『存在』と『虚無』の力は神をも屠る(更新停止、凍結中&新シリーズ作成中)。   作:狩村 花蓮

15 / 21
『存在』と『虚無』の力は神をも屠る 前回までの三つの出来事。一つ、ハジメたちは地上へと戻った。二つ、ユーマは我流武術、四奏流を使った。そして三つ、ハジメたちはハウリアと名乗る少女と出会った





第十三話 ハウリアという亜人族

三人称side

 

「どうか私の家族を助けて下さい!」

 

峡谷にウサミミ少女改めシア・ハウリアの声が響く。どうやら、このウサギ一人ではないらしい。仲間も同じ様な窮地にあるようだ。よほど必死なのか、先程から相当強くユエに蹴りを食らっているのだが、頬に靴をめり込ませながらも離す気配がない。

 

ユーマはすでにアーマーを脱いでいる。それはもうあまりに必死に懇願するので、ハジメは仕方なく・・・・・・・・〝纏雷〟をしてやった。

 

「アババババババババババアバババ!?」

 

電圧と電流は調整してあるので死にはしないが、しばらく動けなくなるくらいの威力はある。シアのウサミミがピンッと立ちウサ毛がゾワッと逆だっている。〝纏雷〟を解除してやると、ビクンッビクンッと痙攣しながらズルズルと崩れ落ちた。

 

「全く、話を聞けば支離滅裂、で、あまつさえ家族を助けろとか・・・・・・・・非常識なウザウサギだ。ユエ、ユーマ、行くぞ?」

「ん・・・・・・・・」

「えぇ・・・(困惑)ここで見捨てるのさすがにかわいそうじゃね?それにこれからのシーンをお前らが見たら多分やばいと思うぞ。」

「知るか。ほら早くアーマーを着ろよ。行くぞ。」

 

ハジメは何事もなかったように再びバイクに魔力を注ぎ込み発進させようとした。

 

しかし・・・・・・・・

 

「に、にがじませんよ~」

 

ゾンビの如く起き上がりハジメの脚にしがみつくシア。流石に驚愕したハジメは思わず魔力注入を止めてしまう。

 

「ほらな?」

「「えぇ・・・(困惑)」」

「それで、えぇっと・・・・・・・・シア・ハウリアさん?でいいんだっけ?」

「えっ?あ、は、はい!私がシアです!」

「OK。じゃあ細かい話はあとにして、だ。この先にいるのはシアさんのいる亜人族ってことでいいのかな?」

「はい・・・・・・・・魔物に襲われて、ここに・・・・・・・・」

「よし、言質はとった。ハジメ、シアさんを頼む。」

「はぁ!?何でおれがこのウサギを保護しねぇといけねんだ!」

「今死なれると困るからだ。私は先に行く。来るかどうかはハジメの裁量で構わない。」

 

そう言うとユーマはアーマーを着装し、ブーストを吹かして一気に峡谷出口まで飛んでいく。

 

「おい!・・・・・・・・はぁ、行っちまいやがった。」

「ハジメ、どうする?」

「・・・・・・・・アイツの言ったことは理にかなってる。どうせ樹海に行くには亜人族の案内は必須だ。ここで恩を売っておくべきだろ?」

 

ハジメは鉱石を宝物庫から取り出し、何やら作っていく。そうして出来上がったのは、バイクにつけるシート・・・・・・・・つまるところサイドカーである。

 

ハジメはそれを二輪に錬成でくっつける。

 

「ほら、乗れよウザウサギ。お前の家族を助けられるチャンスだぞ。」

「・・・・・・・・はいっ!」

 

ハジメはユエを後ろに、シアをサイドカーに乗せて二輪を走らせる。その間、ハジメはシアから事情を聴く。

 

シア達、ハウリアと名乗る兎人族達は【ハルツィナ樹海】にて数百人規模の集落を作りひっそりと暮らしていた。兎人族は、聴覚や隠密行動に優れているものの、他の亜人族に比べればスペックは低いらしく

 

