『存在』と『虚無』の力は神をも屠る(更新停止、凍結中&新シリーズ作成中)。   作:狩村 花蓮

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『存在』と『虚無』の力は神をも屠る、前回までの三つの出来事。一つ、ユーマは自身の心の内を吐露した。二つ、一行は無事にフェアベルゲンについた。そして三つ、紆余曲折ありユーマは、フェアベルゲンの亜人を皆殺しにする宣言をしたが、ハウリアに止められた。


第十五話 ハウリア族の運命

 

三人称side

 

「お待ちください!我々はそんなことは望んでいない!」

 

そう言ってユーマを制したのは、先ほどまで不当な暴力を受けていたはずのカム・ハウリアその人であった。

 

「・・・・・・・・良いのか?この話が撤回されればお前たちは安住の地を得られるんだぞ?その機会を棒に振るのか?」

 

「我々はすでに里を追い出された身。今更戻っても他の亜人が納得するわけがないのです。ですから我々はそれ以上を求めません。」

 

「・・・・・・・・覚悟はできているのだな。分かった、すまなかったな長老諸君。脅すような真似をしてしまって。ハジメ、あとは任せる。私はこれからのことについて何も関わらん。」

 

「ここまでやっておいてこっちに丸投げかよ、ったく。・・・・・・・・まぁいいか。んじゃ、そちらの話を聞こうか。」

 

その後改めて会談の場が設けられた。当然ユーマは参加していない。ちなみにユーマがぼこぼこにした熊の亜人は内臓破裂、ほぼ全身の骨が粉砕骨折という危険な状態であったが、何とか一命は取り留めたらしい。

 

高価な回復薬を湯水の如く使ったようだ。もっとも、もう二度と戦士として戦うことはできないようだが・・・・・・・・

 

現在、当代の長老衆である虎人族のゼル、翼人族のマオ、狐人族のルア、土人族(俗に言うドワーフ)のグゼ、そして森人族のアルフレリックが、ハジメと向かい合って座っていた。ハジメの傍らにはユエとカム、シアが座り、その後ろにハウリア族が固まって座っている。

 

長老衆の表情は、アルフレリックを除いて緊張感で強ばっていた。戦闘力では一,二を争う程の手練だった熊の亜人(名前はジン)が、文字通り手も足も出ず瞬殺されたのであるから無理もない。

 

「で? あんた達は俺等をどうしたいんだ? 俺は大樹の下へ行きたいだけで、邪魔しなければ敵対することもないんだが・・・・・・・・亜人族全員としての意思を統一してくれないと、いざって時、何処までやっていいかわからないのは不味いだろう?

 

あんた達的に。殺し合いの最中、敵味方の区別に配慮する程、俺はお人好しじゃないぞ」

 

ハジメの言葉に、身を強ばらせる長老衆。言外に、亜人族全体との戦争も辞さないという意志が込められていることに気がついたのだろう。

 

「こちらの仲間を再起不能にしておいて、第一声がそれか・・・・・・・・それで友好的になれるとでも?」

 

グゼが苦虫を噛み潰したような表情で呻くように呟いた。

 

「は? 何言ってるんだ? 先に殺意を向けてきたのは、あの熊野郎だろ? アイツは返り討ちにしただけだ。再起不能になったのは自業自得ってやつだよ」

 

「き、貴様! ジンはな! ジンは、いつも国のことを思って!」

 

「それが、初対面の相手を問答無用に殺していい理由になるとでも?」

 

「そ、それは! しかし!」

 

「勘違いするなよ? 俺達が被害者で、あの熊野郎が加害者。長老ってのは罪科の判断も下すんだろ? なら、そこのところ、長老のあんたがはき違えるなよ?」

 

おそらくグゼはジンと仲が良かったのではないだろうか。その為、頭ではハジメの言う通りだと分かっていても心が納得しないのだろう。だが、そんな心情を汲み取ってやるほど、ハジメはお人好しではない。

 

「グゼ、気持ちはわかるが、そのくらいにしておけ。彼の言い分は正論だ」

 

