それでは前回のあらすじ
ついに施設から脱出した黒葉達だったが、そんな黒葉達の目の前に謎の大男、天魔が現れる。
魔理沙のマスタースパークも効かず、おまけに黒葉は一撃でぶっ飛ばされてしまった。
果たしてみんなの運命は如何に!?
それではどうぞ
side三人称
「はぁはぁはぁ……」
森の中、ルーミア、フラン、咲夜の三人は黒葉が吹っ飛ばされて出来上がったクレーターを辿り、まるで逃げるように全力飛行をしていた。
いや、まるでではなく、実際に逃げているのだ。
先ほど魔理沙のマスタースパークをほぼ無傷で耐え、黒葉の攻撃をもろともせず逆にカウンターの一撃で黒葉を斬り伏せた天魔から三人は全力で逃げていた。
「あの化け物、黒葉をどれだけ飛ばしたのよ!」
「黒葉だってそんなに弱くないよね、咲夜」
「えぇ、確かに未だ成長途中と言うのはございますが、今の黒葉を弱いとはさすがの私でも言うことはできません。しかし、その黒葉を一撃で倒してしまったということはあの大男と黒葉の実力がそれほどに離れているということなのでしょう。私でも勝てるかどうか」
この場にいる三人は誰もが黒葉が一撃でやられてしまったという事実が信じられないようだが、これは現実に起きてしまったものだ。
黒葉と天魔の実力の差は圧倒的だ。本来ならば黒葉が天魔に向かっていくことなど烏滸がましいほどに実力差が開いており、そんな相手に黒葉の技が通用するわけもなかった。
そしてそれを見た三人は自分が代わりに戦ったとしても敗北する未来しか見えないため、全力で天魔から逃げていたのだ。
あれほどの一撃なのだから黒葉のダメージは深刻だろう。そのため、すぐに黒葉を見つけ出して治療をしないと助からない可能性が出てきてしまう。
咲夜はレミリアに黒葉を連れて帰ってくると約束したから黒葉を助けるため、レミリアとの約束を守るためにも絶対に黒葉を死なせるわけにはいかなかった。
そんな三人だが、もう一人メンバーに居たはずなのだが、そのもう一人がこの場に居ないのだ。
そのメンバーの名は霧雨魔理沙。ルーミア、フランと共に施設に突撃してきた彼女だが、この場に居なかった。
三人は魔理沙の事をもちろん気にはしているが、決して魔理沙を探しに行こうとはしなかった。なぜなら、魔理沙の勇気、そして覚悟を無駄にはしたくなかったからだ。
そう、この場に居ない魔理沙の行方はと言うと––
「魔理沙が時間を稼いでくれている今のうちに黒葉を見つけるわよ。魔理沙なら必ず追いついてくる。いつも紅魔館から本を盗んで逃亡しているのだから、それくらいはやれるはずよ」
「うん!」
「おー!」
時は遡り数分前、みんな黒葉が一撃でやられたことに驚愕し、動けなくなってしまっていた。ただ一人以外は。
「こ、黒葉が」
「い、一撃」
「っ! なんていう破壊力なの!?」
ルーミア、フラン、咲夜の三人は呆然としてしまっていた。
なにせゲンと戦えるまでに成長した黒葉なのだからもう少しは通用すると思っていたが、通用するどころか一撃で倒されてしまったのだからショックを受けてしまうのも無理はない。
黒葉に当てられた攻撃はただ大剣に雷を纏わせて振り下ろしただけの単純な攻撃だ。そこにあんまり霊力は込められてはいないし、全く持って本気の一撃と言う風貌じゃなかった。
「っ、やっぱりお前やべぇな」
「金髪、以前は取り逃がしたが、今回ばかりはそうもいかんぞ」
「お前に目を付けられると生きた心地がしないな。なんだ? お前も成長途中なのか? 前よりも威力が上がってるよな」
「修行は欠かさない」
「なるほどねぇ」
魔理沙は怖いと口にしながらもその表情は全く驚きにも恐怖にも染まっておらず、おちゃらけた雰囲気を纏いつつ天魔と対話をしていた。
