人類が滅亡するのは別に俺のせいではない   作:鳥ッピイ

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ちょっと間が空いてしまった...。(3話を)初投稿です


3話「ゲシュタルトの祈り」

全然見つからないんだけど??????

 

僕は別に激怒したわけではなかったが、正当とは程遠い八つ当たりでキレていた。

 

主人公とその妹が全然見つからないんだけど??????(2回目)

 

「ぶべぇ!!!」

 

ちょうど目の前に捨てられていた空き缶をヤケクソで思いっきり蹴っ飛ばしてみたが、近くの廃屋のコンクリート壁に跳ね返り己の額にクリーンヒットするだけだった。

超エキサイティングな気分も一瞬で落ち込んだものだ。せめて周りに人がいなかったのが唯一の救いかもしれない。

 

「缶けりは1人ではできませんよ」

 

「缶けりじゃない...サッカー.....」

 

「1人でサッカーしていたんですか?」

 

「昔はサッカー選手が夢だったんだ......」

 

前言撤回。本来なら痛んでいる額を抑えてしゃがみ、天を仰いでいるのをアコールにバッチリ目撃されていた。恥ずかしいところを見られたが当の本人は全くの無表情だ。ちょっと死にたくなってきた。

 

......口に降ってきた塩が入ってきてしょっぱい。 クソ、塩分摂取過多で高血圧になったらどうしてくれる。

 

 

 

僕が主人公とその妹を探し始めてちょうど数ヶ月が経った。

最初の1ヶ月こそオリ主が原作知識(ガバ)持って転生したんだから、謎のパワーですぐ会えんだろとまた舐め腐っていたが、それも直ぐに詭弁であると気付いたのである。

 

まあ運命を期待していたのは少し冗談だけど、僕が人探しの堅実な手段として頼ったのは元の世界で有効な住民票を追いかける方法だった。

 

しかし膨大な数の難民がいるせいでやっぱりと言うべきか、この世界の日本の住民票管理はほぼ機能していなかった。

元の世界の日本ではプライバシー観点の保護から住民票は面倒な手続きが必要ならものであったが、皮肉にもこの世界では杜撰だからこそ祖父の権力を使...ほぼ使ってないに等しいほどの手間で調べることが出来たのである。

そこからわかる事はやはり主人公達は難民や、またはホームレスの類であるということだ。

 

この世界の日本で住民票を持っている...ほぼ形骸化されているにしろ、公的な手続きが「できる」人間はそれこそひと握りの裕福な者達である。

廃墟と化した東京をさ迷っていた時点でほぼ無いだろうが、万が一の線を考えて袖の下を通して警察に「行方不明の親戚を探して欲しい。」と調べてもらった結果、「ニーア」や「ヨナ」に該当する人間はいなかった。 世紀末であってもやはり金...金は全てを解決するのかもしれない。(人類を救えるとは言っていない)

 

2053年の夏、新宿のスーパーに張り込むなりして遭遇することがもはや1番手っ取り早いのか?。東京タワーの近くを探せばスーパーの特定自体は容易だろう。問題はそのスーパーはエリコの壁の中にあるってことだ。 崩壊してるから多分抜けたり入ったりは出来そうだけど手回しが絶対だるい。

 

だけどただでさえ無人島ですら嫌なのに、世紀末日本でサバイバル生活もなるべくしたくない。 でもやるしかないのか...嫌だな.........。

 

 

...............。

 

「......あれ、いつからいたんだ。アコール」

 

「貴方が午後0時39分に自宅を出て13時15分に最寄りの旧市役所後に到着し同時刻45分に出発、そして現在渋谷方面に300メートルほど歩いた後に缶を蹴っ飛ばした当たり

から」

 

それはほぼ最初からどころか今日の始まりから見てましたよね?

