『存在』と『虚無』の力は神をも屠る(更新停止、凍結中&新シリーズ作成中)。   作:狩村 花蓮

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『存在』と『虚無』の力は神をも屠る。前回までの三つの出来事。一つ、真由美とハジメは檜山によって落とされた。二つ、檜山は清水、恵理、龍太郎の手で屠られた。そして三つ、真由美は奈落でハジメと再会する。


第八話 真の大迷宮と金髪の少女、そして・・・・・・・・

 

三人称side

 

「あん?・・・・・・・・お前、真由美か?」

「そうですよハジメ。生きてるようでほっとしました。」

「俺はお前が死んでるんじゃないかってひやひやしてたがな。」

「ふむ?私のことを心配してくれてたのですか?」

「助けてくれた恩人を心配しただけだ。別に他意はないぞ。」

 

真由美の目の前にいるのは左腕を半ばから失い、髪がアルビノのように白くなっている南雲ハジメその人だった。ただ、彼のもつ武器が異常であった。

 

「その左腕のことも聞きたいんですが、まずはその持ってるやつを優先します。それ、何ですか?」

「これか?これはドンナー。そこに寝てるクマ野郎を殺すために作った武器だ。」

 

右手に握られている漆黒のリボルバーを思わせるフォルムの兵器。それはかつてハジメが作り上げようとして失敗した、銃器そのものであった。

 

「そう、作れたんですね。銃。」

「すげぇ失敗したけどな。何度作り直したことか・・・・・・・・」

「あのー、ハジメ。私の武器壊れてしまったので・・・・・・・・新しいの作ってくれませんか?」

「これをもう一丁作れってか?・・・・・・・・仕方ねぇな。少し待ってくれ、すぐできる。」

 

そういうとハジメは奥の小さな洞穴?の方へと向かい、中から鉱石類などを取り出した。そしてそれを錬成で適切な形へと変えていく。

 

そしてそれはだんだんとハジメが持っているリボルバーと同じ形へと変えられていく。そして、銃を構成する各種パーツが形成され、ハジメはそれを組み合わせていく。

 

そして出来上がったのはハジメが持つドンナーと似ているが、銃身が少し延長されているタイプだった。

 

「スリングアウト式のリボルバーでよかったか?お前はレールガン使わないだろうし。」

「使えるなら何でもいいですよ。」

「分かった。弾薬は俺のと共有できるようにしてあるから、足りなくなったら言ってくれ。とりあえず12発分は渡しておく。」

「分かりました。ありがとうございます、ハジメ。」

 

真由美はハジメからリボルバーを受け取る。その見た目はメタリック。鉄を思わせるカラーリングだった。真由美はシリンダーを展開し、弾薬を詰めて戻す。

 

数度構えを取った後、弾薬を落とし、リロードの手順を確認し、弾薬をシリンダーから抜く。

 

「おぉ、なんだか様になってるな。」

「一度だけ海外に行ったことがあって、その時にあっちで撃ったんです。」

「へぇ、それで様になってるのか。おっと、これも渡しておくな。」

 

そう言ってハジメが渡してきたのはリボルバー用のホルダーだった。

 

「これって、ホルダーですか?」

「あぁ。さっきの爪熊の皮を使って作ったんだ。俺と違って五体満足のお前なら十分に使いこなせるだろ?」

「と言いつつあなたもちゃっかり作ってるじゃないですか。」

「まぁな。とにかくこれがあると楽だ。つけていけ。」

「分かりました。ありがとです、ハジメ。」

 

2人はこの奈落の底で再び出会い、前へと進み始めたのだった。

 

___________________

 

真由美side

 

どうも皆さん、真由美です。いやー、檜山に案の定落とされましたよ。今頃誰かに殺されてるんじゃない?まぁそんなことはどうでもいいけどね。

 

さて、何とかハジメと合流できてよかった。マジでどこだかわかんなかったからね。ハジメがすでに銃を作ってたことに驚きを隠せないけどね。案の定魔物を食って魔力の直接操作ができるようになってましたですはい。

 

そして私も、ハジメと合流するときに魔物を一匹同化したからなのか、魔力の直接操作ができるようになってました。魔力放出というおまけ付きで。どこぞの騎士王かってんだ!

 

とまぁ、なんだかんだで攻略を進めてた我々なんだけど、今まさにこの物語のターニングポイントに来ております。えぇ、50層まで下りてきました。えっ?場面飛ばしすぎだろって?

