それでは前回のあらすじ
黒葉が前に持っていた刀の秘話が語られる。
そして黒葉の夢が鍛冶師として自分の打った刀で戦うというものだということが判明。
剛志から刀を受け取った黒葉はその刀に決め、フランと共に先に鈴仙とルーミアのもとへと向かっていく。
ただ一人残った咲夜は剛志に状況を説明する。
咲夜の心強い言葉に剛志は安心して咲夜に黒葉のことを任せる。
果たして黒葉の記憶を取り戻すことができるのだろうか?
それではどうぞ!
side三人称
黒葉、咲夜、フランの三人と別れた後、鈴仙とルーミアの二人は商店街の方へとやってきていた。
この街はかなり活気があって出店もたくさん出ていた。
確かにこの街は外界と切り離されているだけあってほかの人里とは違う独特の雰囲気があり、この街だけの食べ物とかもあるようだが、なんだかすでに鈴仙とルーミアはこの街の雰囲気を気に入っていた。
「鈴仙、鈴仙、あれも食べたい」
「あ、あのー……ちょっと手加減してもらえると助かるんですが」
「ダメ?」
目をウルウルとさせながら鈴仙のことを上目遣いで見るルーミアに鈴仙はなぜか罪悪感を抱いてしまう。本当はそんなもの抱く必要はないというのにだ。
鈴仙は優しいため、こういう目をされてしまったら弱いのだ。
財布を取り出して中身を見て悲しそうな表情をすると鈴仙は大事そうにお金を店員さんに手渡してルーミアが食べたいといっていたたこ焼きを購入するとルーミアに手渡した。
「ありがとう、鈴仙大好き!」
「んー、もう何でも買ってあげるよ」
さっきまで苦渋の決断をして買ってあげていた鈴仙だったが、ルーミアのその一言によって態度が急変し、ご機嫌にルーミアに料理を買ってあげるといってしまった。
優しすぎるが故の言動だったが、すぐに鈴仙は後悔してしまった。
(あぁ、今月は節約しないとなぁ……)
そんなことを考えながらとぼとぼとルーミアの隣を歩いているとルーミアは突然鈴仙の服の袖を引っ張った。
それによって鈴仙がルーミアの方を見るとルーミアが爪楊枝にたこ焼きをさして鈴仙の方へと向けてきていた。
「はい、あげる」
「え、いいんですか?」
「うん、鈴仙が買ってくれたものだし」
「る、ルーミア……っ」
もう鈴仙のハートはキュンキュンとしてしまっていた。
この短い時間で鈴仙はルーミアが食いしん坊だということに気が付いていたが、そんなルーミアがたこ焼きをくれるとは全く思っていなかった。
しかもあーんで食べさせてくれようとしている。
鈴仙はちょろかった。
「でも、いいんですか? 食べるの好きなんですよね?」
「うーん、好きっていうかさ、全くおなかが膨れないんだよね。たこ焼きはまだタコっていう生物的なものが入っているから少しは膨れるんだけど、私はまぁ、人食い妖怪っていうこともあってね、生物の血肉以外ではあまりおなかが膨れないんだ」
「そ、そうなんですか。難儀な体質ですね」
「でも、大丈夫だよ。私の近くには頼もしい人がいるからね」
「黒葉君の事ですか」
「うん、今はあんな状態だけどさ、今まで何度も助けてもらってきたからさ、今度は私が助けるんだ」
ルーミアのその力強い言葉に鈴仙は感動して言葉も出なくなってしまった。
自分よりも幼い子がこんなに強く生きて、目標のために頑張っているのに、さっきまで泣きわめいて文句をめちゃくちゃ言いまくっていた自分が突如として恥ずかしくなってきてしまったのだ。
だから鈴仙はそんな恥ずかしさを隠すためにルーミアの頭をなでて優しく声をかける。
「助けられるといいですね」
「うんっ!」
