インフィニット・ストラトス~蛇を宿した者~ 作:*.❀Mikagura✿.*
久しぶりに書くと文脈やら何やらガラッと変わってしまいました…
IS学園。
ヨミ・ボーデヴィッヒが編入してから、数日が経った。
最初こそ「二人目の男性操縦者」という事実に注目が集まっていたが、ヨミ本人はというと。
「……眠い」
今日も相変わらずだった。
「ヨミ、授業中だぞ」
隣のラウラが小声で注意する。
「起きてるよ」
「目を閉じている」
「目を休ませてるだけ」
「それを寝ていると言う」
「ラウねぇさん、細かいなぁ」
「お前が大雑把すぎる」
そう言いながらも、ラウラはヨミの机に髪が乗っていることに気付き
邪魔にならないようそっと横へ退けてやった。
「……ありがと」
「気にするな」
その様子を見ていた一夏が、シャルロットに小声で話しかける。
「やっぱりヨミにだけ甘くないか?」
「うん」
「即答かよ」
「だって昨日もそうだったし」
「俺なんかラウラに話しかけただけで睨まれたんだけど」
「それは……まあ」
「まあ?」
「頑張って、一夏」
「何を!?」
そんなやり取りをよそに、千冬が黒板へ向かう。
「次の実習について説明する」
教室が静かになる。
「次回は二人一組での模擬戦を行う。相手の動きを見ながら戦え。単純な火力だけでは勝てん」
ヨミは頬杖をついたまま、黒板を見る。
「二人一組かぁ……」
「嫌なのか?」
ラウラが聞く。
「嫌じゃないよ。ただ、組む相手を探すのが面倒」
「なら私と組めばいい」
「いいの?」
「ああ」
「じゃあラウねぇさんで」
「決まりだな」
あまりにも自然に決まった。
「……」
一夏は黙って二人を見る。
「どうした?」
「いや……もう驚かないことにした」
「それがいいと思うよ」
シャルロットが笑う。
放課後の格納庫。
ヨミは一人でティアマトの整備をしていた。
「……よし」
装甲を確認。
接続状態を確認。
エネルギー供給を確認。
武装の状態も確認。
「問題なし」
ヨミは工具を片付ける。
その横では、ティアマトが静かに佇んでいる。
深い藍色の装甲、所々に薄い碧色と翠色。
二対四枚の翼。
そして巨大な尾。
改めて見ても、ISというより龍そのものに近い。
「自分で作ったんだよな?」
後ろから声がした。
振り返ると、一夏が立っている。
「うん」
「やっぱりすげえな」
一夏はティアマトを見上げる。
「こんなの、本当に一人で作ったのか?」
「三機ともボク様が作ったよ」
「三機とも……」
「ティアマト、ヤマタノオロチ、スティル・ファリヴァール」
「改めて聞くと、とんでもないな」
ヨミは肩をすくめる。
「必要だったから作っただけ」
「必要?」
「うん」
「ISって、一機あれば十分じゃないのか?」
「人によるんじゃない?」
ヨミはティアマトを見る。
「ボク様の場合は、一機だけじゃ足りなかった」
「そっか」
一夏もティアマトを見る。
「でもさ」
「ん?」
「ISって、結局は戦うためのものだろ?」
ヨミは少し考えた。
「……今はね」
「今は?」
「うん」
ヨミは工具を置く。
「ボク様は、ISってもっと色んなことができると思ってる」
「例えば?」
「例えば……」
ヨミは格納庫の天井を見る。
その先。
さらにその先にある空を想像する。
「もっと遠くまで飛ぶとか」
「遠く?」
「うん」
「どこまで?」
ヨミは少しだけ笑った。
「宇宙」
一夏が目を丸くする。
「宇宙!?」
「そう」
ヨミは何でもないことのように言う。
「いつかISで宇宙まで行けたら面白いと思わない?」
「……考えたこともなかった」
「ボク様も、前はそんなに考えてなかったよ」
「じゃあ、なんで?」
ヨミは少し黙った。
普段ののんびりした表情が、ほんの僅かに柔らかくなる。
「……約束したから」
「誰と?」
ヨミは一夏を見る。
ほんの一瞬。
何かを思い出したような顔をした。
「大切な人の一人と」
「大切な人?」
「うん」
「誰?」
「それは……」
ヨミは少し考え。
「今は言わなくてもいいかな」
「なんで?」
「そのうち分かるよ」
「そのうちって……」
ヨミは笑った。
「約束したんだ」
もう一度。
今度ははっきりと。
「いつか、ISで宇宙という空を飛べるようにするって」
「宇宙という空……」
「地球の空だけが空じゃないからね」
ヨミはティアマトに再び目を向ける。
「せっかく飛べるんだから、もっと遠くまで飛ばしてあげたい」
「……なんか、変な感じだな」
「何が?」
「ヨミって、ISを兵器として見てないんだな」
ヨミは少し考える。
「兵器でもあるよ」
「じゃあ……」
「でも、それだけじゃない」
その言葉は穏やかだった。
「ボク様にとってISは、もっと色んな可能性を持ってるものだから」
その時。
「ヨミ」
格納庫の入口から声がした。
「ラウねぇさん」
ラウラが歩いてくる。
「帰るぞ」
「うん」
「何を話していた?」
「宇宙の話」
「宇宙?」
「うん」
ラウラは少しだけ首を傾げる。
「また妙なことを考えているな」
「面白そうでしょ?」
「ああ」
ラウラは否定しなかった。
「ヨミがやりたいなら、私は応援する」
「ありがと」
ヨミは笑う。
「じゃあ帰ろ」
「ああ」
二人が格納庫を出ていく。
一夏はその背中を見送った。
「……大切な人との約束、か」
それが誰なのか。
一夏には分からない。
シャルロットにも。
そして現状IS学園の誰にも。
ただヨミにとって、それが大切な約束であることだけは分かった。
その夜。
ヨミは寮の自室で、窓から夜空を見上げていた。
夜空に浮かぶ無数の星。
手の届かない遠い光。
「……いつか」
小さく呟く。
「一緒に見に行けるかな」
誰に向けた言葉なのか。
ヨミ自身しか知らない。
暫く夜空を見上げ、ヨミはいつものようにベッドへ倒れ込む。
「……まあ、今日はもういいや」
眠気には勝てない。
約束のことも。
宇宙のことも。
今は一度、頭の片隅へ置いて眠りについた
第3話・終
お楽しみ頂けてるでしょうか…?
文字数ももちっと増やして行けるよう頑張りますねぇ