突出したものがないので亜人族の中でも格下と見られる傾向が強いらしい。性格は総じて温厚で争いを嫌い、一つの集落全体を家族として扱う仲間同士の絆が深い種族だ。また、総じて容姿に優れており

 

エルフのような美しさとは異なった、可愛らしさがあるので、帝国などに捕まり奴隷にされたときは愛玩用として人気の商品となる。

 

そんな兎人族の一つ、ハウリア族に、ある日異常な女の子が生まれた。兎人族は基本的に濃紺の髪をしているのだが、その子の髪は青みがかった白髪だったのだ。しかも、亜人族には無いはずの魔力まで有しており、直接魔力を操るすべと、とある固有魔法まで使えたのだ。

 

当然、一族は大いに困惑した。兎人族として、いや、亜人族として有り得ない子が生まれたのだ。魔物と同様の力を持っているなど、普通なら迫害の対象となるだろう。

 

しかし、彼女が生まれたのは亜人族一、家族の情が深い種族である兎人族だ。百数十人全員を一つの家族と称する種族なのだ。ハウリア族は女の子を見捨てるという選択肢を持たなかった。

 

しかし、樹海深部に存在する亜人族の国【フェアベルゲン】に女の子の存在がばれれば間違いなく処刑される。魔物とはそれだけ忌み嫌われており、不倶戴天の敵なのである。

 

国の規律にも魔物を見つけ次第、できる限り殲滅しなければならないと有り、過去にわざと魔物を逃がした人物が追放処分を受けたという記録もある。

 

また、被差別種族ということもあり、魔法を振りかざして自分達亜人族を迫害する人間族や魔人族に対してもいい感情など持っていない。樹海に侵入した魔力を持つ他種族は、総じて即殺が暗黙の了解となっているほどだ。

 

故に、ハウリア族は女の子を隠し、十六年もの間ひっそりと育ててきた。だが、先日とうとう彼女の存在がばれてしまった。その為、ハウリア族はフェアベルゲンに捕まる前に一族ごと樹海を出たのだ。

 

行く宛もない彼等は、一先ず北の山脈地帯を目指すことにした。山の幸があれば生きていけるかもしれないと考えたからだ。未開地ではあるが、帝国や奴隷商に捕まり奴隷に堕とされてしまうよりはマシだ。

 

しかし、彼等の試みは、その帝国により潰えた。樹海を出て直ぐに運悪く帝国兵に見つかってしまったのだ。巡回中だったのか訓練だったのかは分からないが、一個中隊規模と出くわしたハウリア族は南に逃げるしかなかった。

 

女子供を逃がすため男達が追っ手の妨害を試みるが、元々温厚で平和的な兎人族と魔法を使える訓練された帝国兵では比べるまでもない歴然とした戦力差があり、気がつけば半数以上が捕らわれてしまった。

 

全滅を避けるために必死に逃げ続け、ライセン大峡谷にたどり着いた彼等は、苦肉の策として峡谷へと逃げ込んだ。流石に、魔法の使えない峡谷にまで帝国兵も追って来ないだろうし

 

ほとぼりが冷めていなくなるのを待とうとしたのである。魔物に襲われるのと帝国兵がいなくなるのとどちらが早いかという賭けだった。

 

しかし、予測に反して帝国兵は一向に撤退しようとはしなかった。小隊が峡谷の出入り口である階段状に加工された崖の入口に陣取り、兎人族が魔物に襲われ出てくるのを待つことにしたのだ。

 

そうこうしている内に、案の定、魔物が襲来した。もう無理だと帝国に投降しようとしたが、峡谷から逃がすものかと魔物が回り込み、ハウリア族は峡谷の奥へと逃げるしかなかった。そうやって、追い立てられるように峡谷を逃げ惑い・・・・・・・・

 

「今では六十人ほどいた家族も僅かしか残っていません。このままでは全滅です・・・・・・・・どうか、どうか!我々を助けてはくれませんか!」

 

