イリヤ「抑止の輪より来たれ!天秤の守り手よーーー!!!」???「おめえがおらのますたーか?」 作:のび太の転生先
「さぁ、始めるわよ。リズ。セラ。」
幼い少女は月明かりの下でそう言った。
すると闇の中から2人の白い服に身を包んだ女性が現れた。
「はい、イリヤ様。」
片方の人物がそう言うとイリヤ様と呼ばれた人物は右手を前に突き出しながら声を大にして【詠唱】を始めた。
「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ閉じよ(みたせ)。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。」
詠唱を始めるとイリヤの前に描かれていた陣が輝きを放ち始める。
「繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する
――――告げる。汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ誓いを此処に。」
詠唱を続けるほどに陣の輝きはよりいっそう強くなっていく。
が、イリヤは詠唱をやめることはない。
それどころかどんどん力強く詠唱を読み上げていく。
「されど汝はその眼を混沌に曇らせ侍るべし。汝、狂乱の檻に囚われし者。我はその鎖を手繰る者――。」
その一説を読んだときに僅かにだがイリヤが顔に笑みを浮かべたように見えた。
後ろの2人は僅かに顔を強張らせたようにも見える。
「我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ!天秤の守り手よ―――!!!」
陣の輝きがあたり一面を明るく照らすほどの物になる。
流石のイリヤもその輝きに目をつむる。
その後ろの2人も思わず目をつむる。
一時の静寂。
光が収まったのを理解すると三人はゆっくりと目を開ける。
するとその陣の上には人のようなものが立っていた。
(来たッ!!!)
イリヤはすぐにその場所へと駆けつけていき、後ろの2人もそれに続いて駆けよる。
やがて煙が晴れていき、その場所にいた何かの姿がはっきりとしてくる。
筋肉質な身体、黒く長い髪の毛、割と大きな背中。
それが人間であることは一目で分かった。
だが、それを見た三人はまるで信じられないかのように目を丸くする。
そして、陣の上にいる人物は背後にいるイリヤ達に気がつくと振り返りながらこう言った。
「おめえがおらのますたーか?」
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「オッス!おら悟空!孫 悟空だ!」
「なっ!何いきなり真名をバラしてるのよ~!!!!」
孫悟空と名乗った人物は城に入るなりイリヤに怒鳴られていた。
「なっ!?そんなに怒鳴ることはねえだろよ…。」
「あったり前でしょ!!?あなたサーヴァントにとって真名がどれほど大切な物か理解してないわけ!!?それとも聖杯戦争ってなんなのかすらも理解してないの!!?」
「そ…そんなことはねえよ。聖杯戦争っちゅうのは…」
聖杯戦争。
それは7人のマスターと7人のサーヴァントが戦い合い、最後に残ったサーヴァントとマスターがどんな願いも叶えると言われる聖杯を手にすることができるもの。
それ故に7人のマスター、つまり7人の【魔術師】はこの日に向けてひたすらに努力をし聖杯戦争への参加資格を手に入れようと、そして勝ち残ろうとしている。
そして聖杯戦争の参加資格でもあり、聖杯戦争の開催も知らせる【令呪】。これが現れたマスターはサーヴァントの召還を行う。
イリヤの先ほどの詠唱もこのサーヴァント召喚だ。
そして召喚されたのが…
「そう、この最悪の出来損ないサーヴァントって事ね…」
「おらちゃんと聖杯戦争ってのは説明したじゃねえか。おらはしっかりとわかってっさ!!」
満面の笑みを浮かべながらイリヤに向かってそう言った。
もはやツッコむ気すら失せてしまったようで少し睨み付けてから大きくため息をついて俯いてしまった。
「「イリヤ(様)!!!」」
先ほどの白い服を着た女性達がすぐにイリヤに駆けよる。
イリヤを励ましているように見えるが、時折サーヴァントのことを睨んでいるのがはっきりと分かった。
(…おらそんなにわりいことしたか?)