アルフレリックの諌めの言葉に、立ち上がりかけたグゼは表情を歪めてドスンッと音を立てながら座り込んだ。そのまま、むっつりと黙り込む。

 

「確かに、この少年は、紋章の一つを所持しているし、その実力も大迷宮を突破したと言うだけのことはあるね。僕は、彼を口伝の資格者と認めるよ」

 

そう言ったのは狐人族の長老ルアだ。糸のように細めた目でハジメを見た後、他の長老はどうするのかと周囲を見渡す。

 

その視線を受けて、翼人族のマオ、虎人族のゼルも相当思うところはあるようだが、同意を示した。代表して、アルフレリックがハジメに伝える。

 

「南雲ハジメ。我らフェアベルゲンの長老衆は、お前さんを口伝の資格者として認める。故に、お前さんと敵対はしないというのが総意だ・・・・・・・・可能な限り、末端の者にも手を出さないように伝える。・・・・・・・・しかし・・・・・・・・」

 

「絶対じゃない・・・・・・・・か?」

 

「ああ。知っての通り、亜人族は人間族をよく思っていない。正直、憎んでいるとも言える。血気盛んな者達は、長老会議の通達を無視する可能性を否定できない。特に、今回再起不能にされたジンの種族、熊人族の怒りは抑えきれない可能性が高い。アイツは人望があったからな・・・・・・・・」

 

「それで?」

 

アルフレリックの話しを聞いてもハジメの顔色は変わらない。すべきことをしただけであり、すべきことをするだけだという意志が、その瞳から見て取れる。アルフレリックは、その意志を理解した上で、長老として同じく意志の宿った瞳を向ける。

 

「お前さんを襲った者達を殺さないで欲しい」

 

「・・・・・・・・殺意を向けてくる相手に手加減しろと?」

 

「そうだ。お前さんらの実力なら可能だろう?」

 

「あの熊野郎が手練だというなら、可能か否かで言えば可能だろうな。だが、殺し合いで手加減をするつもりはない。あんたの気持ちはわかるけどな、そちらの事情は俺にとって関係のないものだ。同胞を死なせたくないなら死ぬ気で止めてやれ」

 

奈落の底で培った、敵対者は殺すという価値観は根強くハジメの心に染み付いている。殺し合いでは何が起こるかわからないのだ。手加減などして、窮鼠猫を噛むように致命傷を喰らわないとは限らない。その為、ハジメがアルフレリックの頼みを聞くことはなかった。

 

しかし、そこで虎人族のゼルが口を挟んだ。

 

「ならば、我々は、大樹の下への案内を拒否させてもらう。口伝にも気に入らない相手を案内する必要はないとあるからな」

 

その言葉に、ハジメは訝しそうな表情をした。もとより、案内はハウリア族に任せるつもりで、フェアベルゲンの者の手を借りるつもりはなかった。そのことは、彼等も知っているはずである。だが、ゼルの次の言葉で彼の真意が明らかになった。

 

「ハウリア族に案内してもらえるとは思わないことだ。そいつらは罪人。フェアベルゲンの掟に基づいて裁きを与える。何があって同道していたのか知らんが、ここでお別れだ。

 

忌まわしき魔物の性質を持つ子とそれを匿った罪。フェアベルゲンを危険に晒したも同然なのだ。既に長老会議で処刑処分が下っている」

 

ゼルの言葉に、シアは泣きそうな表情で震え、カム達は一様に諦めたような表情をしている。この期に及んで、誰もシアを責めないのだから情の深さは折紙付きだ。

 

「この期に及んでそれか?やめておけ。今回はハウリアの連中が止めたからよかったものの、今度そんなことをやろうとすれば本当にアイツはお前ら全員皆殺しにするぞ?あいつはキレると、俺より容赦がないからな。」

 

「それでもだ。これは掟なのだから、我らにとって掟は絶対なのだ。」

 

「そーかい。なら俺は止めないけどな。」

 

そこでシアが口を開く。

 

「長老様方! どうか、どうか一族だけはご寛恕を! どうか!」

 

