遅くなってゴメンニ!!!
あと、主人公交代?のためTS要素消えるんで一応注意です。
ほら……(終盤の特大ネタバレ)だからさ……
その日カイネは砂漠にいた。
南平原を抜けると、その先は草木が無くなり砂漠が広がる。
祖母の仇をとるため復讐に燃えるカイネであったが、日々を生きるためにはどうしても資金を稼がなければならない時もあった。左半身に宿った忌み嫌われるマモノの力は荒事を伴う危険な仕事には役に立つ。
仕事は通商路に出たという大型のマモノの退治であった。 砂漠超えはただでさえ視界が悪く砂嵐で不快感を伴うにも関わらず、近年になって開拓した貴重な通商路にマモノが住み着いてしまったらしい。
「殺してくれさえすればなんでもいい。報酬は弾む」
依頼の男は商売人にしてはあまりにも無愛想であったがカイネはあまり気にしなかった。変に怖がられたりするよりかは煩わしくなくちょうど良い。
足に入り込む砂粒にイラつきながら砂漠の岩崖沿いを進むと、断崖で出来た天然のトンネルのような空間が脈々と続く場所にたどり着いた。
周囲の崖が壁となって砂嵐を阻むことでその空間だけはぽっかりと穴が空いたような静寂に包まれている。 大方キャラバンの休憩地として使われていたのだろうが、外の天気の影響を受けないために太陽光が届きにくく、マモノが住み着いてしまったのだろう。 マモノ特有の気配を感じる。
太陽光が途切れ途切れに差し込む隙間に、大きな黒い影がいた。 カイネの様子に気づく様子は無くしゃがみこんでいる。
カイネは愛用の双剣を構えるとまずは岩陰に身を潜めた。
『どうしたカイネ。いつもは羽虫みたいにブンブン剣を振り回すくせにに随分慎重じゃないか』
いつものようにテュランの声を無視しながらカイネはそのマモノを注意深く観察した。マモノを殺すはいいが、崖の隙間の空間は縦横無尽に動きながら戦うには少し心もとない広さだった。マモノの大きさをかみするなら尚更だ。
そこまで考えておきながらやはりカイネは隠れるのをやめてとりあえずマモノを斬り付けることにした。 ごちゃごちゃ考えるのは性ではないしもし逃げるのならそちらの方が都合が良い。
「死ね!!!」
マモノを斬りつけるとばしゃりと血が広がる。 しかしカイネが斬り付けたマモノは攻撃されたにも関わらず反撃しようともしなかった。 ためしに魔法を何発か撃ってみたが、結果は変わらない。困惑したカイネはその瞬間、マモノが何かを守るようにうずくまっているのをを見た。
花?
『バ...ラ、バラ...............サバクノ、バラ............』
どうやらマモノが守っているものは、砂漠のバラというらしい。 後ろに1歩下がった瞬間、グシャリという音がした。 視線を後ろに向けると、そのバラを踏みつけている。しまった、と直感的に思った。
『あああ゛゛っバラバララバラバラババババラバラ...ヨクモヲヲヲヲヲッ!!!!!!』
「!!!」
カイネが薔薇を踏んだ瞬間、今までの無抵抗が嘘のようにマモノは激高し、カイネに襲いかかってきた。 振り上げられた黒い腕を両手の剣を交差して受け止める。
『なんだコイツ、花を踏まれて怒っているのか?』
そのままはじき飛ばし、壁に激突したマモノを魔法で追い打ちをかける。 カイネの全力で打ち出された魔法はマモノの体に直撃し、好きを見せずそのままとどめを刺した。
『バラ..................アノヒノ............』
マモノの言葉には最後まで耳を貸さなかった。
報酬を受け取り、崖の村へ帰るため砂漠を歩く。 先程は太陽が隠れるほどの砂嵐に対し、今は晴天だった。
「今度は何だ?」
黒い影が忙しなく動き、遠吠えが聞こえたので最初は動物の鳴き声だと思った。砂漠にはマモノだけではなく人を襲う凶暴な狼も出ると聞いている。しかし、よく目を凝らしてみるとその影の中に頭を抱える少女が見えた。
「ー!!!!」
