【3章投稿中】東方妖滅録   作:ミズヤ

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 はい!どうもみなさん!ミズヤです



 それでは前回のあらすじ

 砥石を買いに鍛冶街へとやってきた黒葉、咲夜、妖夢の三人。

 いつも通りに剛志の店へとやってきた三人は物色するのだが、剛志はどうやら妖夢に興味を示し、じっと視線を向ける。

 そんな視線を不思議に思いながらも三人は買い物を終え、店を後にする。

 剛志は三人を見送ると後ろにある扉の先へと声をかけた。



 それではどうぞ!


第95話 嘘だ

side三人称

 

「黒葉、あとは買い残しとかはないですか?」

「はい、たぶんもう大丈夫かと……僕の必要なものは大体揃いました。これから帰ってこの刀を研ぎたいと思います」

 

 必要なものを買い終えた黒葉たちは剛志の工房を後にし、茉衣の家へと帰ろうとしていた。

 黒葉は空気が読めるもので、自分の家に帰るという発言を何回かスルーされてしまったことで、これは言ってはいけないことなんだと察して諦めて自分の家に帰ろうとはしなくなっていた。

 それどころか一人だけ状況を理解していないせいもあってか、黒葉はこの状況を本気で謳歌しようとしていた。

 

(こんな近くに剣士が居る。頑張ってこの人の教えを覚えないと)

 

 奇跡的に目の前にいる凄腕の剣士。しかも、教え方も上手く、すぐに教えてくれたことを吸収できるこの状況。

 強くなりたいと常に考えている黒葉にとってはこれ以上ないというほど最高の状況だった。この状況を利用しない手はないと考えて気合を入れる。

 

 白愛の生前は白愛に修行をつけてもらっていたのだが、白愛の教え方は抽象的過ぎて正直言うと黒葉はあまりその教えを理解できていないところがあった。

 その時に双剣も教えてもらっていたが、白愛に教えてもらった時にできなかったため、自分にはそれすらできないほどに才能がないのだと考えていたほどだ。

 

(この人に教えてもらえば僕はもっと強くなれる。そしたらもう誰も失わずに済むようになる)

(黒葉、嬉しそうね。強くなりたがっていたから強くなれるチャンスができてうれしいのでしょうね)

 

 黒葉の様子を見て咲夜は微笑む。

 紅魔館に黒葉がやってきてから咲夜はずっと黒葉に修行をつけてきた。

 その目的は黒葉が自分を倒すためという特殊なものではあるのだが、その修行の中で少し愛着がわいてきていたのだろう。黒葉が嬉しそうだったら咲夜自身も少しうれしくなってきていた。

 

(黒葉が記憶が戻って、前よりも強くなって帰ったらお嬢様はどんな反応をするのでしょうか。お嬢様は黒葉のことを気に入ってらっしゃったからすごく喜びそうね)

 

 そんなことを考えつつ、小話をしながら三人で歩いていると突然横から声が聞こえてきた。

 

「え、もしかして」

 

 その声に反応して声の聞こえてきた方向へと三人で顔を向けると、そこには二人の男女が立っていた。

 一人は白髪で黒を基調とした和服を着ている少し筋肉質の男性、そしてもう一人は長い白髪をヘアゴムで行動部でまとめている銀色の瞳の白を基調とした清楚な和服を身にまとっている女性だった。

 そしてその二人はそろってものすごく驚いたような表情をしており、男性の方は額から汗まで吹き出してしまっている程だった。

 

「黒葉、黒葉よね!?」

「えっと……うん」

 

 女性の方が黒葉の方へと駆け寄ってくるが、黒葉はその女性のテンションとは真逆でちょっと引いてしまっている様子だった。

 そんな様子を見て男性の方はちょっと落ち着けと言わんばかりに女性の肩をトントンと叩くと女性の横に立って黒葉の目線に合わせるようにしゃがみこんだ。

 

「帰ってきていたのか、黒葉」

「うん、お父さん、お母さん。ただいま」

「「お父さんとお母さん!?」」

 

