それでは前回のあらすじ
霊夢と並んでフランの部屋へと向かう黒葉。
その道中で霊夢の事をからかってツンデレイムと発言したところ、霊夢が激怒。
意識が薄れゆく中、無意識に黒葉はツンデレイムという言葉を魔理沙に教えられたことを告発してしまい、魔理沙は霊夢の餌食になってしまったのでした。
それではどうぞ!
side黒葉
俺は一人で地下への階段を下りていき、ついに一番下へとやってきた。
一時期はほぼ毎日のように来ていたからここからフランドールの部屋への道のりも完璧だ。
だが、一つ問題があるようで……。
「フランドールさん、めっちゃ怒ってるっぽいんだよなぁ……」
そう、フランドールさんめちゃくちゃ怒っている。
どうしてそう思うのかというと、この地下に漂っている妖力を感じ取ったからである。
地下にはフランドールの力を分散させる装置が備わっているらしい。そのため、地下に居たらフランドールの力は抑えられるはずなのだが、結構離れているここでも恐ろしいほどの妖力を感じる。
おそらく怒っているせいでフランドールの妖力が暴走状態に陥っているのだろう。
どうしてここまで怒っているのかは分からないが、たぶんだけどここまで怒っている原因ってさっきの光景なんだよな……となると、まぁ、あれは完全に誤解なわけなんだが、誤解させちゃったっていうのもあるから謝らないとな。
「お、おーい。フランドール」
俺はフランドールの部屋の前にたどり着くと恐る恐る外から声をかけた。
その瞬間、妖力が膨れ上がり、部屋の中から爆発するかのような音も聞こえて来た。これはおそらくフランドールの能力、ありとあらゆるものを破壊する程度の能力により、何かを破壊してしまった音だろう。たぶん今、フランドールは能力を制御できないほどに怒っている。いわゆる能力の暴走状態という奴だろう。
以前、文献で見たものによると、能力が暴走するとその能力の力が大幅に強化される半面、その能力を制御できなくなってしまうため、フランドールのような攻撃的な能力の場合、無差別に攻撃をしてしまうようになるらしい。
だけど暴れ馬のようなその能力を完全に制御できるようになればさらなる力を得ることが出来るとも書いてあった。
フランドールはおそらく感情が昂ると能力の制御ができなくなってしまうようだ。だからこそ、今の今までこの地下室から出ないで引きこもってきたのだろう。
確かにこの能力ならば簡単に人を殺すことだって可能だし、大切な人を傷つけてしまう可能性がある。たぶんフランドールが一番危惧していたのは姉であるレミリアを傷つけてしまうことなんじゃないかな。レミリアはそんなことは気にしていないようだけど……。
吸血鬼で種族的には上位の妖怪だけど、人一倍他人の感情に敏感で、そして傷つけてしまうことを恐れている。
俺はそんなフランドールを助けたい。
俺は思い切ってドアノブを握ると一息に捻って勢いよくドアを開けた。
するとそこはひどい状態だった。
ベッドは粉々になり、人形は綿が飛び散り、机なんかも木っ端みじんにされていた。
「っ」
「黒……葉」
「フランドール」
部屋の中心に座り込んでいるフランドールが俺の存在に気が付いたようで、こっちをゆっくりと振り返った。
その表情は悲しみと狂気が入り混じったようななんとも言えない表情だった。目からは狂気じみたものを感じるが、その目尻には涙の粒がたまっており、単純に能力に支配されているだけには思えない状況だった。
能力が暴走すると肉体が能力に支配されてしまって意識も飛んでしまうというが、今のフランドールの状態はまだフランドールとしての意識が残っている状態だ。
支配できているわけじゃない。今にも気を抜いたら意識を乗っ取られてしまいそうというほどに侵食されているのだろう。そして感情の昂りによって昂った能力を静める術を今のフランドールは持っていない。
このまま放置していてもフランドールの意識が能力にすべて乗っ取られてフランドールにとって最悪の結果になることは目に見えている。
優しいフランドールが無意味に人を傷つけてしまうことを許せるわけがない。そんなことになったらもしかして責任を取ろうとして……そんな結果は俺も望まないし、この紅魔館のみんなは絶対に望まないだろう。
レミリアの言葉を借りるわけじゃないが、フランドールには幸せに生きてほしいから。
「フランドール。さっきのは誤解なんだ。別に抱き合っていたわけじゃない」
「嘘だ」
「本当だ!」
「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!」
まずい。本気でまずい状況になってきた。どんどんとフランドールの力が昂っていくのを感じる。
どうすればいいんだ……。
––喰らえ。
え?