ハジメはそれを聞いて少し考える。確かに彼女たちの境遇は同情こそすれ忌み嫌うものではない。それにユーマが言った通り、メリットもある。しかしハジメはそれでもユーマがいなければ・・・・・・・・真由美がいなければ『否』と答えていただろう。

 

ただでさえ勇者のお勤めかなぐり捨てて地球に変える手段を見つけなきゃならないのだ。時間がないときにこんな些細なことに割いている余裕はない。だが、真由美という戦力的にとても助かるやつがいるのだ。・・・・・・・・まぁ今はユーマが変わりだが。

 

少しは余裕がある。ならば同情を優先しても怒られないだろう。ハジメはユエの方を見る。ユエもどうやら同じ気持ちらしい。元よりハジメたちは、ユーマが・・・・・・・・真由美が決めたなら断る道理はないのだ。

 

「まぁ、今回はお前たちの境遇に免じて・・・・・・・・アイツのお人よしに免じて引き受けてやるよ。元よりそのためにお前を乗せたんだがな」

「っ!ありがとうございます!」

「そのあとはお前たち次第だ。まぁ、頑張るんだな。」

 

シアはその目に少しだけ涙を浮かべていた。それを見てユエはハジメに・・・・・・・・地雷をぶつけた。

 

「・・・・・・・・やっぱり大きいほうが好きなの?」

「ぶふぉ!?ゆ、ユエさん?あなたはいきなりなにをおっしゃってるのでせう?」

「・・・・・・・・ハジメ、大きいほうが好きなの?真由美もそう、ユエより大きいし、ハジメも好意、持ってる。」

「それはな?あくまでもこうなる前の価値観であって今は違う・・・・・・・・からな?」

 

何とも言えない空気が漂う。するとハジメの前方で爆音が響いた。

 

「ひゃぅ!?なななんですかこの音!」

「・・・・・・・・ユーマのやつ、おっぱじめやがったな。」

「んっ。大盤振る舞い。」

「えぇっと・・・・・・・・それはいったいどういう・・・・・・・・?」

「ウザウサギ。しっかり捕まって一言もしゃべるなよ?舌噛んでも知らねぇからな?」

「うぇ!?いったい何がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

ウザウサギことシアの回答を聞く前に、ハジメはバイクを加速させた。

 

____________________

 

ユーマは純白のアーマー、ホワイト・グリントを駆り、魔物の反応がする方まで急いでとんでいた。無論ハウリア族を救出するためだ。ユーマは背部のウェポンラックからライフルを二丁、取り出す。

 

が、その武器が使われることはなかった。現場についてみると、魔物の数が予想よりもはるかに多いのだ。その数・・・・・・・・およそ12。

 

(原作だとこんなに多くはないはず・・・・・・・・やっぱ私の存在が影響与えて正史とずれ始めているのか?・・・・・・・・とにかく今は殲滅するのが先だ。数が多いならこれだ!)

 

突然ホワイト・グリントの両肩部の表面が開き、中から白い筒のようなものが見えた。それは勢いよく発射されると白い尾を引きながら魔物の方へと飛んでいき、分裂した。そしてその分裂した何かは

 

ハジメの手榴弾を彷彿とさせるような爆発を引き起こし、魔物を地面に追い落とした。それはすでに、原形をとどめてはいなかった。

 

「ふぅ・・・・・・・・いっちょ上がりっと」

 

彼女が着る白いアーマーの眼前には、肉塊が大量に転がっていた。その先には、シアと名乗ったあのウサミミ少女と似たような人型が身を寄せ合っていた。

 

ハウリア族である。彼女はハウリア族を襲おうとしている魔物を肩部にひそかに装備していた小型の多弾頭ミサイルで肉塊へと変えたのだ。

 

ん?ホワイト・グリントにそんな装備はないだろ!って?この作品にそんなことを求めちゃいかんよ。既にシリアスのような何かとギャグのような何かを混ぜて煮込んでできたくそみたいな作品だからね

 

気にしちゃいけないよ。・・・・・・・・まぁとにかく、そんなこんなでハウリア族を襲おうとしていた魔物を一網打尽にしたユーマは、ハウリア族のもとへと降りた。

 

