それでは前回のあらすじ
妖夢が盾を一刀両断し、盾の男を追いつめていく。
そしてついに妖夢は盾の男が繰り出した分厚い盾を一刀両断したことで盾の男を追いつめることに成功する。
盾の男は瀕死だった。そんな盾の男が突如としてとどめを刺されてしまった。
そのとどめを刺した男は分郷威迅という剣士の男だった。
戦いは終わり、盾の男に取られたバッグを持ち主に返すために来た道を戻ろうとしたその時、黒葉が目の前に現れた。
それではどうぞ!
side三人称
「黒葉、早かったね」
「うーん、そうですかね」
「結構時間が経ってるからあんまり早いという方じゃないような気がするけど……」
ルーミアと黒葉の言葉に対してフランが壁の陰から出てきて静かにツッコミを入れる。
そう、フランの言う通り、別に黒葉たちの用事が早く終わったというわけではない。どちらかと言えば、ルーミアたちの用事の方が長引いてしまっていたせいで、早く感じているだけなのだ。
「えっと、咲夜さんは?」
「咲夜なら少し遅れてくるらしいよ。なんかナイフ見てくるんだって」
「へ、へぇ……」
ルーミアは黒葉とフランと話しながら鈴仙の様子を横目でちらっと見てみる。
すると今にも鈴仙は白目をむいて気絶してしまいそうなほどの表情になっていることに気が付いてぎょっとした表情を浮かべた。
そこで一人だけ状況を全く理解できていない妖夢が口を開いた。
「えっと、知り合い?」
「ま、まぁそんな……感じ?」
妖夢の声を聴いてハッとなって正気に戻った鈴仙は慌ててこの状況をなんとか乗り越えようと頑張り始める。どうしてもこの状況を妖夢に知られたくはないのだ。
だが、もう手遅れであることをルーミアは気が付いており、往生際が悪い鈴仙を見てジト目を向けている。
「知り合いではなくて弟ですけどね。冬夏黒葉って言います」
「あ、私は本当に知り合いのフランドール・スカーレットね」
「え、鈴仙、弟居たっけ――むごぉっ!」
「ちょっとこっちに来て!」
さすがにもうだめだと判断したのか、鈴仙は慌てて妖夢の口を塞いで隅の方へと連れて行き、事情を説明していく。
「妖夢、実はさっき薬をこの人里に売りに来たっていうのは嘘なんだよ」
「え、そうなの? じゃあどうしてこの人里に?」
「実はあの黒髪の男の子が関係しているんだけどさ。あの子、記憶喪失になっちゃってるみたいなんだよね。正確には二年前くらいまで記憶が退行してしまっているみたい」
「それが今のこの状況を何が関係しているの?」
「えっと、それが……黒葉君は私のことをお姉ちゃんだと誤認しているみたいで……」
「え?」
「なんかとある人によると私とその黒葉君の姉である冬夏白愛さんは私に容姿が似ているみたいで……お姉ちゃんだと思われている……」
「な、なるほど」
鈴仙の説明はざっくりとしているもののため、妖夢は完全に状況を理解することはできなかったものの、ある程度理解することはできた。
それと同時にちょっと妖夢は悲しさと怒りを覚えてしまってほほを膨らませて鈴仙を睨みつける。
「よ、妖夢?」
「もう、大変な時は相談してよ。友達でしょ?」
「ご、ごめんね。次からはそうするよ」
「うん、よろしい」
妖夢は友達だというのに、大変な時に頼ってくれなかったことを悲しんで頼ってくれなかったことに怒りを覚えたのだ。
それは妖夢の優しさであり、友達想いだからこその感情であるため、鈴仙は妖夢が友達でよかったと心からそう思った。
「えっと、黒葉君だっけ? 私は魂魄妖夢です。白愛さんの友達なんだよね」
「お姉ちゃんの友達なんですね! 姉がいつもお世話になっています!」
「鈴仙、この子、すごくしっかりしてない?」
「うん、子供っぽい甘えん坊な部分はあるけど、たぶん私よりもずっとしっかりしているよ……」
黒葉の丁寧なあいさつに妖夢は驚いて鈴仙に耳打ちをし、それを聞いた鈴仙はがっくりと肩を落として落ち込んだ様子で妖夢に耳打ちし返した。
「それにしても、さっき威迅さんが走っていきましたが、何かあったんですか?」
「え? 知り合いなの?」
黒葉の言葉にルーミアは驚いたように言葉を漏らすと、黒葉は首肯して続けた。
「はい、まぁ、仲はあまり良くは無いんですが……」
「まぁ、あの性格ですしね」
妖夢の言葉に先ほど現れた分郷威迅という男のことを思い出すルーミアと鈴仙。
威迅は実に合理的な考え方を基本に行動しているようで、妖夢が死なない様に攻撃していた男を殺すのにも一切の躊躇がなかった。
二人にとっても威迅は性格的に合わなさそうだと思ったため、黒葉が威迅と仲が良くないというのは納得だった。
「仕方がないよ。私たちもあまりあの人は好きになれそうにないし」
「あ、もうあの人の戦闘スタイル見てしまった感じですか?」
「ちょっと容赦しない感じが怖いかなって」
「まぁ、確かに基本的に怖い人ですよね」
でも、と黒葉は続けると三人が予想もしなかった言葉が黒葉の口から飛び出してきた。
「でも、僕はわりかし好きですよ。あの人の事」
「「「え」」」
そんな黒葉の言葉を聞いて妖夢、鈴仙、ルーミアの三人は固まってしまい、ルーミアは特に黒葉の最近の方の性格を知っているため、更に驚きがすごかった。
この数日間、根本的な部分にある黒葉の優しさは八年前から変わっていなかったということをルーミアは気が付いていたため、あの性格の威迅を黒葉が好いているという事実に驚かざるを得なかった。
「一方的に嫌われているんですよね。多分、僕が弱いからです。あの人、結構ストイックですから、弱い人が基本的に嫌いなんですよ。それから甘い人もですね。ですので、あまり好きではないという人が多いと思います」
「じゃ、じゃあ、どうして黒葉はあいつのことが好きなの?」
「うーん、まぁ、どうやら暫くここに皆さん居るみたいなんで、そのうちわかりますよ。あの人がどういう人かっていうことが。外から来た皆さんなら多分先入観とか持たずにあの人を見ることができると思いますし」
威迅が向かって行った方向を見ながら言葉を紡ぐ黒葉。
だが、その黒葉の言葉の意味を誰も理解することができずに首を傾げてしまうのだった。
はい!第83話終了
ここから黒葉と威迅の関係性が徐々に明らかになっていきます。
初期構想では黒葉と威迅は犬猿の仲という感じで黒葉も威迅もお互いにお互いを嫌っているといった設定でしたが、設定を練り直してこうしました。
まぁ、最後の方の戦いで黒葉と威迅がお互いに嫌いあっているよりはこうした方が面白いと思ったからですね。
ちなみに威迅は黒葉のことを親の仇ほどに嫌っています。吸血鬼になる前はめちゃくちゃ弱かったですからね。
吸血鬼になった後でもこの作中ではめちゃくちゃ弱い判定なんですけどね。
それでは!
さようなら