「シア! 止めなさい! 皆、覚悟は出来ている。お前には何の落ち度もないのだ。そんな家族を見捨ててまで生きたいとは思わない。ハウリア族の皆で何度も何度も話し合って決めたことなのだ。お前が気に病む必要はない」

 

「でも、父様!」

 

土下座しながら必死に寛恕を請うシアだったが、ゼルの言葉に容赦はなかった。

 

「既に決定したことだ。ハウリア族は全員処刑する。フェアベルゲンを謀らなければ忌み子の追放だけで済んだかもしれんのにな」

 

ワッと泣き出すシア。それをカム達は優しく慰めた。長老会議で決定したというのは本当なのだろう。他の長老達も何も言わなかった。おそらく、忌み子であるということよりも

 

そのような危険因子をフェアベルゲンの傍に隠し続けたという事実が罪を重くしたのだろう。ハウリア族の家族を想う気持ちが事態の悪化を招いたとも言える。何とも皮肉な話だ。

 

「そういうわけだ。これで、貴様が大樹に行く方法は途絶えたわけだが? どうする? 運良くたどり着く可能性に賭けてみるか?」

 

それが嫌なら、こちらの要求を飲めと言外に伝えてくるゼル。他の長老衆も異論はないようだ。しかし、ハジメは特に焦りを浮かべることも苦い表情を見せることもなく、何でもない様に軽く返した。

 

「お前、アホだろ?」

 

「な、なんだと!」

 

ハジメの物言いに、目を釣り上げるゼル。シア達も思わずと言った風にハジメを見る。ユエはハジメの考えがわかっているのかすまし顔だ。

 

「俺は、お前らの事情なんて関係ないって言ったんだ。俺からこいつらを奪うってことは、結局、俺達の行く道を阻んでいるのと変わらないだろうが」

 

ハジメは長老衆を睥睨しながら、スっと伸ばした手を泣き崩れているシアの頭に乗せた。ピクッと体を震わせ、ハジメを見上げるシア。

 

「俺から、こいつらを奪おうってんなら・・・・・・・・覚悟を決めろ」

 

「ハジメさん・・・・・・・・」

 

ハジメにとって今の言葉は単純に自分の邪魔をすることは許さないという意味で、それ以上ではないだろう。しかし、それでも、ハウリア族を死なせないために亜人族の本拠地フェアベルゲンとの戦争も辞さないという言葉は、その意志は、絶望に沈むシアの心を真っ直ぐに貫いた。

 

「本気かね?」

 

アルフレリックが誤魔化しは許さないとばかりに鋭い眼光でハジメを射貫く。

 

「当然だ」

 

しかし、全く揺るがないハジメ。そこに不退転の決意が見て取れる。この世界に対して自重しない、邪魔するものには妥協も容赦もしない。奈落の底で言葉にした決意だ。

 

「フェアベルゲンから案内を出すと言っても?」

 

ハウリア族の処刑は、長老会議で決定したことだ。それを、言ってみれば脅しに屈して覆すことは国の威信に関わる。

 

今後、ハジメ達を襲うかもしれない者達の助命を引き出すための交渉材料である案内人というカードを切ってでも、長老会議の決定を覆すわけにはいかない。

 

故に、アルフレリックは提案した。しかし、ハジメは交渉の余地などないと言わんばかりにはっきりと告げる。

 

「何度も言わせるな。俺の案内人はハウリアだ」

 

「なぜ、彼等にこだわる。大樹に行きたいだけなら案内人は誰でもよかろう」

 

アルフレリックの言葉にハジメは面倒そうな表情を浮かべつつ、シアをチラリと見た。先程から、ずっとハジメを見ていたシアはその視線に気がつき、一瞬目が合う。すると僅かに心臓が跳ねたのを感じた。視線は直ぐに逸れたが、シアの鼓動だけは高まり続ける。

 

「約束したからな。案内と引き換えに助けてやるって」

 