 

そう言われればそうっすね。てなわけで少しお話をば。あの後、ハジメと私は奈落の最初にいたところを調べてました。地上に戻る方法を探すために。

 

でも案の定上に上るルートはなく、どうしようかとなってるところで、ハジメが下に伸びる階段を見つけました。そう、皆さんお察しの通りここもまた大迷宮の一部だったという訳です。原作で言う真の大迷宮ってやつ。

 

私とハジメは下りきれば地上に戻れるかもしれないと思い、下ることにしました。いやーその道のりは地獄なってもんじゃなかったよ。こっちを石化させてくる蝙蝠的な奴とか、すっごい獰猛なサメみたいなやつとか

 

神経犯してくるカエルのような何かとか、切っても気っても動く巨大なムカデとか。もはやGレベルだね。あのカサカサ苦手だわー。後あれだ、変な奴もいたわ。

 

軍隊蟻のごとく群がってくるミノタウロス的な奴とか!こいつに至っては原作にいなかったでしょうが―!いやまぁ、ハジメのドンナーと私のリボルバーの殲滅力にはかなわなかったけどさ。

 

だってレールガンにあのザインの能力だぜ?電磁加速されて音速の壁を余裕で突き破る金属の玉と極太ビームやぞ。誰も防げるわけないやん。もうね、一発撃つだけで体が粉々になるか蒸発するのよ。

 

でも弱点がないわけでもない。ハジメのドンナーは水の中に対しては無力って言う弱点もある。けど、正直私はそんな弱点あってないようなもんだよ。だって水とかあっても蒸発させちゃうから意味がないんだもん。

 

しかも魔眼があるからいくらか楽になったしね。ここに来るまでに二つくらい魔眼を手に入れたのだよ。一つは捕縛の眼。これは文字通り、相手の体の自由を奪う。

 

大体の敵がこれで動かなくなるからあとはもうどうとでもできるんだよね。二つ目の魔眼は奪魂の眼。これは二つ効果があって、一つは死んだ相手の魂を魔力or体力としてドレインできること。そしてもう一つは

 

瀕死のやつ限定で、即死させることができる。範囲は結構広い。一度認識した相手だったらある程度離れてても行ける。ハジメのドンナーで運良く死ななかった奴はこれで確殺。ついでに魔力と体力回復できて一石二鳥!

 

まぁ途中で弾薬足りなくなりつつあって追加分作ったりもしたけどね。存外うまくやれてたと思う。でもハジメの錬成を見てると私も欲しくなるって言うね。ほんま羨ましいでぇ!まぁそんな訳で現在に戻ると。

 

私たちの目の前にはこれまた立派な扉があるではありませんか。なんだこの重厚感あふれる扉はぁー?あーユエさんが故あって幽閉されてるところですね。()()()()()。やっべー、言ってて悲しくなってきたわー。

 

あっ、ちなみに口調ね、素で話すことにしたんだわ。なんかハジメとしばらく話してたらですます口調がバカらしくなっちゃって・・・・・・・・嘘ですはい、単純にめんどくなって猫かぶってることもハジメにバレたんで

 

喋るのやめましたすいません。

 

「さて、この扉どうしますかねー。」

「開けるしかないだろ。この階層はここしか怪しいところないしな。」

「ですねー。という訳でさっさと開けますか。」

 

ここ開けないとハジメとユエの出会いなくなっちゃうからねー。ってなわけで強行突破だ。この扉相当堅いと思うんだよねー。一発でいけるように威力上げとかないと。

 

・・・・・・・・何かめんどくなったわ、バーッと行こうバーッと。

 

「おい待てなんでお前リボルバー取り出してんの!?」

「そりゃ決まってるでしょ。開けるのよ、この部屋。」

「脳筋かお前は!?」

「ハイいっきまーす!」

 

撃鉄起こせっ!ってね。私は迷いなく引き金を引きました。本気で撃ったので扉は粉々・・・・・・・・というか跡形もなく吹き飛びましたですはい。やりすぎた。

 

「やばい、やりすぎてしまった。」

「お前アホだろ。生粋のアホだろ。」

「何おう!私だってそこまでアホじゃないわよ!」

「じゃあこの惨状をどうやって説明する?」

 

ハジメ指さす先には融解して真っ赤な扉があったであろう枠組み。

 