『大丈夫ですか?』

 

ユーマはそう声をかける。しかしハウリアは首を縦に振るだけで一言も声を発しない。怖がっているのだ。

 

(そりゃそうだよね。こんなものがいきなり声かけてきたら誰だっておびえる。私もそうだ。)

 

ユーマはアーマーの後部を解放する。そして本来の姿をハウリア族に見せた。ハウリアは全員驚いていた。

 

「・・・・・・・・驚きました。まさか人間だったとは。失礼な態度を取ってしまい誠に申し訳ありませんでした。」

 

「よく誤解されますから別にかまいませんよ、こんなものを使ってるとね。これがないと私はただの魔力が高い非力な女でしかありませんから、こんな大掛かりなものが必要になっちゃうんですよね。」

 

ユーマはホワイト・グリントの装甲を軽くたたく。本当はそんなことを言われた例はないのだが、会話をする上の言葉のあやとしてユーマはそう言った。

 

「ですが、しっかりと戦えているように見えました。戦いの心得はあるんですね。」

 

「まぁこう見えても武術の類は嗜んでまして。・・・・・・・・それで、あなたのお名前は?」

 

「これは失礼。私はカム。ハウリア族の族長をしております。」

 

「そうか、あなたが・・・・・・・・安心してください。シアさんは無事ですよ。」

 

「っ!そうですか・・・・・・・・それは、良かった。」

 

カムは心底安心したようにつぶやく。他の人もみんなそれぞれ歓喜したりしている。すると、何かが走っているような爆音が響いてきた。ユーマはにやりと笑う

 

「噂をすれななんとやら・・・・・・・・あなた方のお連れ様が来ましたよ。」

 

カムたちはハッとする。そしてその直後、彼らの耳には聞こえた。あの女の子の、家族の声が。

 

「父上―!皆―!」

 

こうしてカムたちは、シアと再会することがかなったのだ。

 

_________________________

 

ハジメたちと合流したユーマは、ここまでの事情を話した。そして、ユーマたちが樹海に行きたいということも話した。そしてその水先案内人をっ止めてほしいとお願いした。

 

カムは少し唸った後、二つ返事でOKをくれた。どうやら助けたことは正解だったようだ。そして、ハジメたちの方もシアからの話で少し有益なものがあったそうだ。

 

シアには未来視というものがあるらしい。それを使うと、リチャージがものすごく長いが、少し先の未来が見えるというもの。それを使ってシアはハジメたちを見つけたようだ。

 

これがもし精度よくリチャージが短く使えるのだとしたら、それは戦闘で大いに役に立つ。先を見れるということは初見殺しが効かなくなるということなのだ。

 

何が起こるか分からない戦いにおいてこれほど有利な能力はない。ハジメたちはどうにかその技能が手に入らないか試しているようだ。そううまくはいかないと思うが。

 

そんなこんなでハウリア族を連れたハジメ一行は出口の方へと向かっていた。目的地は樹海である。ウサミミ四十二人をぞろぞろ引き連れて峡谷を行く。ユーマは上空から警戒している。

 

万一にもあり得ないと思うがハジメが危なくなったときや仕留めそこなった魔物を潰す係だ。まぁそんな大所帯で移動しているのだから

 

当然、数多の魔物が絶好の獲物だとこぞって襲ってくるのだが、ただの一匹もそれが成功したものはいなかった。例外なく、兎人族に触れることすら叶わず、接近した時点で閃光が飛び頭部を粉砕されるからである。

 

乾いた破裂音と共に閃光が走り、気がつけばライセン大峡谷の凶悪な魔物が為すすべなく絶命していく光景に、兎人族達は唖然として、次いで、それを成し遂げている人物であるハジメに対して畏敬の念を向けていた。

 

もっとも、小さな子供達は総じて、そのつぶらな瞳をキラキラさせて圧倒的な力を振るうハジメをヒーローだとでも言うように見つめている。

 

「ふふふ、ハジメさん。チビッコ達が見つめていますよ~手でも振ってあげたらどうですか?」

 

子供に純粋な眼差しを向けられて若干居心地が悪そうなハジメに、シアが実にウザイ表情で「うりうり~」とちょっかいを掛ける。

 

額に青筋を浮かべたハジメは、取り敢えず無言で発砲した。

 

ドパンッ! ドパンッ! ドパンッ!