「・・・・・・・・約束か。それならもう果たしたと考えてもいいのではないか? 峡谷の魔物からも、帝国兵からも守ったのだろう? なら、あとは報酬として案内を受けるだけだ。報酬を渡す者が変わるだけで問題なかろう。」

 

「問題大ありだ。案内するまで身の安全を確保するってのが約束なんだよ。途中でいい条件が出てきたからって、ポイ捨てして鞍替えなんざ・・・・・・・・」

 

ハジメは一度、言葉を切って今度はユエを見た。ユエもハジメを見ており目が合うと僅かに微笑む。それに苦笑いしながら肩を竦めたハジメはアルフレリックに向き合い告げた。

 

「格好悪いだろ?」

 

闇討ち、不意打ち、騙し討ち、卑怯、卑劣に嘘、ハッタリ。殺し合いにおいて、ハジメはこれらを悪いとは思わない。生き残るために必要なら何の躊躇いもなく実行して見せるだろう。

 

しかし、だからこそ、殺し合い以外では守るべき仁義くらいは守りたい。それすら出来なければ本当に唯の外道である。ハジメも男だ。奈落の底で出会った傍らの少女がつなぎ止めてくれた一線を、自ら越えるような醜態は晒したくない。

 

ハジメに引く気がないと悟ったのか、アルフレリックが深々と溜息を吐く。他の長老衆がどうするんだと顔を見合わせた。しばらく、静寂が辺りを包み、やがてアルフレリックがどこか疲れた表情で提案した。

 

「ならば、お前さんの奴隷ということにでもしておこう。フェアベルゲンの掟では、樹海の外に出て帰ってこなかった者、奴隷として捕まったことが確定した者は、死んだものとして扱う。

 

樹海の深い霧の中なら我らにも勝機はあるが、外では魔法を扱う者に勝機はほぼない。故に、無闇に後を追って被害が拡大せぬように死亡と見なして後追いを禁じているのだ。

 

・・・・・・・・既に死亡と見なしたものを処刑はできまい」

 

「アルフレリック! それでは!」

 

完全に屁理屈である。当然、他の長老衆がギョッとした表情を向ける。ゼルに到っては思わず身を乗り出して抗議の声を上げた。

 

「ゼル。わかっているだろう。この少年が引かないことも、その力の大きさも。ハウリア族を処刑すれば、確実に敵対することになる。その場合、どれだけの犠牲が出るか・・・・・・・・長老の一人として、そのような危険は断じて犯せん」

 

「しかし、それでは示しがつかん! 力に屈して、化物の子やそれに与するものを野放しにしたと噂が広まれば、長老会議の威信は地に落ちるぞ!」

 

「だが・・・・・・・・」

 

ゼルとアルフレリックが議論を交わし、他の長老衆も加わって、場は喧々囂々の有様となった。やはり、危険因子とそれに与するものを見逃すということが、既になされた処断と相まって簡単にはできないようだ。悪しき前例の成立や長老会議の威信失墜など様々な思惑があるのだろう。

 

だが、そんな中、ハジメが敢えて空気を読まずに発言する。

 

「ああ~、盛り上がっているところ悪いが、シアを見逃すことについては今更だと思うぞ?」

 

ハジメの言葉に、ピタリと議論が止まり、どういうことだと長老衆がハジメに視線を転じる。

 

ハジメはおもむろに右腕の袖を捲ると魔力の直接操作を行った。すると、右腕の皮膚の内側に薄らと赤い線が浮かび上がる。さらに、〝纏雷〟を使用して右手にスパークが走る。

 

長老衆は、ハジメのその異様に目を見開いた。そして、詠唱も魔法陣もなく魔法を発動したことに驚愕を表にする。

 

「俺も、シアと同じように、魔力の直接操作ができるし、固有魔法も使える。次いでに言えばこっちのユエもな。あんた達のいう化物ってことだ。

 

だが、口伝では〝それがどのような者であれ敵対するな〟ってあるんだろ? 掟に従うなら、いずれにしろあんた達は化物を見逃さなくちゃならないんだ。

 