「あははー・・・・・・・・めんどくさくって。」

「はぁー。もういいわ、これ以上言ってもしょうがねぇな。・・・・・・・・っと、また扉があるぞ。それにでかい石像的な何かがある。」

「こういう石像って、扉に触ったら動き出すパターンよね。」

「・・・・・・・・ぶっ壊しておくか。」

「ハジメ、あんたも大概脳筋だと思う。人のこと言えないのでは?」

「うるせぇわ。テメェみたいに常に何でもかんでも壊せばいい理論で攻略してるわけじゃねぇよ。考えてるのこっちは!」

「アーハイハイソーデスネー。」

「てんめぇ・・・・・・・・終わったら覚えとけよ!」

 

そう言ってハジメは懐からドンナーを抜く。私も持ってたリボルバーを構える。こういう石像は大体固くできてるから本気出してもいいよね。

 

ってことで最大出力。緑色の結晶がたくさん出るレベルでやっちゃうよー!

 

   ドパンっ!

   ギュワァー!

 

銃声とビーム音。もう現代兵器でもなっていい音じゃないのよ。見事石像は爆散。跡形も残ってないけど、爆散する瞬間、表情が泣き顔になってたような気がするけど気にしない。

 

許せサイクロップス。さっさと進行したいがためのコラテラルダメージなんだ。さて、もう一つの扉の前にいる訳なんだけど・・・・・・・・うん。大きいし開きそうにないなこれ。

 

「どうするよハジメ。開きそうにないよこれ。」

「・・・・・・・・はぁ。やっていいぞ、めんどくさいから。」

「あっ、今めんどくさいって言ったな。」

「アーハイハイ、イッタワー、サッサトヤリヤガレクダサイ。」

「カタコトムカつくぅ!まぁでもめんどくさいのは同感だからパーってやっちゃいましょうか。」

 

ってなわけではいどーん!扉は粉々私は笑顔ハジメは真顔通り越してあきれ顔。いやぁー全力全開はスカッとするねー。という訳で中に入ります。

 

あ、魔石入れてないから部屋真っ暗だ。うーん・・・・・・・・よし、適当に魔力流して明かりをつけてみよーか。ってなわけで魔力放出っと・・・・・・・・良しついた。案外やってみるもんだな。

 

____________________________________

 

三人称side

 

真由美が魔力を流すと、部屋の中でフラッシュがたかれたようにあたりが光る。思わず真由美とハジメは目をつぶる、が、それはすぐに収まり目を開けるとそこには久しく見てない光があった。

 

そして光がともったこともあり仲がうっすらと見えるようになってきた。

 

中は、聖教教会の大神殿で見た大理石のように艶やかな石造りで出来ており、幾本もの太い柱が規則正しく奥へ向かって二列に並んでいた。

 

そして部屋の中央付近に巨大な立方体の石が置かれており、部屋に差し込んだ光に反射して、つるりとした光沢を放っている。

 

その立方体を注視していたハジメは、何か光るものが立方体の前面の中央辺りから生えているのに気がついた。

 

それは真由美も起これて気づき、二人は慎重に近づいてみる。トラップの類が仕掛けられている可能性があるからだ。しかし、そんな気配は全くなく、二人はこの構造物を調べようと近づこうとした。

 

しかしそれよりも早く事態は動いた。

 

「・・・・・・・・だれ?」

 

かすれた、弱々しい女の子の声だ。ビクリッとして二人は慌てて部屋の中央を凝視する。すると、先程の〝生えている何か〟がユラユラと動き出した。差し込んだ光がその正体を暴く。

 

「人・・・・・・・・なのか?」

 

〝生えていた何か〟は人だった。

 

上半身から下と両手を立方体の中に埋めたまま顔だけが出ており、長い金髪が某ホラー映画の女幽霊のように垂れ下がっていた。そして、その髪の隙間から低高度の月を思わせる紅眼の瞳が覗のぞいている。

 

年の頃は十二、三歳くらいだろう。随分やつれているし垂れ下がった髪でわかりづらいが、それでも美しい容姿をしていることがよくわかる。

 

流石に予想外だったハジメは硬直し、紅の瞳の女の子もハジメをジッと見つめていた。やがて、ハジメはゆっくり深呼吸し決然とした表情で告げた。

 

「すみません。間違えました」

「ちょっとー。おーい、ハジメさーん。流石にいきなりそれはないと思うよー。」

 

間髪入れずに、今までフリーズしていた真由美がここぞとばかりにそういった。

 

「いやだってお前、こんなとこにいるやつって大体ろくでもない奴じゃん。」

「それはゲームの中での話でしょうが。こんな少女をほおっておくのか君は。」

「・・・・・・・・そこまで言うなら助けてやる。」

「わぁお。清々しいくらいの上から目線。ってなわけでそこのあなた、すこーし待っててねー」

「・・・・・・・・ん。」

 