イリヤの元に駆けよった二人はイリヤの顔をすぐに確かめる。
が、そのイリヤの顔は真っ青になってしまっていて生気を感じられなかった。
驚いて肩を揺らすとイリヤはまるで立つことすら無理だと言わんばかりに一切の抵抗なく大きく振られていた。
だがそれも無理は無い。
聖杯戦争において最も重要となるのはやはり実際に戦闘を行うサーヴァントの実力なのだ。
もちろん実力が全てでは無いが、宝具のようなものすらも持ち合わせているようにも見えず、ただのマッチョにしか見えないこの男は誰がどう見ても外れにしか見えなかったのだ。
そう、一体何のクラスなのかさえも分からないようなサーヴァントなど…
(あれ?)
そこでイリヤは自分のサーヴァントのクラスを把握していないことに初めて気づく。
本来イリヤの行った召喚の詠唱ならばある特定のクラスが召喚されるはずだった。
だが、その男はそのクラスの特徴が一切見受けられない。
イリヤの目はうつろになり風に揺れるかのようにゆらゆらと揺れながらサーヴァントに対してこう問う。
「…あなた、一体何のクラスなの?」
そう弱々しく、消えそうな声で言った。
もしこれでこのサーヴァントが【バーサーカー】と答えなかったらイリヤの召喚は完全に失敗してしまったことを意味することになる。
それだけはイリヤ自身も考えたくはなかった。
が、サーヴァントから返ってきた言葉は誰もが予想だにしていない言葉だった。
「おらのクラスか?えっと…確か~、ぐらっぐらー?」
この期に及んでまだふざけたようなことを言葉にするサーヴァントにさすがの白服の二人も怒りを露わにする。
「あなたはイリヤ様を侮辱しているのですか!!!」
「おまえ、イリヤの敵か…!」
二人が武器をサーヴァントに向けて構えるとサーヴァントは焦ったように2人に静止をかけながら、
「まっ、待ってくれよ!!えっと~…えっと…そうだ!!おらのクラスは【グラップラー】だ!!」
その言葉を聞いたイリヤの目に僅かに光が戻る。
そしてその瞳は確実に孫悟空に向けられていた。
「何を訳の分からないことを!【グラップラー】なんてクラス聞いたことありません!!!」
「おまえ、イリヤの…敵!」
2人はそれぞれサーヴァントに向かって突撃しようとするが、その二人に向かって鋭い声が向けられる。
「待ちなさい!リズ!セラ!」
その声に驚いた二人はすぐに攻撃の手をやめてその言葉を言い放ったイリヤに視線を向ける。
なぜイリヤがなぜそんなことを言ったのか全く分からない様子だったが指示は絶対だ。
二人は孫悟空に近寄っていくイリヤを黙って見守ることしかできなかった。
「孫悟空。あなたいま、自分のクラスは【グラップラー】だと言ったわね?それは間違えないのかしら?」
孫悟空の正面に立って真っ直ぐと彼の目を見つめて問いをなげる。
すると孫悟空も真っ直ぐとイリヤの目を見つめてゆっくりと答え始める。
「あぁ、おらはグラップラーのサーヴァントだ。」
そう言われたイリヤは孫悟空のステータスを確認する。
聖杯戦争に参加しているマスター【魔術師】達はサーヴァントのステータスを確認することができる。
イリヤはそれを使って孫悟空のクラスやステータス、そして真名を確認した。
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真名:?????(孫 悟空)
クラス:グラップラー
性別:男性
属性:中立,悪
筋力:B
耐久:C
俊敏:B
魔力:C
幸運:B
宝具:EX
クラス別スキル
魔力放出(気):A-
魔力探知(気):B-~B+
気配遮断:A-
クラスチェンジ可変:B
成長性:EX
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(これが…こいつのステータス、本当にグラップラーのクラスだなんて…。ステータスは、可もなく不可もなくバランスに優れたタイプなのかしら。グラップラーなんて特殊なクラス、全然知識なんてないから正直このステータスがグラップラーのステータスとして高いのかそれとも低いのか…分からないことが多すぎる。それにスキルも、クラスチェンジ可変?それに成長性?全くもって分からない…。)
ステータスを見て納得できたのはクラスが本当にグラップラーだったと言う事実のみで、それ以外はほとんど疑問ばかりしか出てこなかった。