シア一人見逃すくらい今更だと思うけどな。それに、アイツも言ってたように、亜人だってごくわずかに魔力を持ってるんだ。そして、それを操作する技能も。

 

ただ、その魔力が作用するのがこの霧だけっていう制約がついてるから魔法などが使えないだけであって、お前たちも立派な化け物だよ。・・・・・・・・と、これがアイツの言い分だな」

 

しばらく硬直していた長老衆だが、やがて顔を見合わせヒソヒソと話し始めた。そして、結論が出たのか、代表してアルフレリックが、それはもう深々と溜息を吐きながら長老会議の決定を告げる。

 

「はぁ~、ハウリア族は忌み子シア・ハウリアを筆頭に、同じく忌み子である南雲ハジメの身内と見なす。そして、資格者南雲ハジメに対しては、敵対はしないが、フェアベルゲンや周辺の集落への立ち入りを禁ずる。

 

以降、南雲ハジメの一族に手を出した場合は全て自己責任とする・・・・・・・・以上だ。何かあるか?」

 

「いや、何度も言うが俺は大樹に行ければいいんだ。こいつらの案内でな。文句はねぇよ」

 

「・・・・・・・・そうか。ならば、早々に立ち去ってくれるか。ようやく現れた口伝の資格者を歓迎できないのは心苦しいが・・・・・・・・」

 

「気にしないでくれ。全部譲れないこととは言え、相当無茶言ってる自覚はあるんだ。むしろ理性的な判断をしてくれて有り難いくらいだよ」

 

ハジメの言葉に苦笑いするアルフレリック。他の長老達は渋い表情か疲れたような表情だ。恨み辛みというより、さっさとどっか行ってくれ! という雰囲気である。その様子に肩を竦めるハジメはユエやシア達を促して立ち上がった。

 

ユエは終始ボーとしていたが、話は聞いていたのか特に意見を口にすることもなくハジメに合わせて立ち上がった。

 

しかし、シア達ハウリア族は、未だ現実を認識しきれていないのか呆然としたまま立ち上がる気配がない。ついさっきまで死を覚悟していたのに、気がつけば追放で済んでいるという不思議。「えっ、このまま本当に行っちゃっていいの?」という感じで内心動揺しまくっていた。

 

「おい、何時まで呆けているんだ? さっさと行くぞ」

 

ハジメの言葉に、ようやく我を取り戻したのかあたふたと立ち上がり、さっさと出て行くハジメの後を追うシア達。アルフレリック達も、ハジメ達を門まで送るようだ。

 

シアが、オロオロしながらハジメに尋ねた。

 

「あ、あの、私達・・・・・・・・死ななくていいんですか?」

 

「? さっきの話聞いてなかったのか?」

 

「い、いえ、聞いてはいましたが・・・・・・・・その、何だかトントン拍子で窮地を脱してしまったので実感が湧かないといいますか・・・・・・・・信じられない状況といいますか・・・・・・・・」

 

周りのハウリア族も同様なのか困惑したような表情だ。それだけ、長老会議の決定というのは亜人にとって絶対的なものなのだろう。どう処理していいのか分からず困惑するシアにユエが呟くように話しかけた。

 

「・・・・・・・・素直に喜べばいい」

 

「ユエさん?」

 

「・・・・・・・・ハジメに救われた。それが事実。受け入れて喜べばいい」

 

「・・・・・・・・」

 

ユエの言葉に、シアはそっと隣を歩くハジメに視線をやった。ハジメは前を向いたまま肩を竦める。

 

「まぁ、約束だからな」

 

「ッ・・・・・・・・」

 

シアは、肩を震わせる。樹海の案内と引き換えにシアと彼女の家族の命を守る。シアが必死に取り付けたハジメとの約束だ。

 

元々、〝未来視〟でハジメが守ってくれる未来は見えていた。しかし、それで見える未来は絶対ではない。シアの選択次第で、いくらでも変わるものなのだ。

 

だからこそ、シアはハジメの協力を取り付けるのに〝必死〟だった。相手は、亜人族に差別的な人間で、シア自身は何も持たない身の上だ。交渉の材料など、自分の〝女〟か〝固有能力〟しかない。