カイネは特に何も考えず、その群れの中に突っ込んでいく。
狼は確かに脅威だが武器を持ったマモノと比べればはるかに弱い。カイネが狼を皆殺しにするのにはあまり時間がかからなかった。
「あ、ありがとう」
「この辺りは危険だ。迂闊に出歩くな」
振り返ったカイネにお礼を言う少女は奇妙な面を被っていた。砂漠の果てにある仮面の街から来たのだろうか。
砂漠の民ならば狼の危険性は知っているだろうにと思うカイネであったが、ひとまずは少女を仮面の街まで送り届ける必要がある。
「......街の入口はまでは送ってやる。ついてこい」
「あ、あの」
「...?」
「......!」
「......」
少女は身振り手振りで何かを必死で伝えようとしている。さっきまで喋っていたのだから言葉で伝えれば良いのものを一体どうしたのだろうか。 やがて少女は身振りで伝わらないことを察すると意を決したように声を上げた。
「砂漠の薔薇を探すのを手伝って欲しいんです」
「......」
少女の名前はフィーアというらしい。
そしてフィーアが危険を犯してわざわざ砂漠に出た理由は、どうやら砂漠の薔薇にあるようだった。
何も言わずどこかに向かおうとするカイネに戸惑った素振りをみせていたが、「ついさっき咲いていたのを見た。見つけてとっとと行くぞ」というぶっきらぼうな声に臆することなくしきりにお礼を言っている。
先程のマモノを殺した場所には砂漠のバラがいくつも咲いていた。 戦闘によりいくらか破壊されてしまっただろうが1輪ぐらいは残っているだろう。
来た道を戻ると岩場にはまだ夥しい血の跡が鮮明に残っていた。しかしフィーアは一瞬怯むだけで、まだ無事であろう薔薇を探している。
思い出。
そう口にしたマモノの最後の声がふと蘇る。
「クソ......☆□✕〇......」
「?」
「何でもない。砂漠の薔薇をとったらさっさと行くからな」
マモノはマモノ。何も変わらない。ただ殺すだけだ。
▲▼
フィーアは懸命に砂漠の薔薇を探す。 そのうちさらに岩陰にかろうじて無事であった一輪の砂漠のバラを見つけた。
「......!」
「!!!そちらに近寄るな!!!!」
『ァァアア゛!!!!!!』
瞬間、カイネの怒声が響く。フィーアが近づいた岩陰に先程殺したはずのマモノが未だ潜んでいた。
カイネが魔法を放つ。
―――――間に合わない!!
「マモノはちゃんと消えるまで確認しないと、ねえ?」
「......え?」
どすりと鈍い音がした。フィーアが振り返った時、大剣がマモノを貫いていた。
マモノは今度こそ溶けるように消えた。
「いやあ、間一髪! 良かった良かった。間に合った」
カイネが顔を上げると、崖上から誰かがこちらを見下ろしている。
その人影が、フィーアを助けたようだった。
「よっ.........うわぁぁああ?!!」
飛び降りた人影は着地に失敗したらしく悲鳴をあげながら砂漠の砂に沈んだ。
「あ゛いってぇぇえええ゛!!!ちょっ...やば.........立ち上がれな............そこの2人、助け...うぎゃぁぁあ!!沈む!!」
「........................」
「.....................」
「うぅ.........」
「あ、あの、大丈夫ですか」
「だ、大丈夫。助けてくれてありがとう」
カイネによって掘り起こされ、フィーアに背中をさすられて女は泣きべそをかいた。
余りの煩さにカイネの眉間が寄る。
服に着いた砂を取り払い、立ち上がった女はごほんと咳をした。
「いやあ、間一髪! 良かった良かった。間に合った」
「.........」
何事も無かったかのように取り直す女に、フィーアはカイネの時と同じようにお礼を言う。
「ふたりが無事で何よりだよ」と女はニコニコと笑った。
「仮面の街に向かおうと思ったら可憐な女の子ふたりがマモノに襲われてるんだもん。これは助けないとって思ってね」