 

「というのは冗談です。ほら、いつもの喫茶店に行くんでしょう?一緒に行きましょう。」

 

 

「............ああ」

 

ニコニコと笑うアコールの手を取り立ち上がると、僕は2人で並んでいつもの喫茶店に向かうことにした。

 

 

 

 

 

 

「今日もいい天気だな」

 

「今日の天気も曇りですが」

 

 

いつものボックス席に向かい合って、座りながら紅茶を啜る。カップから溢れた湯気がすきま風に揺られているのを横目に見た。

 

「『親戚』の捜索の進捗はどうですか?」

 

「スーパーを探しているところ」

 

「スーパーマーケット?」

 

「ん...? いや、なんでもない」

 

目線をこちらに向けているのを感じる。

流石に未来に主人公が逃げ込むであろうスーパーマーケットを特定したヨ!なんてどう言えばいいのかわからないので少し居心地が悪い。

 

 

「貴方、前までゲシュタルト計画をゲシュタルト療法だのとんちんかんな勘違いしていましたよね」

 

「別にゲシュタルト計画には興味無いけど...。まあ」

 

「その貴方が、いまや各方面に走り回るほど積極的になるなんてとても驚きです。よっぽどその『親戚』の方が大切なんでしょうね」

 

「............」

 

 

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普段とは違うアコールの異様な雰囲気に、寒いはずの室内で汗が流れる。

無視しているはずのあの声が大きくなる。

 

「......何の話だか、わからない」

 

 

ふ、と息を吐く音が聞こえた。

 

「冗談です」

 

「はい?」

 

「今日二度目の冗談ですよ。エリヤがらしくもなく張り切っているのを初めて見たものですから。おそらくその親戚はただ探して見つけるだけではダメでしょう ............だから手伝ってあげます」

 

「.....ありがとう。」

 

 

「お礼はいりませんよ」

 

 

「.................一緒に缶蹴りする?」

 

「お断りさせていただきます」

 

「えぇ............」

 

 

 

 

 

▲▼

 

夏の雪が降っている。

数少ない資金も底を尽き、食事は1日前に固まってカチコチになったパンを口に入れただけだった。その大部分も少年は妹に食べさせたため当の本人は真っ当な食事をいつ 食べたのかもわからない始末であった。

 

手袋をしていても左手は妹の手を握りしめているためまだ暖かいが、せめてもの武器として握りしめた鉄パイプを持つ右手はかじかんで既に感覚がない。 塩の雪に足を取られて転びかけ、吸う度に冷たい空気が肺を刺す。

 

 

「お兄ちゃん...」

 

「大丈夫だよヨナ...僕がついてるから」

 

 

それでも少年は兄として妹を守らねばならない。早くあの黒い怪物が現れず、雨風が凌げる場所を探さなければ少年は良くとも病弱な妹が耐えきれないだろう。

 

 

「あそこなら......。ヨナ、行こう」

 

うっ、うん」

 

見つけたのは既に廃棄されて久しいスーパーマーケットだった。 支柱が壊れ崩壊しかけているが、中にはまだほんの僅かに食料が残っている。暫くはここで飢えと寒さを凌げるだろう。

食品棚の影に腰を落ち着けると、体力の限界をとっくに迎えていた妹は少年に頭を預けるとそのまま眠りについた。 その吐息は決して穏やかとは言いがたい。

ふと何かを囁く声に振り返ると、視界の端に黒い本が落ちている。

 

「ッ...!」

 

思わず鉄パイプでビリヤードのように突いてその本を遠ざけると、本は紙が擦れる音を立てながら壁に軽い音を立てて追突した。

黒い本は何度捨てても少年達にどこまでも執拗に着いてきた。触らぬよう細心の注意を払って土に埋めても、火の中に放り込んでも無駄だった。

その本に触れた人間がどうなってしまうのか少年は知っている。

胸がざわめいている。何か嫌な予感がずっと背を撫でている。

忌々しさに顔を顰めながら、妹を抱きしめて少年は意識を闇に落とした。

 

 