 

「あわわわわわわわっ!?」

 

ゴム弾が足元を連続して通過し、奇怪なタップダンスのようにワタワタと回避するシア。道中何度も見られた光景に、シアの父カムは苦笑いを、ユエは呆れを乗せた眼差しを向ける。

 

「はっはっは、シアは随分とハジメ殿を気に入ったのだな。そんなに懐いて……シアももうそんな年頃か。父様は少し寂しいよ。だが、ハジメ殿なら安心か……」

 

すぐ傍で娘が未だに銃撃されているのに、気にした様子もなく目尻に涙を貯めて娘の門出を祝う父親のような表情をしているカム。周りの兎人族達も「たすけてぇ~」と悲鳴を上げるシアに生暖かい眼差しを向けている。

 

「いや、お前等。この状況見て出てくる感想がそれか?」

 

「・・・・・・・・ズレてる」

 

ユエの言う通り、どうやら兎人族は少し常識的にズレているというか、天然が入っている種族らしい。それが兎人族全体なのかハウリアの一族だけなのかは分からないが。

 

そうこうしている内に、一行は遂にライセン大峡谷から脱出できる場所にたどり着いた。ハジメが〝遠見〟で見る限り、中々に立派な階段がある。

 

岸壁に沿って壁を削って作ったのであろう階段は、五十メートルほど進む度に反対側に折り返すタイプのようだ。階段のある岸壁の先には樹海も薄らと見える。

 

ライセン大峡谷の出口から、徒歩で半日くらいの場所が樹海になっているようだ。ハジメが何となしに遠くを見ていると、シアが不安そうに話しかけてきた。

 

「帝国兵はまだいるでしょか?」

 

「ん? どうだろうな。もう全滅したと諦めて帰ってる可能性も高いが・・・・・・・・」

 

「そ、その、もし、まだ帝国兵がいたら・・・・・・・・ハジメさん・・・・・・・・どうするのですか?」

 

「? どうするって何が?」

 

質問の意図がわからず首を傾げるハジメに、意を決したようにシアが尋ねる。周囲の兎人族も聞きウサミミを立てているようだ。

 

「今まで倒した魔物と違って、相手は帝国兵・・・・・・・・人間族です。ハジメさんと同じ。・・・・・・・・敵対できますか?」

 

「残念ウサギ、お前、未来が見えていたんじゃないのか?」

 

「はい、見ました。帝国兵と相対するハジメさんを・・・・・・・・」

 

「だったら・・・・・・・・何が疑問なんだ?」

 

「疑問というより確認です。帝国兵から私達を守るということは、人間族と敵対することと言っても過言じゃありません。同族と敵対しても本当にいいのかと・・・・・・・・」

 

シアの言葉に周りの兎人族達も神妙な顔付きでハジメを見ている。小さな子供達はよく分からないとった顔をしながらも不穏な空気を察してか大人達とハジメを交互に忙しなく見ている。

 

しかし、ハジメは、そんなシリアスな雰囲気などまるで気にした様子もなくあっさり言ってのけた。

 

「それがどうかしたのか?」

 

「えっ?」

 

疑問顔を浮かべるシアにハジメは特に気負った様子もなく世間話でもするように話を続けた。

 

「だから、人間族と敵対することが何か問題なのかって言ってるんだ」

 

「そ、それは、だって同族じゃないですか・・・・・・・・」

 

「お前らだって、同族に追い出されてるじゃねぇか」

 

「それは、まぁ、そうなんですが・・・・・・・・」

 

「大体、根本が間違っている」

 

「根本?」

 

さらに首を捻るシア。周りの兎人族も疑問顔だ。

 