まずハジメが錬成でキューブを分解し始める。

 

「なんだこれ、魔力を弾くぞこれ!?くっそ!全然進まねぇ!」

 

が、全く進まない。まるで中に人が詰まった段ボールを押してるような気分だったとはのちの彼の話である。

 

”魔力を弾く„という性質を持つこの鉱石は、ハジメが錬成を使うために浸透させなくちゃいけない魔力を認識して弾いているようだ。

 

「ふむ・・・・・・・・このままだと時間かかりそうね。よし、ハジメどいて。サクッとやっちゃおう。」

「おう、頼むわ。」

「任されましたっと。」

 

真由美はキューブに触れる。すると、金髪の少女の周りのキューブを緑の結晶が包み込み始める。それが完全にキューブをおおうと、決勝は弾け、中から少女が出て来た。

 

「ほい。いっちょ上がりっと。大丈夫だった?」

「・・・・・・・・ん。」

「それならよかった。」

「まぁそれはいいとしてだ。お前、どうしてここにいた?」

「裏切られた・・・・・・・・叔父様に・・・・・・・・」

「裏切られた?どうして裏切られてここに幽閉されたんだ?」

「分からない・・・・・・・・でも・・・・・・・・幽閉された理由・・・・・・・・は分かる。」

「ほぅ。なんだ?言ってみろ。」

「私、先祖返りの吸血鬼・・・・・・・・すごい力持ってる・・・・・・・・だから国の皆のために頑張った。でも・・・・・・・・ある日・・・・・・・・家臣の皆・・・・・・・・お前はもう必要ないって・・・・・・・・おじ様・・・・・・・・これからは自分が王だって。

私・・・・・・・・それでもよかった・・・・・・・・でも、私、すごい力あるから危険だって……殺せないから……封印するって……それで、ここに……」

 

枯れた喉で必死にポツリポツリと語る女の子。話を聞きながらハジメは呻いた。なんとまぁ波乱万丈な境遇か。しかし、ところどころ気になるワードがあるので、湧き上がるなんとも言えない複雑な気持ちを抑えながら、ハジメは尋ねた。

「お前、どっかの国の王族だったのか?」

 

「……(コクコク)」

「殺せないってなんだ?」

「……勝手に治る。怪我しても直ぐ治る。首落とされてもその内に治る」

「……そ、そいつは凄まじいな。……すごい力ってそれか?」

「これもだけど……魔力、直接操れる……陣もいらない」

 

ハジメは「なるほどな~」と一人納得した。

 

ハジメも魔物を喰ってから、魔力操作が使えるようになった。身体強化に関しては詠唱も魔法陣も必要ない。他の錬成などに関しても詠唱は不要だ。

 

ただ、ハジメの場合、魔法適性がゼロなので魔力を直接操れても巨大な魔法陣は当然必要となり、碌に魔法が使えないことに変わりはない。

 

だが、この女の子のように魔法適性があれば反則的な力を発揮できるのだろう。何せ、周りがチンタラと詠唱やら魔法陣やら準備している間にバカスカ魔法を撃てるのだから、正直、勝負にならない。

 

しかも、不死身。おそらく絶対的なものではないだろうが、それでも勇者すら凌駕しそうなチートである。

 

「助けて・・・・・・・・」

 

そう言った少女の頭にハジメは、手を乗せる。少女は最初それにびっくりしていたが、ハジメはそれをお構いなしに頭をなでる。すると少女は気持ちよさそうに目をつぶる。

 

どうやら彼の中で結論は決まったようだ。

 

「どうするハジメ?助ける?それともおいてく?」

「決まってるだろ?・・・・・・・・助ける。だろ?」

 

ハジメが横目に様子を見ると女の子が真っ直ぐにハジメを見つめている。顔は無表情だが、その奥にある紅眼には彼女の気持ちが溢れんばかりに宿っていた。

 

そして、震える声で小さく、しかしはっきりと女の子は告げる。

 

「・・・・・・・・ありがとう」

 

その言葉を贈られた時の心情をどう表現すればいいのか、ハジメには分からなかった。ただ、全て切り捨てたはずの心の裡に微かな、しかし、きっと消えることのない光が宿った気がした。

 

繋がった手はギュッと握られたままだ。いったいどれだけの間、ここにいたのだろうか。少なくともハジメの知識にある吸血鬼族は数百年前に滅んだはずだ。この世界の歴史を学んでいる時にそう記載されていたと記憶している。