 

それすら、あっさり無視された時は、本当にどうしようかと泣きそうになった。

 

それでもどうにか約束を取り付けて、道中話している内に何となく、ハジメなら約束を違えることはないだろうと感じていた。

 

それは、自分が亜人族であるにもかかわらず、差別的な視線が一度もなかったことも要因の一つだろう。だが、それはあくまで〝何となく〟であり、確信があったわけではない。

 

だから、内心の不安に負けて、〝約束は守る人だ〟と口に出してみたり〝人間相手でも戦う〟などという言葉を引き出してみたりした。実際に、何の躊躇いもなく帝国兵と戦おうとしてくれた時、どれほど安堵したことか。結局始末したのはユーマだったが。

 

シアは内心ユーマを詰ったことを後悔していた。あれほど何のためらいもなく手にかけたことに対して不安を感じたから衝動的に言ってしまったのであって、本心ではなかったのだ。

 

それもあって、今回はいくらハジメでも見捨てるのではという思いがシアにはあった。帝国兵の時とはわけが違う。言ってみれば、帝国の皇帝陛下の前で宣戦布告するに等しいのだ。

 

にもかかわらず一歩も引かずに約束を守り通してくれた。例えそれが、ハジメ自身の為であっても、ユエの言う通り、シアと大切な家族は確かに守られたのだ。

 

先程、一度高鳴った心臓が再び跳ねた気がした。顔が熱を持ち、居ても立ってもいられない正体不明の衝動が込み上げてくる。それは家族が生き残った事への喜びか、それとも・・・・・・・・

 

シアは、ユエの言う通り素直に喜び、今の気持ちを衝動に任せて全力で表してみることにした。すなわち、ハジメに全力で抱きつく!

 

「ハジメさ~ん! ありがどうございまずぅ~!」

 

「どわっ!? いきなり何だ!?」

 

「むっ・・・・・・・・」

 

泣きべそを掻きながら絶対に離しません! とでも言う様にヒシッとしがみつき顔をグリグリとハジメの肩に押し付けるシア。その表情は緩みに緩んでいて、頬はバラ色に染め上げられている。

 

それを見たユエが不機嫌そうに唸るものの、何か思うところがあるのか、ハジメの反対の手を取るだけで特に何もしなかった。

 

喜びを爆発させハジメにじゃれつくシアの姿に、ハウリア族の皆もようやく命拾いしたことを実感したのか、隣同士で喜びを分かち合っている。

 

それを何とも複雑そうな表情で見つめているのは長老衆だ。そして、更に遠巻きに不快感や憎悪の視線を向けている者達も多くいる。

 

ハジメはその全てを把握しながら、ここを出てもしばらくは面倒事に巻き込まれそうだと苦笑いするのだった。

 

「まず礼を言う相手が違うだろ。俺はあくまでもあいつの納得がいくようにことを進めただけだ。感謝するならあいつにするんだな。」

 

ハジメはフェアベルゲンの入り口の方を指さす。シアたちがそちらを見るとそこには腕を組んで目をつぶりよりかかっていたユーマの姿があった。

 

シアたちはユーマの方へ行く。

 

「終わったのか?」

 

「一応、な。出禁にはなったが基本手を出さないことを確約してくれたよ。」

 

「そうか・・・・・・・・やはり私には交渉事は向いておらんな。ハジメの方が性に合ってるようだ。」

 

「やめてくれ。俺だってこんなのはもうごめんだ。」

 

「フフッ。さて、出禁を言い渡された身だ。さっさと出て行こうじゃないか。」

 

「迷宮まで行けるのにはまだ時間があるがどうするんだ?」

 

「ん?ハウリアを特訓するのではなかったのか?」

 

「・・・・・・・・確かに。それもそうだな。さてお前たち、行くぞ。」

 

ユーマたちはこうしてフェアベルゲンを出て行った。

 


 

ユーマside

 

