人類が滅亡するのは別に俺のせいではない   作:鳥ッピイ

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感想うれC〜お気に入り追加もありがとう〜なわけで(6話を)初投稿です。1.22の設定資料集が発売されたら加筆修正します


6話「(TS主人公が全員雌堕ちするわけでは)ないです」

 

雨が降っている。

 

窓は完全に締切っているがそれでも外の音は静かな室内によく響く。薄暗い朝であっても水が跳ねる音は意識を覚醒させるには充分だった。

 

前は雨が嫌いだった。 服が濡れて冷え、ただでさえ病弱なヨナは簡単に熱を出したから。

 

エリヤと妹と共に暮らすこの館は薄暗い一件廃墟と見間違える外見ではあったが、ニーアにはこの屋敷が整えられた空調設備やライフラインがきちんと整えられた「家」だということはわかっていた。なにせ、ずっとホームレスとして東京をさ迷っていたから。

 

まずは隣の部屋のヨナを起こす。 ヨナはここに来てから見違えるように元気になり、痩せこけていた体も最近は年相応に肉がついてきた。それでも軽い咳や微熱を出すことも多い。 それでも薬を摂取し充分な食事と休息のおかげで断然に以前よりも回復しているには変わりない。

 

次は家主たるエリヤを探す。なぜか彼女はその日によって寝る部屋を変えていて、大体は寝酒をしているものだから寝床は毎回酷い荒れ様だった。 そして寝起きも悪い。ニーアは彼女を起こそうとして既に10回はアッパーを喰らっていた。毎回注意をしているが本人に直す気はサラサラないらしくいつも済まし顔で済まされる。

 

「お兄ちゃん、どっちがエリヤさんを先に見つけられるかきょうそうね!」

 

 

この前蹴られた顎を無意識に擦っていると、一瞬自分の体が黒くブレた気がして手を止めた。

 

「お兄ちゃん?」

 

「いや、なんでもない。よーし、兄ちゃんも負けないぞ」

 

毎朝どこにいるかわからないエリヤを探すのはもはや日課となっていた。ヨナはかくれんぼだとはしゃいでエリヤを見つけることを楽しみにしている。

 

あの日、ニーアが黒い本に触った日。

昔親切にしてくれたおばあさんと同じように、ニーアも黒い怪物になることを覚悟した。ヨナを守りたかったからだ。 でも、ニーアは怪物にならなかった。 黒い力...エリヤが零した言葉が正しければニーアは魔法を使えるようになった。 結局は力及ばずエリヤに助けられた訳ではあるが。

 

救済しえんさくだのなんだの偽って、自分たちを騙したあの大人たちや国には今でも怒りと強い不信感がある。

 

でも、エリヤは違った。

本人は契約だのなんだの嘯いているが、ほぼ無償のような形で彼女は自分たちに手を差し伸べた。 でも、その手が本当に全て善意だとは思わない。 彼女にはきっと何か思惑がある。 何かを知っているのに、何も語らない。

 

 

「エリヤさん、みっけ!起きて〜」

 

「新聞は......間に合っ...てます」

 

 

「す、すごい寝ぼけてる......」

 

 

今日は比較的普段より早く見つかった。どうやら彼女はリビングとして使っていた一室でそのまま寝落ちしていたらしい。

ヨナは山姥のような寝癖のエリヤでじゃれている。

 

 

この穏やかな日々が、日常だった。

 

 

 

 

 

エリヤは大学を卒業して(いつのまにか卒業したことになっていた)本格的に世界浄化機関に勤めることとなった。 しかし彼らが欲しているのはエリヤではなく、正確には「ゲシュタルト計画の発案者の孫」 だろう。いわば、神輿に担ぎたいわけでエリヤ自身の能力や何かに期待しているのでは無いわけだ。

ここまで来るのにも何度も褒め言葉という空虚なおべんちゃらを聞かされて、普段は殆どの人の話をスルーするエリヤも流石にイラついた。 前の自分はよく我慢できたなと事も無げに思う。本当は前のエリヤも耐えることは出来なかったのだが、それは今のエリヤに知る由もないことだ。

普段知らない祖父の脛をかじり、骨まで出汁をとっていることに申し訳なさ自体は感じていたが、いかせんこればっかりは不本意だった。

 

 

「着きましたよクレイさん。ここが現場です。」

 

 

「すごいですね」

 

「ええ、AIを導入することで、自ら記憶を収集し成長するように設定してあります。既に稼働自体は始めているのでそれなりに記憶領域に情報は蓄積されていますね。」

 

「へえ、じゃあ誰にも知られたくない恥ずかしい記憶ももう知られてたりするのかな...」

 

 

エリヤの感想は語彙力をひねり出す素振りも見せない間抜けなものであったが気にせず男は頷いた。

 

白衣を着た研究員に案内され、様々な種類のカードキーを何度も使って厳重な警備をくぐり抜ける。地下に所狭しと張り巡らされた沢山の管がこびり付くこの空間は一種の異様な雰囲気を持っていた。 最新の魔素と科学技術を使って作り上げられたこの巨大なネットワークコンピューターは、ゲシュタルト計画が完了するころには成長して巨大な樹のようになっているだろうとのことだった。

ここだけオーバーテクノロジーだなホント。 忘れてたけど、オートマタの搭と似ている。エリヤは白目を向いた。

 

「嫌がる人が多くてクレイさんがこちらに配属されてくれて、本当に助かりましたよ。 このコンピューターだって、白の書システムやいくら計画頓挫した時のためといってもゲシュタルト計画に必要なシステムには変わりないのに! まあ、それでもみんな普通は失敗なんて誰も考えたくないですよね...。」

