女体化鯖に劣情を抱く……それはつまりホモでは? 作:独断独歩
「サーヴァント、セイバー『宮本武蔵』召喚に応じ参上した」
猫科の虎を思わせるギライついた瞳。
英霊召喚システム【フェイト】
科学と魔術の産物は、剣豪の時代にて『最強』と言われたこの男をついに呼び出してしまった。
「あれれ?」
と簡単に片付けられればよかったのだが……
「武蔵ちゃん……と言うよりは武蔵さん。しかし偽物と言うには、こっちの方が本物っぽい?」
「でも武蔵ちゃんは女の子だよね?」
ここに四振りの名刀を差した娘っ子が一人。
彼、カルデアのマスター
何の不幸か、それとも因果か。初めての英霊召喚において立て続けに現れたのは同じ英霊。だけど性別が違うという珍妙な事態に陥っていた。
「普通に考えたら、どっちかが偽物……うーん」
「わ、私は本物だよ!」
「……その方、女の成りにしては随分と鍛え上げられているようだが、
互いに宮本武蔵だと言い張る男と女。
こうなれば、どちらかが嘘をついているのは明白である。
「嘘じゃないよ、確かに私の剣はまだ道半場だけど……ほら、鬼ヶ島!……いや、この世界のこの子とは会ってないから別人だったかぁ~!!!」
あわわと頭を抱える女の宮本武蔵。
それに対して液晶パネルに映し出された宮本武蔵の肖像画を指差しながら「ほれ、似ても似つかぬだろう」と言葉にする男の宮本武蔵。
「霊基パターンはほぼ同一なんだけど……何でまた」
カルデアの総責任者を任せられるロマニ・アーキマンは頭を痛めた。
「宮本武蔵が女だったなんて逸話はない。あったとしても彼は近代の英霊だ。自発的に性別を変えてくるなんて無理そうだし、調べたかぎり女体化するような要因は確認出来ない。つまり普通に考えれば武蔵ちゃんは偽物ということになる」
「それって、第一特異点の黒いジャンヌみたいだってこと?」
これとは別口で召喚されていたレオナルド・ダ・ヴィンチの言葉に、リツカの記憶の中で聖杯によって造られた黒いジャンヌ・ダルクが思い浮かび上がる。
「まぁ、この召喚システムは通常の聖杯戦争のそれに比べればかなり異端な代物だ。
作り物に過ぎなかった彼女が召喚される可能性があるように、何故か女体化したサーヴァントが召喚されてもおかしくはないだろう」
「そっか。疑ってごめんね武蔵ちゃん」
「よかったー、召喚されていきなり贋作扱いされるとは思わなかったよ」
ペコリと頭を下げるリツカに武蔵ちゃんはあらぬ疑いが晴れたのを知ってホッと息を吐いた。
「女になった自身と相対することになろうとは、また愉快な時代になったものだ」
男の武蔵もそれで納得したようで、彼は自らのマスターに向き直って破笑する。
「宜しく頼む」
「あ……うん」
差し出された大きくゴツゴツとした傷だらけの手をリツカは少し遅れて握り返した。
「ほーう」
握手をしただけ。男の武蔵の感心するようなため息にピクリとリツカは肩を揺らす。
「手を握れば分かる。兵法者としての嗜みを欠かしてないようで結構。機会があればお前が振るのを見てみたい」
「良いけど……どうだろう。家に道場があったから、よく親父にしごかれたけど、殆ど身体を鍛えるのが目的の我流だから」
「ならば、ついでに稽古をつけてやろう」
ニヤリと笑う男の武蔵。
「あー!ダメダメ!そうやってマスターを独り占めする腹つもりでしょ!基礎を教えるぐらいなら私だって出来るんですから!」
そこに武蔵ちゃんが割って入り、取り敢えず初めての召喚が荒事にならなくて良かったとロマニ達はホッと息を吐いた。