だが、魔理沙からは確実に殺気が放たれており天魔の殺気とぶつかり合って殺気が増幅している。
魔理沙は黒葉をぶっ飛ばされたことによってものすごく怒っているのだ。なにせ、可愛い弟分である黒葉がぶっ飛ばされてしまったのだから。
「っ」
そしてそんな魔理沙の殺気を浴びて咲夜は正気に戻った。
咲夜も魔理沙と同じだった。大事な部下、そして弟子をぶっ飛ばされたことに怒りを覚えずにはいられず、咲夜も勝てるかどうかわからないという状況だったがナイフを構えて臨戦態勢に入った。
一触即発、そんな状態だったが、魔理沙がそこでとんでもないことを言い放った。
「咲夜、お前は引っ込んでいてくれ」
「え?」
「どういうつもりだ? お前ら二人だったら俺に傷くらいはつけられるかもしれんぞ?」
「何言ってんだおっさん。あんたごとき、私一人で十分だ。ってことで、黒葉が心配だ、咲夜頼んだぞ」
その魔理沙の言葉に咲夜は悩んだ。
咲夜は十分すぎるほどに魔理沙の実力を知っている。そのため、はっきりとわかるのだ。
魔理沙一人では絶対に天魔を倒すことなどできないと、だけどそんなことは魔理沙本人が一番わかっているはずなのだが、魔理沙はそのことを一切表情に出すことはなく、いつものお調子者の態度で咲夜に言って来た。
「な、なに言ってるの魔理沙!」
「そうだよ、魔理沙。私たちも戦った方が勝てる可能性が––」
「妹様、ルーミア、ここは魔理沙の言うとおりにしましょう」
「っ」
咲夜は暗い表情になりつつも、決心して二人にそう告げた。
魔理沙のあのお調子者の態度はどんな手を使ってでも自分たちを逃がし、そして黒葉の元へとたどり着かせようという決意の表れだということを感じ取った咲夜はそれ以上何も言うことができなくなってしまったのだ。
だけど、咲夜は魔理沙の強さを知っている。魔理沙のすばしっこさを知っている。だからこそ咲夜はそれにかけてみることにした。
「行きましょう。二人とも。魔理沙、あとは頼んだわよ。絶対に後から来るのよ」
「あぁ、約束するぜ」
「あなたの約束は信用できないわね」
「そりゃねぇぜ」
「あなたの約束は信用できないけど、あなたの強さは信頼しているから、だから絶対に後から来るのよ」
「……あぁ」
その会話を最後に咲夜はフランとルーミアを両脇に抱えて猛スピードで飛行を始めた。
それを見送った魔理沙は哀愁が漂う表情で微笑むと天魔へと視線を戻した。
何度見てもとんでもない威圧を放っているその存在は魔理沙を怯ませるには十分すぎるほどで、今もなお膝は震えてしまっているが、魔理沙は何とか膝を叩くことによって震えを止めて箒に跨り、ミニ八卦炉を構えて飛び上がった。
(あーあ、かっこつけちまったな。このまま私が倒れて追いかけることができなくなったら咲夜たち怒るだろうな。いや、怒る以前に私は死んでしまっているから怒られはしないか。なんて損な役回りなんだろうな。霊夢だったらこいつを倒せるんだろうけどな)
「でも、こんな最期も悪くはねぇか」
「覚悟は決まったか?」
「あぁ、十分すぎるほどに決まったさ。だけどな、私もそのままただでやられるわけじゃねぇ。私の最高の必殺技でお前に傷くらいは残してやるさ」
「面白い。受けて立とう」
魔理沙はミニ八卦炉を、天魔は大剣を構えてお互いに向き合った。
はい!第68話終了
咲夜たちは魔理沙にあとは任せて黒葉の元へと向かったんですね。
そしてここから魔理沙対天魔の戦いが始まるわけなんですが、この戦いの勝敗は神のみぞ知るということで次回からしばらくは三人称視点で咲夜たちを追っていくことになります。
果たして黒葉の運命は如何に!?
それでは!
さようなら