 

話している間も彼女の表情は動かなかった。それはつまり、声の出し方、表情の出し方を忘れるほど長い間、たった一人、この暗闇で孤独な時間を過ごしたということだ。

 

しかも、話しぶりからして信頼していた相手に裏切られて。よく発狂しなかったものである。もしかすると先ほど言っていた自動再生的な力のせいかもしれない。だとすれば、それは逆に拷問だっただろう。狂うことすら許されなかったということなのだから。

 

「気にするな。」

 

女の子は頷く。そして頭に置かれたてを握る。

 

「・・・・・・・・名前、なに?」

 

女の子が囁くような声でハジメに尋ねる。そういえばお互い名乗っていなかったと苦笑いを深めながらハジメは答え、女の子にも聞き返した。

 

「ハジメだ。南雲ハジメ。お前は?」

 

女の子は「ハジメ、ハジメ」と、さも大事なものを内に刻み込むように繰り返し呟いた。そして、問われた名前を答えようとして、思い直したようにハジメにお願いをした。

 

「・・・・・・・・名前、付けて」

「は? 付けるってなんだ。まさか忘れたとか?」

 

長い間幽閉されていたのならあり得ると聞いてみるハジメだったが、女の子はふるふると首を振る。

 

「もう、前の名前はいらない。・・・・・・・・ハジメの付けた名前がいい」

「・・・・・・・・はぁ、そうは言ってもなぁ」

 

おそらく、ハジメが、変心したハジメになったのと同じような理由だろう。前の自分を捨てて新しい自分と価値観で生きる。

 

ハジメは痛みと恐怖、飢餓感の中で半ば強制的に変わったが、この女の子は自分の意志で変わりたいらしい。その一歩が新しい名前なのだろう。

 

女の子は期待するような目でハジメを見ている。ハジメはカリカリと頬を掻くと、少し考える素振りを見せて、仕方ないというように彼女の新しい名前を告げた。

 

「〝ユエ〟なんてどうだ? ネーミングセンスないから気に入らないなら別のを考えるが・・・・・・・・」

「ユエ? ・・・・・・・・ユエ・・・・・・・・ユエ・・・・・・・・」

「ああ、ユエって言うのはな、俺の故郷で〝月〟を表すんだよ。最初、この部屋に入ったとき、お前のその金色の髪とか紅い眼が夜に浮かぶ月みたいに見えたんでな……どうだ?」

 

思いのほかきちんとした理由があることに驚いたのか、女の子がパチパチと瞬きする。そして、相変わらず無表情ではあるが、どことなく嬉しそうに瞳を輝かせた。

 

「・・・・・・・・んっ。今日からユエ。ありがとう。そして、そちらは?」

「あ、やっと触れてくれた。忘れられてるかと思ったよ。私は真城真由美。よろしくね、ユエちゃん。」

「んっ。よろしく、真由美。」

「可愛いなぁ。私にもこんな妹がいればなぁ。」

「お前、ユエに変なことしたら許さないぞ。」

「あらまもうユエちゃんはハジメの所有物?」

「んっ。ハジメは私のもの。」

「それじゃ意味合い違ってくると思うんだけど・・・・・・・・まぁいいわ。」

「おう、取り敢えずだ・・・・・・・・真由美、頼む。」

「はいはーい。とりあえずハジメはこっち見ないようにしててねー。」

「?」

「ユエちゃんね。今裸なのよ。だから私が着ている服を同化して再構成してとりあえずのつなぎとして着ててもらうね。」

「分かった。任せる。」

「じゃあ少し待っててね。」

 

真由美は自分の服を握る。するとそこから緑色の結晶が服全体に広がる。そうしてそれは弾け、真由美の艶やかな裸体が惜しげもなくさらされる。

 

そして今度はその裸体の表面を緑色の結晶が覆っていく。そしてそれが弾けると、再び先ほど着ていた服と同じものが現れる。

 

「こんな感じで緑色の結晶みたいなものが体に発生するけどいいかな?」

「んっ。大丈夫。」

「おっけー。じゃあやっちゃうよ。」

 

真由美はユエの体に触れる。するとユエの体を緑色の結晶が包み込み、それが弾けると真由美と同じような服でサイズぴったりな服が着せられていた。

 

「んっ?魔力が・・・・・・・・満ちてる。」

「それはちょっとしたサービスだよ。ハジメ―、もうこっち向いてもいいよ。」

「分かった。すまんな、助かった。」

「こんなの朝飯前よ。」

 