––すべてを喰らえ。
すべてを喰らう……フランドールをクらう
そうだ、喰らえばいいんだ。喰らえばすべてが解決する。
そうこうしているとフランドールが苦しそうな表情を浮かべ始めたのが見えた。恐らく、理性が徐々に能力に侵略され始めたのだろう。
そんなフランドールは俺へと視線を向けると泣きそうな声で言った。
「ねぇ、黒葉……助けて」
「っ!」
俺はその声を聞いた瞬間、フランドールへと走り出していた。
フランドールは当然、体の制御が半分以上乗っ取られている状態なので、俺が接近するのを阻止しようと手を突き出してくる。おそらくこの手に触れたら破壊されてしまうと、そう感じたから俺は回避すると勢いよくフランドールを抱きしめた。もちろん抵抗しないようにするためだ。今のフランドールに大人しくしていてくれと言っても無駄だというのが分かり切っているから強制的に大人しくさせることにした。
––喰らえ。
あの日から時々聞こえるこの声、誰の声かは全く分からないし、どういう意味なのかも全く分からない。だけど、これが俺の中に居て、そしてこの声を発した瞬間、俺は一瞬意識を乗っ取られそうになってしまう。
だけど、今回はなぜだろう。この声が正しいように感じてくる。喰らえば解決する、そんな気がする。
そう考えた俺はゆっくりとフランドールへと近づいて首筋に牙を突き立てた。
「んっ!」
首筋に鋭い痛みが走ったのだろう。フランドールの首筋からは鮮やかな赤色をした液体が出てきて、それが俺の口の中を蹂躙する。
鉄分の味がする。人間であったころはこの味は嫌悪の対象だったんだろうけど、吸血鬼となった今は甘美な味に感じる。簡単に言えばものすごく美味しい。大好物のシチューでも口の中に放り込まれたかのような美味しい味だ。
「ん、あ、ダメ……こく、ばぁ……」
フランドールが無意味なほどに力が無い抵抗をしているが、この味を知ってしまった俺にとってはそんなことは眼中になどなかった。
無我夢中になって俺はフランドールの首筋から出てくる赤い液体を啜っていく。それにつれてフランドールの妖力が徐々に弱まってきた。しかし、無我夢中になっている俺はそのことに気が付かず、夢中に吸い続ける。
「んっ、はぁ……はぁ……あっ、こくばぁ……だめぇ……力が、抜けちゃうよぉ……」
フランドールがくすぐったさからだろうか、体をびくびくと振るわせる。
血液とはこんなに美味いものだったのか。今までレミリアに血を貰って来たけど、それを一切飲んできていなかったから血がこんなに美味いなんて知らなかった。
他の人の血もこんな味なんだろうか。それとも違う味なんだろうか。とても気になる。
「だ、だめぇ……あっ、あんっ……もう、力が……入らないよぉっ」
フランドールは体をびくびくと振るわせながら俺の事を抱きしめて来た。
もっと飲みたい。そう思った俺はフランドールの事を強く抱きしめてさらに啜ろうとしたその時だった。
「黒葉、なにやってるの……?」
冷たい視線が背後から飛んできていることに気が付き、俺は機械の様にギギギとゆっくり視線を感じる方へと目を向けてみると、そこには師匠とルーミアの姿があった。
ルーミアは絶対零度とでもいうほどに冷え切った目で俺の事を見つめてきており、師匠はなぜだか顔を真っ赤にしてそっぽを向いてしまっている。
無我夢中になってしまっていた俺は今のこの状況がどういったものなのか、一切気が付いていなかった。
そして状況を確認するためにフランドールの方へと向き直ってみると、とんでもない光景が広がっていた。
「はぁ……はぁ……こくばぁ、はげしすぎだよぉ……」
「っ!」
そこには顔を紅潮させ、恍惚とした表情を浮かべて息を荒くし、服を軽くはだけさせて床に力なく倒れているフランドールが居た。
そこでやっと俺は今まで俺が何をやっていたのか気が付いた。
無我夢中になって俺はフランドールの事を抱きしめながら血を吸っていつの間にかフランドールの事を押し倒し、暴れるフランドールの事を抑えようと必死で抱きしめている間にフランドールの服をはだけさせていた。
そしてそんな状況で師匠とルーミアがこの部屋に入ってきてしまった。
あぁ……これはルーミアの時とは違って言い逃れのしようがない状態だ。
