それでは前回のあらすじ
黒葉になかなか追いつけない四人は雪姫の力で何とか黒葉に追いつく。
すると、黒葉から茉衣が攫われたとの情報を表示聞かされた。
咲夜と妖夢は急いで茉衣を攫った男を追っていく。
一方その頃、茉衣を攫った盗賊団のアジトには威迅が一足先に侵入していた。
それではどうぞ!
side三人称
「こ、こいつが本当にあの狂犬なのか!?」
「でも、なんでこいつがここに!? いくら何でも早すぎる」
男たちが狼狽えていると、威迅は静かにグーで固めた手を突き出すと手のひらを下にして手を開くと、何かがその手のひらから落ちてきた。
出てきたのは何かの花びらのようなもので、半分に切られている。そしてその花びらはゆっくりと、しかし確かに茉衣の方へと向かってゆっくりと動いていた。
だが、ここは屋内だ。風などあるわけがないため、勝手に花びらが動くはずもない。
なのになぜ動いているのか。
「この花のもう半分を茉衣の服に仕込んでおいた。この花びらは結束草の花びらだ。一度霊力を流し込んだ後、千切るとその千切られた花びら同士は引かれあうようになる。もう片方の方へとひきつけられる」
(お、お兄ちゃん、そんなものをいつの間に……っ)
その説明をすると男の一人が面白そうに笑い始めた。
「へぇ、そんなものを仕込むとは、狂犬も妹のことが心配ってか? あの狂犬がシスコンとはな!」
「俺が妹を心配しちゃ悪いか……」
「悪いさ。お前は今まで何人殺してきた? お前はもう、普通の人生を送る権利すらないんだよ!」
「俺が殺すのは悪人のみ。悪人は殺す。それ以外で俺の前に立ちふさがる相手は半殺しだ」
「おーおー、野蛮ですねぇ……」
男は次々と煽り続ける。だが、男は忘れていた。
自分が今、相対している相手が何者なのかを、そして悪人に対してはどういう対応をするかということを……。
「悪いが、グダグダと長話している気分ではない。今の俺は相当……気が立っているっ」
「ぐぅ――っ!」
煽っていた男が瞬きしたその瞬間、一瞬にして男の目の前に移動した威迅はそのままその男を殴り飛ばした。
この一撃をもろに食らってしまった男は、そのまま殴り飛ばされて壁に激突、口から血を吐くこととなり、そこでようやく自分たちの置かれた状況を理解した。
目の前にいるのはただの一般剣士などではない。
盗賊団組織内で狂犬と呼ばれ、要注意人物に指定されている男だということを、今男は思い出した。
「こ、この野郎!」
「俺に挑むか?」
「っ」
近くにいた仲間が威迅にナイフで切りかかろうとする。
だが、威迅は周囲に霊力を放出し、男を睨みつけることで威圧したことで男は気圧されて動けなくなってしまう。
そしてそのまま尻餅をつくと、威迅はその男にグイっと顔を近づけ超絶至近距離で威圧をする。
「あ、あぼ、あぼぼぼぼぼぼ」
ついには男はその威圧に耐え切れず、泡を吹いて気絶してしまった。
「どいつもこいつも根性がない。こんな覚悟でよくこんなことできてるな……」
「く、この野郎!」
「お前は少しは覚悟ができているようだな。だが――」
この場で警備を任されていた最後の一人が威迅にナイフを持って斬りかかる。
その男は泣きそうになっているものの、威迅のことを強敵と認識し、それでもなお臆することはなく斬りかかっていることに威迅は感心する。
だが、そういうやつが戦場では死に急ぐことになるのだと、威迅が証明した。
威迅は男が振り下ろしてきたナイフを素手で受け止めてしまった。
だというのに一切手にナイフが食い込むことはない。まるで先が丸くなっていて切れ味が全くなくなってしまっているかのように威迅の手は切れなかった。
強い力で横から挟み込んでいるわけではない。普通に手のひらで刃を受け止めたのだ。
「俺に刃物は効かない。なぜなら、俺に触れた瞬間、その刃物は俺の支配下に落ちるからだ」
その次の瞬間、男が持っていたナイフの刀身がうねうねと伸びて曲がりくねり、そして男の首にグサッと突き刺さった。
それが致命傷となり、男は声を発することもなく力なくその場に倒れ、事切れた。
「俺は剣士だ。だが、お前ら程度の残党なら刀を使うまでもない、ということだ」
ゆっくりと立ち上がり、威迅は二人を見回した。
威迅の力ならば今すぐにこの二人も殺すことは可能だ。だが、それよりも優先しなければいけないことがあったため、そこに転がっている二人の盗賊はスルーして近くに落ちたナイフを手に取って茉衣の方へとナイフを向けた。
その瞬間、威迅がつかんだナイフの刀身が伸び始め、茉衣へ向かって伸びていく。
だが、盗賊の時と違うのはこれは茉衣を斬るためではなく、茉衣を拘束していたロープやタオルを一刀両断し、茉衣の体を自由にした。
「ありがとうお兄ちゃん」
「いつも刀は近くにおいておけって言ってるだろ」
「ごめんね」
そういうと威迅は茉衣に向けて茉衣の刀を投げ渡した。
これを茉衣に渡すために刀を二本持った状態でここまでやってきたのだ。
刀は一本増えるだけでかなりの重量となるため、いつもとは全く違う感覚で動きにくかったというのに、威迅はその中でも最小限のダメージでここまでやってきたのだ。
「そもそもどうしてお前がここに来れる。ここまでに大量のトラップが……っ」
「俺に刃物は効かない。それに矢だが、俺を串刺しにしたいのならもっと威力を上げることだな。あれっぽっちでは俺の筋肉は貫けないぞ」
「くそ……早く……ボスに……連絡を……」
そこで意識をかろうじて保っていた男は意識を飛ばしてしまい、壁にもたれかかっていたが、そのまま横に倒れて動かなくなってしまった。
かろうじて生きてはいるが、当たり所が悪かったようで相当なダメージを負っている。
このまま放っておいても死ぬだろうと考えて威迅は放置することとして、次に意識を失っているだけの男に目を向けた。
「悪人は確実に殺しておく……っ!」
そしてゆっくりと自分の刀を鞘から抜いて男に突き刺そうとした、その瞬間だった。
突如として冷気が威迅を襲い、男に刀を突き刺そうとしたそのままの状態で腕が凍り付いてしまった。
「勝手に暴れられちゃ困るんだよね」
「ち、真打登場ってかっ?」
威迅と茉衣の目の前に現れたのは左頭部の髪色が青、右東部の髪色が赤となっている奇抜な髪色をした男性だった。
はい!第97話終了
威迅の圧倒的無双。
そしてナイフを操ったあれは前に威迅が自分の刀を伸ばしていたのと同じ力です。
威迅は見た目の迫力も相まって威圧したらとんでもない破壊力になりそうですね。
次回は威迅対冷気を操る男の戦いになります。
それでは!
さようなら