた血を舌で舐め取った。ちょっとその仕草は男の子的には非常に攻撃力が高い……。
「危ねぇな。で、どうだったんだ?」
「美味しかったよ! それとお腹も膨れたような気がする」
「そっか、よかった」
やっぱり生命エネルギーのある人間の血が必要だったようだな。
だが、これでルーミアの飢餓問題は解決した。一件落着っていう奴だな。
「え」
「ん?」
驚いたような声が聞こえてきた。
俺たちも驚いて声の聞こえた方へと顔を向けると、入り口にフランドールが立っていた。
初めてフランドールがあの部屋から出ているところを見たな。
だが、何か様子がおかしいような気がする。
「こ」
「こ?」
「黒葉が知らない女の人と抱き合ってる!」
「ちょ、違う! これには事情があるんだ!」
フランドールが叫びながら誤解してこの部屋を走り去っていったので俺はあわてて弁解しながらフランの後を追った。
はい!第45話終了
黒葉の血を飲むことによってルーミアの飢餓問題は解決しましたが、別の問題も生まれそうですね。
そして、あれほどフランと親密にしていたというのに、なにげに久しぶりの登場です。
それでは!
さようなら