それでは前回のあらすじ
掃除中にレミリアが黒葉の元へと訪れ、雑談をする中で黒葉ばレミリアに吸血鬼としての戦い方を教えてくれと願う。
だが、そこでレミリアは自分を姉だと呼ぶならばという条件をつけた。
その事に黒葉は渋々であるが、メリットとデメリットを天秤にかけた結果、その条件を呑んだ方がいいという考えに至り、黒葉に姉が増えた。
それではどうぞ!
side黒葉
「ふぅ……」
何とか今日は時間以内に掃除を終えて時間を残すことが出来た。だけど、あんまり時間が無い。
もっと早く仕事をこなすことができるようにならないと満足に修行の時間をとってもらうことは難しいだろう。
「正直驚きました」
「え?」
突然背後に咲夜が出現した。
後ろには誰もいなかったはずのに急に現れたのだ。これが咲夜の能力なのか。
「この紅魔館はとても広いと思います。なので、掃除はとても大変だと思います。この掃除を終わらせる速度をあげるにはかなり努力が必要となります。昨日の今日で与えられた区域の掃除を時間以内に済ますことが出来るとは思っていませんでした」
確かに、昨日は館全体の窓拭きをしていたから、この館がものすごく広いというのは身をもって知っている。
今日任されたのは館全ての窓拭きよりは少ないかもしれないけど、それでもかなりの部屋数を掃除することになったから結構な量だった。
昔の俺だったら体力が足りなくなってしまっていただろう。これも吸血鬼になった効果というやつなのか?
「あ、そういえばあなたは吸血鬼になったんでしたね。雰囲気があまりにも人間でしたので忘れかけていました」
「まぁ、人間の時期が長いですから」
11年ほど人間の月日があって、昨日今日の吸血鬼生活じゃ、人間の雰囲気が抜けることは無いだろう。
「今日は修行お願いしてもいいですか?」
「えぇ、大丈夫よ。私もやるべき事はおわってるから、夕飯の時間まで特訓をしましょう」
咲夜がそう言い終わると、突然俺の視界が切り替わった。
ここは館の前、庭のようだ。一瞬にして館内からこの外の庭まで移動してきたようだ。
これも咲夜の能力だって言うのか?
瞬間移動? いや、そんな簡単な話ではないような気がする。
「それでは修行を始めます」
「は、はい! お願いします」
咲夜が宣言すると俺は挨拶して自分の刀を取りだした。
鞘から抜くと、その切っ先を咲夜へと向ける。
対する咲夜は足に着けているナイフホルダーから数本のナイフを取り出して構えた。
咲夜の武器はナイフのようだ。
「どこからでもどうぞ」
「行くぞ! 先手必勝!」
俺のは不完全だけど、姉ちゃん直伝の技を見せてやる。
刀を逆手に持つと、技の構えを取った。
「吹雪っ!」
俺はダッシュして咲夜に近づくと、刀を思いっきり振った。だが、既にそこには咲夜はいなかった。
それだけじゃない。
「ぐあっ」
突然、足に激痛が走った。
恐る恐る見てみると、そこには咲夜のナイフがガッツリと突き刺さっていた。
「が、ぐああぁぁ」
「……あなたの動きは単調なのよ」
俺の足からナイフを引き抜くと、冷静に包帯をどこからともなく取り出して俺の足に巻いた。
応急処置をしてくれたようだ。
だが、一切何をされたのか分からなかった。一つ分かったのは咲夜には絶対に敵わないということだけだ。
「いい? あなたの動きは単調すぎて読めてしまう。だからこそこうして攻撃を回避されてカウンターされてしまう。もうちょっと頭を使うことよ」
「頭を?」
どうにかして咲夜に攻撃を当てるために頭を使わなければいけない。
「特に私は相手の行動を読む能力に長けている。それに、能力のおかげで回避しやすくなっている。そんな攻撃じゃ私に何年かけても攻撃することは出来ないわよ」
動きが単調になってしまっている。それは姉ちゃんにも言われたことがある事だ。だけど、どれだけ頑張ったとしても全く改善することは出来なかった俺の一番の課題。
今度こそはこの殻を破らなければいけない。
観察しろ。相手の動きをよく観察し、どういう攻撃を仕掛けられたら対処しにくくなるか考えるんだ。
「はぁっ!」
「だから、単調な攻撃は――っ!」
俺は咲夜の目の前で横に跳び、背後に回り込んで斬りあげる。
だが、その瞬間には目の前からは咲夜が消えていた。
一見、さっきと同じように見えるものの、さっきと違うのは反撃をされなかったところだ。
今度は咲夜は飛び退くだけで反撃はしかけてこなかった。
「考えましたね。ですが、想定の範囲内です」
「やっぱりダメか」
「……そうだ」
するとどこからともなく咲夜は巨大な岩を持ってきた。
かなり巨大な岩で、持ってくるだけで大変そうな岩だ。というか、こんな大きさの岩は見たことがない。俺の背丈はありそうな程の大岩だ。
「咲夜、これをどこから?」
「館の裏手にいっぱい岩があったので、その一つをお持ちしました」
こんな岩がいっぱいあってたまるかというツッコミはさておいて、この岩を何に使うんだろうか。
「この岩を斬ってください」
「は?」
「目の前であなたの太刀筋を見てみて分かったのですが、太刀筋からなっていないような気がしましたので、この岩を斬って練習してください」
……刀で岩って斬れるのか?
少し困惑してしまったものの、一応トライしてみようと考えて刀を構えた。
刀は横からの力に弱い。そのため、真っ直ぐ岩に振り下ろさないと直ぐに折れてしまうだろう。
集中だ。
「はぁっ!」
俺は勢いよく岩に刀を振り下ろした。
その振り下ろした刀は当然のごとく弾き返されてしまった。全く刃が通る気がしない。
本当にこの岩って斬ることが出来るのか?
「岩って本当に斬れるのか?」
「もちろん」
そう言うと咲夜はナイフを縦に振った。その瞬間、固くて刃が全く通る気がしなかったあの岩が一刀両断されていた。
その光景を見て唖然としてしまった。
「これ位はメイドの嗜みです」
「……メイドの敷居って高いんだな」
これからしばらくの目標はこの岩を斬ることになりそうです。
はい!第9話終了
今回は咲夜との特訓の話でした。
剣士で岩を斬る修行っていうのはよくある定番ですよね。
そして次回はレミリアと吸血鬼としての修行です。
それでは!
さようなら