東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 黒葉を助けるために奔走する咲夜はついに黒葉が閉じ込められている施設にたどり着いた。

 しかし、そこは奇妙な場所で、さすがの咲夜も長居したくないと思い、急いで探す。

 そこには月刃や天音と言う女の子、そして咲夜でも勝てるか怪しいと思ってしまうほどの力を持っている大男がいた。

 果たして咲夜たちは無事に黒葉を連れて紅魔館へと帰ることができるのでしょうか?



 それではどうぞ!


第65話 メイドの嗜み

side黒葉

 

 目が見えない。タオルを巻かれているせいで外の状況がどうなっているのか、全く把握することができないが、それでも今、聞きなれた声が聞こえて来た。

 確かに一時間ごとに来る月刃の声も聞きなれてきてはいるが、それよりももっと親密な、今俺が一番欲していた存在が目の前に来たということが分かった。

 

「黒葉、助けに来たわ!」

「し、師匠!」

 

 師匠が俺を助けに来てくれたのだ。

 さっきの戦いを見る限り、師匠の純粋な力のみでは月刃に勝つことはできないし、月刃はとんでもない力の持ち主故、師匠の本気でも勝てるかどうか怪しいというのに、師匠は危険を冒してまで俺を助けに来てくれたのだ。

 その事実がものすごくうれしかった。

 

「暑っ」

 

 外の状況がよくわからないからどうして師匠が今暑がったのかが正確には把握できないが、おそらく師匠はこの部屋の気温が暑いと言ったのだろう。

 確かに今、この部屋は高温となってしまっている。俺の牢屋の床の熱と俺の体の炎の熱によってこの部屋の空気はすっかり熱されてしまっていた。

 炎を使っている俺は熱さを感じないが、おそらく普通の人間にとってはサウナ以上の暑さとなってしまっているに違いない。

 

「こ、黒葉、今助けるわ!」

「し、師匠! これ以上長居すると師匠の体が熱にやられてしまいます!」

「だ、大丈夫よこれくらい。妹様の暴走に比べれば優しいものだわ」

 

 確かにフランドールの暴走は怖いものがある。

 俺は実際にフランドールの暴走を見たことが無いからわからないが、師匠や姉貴の口ぶりからどれくらいヤバいものなのかと言うのは見当がついている。

 だけど、それと比べるのは違うというものだろう。

 人間の体は熱に弱い。それゆえ、暑いところに居続けたら脱水症状になって熱中症を引き起こしてしまう可能性がある。

 俺は師匠を制止した。だが、師匠の足は止まる気配が微塵もない。それどころかどんどんと近づいてきていた。

 

「黒葉、あなたは何も心配しなくていいわ。全部任せて頂戴」

 

 そういう師匠だが、この牢屋には鍵がかかっているはずだ。だから鍵が無いと俺を助け出すことはできないはずだのだが、師匠はこの牢屋の鍵を持っているのだろうか?

 いや、紅魔館からここまではかなりの距離があるはず。そして師匠は今、俺の目の前にいるということはあんまり探索する暇なくここまでたどり着いたのだろう。

 だとすると師匠がカギを持っていない可能性の方が高い。

 

「鍵ねぇ。でも、この程度の鍵は施錠のうちに入らないわ」

「え?」

 

 師匠が意味不明なことを言い始めた。

 するとなにやらカチャカチャと意味深な音が聞こえてき始めたことで俺の脳裏に嫌な予感がよぎってきた。そしてその予感は的中することとなった。

 なんとカチャンと何やら鍵が開いたと思わしき音がこの部屋の中に響き渡ってしまったのだ。

 俺はこの手がふさがれていなかったら手で頭を押さえていたことだろう。

 

「師匠、なんでピッキングなんてできるんですか」

「え? えー……メイドの嗜みよ」

 

 おかしい、このメイド長何かがぶっ飛んでいる。

 俺の師匠はここまで頭のネジは飛んでいなかったはずだが、どこでそのネジを落としてしまったんだ……。

 

「そ、そんなことよりも早く抜け出しましょ熱っ」

 

 再び熱がる師匠だが、次のはおそらくこの床に対しての事を言っているのだろう。

 なにせこの熱はすでに靴を貫通してしまうほどの熱さとなっているため、普通の人だったらこの上に立つことも厳しいことだろう。

 

 しかし、師匠は熱いと言いつつも徐々に徐々に俺に向かって歩いてきているのを感じる。

 師匠はそこまでして俺を助けようとしてくれているという事実に感動するも、俺を助けるにはあと手と足の枷を外す必要がある。

 上の方にある手の枷はいいが、下の方にある足の枷は床の熱によって高温になってしまっている。

 

「絶対に助ける。私は自分のミスは自分で取り返す!」

 

 どうやら師匠は俺が捕まったのは自分のミスだと思ってしまっているらしい。

 

「違う師匠! 俺が捕まったのは俺の責任だ! 決して師匠だけのミスじゃない!」

「いえ、私があそこで能力を取られなければまだ何とかなっていたかもしれない。だけど、私は敗北してしまった。そのせいで黒葉はこうなっている。すべては私のミスよ」

 

 意外なことに師匠はものすごく頑固だったようだ。自分のミスだと言い張って全く引く気配がない。

 そしてついに俺の目の前に師匠がやってくるとまずは俺の手の枷のカギを外して外してくれた。それによって俺は手が自由になったため、タオルを外すと久々の光に目がちかちかするが、俺の真横に師匠が居るのを確認できた。

 そして俺と目が合うと師匠はにこっと微笑んで次は俺の足の枷を外すためにしゃがむが、体勢を落とすと地面の熱気が近くなるため、師匠の体は床の熱気によって焼かれて行ってしまう。

 

「師匠……」

 

 師匠が頑張ってくれているのに俺だけ能力を発動してこのダメージを抑えるのはダメだと感じ、俺は能力の発動を止めてしまった。

 すると俺の膝に高温で焼かれる痛みが走った。

 ゲンの炎に焼かれていた時とは全く別の感覚で、こっちの方が痛くて辛い。温度的にはゲンの炎の方が熱いのだが、鉄板で焼かれている分、こっちの方がダメージがデカくなってしまっているのだ。

 

「く、うう」

 

 師匠も熱さに耐えながら俺の足枷のピッキングをしてくれている。

 そしてついに、ガチャンと音が聞こえ、足枷が完全に外れてくれた。

 

「はぁ、はぁ、終わったわよ」

「あ、ありがとうございます」

 

 俺と師匠は痛みと熱さによってふらっとよろめきながらもお互いがお互いを支えて何とかその場に立ち上がる。

 足が繋がれていてずっと正座しっぱなしだったから痺れたのとやけどでとんでもなく足が痛い。

 そして俺は師匠も同じようで、女性だというのにその足にやけどを負ってしまったようだ。これは帰ったらすぐに何とかしないと痕が残ってしまうだろう。

 

「早く帰りましょう」

「えぇ、そうね」

 

 そういうと俺たちはいっせいに牢屋から飛び出した




 はい!第65話終了

 ついに黒葉を助け出すことができました。

 そして二人は無事にこの包囲網を突破し、無事に紅魔館へと帰ることができるのでしょうか?

 ちなみに無事に帰ってしまっては第二章完となってしまいます。

 それでは!

 さようなら

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