そんなやり取りをしながら町を歩いていろいろとみていると、暫く歩いた先で鈴仙は見たことがある人影を見つけ、この状態を見られたくないがために隠れようとしたものの、隠れる前に向こうに見つかってしまった。
「あれ? 鈴仙じゃん、こんなところで何してるの?」
「よ、妖夢、久しぶり」
鈴仙を見つけたことによって手を振りながら二人へと駆け寄ってきた少女は白髪で腰に刀を差している。
刀があるということで、見た目的にはこの街に混ざったとしても全く違和感がない。なにせ、この街の人々は鍛冶屋が有名というだけあってほとんどの人が刀を腰に差しているのだから。
「本当に久しぶりだね。元気だった?」
「う、うん、元気元気」
今すぐにでも鈴仙は逃げ出したい気分だったが、さすがに目の前の親友から脱兎のごとく逃げ出すなんてことはできず、ぎこちない返事をする。
鈴仙はこんな状況に巻き込まれてしまっているというのを知られたくなかったし、見られたくなかったのだ。
心の中で親友に対して『なんでここにいるのよあんたは!』と悪態をつくが、そんなことは知る由もなく、妖夢と呼ばれた少女は久しぶりに会えたことがうれしいのか、少し興奮気味に話を続ける。
「いっぱい話したいことがあったんだよね。本当に幽々子様ったらまた冷蔵庫の中身を全部食べちゃったんだよ! 本当に……幽々子様には困ったものだよ」
「へ、へぇ、それは大変だね」
普段の鈴仙だったら「でも、そんなことを言って、そんな幽々子さんのことが好きなんだよね~?」とかおちゃらけて返すのだが、今の鈴仙にそんな余裕はなく、やはりぎこちなく相槌を打つ。
そんな二人のやり取りを聞いてただ一人、蚊帳の外となってしまっているような気がして、ルーミアはほほを膨らませながら口をはさんだ。
「私もいるんだから二人だけで話すのはやめて!」
「わっ、……女の子?」
「あなた一体誰なのよ! いきなり着て鈴仙を奪おうなんていい度胸じゃない」
「そ、そんなつもりはないですよ! 私は魂魄妖夢、久しいぶりに鈴仙に会えてうれしくなっちゃって周りが見えなくなっちゃっていました。すみません」
「むぅ……まぁいいけど。私はルーミア」
「よろしくお願いします」
妖夢がようやく自分を輪に入れてくれたことでルーミアは機嫌を直し、二人は互いに名乗りあった。
そんな二人の横で鈴仙は肩を落としていたが、もう諦めて妖夢に問いかけた。
「妖夢はどうしてこの街に?」
「私からしたら鈴仙こそって感じだけど、私は普通に観光だよ。この街には刀もいっぱいあるしさ」
そこで鈴仙は納得した。
確かにこの街は鍛冶師がいっぱいいるということだから剣士の妖夢はこの街に来るのはぴったりといったところだろう。
刀を研ぎなおすにしてもプロの任せた方が確実だし、それに何よりこの街は独自の文化を築いていて外界と隔離されているからか落ち着く雰囲気だ。
羽を伸ばすにはぴったりだろう。
「幽々子さんはどうしたの?」
「幽々子様は紫様に任せてきたよ。まぁ、幽々子様がたまには休みなさいと言ってくれたから幽々子様も自分で何とかできる自信があるから私に休暇をくれたんだろうし」
「それもそうね」
妖夢が幽々子を放ってこんなところに来るはずがない。妖夢は幽々子ファーストだということは親友である鈴仙はよく知っていたので、少し疑問に思ったが妖夢の説明を聞いて納得した。
はい!第79話終了
ついに妖夢を出すことができました。
妖夢はずっとこの故郷編で出そうと思っていたキャラクターだったんですよね。
そして妖夢は結構今後も重要なキャラクターとなってくるので注目していただければと思います。
それでは!
さようなら