それでは前回のあらすじ
ついに始まった黒葉と妖夢の修行。
まずは黒葉の実力を見るために摸擬戦を行うこととなったが、結果はやはり妖夢の圧勝となった。
しかし、黒葉は妖夢の攻撃に反応することができていたため、素質があると妖夢に褒められる。
褒められなれていない黒葉は照れてしまうのだった。
それではどうぞ!
side三人称
「まず、霊力の使い方を覚えてもらうことになります。いいですか?」
「はい、でも、僕は霊力の扱いが苦手で……」
この霊力の特訓はレミリアとすでに何度も行っており、本来の黒葉ならば下手ではあるがある程度の霊力操作ができるようになっているのだが、記憶を失っているため、ここから修行をやり直さなければいけない。
「黒葉君は以前修行したことはあるの?」
「はい、お姉ちゃんと特訓したことはあります。ですが、一向に霊力操作がうまくならなくて……寺子屋の実技でも一回も霊力操作を成功させたことがないんです」
それを聞いた妖夢はちらっと鈴仙の方を見る。
どうやら本当なのか聞いているようなのだが、鈴仙は関係者ではあるが、最近このメンバーに加わったばかりで白愛のことも知らないから知る由もないのである。
そんな鈴仙は助けを求めるように咲夜へと視線を飛ばした。
「白愛様は人に教えることを大の苦手としていました。そして霊力操作だけで言えば凡人程度だったかと記憶しています」
「なるほど……だから全然上達できなかったのかもしれませんね」
妖夢は一人で納得すると黒葉に向き直った。
「それじゃ、霊力の特訓をしますよ」
「はい、よろしくお願いします!」
「良い返事ですね。ではまず、体の内にある霊力を感じ取ることはできますか?」
「えっと……はい!」
黒葉は自分の中にある霊力を感じ取ることはできる。だが、操ることはできないという状態なのだ。
レミリアとの特訓で霊力を操れるようになるまででも結構時間がかかってしまっていた。
レミリアは霊力操作のプロフェッショナル。妖夢よりも霊力操作が上手い相手に教わっていて普通に下手レベルになるまでに苦労したため、今回はどれほど時間がかかるのかと咲夜は覚悟していると、妖夢は突然黒葉の胸に手を当てた。
「ここに意識を集中してください」
「え、胸に?」
「いえ、心臓にです。心臓に意識を集中してください」
意味が分からなかったものの、黒葉は言われたとおりに心臓に意識を集中してみることにした。
「え?」
黒葉は驚きと困惑が混じったような声を漏らしてしまった。
なぜなら、心臓に意識を集中してみた結果、今までよりもはっきりと自分の霊力を感じ取ることができるようになり、軽くではあるが、どうしたらこの霊力を動かせるのかというのを理解することができたからだ。
今までどんなやり方でもできなかった霊力操作が、今ならばできそうな気がして黒葉は手のひらに霊力を集めて霊力の球を作って見せる。
だが、その球は一瞬で蒸散してしまった。
弾幕を維持するためにはかなりの霊力操作技術が必要になるため、まだそれはできないようだ。
しかし、そんなことよりも黒葉は自分があっさりと霊力操作ができるようになったことに驚いた。
「どうですか?」
「驚きました……まさかこんなに簡単に……」
「昔、私のおじいちゃんが教えてくれたんです。霊力は心臓に宿る。人は無意識に心臓から霊力を引き出して使っているが、それを意識して引き出すことができるようになればそれはとんでもない力になるって。そしてこの特訓方法も教えてくれたんです」
(驚いた。まさかこんなにすぐに霊力操作が以前と同じ、いやそれ以上にできるようになるなんて。もしかしたら体がその使い方を覚えているからというのもあるのかもしれないけど、それにしてもあの技術。あれがあるからこそ黒葉は以前以上に霊力操作ができるようになったといっても過言ではない。妖夢のおじい様って一体なにもの?)
