それでは前回のあらすじ
目を覚ました黒葉。
カーテンを開けようとすると、突然目が焼け、吸血鬼になってしまったことを悟る。
そしてレミリアに姉だと思って接してと言われるのだった。
それではどうぞ!
side黒葉
「だって、お姉ちゃんが恋しいんでしょ? なら、私をお姉ちゃんだと思っても――」
「は?」
「……その『は?』は私にクリティカルヒットするからやめて」
本当にこの人は分からない人だ。見ず知らずの俺を助けたし、その上自分のことを姉だと思えと言ってくる。
変人以外の何物でもない。
「まぁ、治療してくれたのは感謝している」
眼球の痛み以外は特に異常はない。
今すぐにでもフルマラソンをしろと言われても出来そうなくらいに体の調子はいい。
「それじゃあ、安静にしててね。咲夜はお茶をお願いしてもいいかしら」
「かしこまりました」
そこでレミリアと咲夜は部屋を出ていった。
出ていくなら今がチャンスだ。
部屋を見渡してみると、端っこの方に俺の刀が置いてある。あれを持っていけば護身くらいはできるだろう。
里では俺は最弱と言われていたが、吸血鬼になったのならば話は別だ。
今までにないほどに力が湧いてくる。最高の気分だ。今ならばどんな敵が出てきても倒せそうな気がする。
そう考えると俺は刀を手に取り、服のフードを深々と被ると窓から飛び出した。
やはり日光が出ている昼間はかなり吸血鬼にとって辛い環境のようだ。
先程のように焼かれることは無いものの、どんどんと力が奪われて言っているような感じがする。
このまま太陽に当てられ続けていたら確実に俺は倒れてしまう。
そう考えて紅魔館の敷地から出て森の方へと向かおうとしたその時、背後に人の気配がした。
「……気づくのが早いな」
「私はお嬢様に黒葉様の監視も指示されていますので、そう簡単に逃げられては困るんですよ」
この銀髪メイド、十六夜咲夜はとても勘がいいらしい。
このまま黙って俺の事を逃がしてくれることは無いと見える。
見たところ、咲夜は勘がいいだけの普通の人間のメイドだ。
悔しいが、吸血鬼になったことによって血の臭いが良く感じられるようになって、咲夜からは人間の血の臭いがする。
やれるか?
「はぁぁぁぁっ!」
俺は刀を振り向きざまに振って攻撃を仕掛けようとした。
が、その時にはその場所には咲夜は存在していなかった。
「ど、どこだ」
「遅いですよ。そんなんで本当に妖怪に勝てると思っているんですか?」
再び声が聞こえたのは背後。
つまり、俺が刀を振るのと同時に回り込んだということになる。
咲夜、この人は普通の人間じゃないようだ。どうやら戦い慣れしている。
なにか戦闘訓練でもしていたのか? それにしては動きが早すぎる。まるで瞬間移動をしたかのような動きだった。
そうか、そういう事か。じゃあ、今の俺でも勝つことは絶望的って言うわけだ。
ちょっと吸血鬼補正で身体能力が上がった程度では
「咲夜、あんた能力持ちか」
「はい。なので、どこに逃げようともずっとついて行きます。そして必ずこの紅魔館に連れ帰ってきますよ」
あぁ、ダメだ。この人がいる限り俺は逃げることは叶わないんだろう。
なんて強敵を俺の監視に付けているんだ。
「降参だ」
「ありがとうございます」
ここは降参するしかない。だが、いつか必ず俺はこの館の奴らを全員殺して妖怪を殲滅する旅に出る。
そのためにはここにいる人たちを倒せるほどの実力をつけないといけない。
「なぁ、咲夜」
「なんですか?」
「俺に修行をつけてくれ」
その俺の言葉に咲夜は余程驚いたのか、驚いた表情で固まってしまっていた。
今なら倒せそう、そう考えたのだが、無理だ。今の俺じゃ、この状態の咲夜にも指一本触れることが出来る気がしなかった。
「いずれ殺す相手に修行をつけてくれと頼み込むとは……そして私に将来私自身を殺す男に修行をつけろと?」
「そうだ」
「あまりにもそれは無理があるのでは?」
まぁ、最初から断られるの覚悟で頼んだことだ。別に期待などしていない。
それに、修行なら今まで通りに一人でもできる。
俺は能力を持たないが、能力がなくても妖怪を殲滅させることが出来るということを証明してみせる。
「はぁ、しょうがないですね」
「え?」
「私の仕事を手伝ってくれるなら、その合間にでも修行を付けてあげますよ」
「いいのか?」
「はい、それに、あなたはお嬢様にも鍛えるように言われてますから」
レミリアが?
どうして俺を鍛えるように指示しているんだ。俺が強くなろうと強くならなかろうとレミリアには関係ないだろうに。
本当によく分からないやつだ。
だけど、修行をつけてくれるなら、そんなに都合のいい状況は他にない。
この館の奴らを全員殺せるほどの力を、この咲夜との修行で身につけてやる。
「張り切るのはいいですが、早速私の仕事を手伝っていただきますね。この館の窓拭きをお願いします」
「あ、あぁ」
咲夜はどこから取り出したのか、雑巾とバケツを俺に手渡してきた。
こうして俺はこの紅魔館で仕事をしながら修行をすることになった。
はい!第5話終了
ここから黒葉が修行を始めます。
果たして黒葉は紅魔館の面々に勝てるほどに強くなれるのでしょうか?
それでは!
さようなら