「―――――............」
「え?君、あの街の子なの?なら―――――――」
砂漠に刺さった大剣は、やはり女の得物であるらしい。軽々と引き抜いて背中に背負った女はフィーアに向かって柔らかな口調で話しかけている。
しばらく思案すると、カイネは背を向けて歩き出した。会話や状況からフィーアはあの女に預けても問題は無いだろうと考えたからだ。自分のような存在は、なるべく他人から早く離れた方が良い。
カイネさん、と呼ばれた声には振り向かないつもりだった。
「あれ?行っちゃうの?」
「ああ。私は忙しい」
「彼女の探してる砂漠の薔薇、壊れちゃったみたいだけど」
女が指し示した指の先には、粉々になった砂漠の薔薇があった。
状況からして、岩陰の砂漠の薔薇を壊してしまったのはカイネの魔法である事が伺えた。ため息を着くカイネに、申し訳なそうにフィーアは縮こまる。
『あ〜あ、最後の一輪だったのになあ?お前が壊しちまったなぁカイネ!!』
テュランの嘲りを無視して、カイネは再びフィーアの元に近寄った。 面倒ではあるが、砂漠のバラを探すのを了承したのも、最後の一輪を破壊してしまったのもカイネ自身だ。フィーアが見つけるまで責任を取るべきだろうと考えた。
「ところでここに、砂漠の薔薇がひとつあるんだけどさ」
女は懐から砂漠の薔薇取り出すと、ニヤリと笑う。
「この子にあげてもいいんだけど......わたしも砂漠の薔薇、持ち帰りたかったんだよねえ」
女はぷらぷらと砂漠の薔薇を揺らした。目線からフィーアではなく暗にカイネに取引を持ちかけている。
「...............」
カイネが睨みつけるように続きを促すと、女は今度は屈託のない笑みを浮かべた。
「終わった終わった〜。2人だと効率も段違いだね」
「.........」
頬にベッタリと付いた血を拭いながら、女はカイネに笑いかける。
砂漠の薔薇の取引条件として持ちかけられたのは、女の仕事の手伝いだった。
カイネと同じく荒事を生業としているらしく、マモノ憑きでも無いくせに女は滅法強かった。
「やっぱり君、すごく強いんだねえ。ところであの攻撃何?魔法??それにそんな薄着で怪我は怖くないの??」
「ごちゃごちゃと煩い。さっさと砂漠の薔薇を渡せ」
カイネが睨みつけても、「まあまあ」と躱した女は砂漠の薔薇ではなく、干し肉を渡してくる。
「砂漠の薔薇もちゃんと渡すからさ。まずはお疲れさまってことで」
カイネが口を開く前に女が畳み掛けた。
戦っている間に、カイネの左半身のテュランの存在にきっと気付いているだろうにも関わらず、女はうざったい笑みを浮かべている。
「自分の手でフィーアに渡さなくて良いの?やっぱり気が変わって、薔薇を渡さないかもよ?」と嘯いた女は、カイネが無視しようと舌打ちしようと、仮面の街まで共に着いてきた。
フィーアに砂漠のバラを渡し、すぐ去ろうとするとするもあれよこれよと街に引きずり込まれ結局一泊することとなった。
翌日、街を出ようとしたカイネは、最後までくっついて来た女にとうとう痺れを切らした。
「これでお別れかあ」
「おい」
「寂しくな......ん?」
「なぜ私に付きまとう?」
「だって君、わたしより歳下だろう?――――かわいい女の子を放ってはおけないよ」
ふふん、と女は背中の大剣を摩った。
「もうあんなに一緒に戦った仲なのに水臭いなぁ」
「知るか」
「酷いなあ!って、そういえば私たち、お互いの名前すら知らなかった...」
女は愕然とした表情を浮べた次の瞬間には、笑顔で手をカイネに差し出していた。
「わたしはエリヤ。君は?」
「という事があった。見境なく口説いてくる○▼×野郎だった」
「...ちょっと待て。その女は口説いたのか?お主を?この下着女を?そやつは本当にエリヤなのか?」
「あっ、それ僕の知ってるエリヤだ。間違いない」
「間違い無いのか......」
。