「いいか? 俺は、お前等が樹海探索に便利だから連れて行ってる。んで、それまで死なれちゃ困るから守っているだけ。断じて、お前等に同情してとか、義侠心に駆られて助けているわけじゃない。まして、今後ずっと守ってやるつもりなんて毛頭ない。忘れたわけじゃないだろう?」

 

「うっ、はい・・・・・・・・覚えてます・・・・・・・・」

 

「だから、樹海案内の仕事が終わるまでは守る。自分のためにな。それを邪魔するヤツは魔物だろうが人間族だろうが関係ない。道を阻むものは敵、敵は殺す。それだけのことだ。まぁ、アイツはどう思ってるのか知らないけどな」

 

「な、なるほど・・・・・・・・」

 

何ともハジメらしい考えに、苦笑いしながら納得するシア。〝未来視〟で帝国と相対するハジメを見たといっても、未来というものは絶対ではないから実際はどうなるか分からない。

 

見えた未来の確度は高いが、万一、帝国側につかれては今度こそ死より辛い奴隷生活が待っている。表には出さないが〝自分のせいで〟という負い目があるシアは、どうしても確認せずにはいられなかったのだ。

 

「はっはっは、分かりやすくていいですな。樹海の案内はお任せくだされ」

 

カムが快活に笑う。下手に正義感を持ち出されるよりもギブ&テイクな関係の方が信用に値したのだろう。その表情に含むところは全くなかった。

 

一行は、階段に差し掛かった。ハジメを先頭に順調に登っていく。帝国兵からの逃亡を含めて、ほとんど飲まず食わずだったはずの兎人族だが、その足取りは軽かった。亜人族が魔力を持たない代わりに身体能力が高いというのは嘘ではないようだ。

 

そして、遂に階段を上りきり、ハジメ達はライセン大峡谷からの脱出を果たす。

 

登りきった崖の上、そこには・・・・・・・・

 

「おいおい、マジかよ。生き残ってやがったのか。隊長の命令だから仕方なく残ってただけなんだがなぁ~こりゃあ、いい土産ができそうだ」

 

三十人の帝国兵がたむろしていた。周りには大型の馬車数台と、野営跡が残っている。全員がカーキ色の軍服らしき衣服を纏っており、剣や槍、盾を携えており、ハジメ達を見るなり驚いた表情を見せた。

 

だが、それも一瞬のこと。直ぐに喜色を浮かべ、品定めでもするように兎人族を見渡した。

 

「小隊長! 白髪の兎人もいますよ! 隊長が欲しがってましたよね?」

 

「おお、ますますツイテルな。年寄りは別にいいが、あれは絶対殺すなよ?」

 

「小隊長ぉ~、女も結構いますし、ちょっとくらい味見してもいいっすよねぇ? こちとら、何もないとこで三日も待たされたんだ。役得の一つや二つ大目に見てくださいよぉ~」

 

「ったく。全部はやめとけ。二、三人なら好きにしろ」

 

「ひゃっほ~、流石、小隊長! 話がわかる!」

 

帝国兵は、兎人族達を完全に獲物としてしか見ていないのか戦闘態勢をとる事もなく、下卑た笑みを浮かべ舐めるような視線を兎人族の女性達に向けている。兎人族は、その視線にただ怯えて震えるばかりだ。

 

帝国兵達が好き勝手に騒いでいると、兎人族にニヤついた笑みを浮かべていた小隊長と呼ばれた男が、ようやくハジメの存在に気がついた。

 

「あぁ? お前誰だ? 兎人族・・・・・・・・じゃあねぇよな?」

 

ハジメは、帝国兵の態度から素通りは無理だろうなと思いながら、一応会話に応じる。

 

「ああ、人間だ」

 

「はぁ~? なんで人間が兎人族と一緒にいるんだ? しかも峡谷から。あぁ、もしかして奴隷商か? 情報掴んで追っかけたとか? そいつぁまた商売魂がたくましいねぇ。まぁ、いいや。そいつら皆、国で引き取るから置いていけ」

 

