それでは前回のあらすじ
鍛冶街へとやってきた咲夜、フラン、黒葉の三人。
三人は黒葉の刀を探しにやってきたのだが、黒葉が指定した鍛冶屋は閑古鳥が鳴いていてあまりよさそうに見えないものだった。
咲夜はあまり気乗りしなかったが、フランがなんとか説得して入るとその理由が判明した。
鍛冶師は高齢のため、鍛冶仕事ができなくなってしまっていたのだ。
それにより、新しい刀を作れなくなってしまい、お客が来なくなってしまったのだ。
三人はここで刀を吟味する。
それではどうぞ!
side三人称
黒葉、咲夜、フランの三人は鍛冶屋でよさそうな刀を探していろいろとみていた。
黒葉が使いやすい刀はあまり長くない刀だ。
子供である黒葉の身長ではあまり長い刀だと扱いきれなくなってしまう。今まで使っていた吹雪も白愛があまり身長が高い方ではないというのもあり、黒葉が使っても支障ない長さだった。
だが、これから選ぶ刀は黒葉の身長も考えて選ばなければ使いにくい刀となってしまう。
(刀はあまりわからないけど、たぶんこれはどれもこれも一級品。でも、大半は大人用。刃渡りの長い刀ばかり。でも、これじゃ黒葉は扱えない。もう少し短い刀じゃなければ)
「うーん……ねぇ、おじさん」
「なんだ?」
「前に僕に作ってくれたような刀ってない?」
「あぁ、あれか。ちょっと待っていろ」
黒葉が剛志に言うと、剛志は少し考え込んだ後、店の裏の方に引っ込んでいってしまった。
黒葉が以前持っていた刀も剛志に打ってもらった刀で、その時のことを覚えていたから黒葉はダメもとで頼んでみたのだが、どうやらそれがビンゴだったようだ。
数分間待っていると再び剛志は三人の前に現れて一振りの刀をカウンターの上に置いた。
その刀は吹雪と同程度の長さで、重さもあまり重くない黒葉にはちょうどいい刀だった。
「済まんが、こういうのしかないんだ。わしはもう新しく打つことはできない。黒葉君に上げたあれはあれが世界で一振りだけの刀だった」
「では、これは?」
「わしの孫が昔使っていた刀でな。今はもう成長して違う刀を使っておるからこれを持ち出しても何も言われんだろうて」
「で、でもいいんですか?」
「あぁ、長い間放置しておったから刃こぼれはひどいがな。研げばまだ使えるだろうて」
そういって渡された刀を咲夜が受け取り、刀を鞘から抜いて刃の部分を触ってみると、かなり刃こぼれしてしまっているようで、咲夜の指は無傷に終わった。
かなり長期間放置されてしまっていたようで、一部に錆もできてしまっていた。
だが、多少だ。このくらいならば砥石でしっかりと研いであげれば普通に使える程度にはなるだろう。臨時で黒葉が使うには十分なほどの刀だ。
「それにしても黒葉君は頑張っておるな」
「うん、確かに僕には剣士としての才能はあまりないんだけどさ、諦めたくないんだよ。いつか自分の作った刀で戦うっていうのが夢で、何とか頑張ってはいるんだけど、なかなかうまくいかなくてさ。おじちゃんの作った刀には敵わないや」
「え、ちょっとまって黒葉って鍛冶師なの?」
「そうじゃな。白愛ちゃんと共に二人で鍛冶屋をやって生計を立てておったのじゃ。まぁ、二人でといっても主に刀を打っていたのは黒葉君じゃがな。白愛ちゃんは剣の腕はすごいのじゃが、いかんせん不器用でな。鍛冶なんてやらせた日には自分の手をあぶり、金づちで叩き始めるわい」
「あぁ~」
咲夜とフランの二人は初めて黒葉と白愛が鍛冶屋を営んでいたということを知ってびっくりしていた。
三人とも、黒葉が紅魔館に来る前は鍛冶屋を営んでいたということは全く知らなかったし、そんな様子を黒葉が見せたこともなかったため、全く気が付かなかったのだ。
ただ、黒葉が使っていた刀はすべて自分が打ったものではなく、この剛志が打ったものである。
自分の打った刀で戦ってみたいと思ってはいるものの、自分に合った刀をうまく打つことができず、やむなく黒葉は剛志に頼んで打ってもらっていたのである。
「でも、黒葉が鍛冶出来て、白愛様が鍛冶出来ないっていうのは解釈が一致していますね。黒葉は清掃をきれいにこなすことができますし、白愛様は一度料理を作っていただいた時にはこの世のものとは形容しがたいものがでてきましたから」
咲夜は遠い目をして思い出に浸った。