妖夢から教えてもらった方法で霊力操作をすれば前以上に霊力をうまく操ることができるようになる。そのことに喜ぶ黒葉と困惑しつつ妖夢の祖父に興味を持つ咲夜。
フランとルーミアは以前の黒葉の修行風景をあまり見たことがないため、状況をあまり理解はしていないが、それでも黒葉が喜んでいる姿を見てにこにこしている。
「多分霊力をうまく操れないっていう人はやり方があっていないんだと思います。才能によっては強引に体の中にある霊力を動かすことができるっていう人もいるみたいですが、そんなんで自分の中にある霊力を感じ取ることができるっていう人は多くはありません。私もおじいちゃんに教えてもらうまでは霊力操作ができない側に居ましたから。でも、この方法を教えてもらってからはぐんぐんと霊力操作が上手くなっていきましたから、黒葉君もこれで霊力操作を練習したらもっと上手くなることができますよ」
「はい! 頑張ります!」
それから黒葉と妖夢の特訓が始まった。
妖夢に時々教えてもらいながら体のあちこちに霊力を流し込むという特訓。この動作をスムーズに行うことができればできるほど戦闘では有利になる。
特に霊力操作のスピードで勝敗が決まるという場面もいくらでもあるため、この特訓は非常に大切なものとなっている。
見ているみんなもこの特訓は一緒にできるため、みんなで霊力操作をしていく。
特に咲夜は以前、月刃に負けてからずっと強くならなくてはならないと焦っているため、強くなるための手段ならいくらでも行うつもりでいる。
そしてルーミアやフランもそれは同じ。
フランは能力のおかげでゲンとの闘いでもそこそこ活躍することができたが、ルーミアは黒葉やフランを闇で覆っていただけでほとんど守られてばかりだった。
せめて自分の身は自分で守れる程度には強くなりたいとフランとルーミアは霊力の代わりに妖力操作の特訓をする。
「そういえば妖夢、昨日使ってた剣技は何?」
「ん? あ、双剣の事ですか?」
ふとルーミアは思い出して妖夢に質問をする。
ルーミアにとってはこれが一番聞きたいことだった。なにせ、これで黒葉の剣術がもっとすごいものになって強くなれるかもしれないんだから。
黒葉は強くなりたいと願っている。強い技を覚えられるとしたら願ったりかなったりだ。
「え、双剣を使えるんですか!?」
双剣という単語を聞いて茉衣は食いついて目をキラキラさせ、妖夢へと急接近する。
その様子に少しぎょっとしてしまった妖夢。
「えっと……はい、使えますよ」
「へぇ、すごいです! 私も少しは使えるんですけど、どうにもいまいちうまくいかなくて……」
「まぁ、ちょっとコツはいりますからね」
「あの……双剣とはいったい?」
「確か霊力の操作技術で霊力斬と斬撃を同時に繰り出して疑似的に二連同時攻撃を可能とする剣術でしたよね」
茉衣は少し興奮気味に双剣について語るが、いまいちどういう技なのか理解できていないルーミアが質問をすると、なんと予想外なことに黒葉の方から答えが返ってきた。
「正確には違いますけど、概ね正解です。霊力を剣にまとわせて霊力斬のようなものを使うというのは正解ですが、作り出すのは斬撃ではなく剣そのもの。霊力で作り出した剣と実物の剣を重ね合わせて相手を斬りつける。それをすることによって霊力の剣と実物の剣の斬撃が同時に入るというものですね」
「黒葉、知ってたの?」
「はい、ちょっとだけ。でも、僕は霊力操作が本当に苦手で、霊力操作が僕よりも上手い茉衣さんですら完ぺきに成功させることができないのに、霊力斬ですらままならない僕じゃ使えないと思って諦めていましたね」
そう、黒葉は双剣の存在は知っていたし、双剣を使えるようになれば今よりももっと強くなれると分かってはいたものの、昔の黒葉は霊力斬もまともに使えないほどの霊力操作技術しかなかったため、ほぼほぼ双剣は使えないと諦めていたため、話題にすら出すことはなかったのだ。
同時に考えるのもやめていた。考えても辛いだけなのだから。
(でも、今なら、妖夢さんに教えてもらったこの霊力操作があれば、いけるかもしれない)
「妖夢さん! 僕に、双剣を教えてください!」
「うん、もともとこれも教えるつもりだったので教えますよ!」
「私も教えてほしいです!」
こうして黒葉と茉衣の双剣特訓が始まった。
はい!第91話終了
咲夜が1人目の師匠、レミリアが2人目の師匠だとしたら、妖夢は3人目の師匠ですね。
本格的に特訓をするのはこの第2章で終わりになると思います。
3章4章は修行する暇がないほどの戦いが待っていますから。
そしてついに出てきました双剣。
二振りの剣を使うということではなく、一振りの剣で二つの斬撃を繰り出すという技でした。
双剣が初めて出てきてから少し期間が空きましたね。
ですが、この双剣は特訓すれば才能がなくても使うことができるようにはなる技なので、黒葉が使えるかは特訓次第といったところでしょうか。
ちなみに茉衣は双剣を不完全な状態で使えるとのことでしたが、兄である威迅はどうなのでしょうか?
それでは!
さようなら