勝手に推測し、勝手に結論づけた小隊長は、さも自分の言う事を聞いて当たり前、断られることなど有り得ないと信じきった様子で、そうハジメに命令した。

 

当然、ハジメが従うはずもない。

 

「断る」

 

「・・・・・・・・今、何て言った?」

 

「断ると言ったんだ。こいつらは今は俺のもの。あんたらには一人として渡すつもりはない。諦めてさっさと国に帰ることをオススメする」

 

聞き間違いかと問い返し、返って来たのは不遜な物言い。小隊長の額に青筋が浮かぶ。

 

「・・・・・・・・小僧、口の利き方には気をつけろ。俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」

 

「十全に理解している。あんたらに頭が悪いとは誰も言われたくないだろうな」

 

ハジメの言葉にスっと表情を消す小隊長。周囲の兵士達も剣呑な雰囲気でハジメを睨んでいる。その時、小隊長が、剣呑な雰囲気に背中を押されたのか、ハジメの後ろから出てきたユエに気がついた。

 

幼い容姿でありながら纏う雰囲気に艶があり、そのギャップからか、えもいわれぬ魅力を放っている美貌の少女に一瞬呆けるものの、ハジメの服の裾をギュッと握っていることからよほど近しい存在なのだろうと当たりをつけ、再び下碑た笑みを浮かべた。

 

「あぁ~なるほど、よぉ~くわかった。てめぇが唯の世間知らず糞ガキだってことがな。ちょいと世の中の厳しさってヤツを教えてやる。くっくっく、そっちの嬢ちゃんえらい別嬪じゃねぇか。てめぇの四肢を切り落とした後、目の前で犯して、奴隷商に売っぱらってやるよ」

 

その言葉にハジメは眉をピクリと動かし、ユエは無表情でありながら誰でも分かるほど嫌悪感を丸出しにしている。目の前の男が存在すること自体が許せないと言わんばかり、ユエが右手を掲げようとした。

 

しかしそれを制するように、空からユーマの着ているアーマーが”落ちて来た”。誤字ではない、そのままの意味だ。そしてホワイト・グリントは、地面すれすれでブーストを吹かし、着地する。

 

その衝撃波は帝国兵を襲う。その間にユーマはアーマーから出て、アーマーをハウリア族の警備へと回らせる。そしてユーマは声を上げた。

 

「これはこれは、自身の性欲を垂れ流して命を道具としてしか見れない哀れな帝国兵の皆さんじゃありませんか。」

 

「くそっ!誰だテメェ!」

 

「お初にお目にかかります。私、ユーマと申します。以後お見知りおきを。」

 

ユーマは相手を挑発するように、そう言った。当然、帝国兵はきれる。

 

「なんだこの女ァ!・・・・・・・・いや、いい。テメェの体もよさそうだ。おい女、その体でおれたちを満足させろ、そうすれば許してやる。」

 

「あら?そうですか。でもわたし、あなた達に謝ったって意味ないんですよね。」

 

そう言ってユーマはおどける

 

「なんだとこのアマ!」

 

小隊長はまたもやキレる。が、彼女の顔を見た瞬間青ざめた、まるで、人殺しを娯楽としてしか見ていないような、得物を前に高笑いする異常者のように見えたからだ。

 

ごきげんよう(こんにちは)。そして、ごきげんよう(さようなら)。」

 

彼女は懐から杖のようなものを取り出し、兵士たちの目線程度まで腕を上げるとそれを横薙ぎにふるった。帝国兵が覚えていたのはそこまでだ。自身が何をされたのか把握できず、意識は闇の中へと沈んだ。

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。次回はフェアベルゲンとカムたちの魔改造まで進めたらいいなと思います。カムたちはどうなることやら・・・・・・・・。

そして、第3章からはオリキャラが増える予定です。これで原作ブレイクが進んでしまう・・・・

意見感想なども受け付けていますのでどしどしお寄せください。ではまた次回お会いいたしましょう。さようなら!

光輝君の死んでからの処遇について

  • 死んでから死体がいろいろ利用される
  • 新たな光輝君として生き返らせる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。