はい皆さんどーも。ユーマでございます。いやぁねぇ、あれはダメだわ。流石に我慢ならなかったわ。いやだってびっくりしたんよ?私だって。

 

フェアベルゲンに来てふと亜人族を調べたらさ、かすかに魔力の反応があってね。その魔力が霧と同質のものだって知った時は驚いたさね。

 

原作ではそこ追及されなかったからなぁ。先祖返りだっていうのは分かってたんだけどそれでも仕上が魔力持ちで直接操作が可能だった理由があんまり理解できてなかったんよ。

 

でもこれで納得できたわ。どおりで亜人だけがこの霧を突破できるわけだよ。・・・・・・・・全くとんでもないことになったな。ん?今何やってるかって?何ってそりゃあ・・・・・・・・

 

「オラオラどおしたぁ!ペース落ちてんぞー!」

 

ハウリア鍛えてるに決まってるでしょ。ハジメが。ハウリアの隠形?は目を見張るものがあるからねぇ、ナイフを持たせて暗殺者やればそれなりに行けるでしょ。

 

敵は殺す。そこに感情が入る余地はよほど弱い相手の時のみ、それ以外は基本余地はない。だから、ハウリアには切り替えを覚えさせようと私は思う。

 

原作だとハジメがそこら辺を教えなかったせいでナチュラルキラーになったわけだけど、基本は自愛の塊みたいなハウリアをナチュラルキラーにするのはかわいそうなので

 

仕事と通常を分けられるようにする。武器に関しては・・・・・・・・どうしようかな?ナイフは確定として飛び道具は欲しいよね。・・・・・・・・あぁそうだ。ハジメから鉱石をもらおう。

 

それで作ればいいんだ。よし、即行動だ。ってことでハジメ―鉱石ちょうだーい。

 

「あん?何に使うんだよ。・・・・・・・・ハウリアの飛び道具を作るぅ?まぁそれならいいか、ほら、宝物庫を持っていけ。いくらでも入ってるぞ。」

 

さっすがー。ハジメってば優しいなぁ。まぁという訳でちゃっちゃと作っちゃいますかね。あ、そうだ。ちなみに今のステータスはこんな感じね。

 

______________

 

 

 

 ユーマ 年齢不明 女 レベル92

 

 

 

  天職:祝福の機鎧巫女

 

 

 

  筋力:50000 (最大強化時10,000,000)

 

 

 

  耐性:30000 (最大強化時6,000,000)

 

 

 

  敏捷:28000 (最大強化時5,600,000)

 

 

 

  魔力:300000 (最大強化時60,000,000)

 

 

 

  魔耐:300000 (最大強化時60,000,000)

 

 

 

 技能:機体作成[+全武装作成][+想像作成][+武器作成][+消耗品作成][+動力作成]義体作成 ルーン魔術(偽)同化[+消滅][+ワームスフィア][+形質変化][+形状変化][+増幅][+自己修復] 飛行 魔眼[+全能の眼][+封印][+進化]言語理解

 

 

 

_________________________

 

とまぁこんな感じで完全に本体・・・・・・・・本来の真由美さんのステータスと同期されましたですはい。でもこれ向こうのレベルが上がってないからこれで全部ってわけじゃないんだぜ?ん?分かりずらかった?ようは大本が更新されてないからこれで値が止まるわけじゃない

 

ってことさ。もっと上がるってことだね。そして、全武装作成と想像作成って言うのは簡単に言えば武器だけはオリジナルなものが作れるってことさね。これでハウリアに渡す武器が作れるぜ。自由にいじれるオリジナル武装ってロマンだよな。

 

・・・・・・・・よし、こんなもんでいいかな。さて、あとはハウリアを訓練しなきゃ。

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。次回はハウリアの訓練の成果と新武装のお披露目、亜人族の襲撃までは入れたいと思います。叶うなら樹海の大迷宮のシーンまで行ければなぁと思っています。ではまた次回お会いいたしましょう。さようなら!

光輝君の死んでからの処遇について

  • 死んでから死体がいろいろ利用される
  • 新たな光輝君として生き返らせる
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