 

「(まあ失敗するんだけどな、多分)」

 

本当は人類が眠りについた後、計画を遂行することになるアンドロイドを管理する部署に配属されたかったという本音はある。やっぱりオートマタをプレイしたからにはアンドロイドに関わりたい。 人形だけあってめちゃくちゃ可愛いだろうし。

 

 

案内した若い男は珍しくエリヤの配属を純粋に己の職務のために喜んでいるようだった。きっとこの研究員は人類の行く末を考えて、真摯に行動しているのだろう。

 

 

..........先程の上司とは大違いだ。 上司といっても、元上司だが。

 

 

「エリヤさん、部署異動は本当かい!?」

 

「ああ、はい。」

 

「そんな......、」

 

それなりに見慣れた東京支部から「樹」の現場監察の為ににまさに移動しようとしていた時、慌ててエリヤの元上司が現れた。 そんな話は聞いていない、俺はこれからどうなる、だのブツブツと唸っている。

やがて目線があげられ、重なった目は嫌な光を帯びていた。

 

「急な話で大変だろう。何か苦労があれば遠慮なく頼ってくれ」

 

「いえ、結構です。インターンも終わったことですしこれ以上貴方に迷惑をかけるわけにもいかないので」

 

その節ではお世話になりましたと頭を軽く下げ、立ち去ろうとする。その時、手を掴まれた。振り払おうとするが存外強い力で握られているらしい。

 

「...............まだ何か?」

 

「何か、じゃないだろう。君がここまでやってこれたのは...誰のおかげだと思っているんだ?」

 

痛みこそないが握られた手がギチリと音を立てた。 何も答えず思わずため息をついてしまうエリヤに相手の眉が跳ね上がった。

 

「久礼博士の孫でありながら、ゲシュタルト計画の全容も知らない期待外れの無知で無能なお嬢様が調子に乗りやがって......。わかっているのか?ゲシュタルト計画が人類にとってどれほど重要なものなのか。 」

 

えぇ、おべんちゃらの次は逆ギレられた...。

勝手に期待して、勝手に裏切られたと思っているのはなんて自分勝手なんだろう。 あれ、これ勝手がゲシュタルト崩壊してない?ゲシュタルト計画だけに。

エリヤがつらつらと考えているうちに「元」上司はずっと恩知らずだの恥知らずだの何かを喚いていたが、エリヤの耳に入ることは無かった。

 

「お前たちの秘密を必ず暴いてやるからな」

 

 

仮に祖父が何かを企んでいたとして、今のエリヤに知ることなど出来やしないだろうに。

腰と手を掴まれ耳元で囁かれた言葉だけは嫌なしこりとなって奥底に留まることになる。

 

あの上司は多分、エリヤの前でできる男を演出したかったのだ。

恋に恋するような少女が、同世代の少年よりも「できる」ように見える大人に惚れてしまうことはよくあることだ。ちょっと紳士的に接すればコロッといけるだろうとあわよくばそれを狙っていたのかもしれない。

エリヤの中身は若いといってもくたびれた男なのでアプローチは全く意味が無く、なんやねんこいつとずっと思っていた。

むしろ何故か前よりも女の体なのに強くなった分、どうしても女扱いされてそういう目で見られることは忌避感がある。

 

 

その日の業務を全て終えると、研究員の男は神妙な顔をしてひとつの分厚いファイルを差し出してきた。 ファイル自体は普段慣れ親したしんだどうでもいい形式上の書類のものと同じだったが、特筆すべきは「機密」という赤い判子がデカデカと押されている点だった。

 

────ゲシュタルト計画概要書

 

 

この世界に来て嫌という程目にして、そしてその数だけ目を背けてきた言葉だった。

「一応確認しておいて下さいね」と言って去っていく研究員を見送り、重い文書を手に取る。 しかし、そこで思い浮かんだのはヨナの顔だった。

 

「今日はエリヤさんとお兄ちゃんのためにクッキーを作るの! だから、はやくかえってきてね..」

 

 

重い文書ファイルを置く。

白衣を脱いで、黒い防寒着を着る。どうせ文書に書いてあることなんて既に知っている。最近は頭痛がひどいから早く帰って、2人に会いたい。

 

 




おりぬしくん(ちゃん)
TSしているが本人が性別を意識しないようにしているのであまり描写されない。
ニーアとヨナを助けたけどショタコンでもロリコンでもない(多分)。 外見はDOD3の主人公ゼロに似ていなくもない。 名前の由来は旧約聖書の預言者

ニーア
助けてくれるかと思ったのに化け物にされかけたので国に対して不信感は高い。しかし多分政府側で何も喋らないオリ主には不信感がないと言えば嘘になるもののなんやかんや信頼している。

ヨナ
おかあさんみたいだなぁと最初は思っていたけれと、あまりに自堕落なオリ主をみてヨナがいっしょにいてあげなくちゃ!となった。それなりに健康体なのでテンションが高い

用語解説(ガバガバ)

世界浄化機関
国連に属する秘密組織のはずなのだがどうやらインターネットとかで存在をばらされてる組織。 ゲシュタルト計画を担っている。 ハーメルン機関と混同されがちだがこっちはレギオン討伐とかを受け持っている(はず)


レプリカント本編神話の森に出てくる樹。 正体は巨大ネットワークコンピューター 黒の書白の書システムやレプリカント計画失敗の際レプリカントを皆殺しにする役割があったんだそうな。1.22Eエンドでオートマタっぽい仕様になっており、レプリカントとオートマタの繋がりが強まった。

次回、オリ主死す!デュエルスタンバイ! (話が終わるとは言っていない)
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