 なんとこの二人の男女は黒葉と白愛の両親だった。

 突然の黒葉の両親の登場により、全く覚悟していなかった咲夜と妖夢の二人は思わず驚きの声を漏らしてしまった。

 

「た、確かに白愛様に似ている」

「でも、黒葉には似ていないですよね」

「そこは私もよく知らないけど、何か深い事情があるみたいですよ」

 

 咲夜は月刃と以前交戦したということもあり、事情をなんとなく把握しているものの、妖夢はそうではないため、あまりこっちの事情に巻き込むのはよくないと考えて詳しいことは濁した。

 少し妖夢は自分だけ事情を把握していないというこの状況に口を膨らませて不満を表現していたものの、咲夜はそれを見て見ぬふりをすることにした。

 

「それにしても黒葉、いつ帰ってきていたんだ」

「昨日遅くに帰ってきてさ、いろいろあって顔出すの忘れてたよ」

 

 この8歳に記憶が戻ってから初めて黒葉が砕けた口調を使い、そして柔らかい表情をしているのを見て咲夜はホッと一安心した。

 黒葉は咲夜たちと共に行動し始めてからずっと敬語を使い、気を使っている様子だったたため、黒葉はずっと誰かに気を使って生きてきたんじゃないかと考えていたが、さすがに両親とは気を許して話すことが出来るようだ。

 だが、これまでずっと誰に対しても敬語を使い続けてきているのを見ると、この年齢ですでにいろいろな人に対して気を使って肩身の狭い生活を送っているのだということが想像できて咲夜は気の毒に感じる。

 

(多分、黒葉は何となく自分の置かれている状況を察しているのね)

 

「黒葉……今までどこに行っていたの?」

「あぁ、僕もよくわからないんだけど、目が覚めたら永遠亭っていう病院に居たんだよね」

「永遠亭……ってどこ?」

「ものすごく遠い場所にある病院だよ。なんでも聞くところによるとどんな怪我や病気にでも効く薬を作れる薬剤師がいるのだとか」

 

 女性の問いに男性が軽く答えた。

 

「あなた、物知りなのね」

「まぁ、若いころは各地を渡り歩いからな~そういう情報はいくらでも入ってくる」

「それにしても黒葉、生きていてよかった……」

「あぁ、本当に……」

 

 女性は黒葉をいとおしそうに抱きしめ、その目からは涙をポロリとこぼす。

 よく見ると男性もずっと少し上の方を見ており、その目じりには涙がたまっていて、どうやらその涙がこぼれない様に上を向いている様子だった。

 黒葉もよく状況がつかめていない様子だったが、母親の様子を見てただ事じゃないと感じたのか黒葉からもそっと母親を抱きしめ返す。

 

「あなたたちが黒葉を助けてくれたんですか?」

「いえ、私はここで偶然会っただけで、助けた? のははこの人とその仲間ですね」

「本当にありがとうございます……本当に……」

「いえ、本当に助けたのは私の主ですので、代わりにお礼を伝えておきます」

「お願いします。本当にありがとうございます……」

 

 黒葉からそっと離れると今度は咲夜の手を取ってしみじみとお礼を言う女性に咲夜は突然の事だったため、驚いたがすぐにほほ笑んで返した。

 

「あなたたちのお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」

「私は十六夜咲夜と申します」

「私は魂魄妖夢です」

「それじゃあ、僕らも名乗ろうか。僕の名前は冬夏烈夏(れっか)。鍛冶師をしている。で、こっちは僕の妻の」

「冬夏雪姫(ゆき)っていいます」

 

 名乗り終わると雪姫はその場に崩れるように座り込むと、再びしんみりとした様子で言葉を発し始めた。

 その言葉がどれほどの地雷を孕んでいるかということも知らずに……。

 

「それにしてもよかった……本当に……白愛が死んでしまって……その上黒葉まで死んでしまったら私……私……」

「え、お姉ちゃんが死んだ?」

「あ」

「やばい」

 

 咲夜と妖夢が気が付いた時にはもうすでに遅かった。

 もうすでにその言葉を雪姫は言い放ってしまっており、以前にも茉衣が白愛が死んだということを言ったことがあったが、その時は黒葉も茉衣の冗談か何かかと軽くスルーしていたのだが、自分の母親からその言葉が出てきたらさすがにスルーすることはできない。