いや、むしろ本当にグラップラーという未知の特殊クラスだったからこそ疑問点しか上がらなかったのだろう。
目を丸くしてグラップラーを見つめるイリヤに気がついた悟空は笑顔を見せながら答えた。
「な?本当にグラップラーのクラスだったろ?」
そんな飾り気も緊張感もない笑顔にイリヤはまた大きなため息をつく。
しかし、少なくともクラスや真名を確認でき、戦力として使えることは確信が持てることに安心する。
セラ、リズと呼ばれた2人の女性もイリヤが目配せをすると持っていた武器をしまうとグラップラーと対峙してイリヤのとなりに並ぶ。
「挨拶が遅れて失礼したわね。私はあなたのマスターであり、アインツベルン家の魔術師イリヤスフィール・フォン・アインツベルンよ。」
「私はセラと申します。イリヤ様に使えるメイドです。」
「私はリーゼリット。同じくイリヤのメイドだよ。」
イリヤが始めに挨拶をする。
するとその後に続いて2人も挨拶をする。
リーゼリットを除く2人の挨拶はとても丁寧でいい家柄の人物であろうことはすぐに分かった。
「イリヤに、セラな!覚えたぞ!けど、おめえさっきリズって呼ばれてなかったか?」
「それは、イリヤが呼びやすいからって…」
「リーゼリット!だからイリヤ様と呼びなさいとあれほど…!!!」
グラップラーの質問が火種となってしまったようでセラとリズの言い合いが始まってしまった。
悟空はあちゃ~といいたげな顔をしながら後頭部をかく。
イリヤもその様子を見て軽いため息をつく。
少し待っても収まりそうな様子がなかったので、悟空が無理矢理話しを始める。
「おらはグラップラーのサーヴァント孫悟空だ!改めてこれからよろしくな!」
そう言いながらイリヤに手を伸ばす。
そんな行動を予測できなかったようでイリヤはその手を見て目を丸くする。
少し間が空いてからイリヤはグラップラーの手に自身の手を合わせる。
するとグラップラーはイリヤの手を軽く握り握手をした。
イリヤの手が丸々隠れてしまうくらい大きく、温かい手だった。
イリヤはそんな繋がれた手をずっと見つめていた。
グラップラーが握手から手を離そうとする。
が、手を引っ張ろうとするとまだイリヤが手を握っていることに気がつく。
グラップラーは柔らかな笑みを浮かべながらしゃがみこみ、イリヤに目線を合わせる。
「よろしくな。」
グラップラーはそう言いながらもう一度握手する。
するとイリヤも手からこちらに視線を向けて。
「この聖杯戦争に負けるなんて許さないからね。」
そう言いながら握り返す。
次にグラップラーが手を離したときはイリヤも悟空の手を離した。
その瞬間イリヤが少しだけ寂しそうな顔をしたのを誰も気がつかなかった。
グラップラーはセラとリズにも挨拶をしながら握手をしていく。
2人は戸惑いながらもグラップラーとの握手を交わした。
イリヤ達はまずグラップラーのことを聞きながらこの大きなアインツベルン城(日本居住用)を案内することにした。
そんな途中のことだった。
「ん?」
グラップラーが突然なにかに気づいたかのように、窓の外へと目線を向ける。
イリヤ達はそれに疑問を抱きグラップラーの目線の先を見る。
「何かあったの。グラップラー?」
イリヤがグラップラーに問う。
するとグラップラーは振り向かずに窓の外を見つめながらこう答えた。
「なにか強い気を…いや、強い魔力を持ったやつがそれなりのスピードでこっちに向かってきてやがる。」
それを聞いた瞬間イリヤ、セラ、リズの三人の目が鋭くなる。
「それって、サーヴァント!?」
「多分な。」
それを聞いてセラとリズは戦闘態勢を取ろうとする。
が、それに対してイリヤは静止をかける。
2人は驚いてイリヤを見つめるが、グラップラーはイリヤをまっすぐと見つめている。
「…グラップラー、あなたの実力を試させてもらうわよ!」
そう言いながら令呪の紡がれた腕をグラップラーヘと突きつける。
そう言われたグラップラーは待ってましたと言わんばかりの笑顔を見せながら、「おう!」と答えた。
その後2人はいくらか言葉を交わすとセラとリズをおいて家の外へと飛び出していった。
どうやら正面から受けてたつようだ。
ついに始まる聖杯戦争。
イリヤたちにとっての第一戦がまさに今これから始まろうとしていた。
勢い任せですので一話失踪の可能性も…。
出来る限り頑張ります。