それでは前回のあらすじ
妖夢についにこの人里へとやってきた理由がばれてしまった鈴仙。
すぐに相談しなかったことを妖夢に怒られてしまったものの、優しく次は相談してと言ってくれたことで妖夢が友達でよかったと思う。
そして黒葉の口から少し威迅のことが語られ、予想外なことに黒葉は威迅をわりかし好きだと答えたのだ。
黒葉は威迅のことを見ていたらみんなも分かるというのだが、みんなは全く理解できないのだった。
それではどうぞ!
side三人称
「本当にありがとうございます。何とお礼をしたらよいか……」
「いえいえ、当然のことをしたまでですから」
あの会話の後、鈴仙たちは黒葉とフランもつれて元の場所に戻ってきて女性にカバンを返していた。
鈴仙は軽く経緯は話したものの、盾の男を殺すことになってしまったということは一言も告げなかった。
理由は簡単で、誰だってそいつが悪いのだとしても殺したと聞いたらいい気分はしないからだ。だから鈴仙は配慮して取り返したということしか伝えなかった。
すると女性は鈴仙から受け取ったカバンを大切そうに抱え、何度も何度も鈴仙たちに頭を下げた。
鈴仙たちは目の前で人一人が死んでしまったことで気分が沈んではいたが、女性に礼を言われたことによって少しは気分が晴れた。
「へぇ、皆さんはひったくりをとらえるためにあそこにいたんですね。あそこはこの里の人でも滅多に入って行かない場所だったので、少し疑問だったんですよ」
「そうだね。でも、今回ばかりは疲れたよ……」
「妖夢が居て助かったよ。私たちだけだったら多分捕まえるのにまだ時間がかかってたから」
「うん、役に立てたならよかったよ」
黒葉の感心した声にルーミア、鈴仙、妖夢の三人は返した。
女性からお礼を言われ、黒葉からは感心され、本当なら喜ばしいことだったのだが、それでも先ほどのことが頭から離れず、三人は浮かない表情をしていた。
この幻想郷では人が死ぬというのは珍しいことではない。それも、戦って死ぬというのはよくあることだ。
だから、本来ならば今回の件も相手が悪かったのだし、気に病む必要はなかったのだが、自分たちの意思に反して目の前で殺されてしまったため、あまりいい気分ではないのだ。
「そういえば、咲夜さんは?」
「咲夜なら鍛冶屋でナイフを見てから行くから先に行っててって言ってたから黒葉と二人で来たんだよね」
「そうなんですか。まぁ、咲夜さんからは強い霊力を感じますし、心配はいらないですね」
咲夜は強い、だから基本的には心配はいらないのだが、それでもこの人里に着いた時にはすでに吸血鬼が日傘をささずとも燃える心配がないほどに日が沈んでしまっていたため、すでに結構夜が更けていたりする。
町中はかなり暗くなっており、人里に着いた時にはまだあった人通りもほとんどなくなってしまっていた。
そろそろ一晩を明かすために泊まるところを探さなければいけない時間帯。
そんな時間だからもしかしたら闇夜にまぎれた危ない人もいるかもしれないし、宿も取らないといけないので、そろそろ咲夜とも合流したいところではある。
そんなとき、目の前から女性が歩いてくる姿が見えた。
「みなさん、お待たせしてすみません」
「あ、咲夜だ」
目の前から歩いてきた女性は今まさに合流したいと思っていた十六夜咲夜その人だった。
咲夜は手に袋を下げ、その中にはケース入りのナイフが何本も入っていた。
フランは咲夜が残ると言った時、何か他の用事があるのだと感じ取っていたため、本当にナイフを買ってきたということを知って少し驚いていた。
これは咲夜と長年一緒にいるフランだからこそ気が付いた違和感であって、ほかの人だったら絶対に気が付かない咲夜の態度だった。
「そろそろ、夜も遅いですし、宿を取ろうと思っていたところだったのでちょうどよかったです」
「そうですか。なら、よかったです」
「ん? 宿?」
そこで黒葉が頭に疑問符を浮かべたような表情をして爆弾発言を投げかけた。