 両親に会って少し笑みが浮かんでいた黒葉の表情は一瞬にして青ざめていった。

 

「お、お母さん。(たち)の悪い冗談はやめてよ。ね?」

「冗談なんかじゃないわよ。白愛は……死んでしまったのよ」

「……っ」

 

 母親の冗談ではないという言葉に絶望してしまったのか黒葉はうつむいて唇を噛んでしまった。

 

「そんな、そんなの……そんなの嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ噓だ」

「こ、黒葉?」

 

 黒葉はうわごとのように一つの言葉を永遠とつぶやき続ける。

 明らかに様子のおかしい黒葉に心配した様子で烈夏が黒葉に手を伸ばすと、ゆっくりと黒葉は烈夏に視線を向けた。

 それはどうにも救いを求めるような、そして訴えかけるようなそんな視線で、烈夏にとってはその視線がとても痛いものに感じた。

 黒葉は確かに訴えかけていたのだ。そして救いを求めていたのだ。

 お願いだから嘘だと、そう言ってくれと烈夏に救いを求めて視線を向けた。

 

 だが、烈夏の発した言葉は――

 

「すまない……」

「あ、あああ……あああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 

 黒葉は叫ぶ。

 頭を押さえ、そして目をかっぴらいて大粒の涙を流しながら叫んだ。

 喉から血が出ようとも関係ないと言わんばかりに叫び続けるので、周囲にいた人々も「どうしたどうした」と集まってきた。

 

「痛い……痛いよ……頭が」

「黒葉、大丈夫? ……妖夢、もしかしたら恐れていたことが起きるかもしれない。黒葉の脳の記憶部分が強い刺激を受けているっ!」

「どどど、どうしましょう!?」

 

 だが、この場には黒葉のことを見ることが出来る永琳先生が居ないため、咲夜たちだけではどうしようもない。

 どうしたものかと、そう思っていた時だった。

 

 ドガーン。

 どこからともなく爆発音のようなものが響き渡り、空気が震えてまるで大地が揺れているかのような感覚がこの場にいた全員に走った。

 全員が不安そうにその爆発が聞こえた方へと視線を向けると、その先にあったのは。

 

「茉衣さんたちの家!?」

 

 そう、そこにあったのは茉衣たちの家だった。

 茉衣たちの家から煙が上がり、壁は完全に穴が開いてしまっているという無残な状態。

 そしてそこからなんと、大きな袋を抱えて出てくる男たちの姿があった。その袋の中からはかすかながら霊力を感じる。

 

(こんな時に面倒なことが……でも、お世話になったし助けないわけにもいかないわよね……。でも、黒葉を放っておくわけには)

 

「はっ、な、なになに!?」

 

 咲夜は黒葉の状況と茉衣の家の状況を考えてどうするべきかと悩んでいたが、その心配はいらないようだ。

 今の衝撃でどうやら記憶を思い出しそうになっていたのがキャンセルされ、元の黒葉へと戻り、今は今の衝撃について驚愕している様子だった。

 その様子を見た咲夜はホッと一安心して男たちが走り去っていった方へと目を向けた。

 

「……私は行ってきますので、妖夢は黒葉をお願いします」

「私が行くから咲夜さんが黒葉君を見ていてください」

 

 二人はお互いに自分が行くといって聞かない様子。

 そんな二人を見て黒葉はゆっくりと立ち上がって自分の腰に差した刀をなでて爆弾発言をかました。

 

「僕が行きます」

「え、黒葉?」

「ちょ、黒葉君!?」

 

 二人が静止する声も聞かず、黒葉は走って行ってしまったため、取り残された四人も慌てて黒葉の後を走って追って行った。




 はい!第95話終了

 間一髪、爆発が起こったことで黒葉の脳への負荷がキャンセルされました。

 記憶は取り戻されてはいませんが、キャンセルされたことで白愛が死んだということを聞かされたことは完全に忘れてしまっていますね。

 そして何が起こっているのでしょうか?

 それでは!

 さようなら
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