「こ、こくばぁ……もうしないのぉ?」
「い、一回ちょっと大人しくしていてくれ。話がややこしくなる……」
「黒葉……正座っ!」
「はい!」
この状況で俺が取れる行動はただ一つ。素直に命令に従うのみだった。
勢いよくルーミアの前に正座した俺はあまりの剣幕に息をのんだ。これ以上彼女の機嫌を損ねたら殺される、そんな気がしてくるほどの剣幕だった。正直、フランドールの暴走の数倍こっちの方が怖い気がする。
「……だれ、その女」
「は、はい! この館の主のレミリア・スカーレットさんの妹さんであるフランドール・スカーレットさんです、はい!」
「……今、何をしていたの?」
「い、いやぁ……何をしていたんでしょうね––ひっ!」
「はぐらかさないで」
俺が目をそらしながら言うと顔の真横を電光石火のスピードで真っ黒な弾幕が通り過ぎて行った。
その弾幕はフランドールの部屋の壁へと直撃し、爆発した。その威力はその壁を破壊するほどの威力であり、今の一撃が顔面に直撃していたら死にはしないけど、ただじゃ済まなかったことは確かだ。
「何をしていたの? も、もしかして……え、えっ––」
「––血を! 血を吸わせてもらっていたんだ!」
俺はルーミアの言葉を阻み、それ以上は言わせねぇよとばかりに発言した。
今の俺たちの行為はいたって健全な行為をしていたんだ。そんな破廉恥な行為は断じてしていない。はたから見たら破廉恥に見えるこの状況だが、俺は自信をもって破廉恥な行為なんかしていないと断言する!
飽くまで俺はフランドールの血を吸っていただけだ。吸血行為だ。吸血鬼としては正しい行為だ、健全だ!
「本当にぃ…………?」
「本当だよ! それと、師匠はなんでさっきからそっぽを向いているんだ!」
「と、尊い……。幼い黒葉と見た目幼い妹様の行為……尊い」
「だから、ちげぇって言ってんだろうがよ! ってか、師匠はそういう癖なのか!?」
し、知らなかった。師匠にそんな癖があったなんて。
だが、本来は師匠にこの光景がばれた瞬間に殺されるはずだったんだ。だけど、俺の事を殺さずに師匠は尊さによって悶えている。このまま勘違いしてもらっていた方が俺の身の為なのか? ……いや、ダメだろ!
あぶねぇ……一瞬この状況を受け入れかけていた。
「本当にそんな変なことはしていないんだ。ただ、フランドールの力が暴走しそうになっていて……そんな時になんか頭の中に声が聞こえて来たんだ。喰らえって。だけど、本当にフランドールの事を食べるわけにはいかないから血を吸っていたんだ!」
「…………嘘はついていなさそうだね。でも、その声って何?」
「……わからない。だけど、大事な何かなのは確かだ」
「声……そうか……そういうことね」
どうやら俺の言ったことは信じてもらえたようだ。
だが、師匠の意味深な発言はどういうことだろうか。ずっとぶつぶつとつぶやいている。
すると突然ハッと我を取り戻して弾かれるようにこっちへと向き直ると師匠は一瞬でフランドールの真横に移動してフランドールの様子を見る。
「黒葉、妹様の能力が暴走しそうになったって本当?」
「えぇ、まぁ……ですが、今は落ち着いてるみたいですよ」
「……これもイーターの力かしら」
「イーター?」
「いえ、何でもないわ。ありがとう黒葉」
よくわからないけど、どうやらルーミアの誤解は解けたようだ。
後日、冷静さを取り戻したフランドールに全てを話して誤解を解いた。
なんだか戦いよりも疲労が大きいような気がする。主に精神的疲労が……。
はい!第48話終了
いいですか? 二人は一切いかがわしい行為なんかしていません。飽くまでも血を吸っていただけです。
至って健全な行為なんです!!
それにしても吸血鬼が吸血鬼から血を吸うなんて妙ですよね。
ルーミアも言っていましたが、エネルギー源にならないものはあまりおいしく感じないそうです。ただ、それは黒葉も同じです。なんていったって吸血鬼、エネルギー源は人間の血液なのですから。
咲夜は今までもお嬢様ラブではありましたが、黒葉とフランの乱れた姿を見て新たな扉を開いてしまったようです。
黒葉! なんてことをしてくれたんだ!(歓喜)
それでは!
さようなら