真由美は奪魂の眼の応用で、上層で狩った魔物の魂を魔力としてユエにドレインしたのだ。

 

「それよりもハジメ・・・・・・・・〝空気が変わった〟よ。」

「あぁ、何か来る。」

 

場所はちょうど……真上!ハジメがその存在に気がついたのと、ソレが天井より降ってきたのはほぼ同時だった。

 

咄嗟に、ハジメはユエに飛びつき片腕で抱き上げると全力で〝縮地〟をする。真由美も急いでその場を飛びぬく。一瞬で、移動したハジメが振り返ると、直前までいた場所にズドンッと地響きを立てながらソレが姿を現した。

 

その魔物は体長五メートル程、四本の長い腕に巨大なハサミを持ち、八本の足をわしゃわしゃと動かしている。そして二本の尻尾の先端には鋭い針がついていた。

 

一番分かりやすいたとえをするならサソリだろう。二本の尻尾は毒持ちと考えた方が賢明だ。明らかに今までの魔物とは一線を画した強者の気配を感じる。自然とハジメの額に汗が流れた。

 

部屋に入った直後は全開だった〝気配感知〟ではなんの反応も捉えられなかった。だが、今は〝気配感知〟でしっかり捉えている。

 

ということは、少なくともこのサソリモドキは、ユエの封印を解いた後に出てきたということだ。つまり、ユエを逃がさないための最後の仕掛けなのだろう。それは取りも直さず、ユエを置いていけばハジメと真由美は逃げられる可能性があるということだ。

 

腕の中のユエをチラリと見る。彼女は、サソリモドキになど目もくれず一心にハジメを見ていた。凪いだ水面のように静かな、覚悟を決めた瞳。その瞳が何よりも雄弁に彼女の意思を伝えていた。ユエは自分の運命をハジメに委ねたのだ。

 

その瞳を見た瞬間、ハジメの口角が吊り上がり、いつもの不敵な笑みが浮かぶ。

 

他人などどうでもいいはずのハジメだが、ユエにはシンパシーを感じてしまった。崩壊して多くを失ったはずの心に光を宿されてしまった。そして、ひどい裏切りを受けたこの少女が、今一度、その身を託すというのだ。これに答えられなければ男が廃る。

 

「上等だ。……殺れるもんならやってみろ。真由美!」

「任された!」

 

真由美はその手のリボルバーで迎撃を始める。無論扉を完膚なきまでに破壊した最大威力で、だ。しかし、サソリの表面の装甲のような皮膚を砕くだけで、中の生身の部分にはダメージが通らない。

 

しかもその巨体の割に素早く動くサソリは、真由美の照準を一点に絞らせない。すると真由美をサソリで挟んだ向かい側から一閃。ハジメのレールガンの弾丸だった。それはサソリの脚部に命中しサソリはその巨躯を地面へと落とした。

 

「いまだ真由美!」

「OK!くらえ!このサソリもどき!」

 

真由美はリボルバーの撃鉄を下げ、シリンダーをまわす。そして迷わず引き金を引く。一条の螺旋は極光と化してサソリもどきの装甲を焼く。しかしやはり、まだ破れない。

 

サソリはその痛みに暴れようとするが、ハジメが錬成でサソリの体を固定する。真由美は再びシリンダーをまわし、再度引き金を引く。その極光は先ほど破壊した装甲の部分と寸分たがわず同じところに当たりその生身を破壊し、熱で蒸発させていく。

 

その勢いは生身で受け切れるはずもなく、核をさらけ出させる。

 

「ハジメっ!」

「あぁ!」

 

ハジメは極光で出来た穴に手榴弾をありったけ投げ込む。それは一個が爆発すると連鎖的に爆発していき、最終的にサソリの体を爆散させた。

 

「ふぅ、いっちょ上がりっと。お疲れ様、ハジメ。」

「あぁ、お疲れ、真由美。」

 

こうして一行はユエを新たな仲間として迎え入れ、下層へと向かうのだった。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。少し補足いたしますと、真由美の使ったあの同課による再構成、あれはまだあまり使いこなせていない故に、銃などの細かいパーツ類で構成されたものは複製できません。弾丸も同様です。この先使い続ければいずれ作れるようにはなりますが

今はまだ使えていません。ってなわけで次回またお会いしましょう、さようなら。

光輝君はどうするべき?

  • 主人公たちを邪魔し続ける
  • 改心させる
  • いっそのこと殺す
  • 魔人族の手先になる
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