「宿なら取らなくても僕の家に招待しますよ。ね、お姉ちゃん」
「「~~っ!!??」」
「え、えーっと……」
ルーミアとフランは黒葉のその言葉に顔を赤らめて声にならない声を漏らし、鈴仙は黒葉に問いかけられてどう答えたものか困ってしまっていた。
そしてもう一人、この場に困っている人物がいる。
(困ったわね。お嬢様が白愛様のお墓を黒葉の家の横に建てたって言っていた。今帰ってしまうと白愛様が本当は死んでいるということを思い出してしまいかねない。そんな強制的な記憶の思い出し方では人格に影響を与えてしまう可能性がある)
今この場で黒葉の家の横に墓があるということを知っている人物は咲夜しかいない。どうにかして黒葉の家に招かれるということは阻止したいと考えている咲夜だが、フォローしてくれる人もいないし、ここで黒葉の誘いを断り、黒葉も同様に宿に泊まらせるというのは少々不自然さが残ってしまう。
普段は完ぺきにこういう場を乗り切ってしまう咲夜だが、今回ばかりはどう言いくるめたものか困り果てていた。
今この場で小声で説明して回ろうかと、咲夜がそう思っていた時だった。
「あれ、黒葉君?」
「ん? あ、茉衣さん」
突如として黒葉に声がかけられたことで、この場にいる人は一斉にその声が聞こえてきた方へと目を向ける。
そこには和服を着て木の葉をかたどったヘアゴムでツインテールにまとめている黒葉と同年代くらいの少女がそこにいた。
顔がとても整っており、この場にいる誰の目から見ても美少女だと思うような少女がそこにいた。
「黒葉君、黒葉君だよね!」
「う、うん、そうだけど」
ものすごく興奮気味に駆け寄った少女に少し引き気味になってしまっている黒葉。
二人とも知り合いであるということは全員が気が付いているが、なんだか二人の間にものすごく温度差があるような気がしていた。
「久しぶり! 本当に今までどこに行っていたのよ!」
「えっと……僕も何が何やら……というか、久しぶりって言っても一週間程度だと思うんだけど」
「半年よ! 半年!」
「半年!?」
そう、黒葉が襲撃に巻き込まれ、レミリアに吸血鬼にされてこの人里を去ってからいろいろあり、かなり短い期間の様に感じられるが実は半年もの月日が経ってしまっていた。
紅魔館に居た頃の人格の黒葉なら半年も離れてしまっていたということは分かっていたが、今の黒葉は記憶喪失dえ8歳ごろまで記憶が退行してしまっているため、ある日突然目が覚めたら病院のベッドに居て、それから数日かけてこの人里へと歩いてきたということになる。
そのため、黒葉にとっては一週間程度しかたっていないような気分なのだ。
だから久しぶりに会えたという少女とそこまで久しぶりではないという黒葉の間に温度差が生じてしまっていたのだ。
「えっと、その子はだれなの?」
ルーミアがみんなの気になっていたことを代表して聞くと、黒葉は思い出したように慌てて少女のことを紹介し始める。
「あ、紹介します。僕の幼馴染の
「初めまして。ところで皆さんは――」
黒葉の紹介に合わせて茉衣は挨拶をしてぺこりと頭を下げた。
そして今度はみんなのことを茉衣は聞いてくるのかと、そう思ったのだが、その次に茉衣の口から飛び出てきたセリフを聞いて全員の背筋が凍った。
「黒葉君とどういう関係……ですか?」
黒葉には見えないような角度から光の無いぼーっとした瞳でみんなのことを見つめる茉衣。
とても圧がすごく、実力者である咲夜や妖夢でさえ死の危険を感じ取った。
はい!第84話終了
多分これでこの第二章で主要人物となるメンバーはすべて出終わりましたかね。
これから話を考えるうえで増えるかもしれませんが。
あと、一章に登場してまだ二章に登場していない主要人物っていうのも存在しますよ。
天音のあの後とか妖夢の技についてもまだ触れられていないので、近いうちに触れられればいいなと思っています。
それでは!
さようなら