そう、これまで黒葉を咲夜は上司としてずっと見守っていたものの、教えた仕事はすぐにできるようになるし、掃除もホコリ一つ残さない。
だが、白愛は鍛冶がというよりかは剣術以外は何もできない。家事はもちろんのこと、勉強やほかのスポーツなどはからっきしである。かろうじて似ている剣道はできるが、それ以外はダメダメである。
ただ、剣術となれば天才レベルといっても過言ではない。
「あれ? 僕、咲夜さんの前で掃除したことありましたっけ?」
「あ、いえ、なんとなくそう思っただけですので気にしないでください」
黒葉にない記憶の話をしてしまったため、黒葉にいぶかしまれてしまったが、咲夜はとっさにごまかした。
あんまり黒葉にない記憶の話をして刺激しすぎて症状が悪化してしまったら大変なことになってしまうから咲夜は気を付けようと人知れず誓った。
「…………で、どうじゃ? その刀の握り心地は」
「あ、じゃあ、ちょっと持ってみます」
黒葉はそう言うと咲夜から刀を受け取って刀の柄をがっしりと握って構えた。
ただ、ちょっと吹雪よりも重たい刀であるため、今までとは少し感覚が違ってバランスを崩しかけたものの、すぐに構えなおしてバランスを調整した。
黒葉は剣士を目指しているだけあって鍛えているので、力はあるが、さすがに片腕でしか構えられないとなるとバランスを保つのが難しくなるのだ。
だが、構えなおしてバランスを調整すると黒葉は表情を明るくさせた。
「うん、結構握りやすい」
試しに刀を振ってみるとしっかりと片腕で振ることができているため、戦う分には問題はないようだった。
「それならよかった。お題はいらないよ。その刀はさびてるし、刃こぼれもひどい。それにおさがりじゃからな」
「うん、ありがとう」
「黒葉、妹様。私はついでにナイフも買っていきますので、先に白愛様とルーミアの二人の方へと向かっていていただけますか?」
「? 分かった。いこ、黒葉」
「え、は、はい」
フランは咲夜の言葉に少し状況を察したようで、状況をつかめていない黒葉を引っ張って鍛冶屋を後にした。
そんなフランと黒葉を見送ると咲夜は真剣な表情になって剛志へと向き直った。
「さて、もういいですよ」
「そうか、じゃあ、聞くが、あれはなんだ?」
咲夜が合図を出すと今までの雰囲気とはガラッと変わり少し威圧感を含んだ表情で剛志は咲夜へと問いかけた。
その雰囲気の変わりように咲夜は一瞬動揺してしまうが、すぐにいつもの調子に戻って冷静に話し始める。
「黒葉は記憶喪失になっているのです」
「なに、記憶喪失だと?」
「正確に言えば記憶退行といったところでしょうか? どうやら黒葉の記憶は8歳のころにまで戻ってしまっているようです」
「なるほど……」
剛志はさっきから黒葉の様子がおかしいと思っていたし、左腕がなくなっていることも気がかりに思っていた。
だが、空気を読み、そのことを突っ込むことは控えていたのだ。それを察して咲夜はナイフを買っていくという口実でフランと黒葉の二人を先に行かせて一人残ったのだ。
「状況は理解した。つまり、その記憶喪失をどうにかするためにここへやってきたということか」
「そういうことです」
「そうか……それなら今はおぬしらに黒葉君のことを頼むしかわしらにできることはなさそうじゃな。わしらが絡むと余計にややこしいことになってしまいそうじゃ」
「はい、私たちに任せていただければと思います」
「そうか。心強い言葉じゃな。さぁ、あの二人は先にいったのだろ? 後を追うといい」
「その前に」
「む?」
剛志が咲夜に黒葉とフランの後を追うように言うと咲夜はその前に商品のナイフを何本か手に取り、剛志に手渡して自身の財布を取り出した。
「お勘定お願いします」
「おぬし、本当に買っていくのか」
「えぇ、これで私はあの二人に嘘をついたわけではなくなるしね」
「なるほど、想像以上にしっかりとしたメイドさんじゃのう」
「完全で瀟洒なメイドですから」
そう言うと剛志と咲夜は共に小さく笑い、咲夜は黒葉とフランに言ったとおりにナイフを数本購入して二人の後を追っていった。
はい!第78話終了
今回でとりあえず黒葉たちのパートは終了で次回は鈴仙たちのパートに移ります。
多分鈴仙たちのパートの方が長くなるのかな? どうだろう。
そんなわけで、次回も楽しみにしていてください。
それでは!
さようなら