 

 

 

 

「ヨナ......ヨナ!!大丈夫!?」

 

少年が妹の異変に気づいたのはなにか足しになるものは無いかと周囲を捜索し終わった時だった。 傍に落ちる黒い本にまさかと息を飲むが、妹の体に黒い何かがまとわりついている様子は無く、一息をつく。

額に手を当てると熱い、そして何よりも息が荒い。

酷い訳では無いものの、熱を妹は出しているようだった。

 

「そんな............」

 

妹が黒い本を触っていない事は良いが、それでも状況は深刻だった。

今日の食事にすら事欠くのに、薬など用意できるはずもない。

 

 

自分が妹を助けないで誰が助けるのだと心を奮い立たせようとするが、どうすればいいのかわからない。そうだ、店内を回ってみよう。鉄パイプを杖に少年は立ち上がる。もしかしたら薬やそれに準ずる何かが残っているかもしれない。

 

「誰か......」

 

助けてという言葉は音に出さず飲み込んだ。

 

 

 

 

 

「何があってもその本に触るんじゃないぞ。絶対に」

 

「うん...。」

 

 

咳が止まらない妹を気遣いながらも食料ために兄は外に出ていった。

 

 

「ゴホ......けホッ......うぅ...」

 

 

自分が咳をしてしまえばまたあのお化けが来てしまうかもしれない。そうすれはお兄ちゃんにまた迷惑をしまう。少女は喉まで出てきた咳をなんとか飲み込もうとするが、せき止められた咳が嫌な音を立てて喉に反響した。

 

 

「(ヨナも...ヨナも、なにか、お兄ちゃんの役にたたなくちゃ)」

 

ふらつく体を地面に手を着くことでなんとか支えながら何か食べるものや役に立つものがないかとヨナは殺風景で崩壊した見渡した。瓦礫の下に少し大きな缶を見つけた。瓦礫に押しつぶされることなくただ挟まっていた缶を手に取り蓋を開ける。

 

「あった......!」

 

缶は少し歪んではいるが、中は密封されていたらしく中には様々な焼き菓子がいくつか残っていた。 ヨナは歓喜の声を上げると1番好物のクッキーを手に取ろうとして思いとどまる。 そうだ、お兄ちゃんと一緒に食べようと。

兄が食べ物を自分ばかりにやって、ろくに食べていないことを薄々と心の奥底で察していた。

 

その時、そう遠くない場所から轟音が響いた。

 

「.........!!」

 

反射的にクッキー缶を抱きしめながら恐怖で縮こまる。音は何かがぶつかり合う鈍い音を立てながら止むことなく断続的に響いている。そしてその合間に聞きなれた兄の悲鳴にも似た声を確かに聞いた。

 

「(お兄ちゃん.........!!)」

 

今自分が出ていったところで、何もできないことは幼い心でも分かる。

鈍い音、酷い音、怖い音、何かが潰れる音、何かが終わる音。

怖い...怖い、怖い怖い。

 

その時、何かがほんの少し震えるのを目にした。

 

「......?」

 

見るとそれはあまりにも異質な存在感を放つ黒い本だった。ざり、と砂利と塩でざらついた床を擦る手のすぐ側にまるで触れろとばかりに存在する黒い本は兄に何度も「触れるな」と忠告されたものだ。

 

この本に触れれば、ヨナでも何か出来る?

ヨナでも...役立たずじゃなくて、お兄ちゃんの力になれる?

 

そろそろと手を伸ばすが、「絶対に触れるな」ときつく抑制した兄の顔が脳裏にすぎる。それでも響く恐ろしい轟音に背中を押されるように、その本に触れようとして

 

 

 

「あ゛いってぇぇえええ゛!!!」

 

崩壊した天井から、別の大きな音を立ててひとりの女が転がり落ちてきた。

 

 

 

 




タイトルの元ネタはパールズの詩『ゲシュタルトの祈り』です
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