朝起きたら自分だと名乗る美少女がいた   作:スカアハ

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第1話

いつも通りの平凡な日常というのはかけがえのないもので、普段はこんな日常に飽き飽きしているがいざ自分が平凡から外れると不安感を抱く、そんな人間はどこにでもいるだろうし、私だけではないはずだ。現在の私の状況をだれか説明して欲しい。なぜ、普段ぬくもりを求めて自分の癒しかつ堕落の根城としているわが布団の中に見知らぬ美少女がいるのか?もしかしてここは私の家ではないのか?美人局?大学以外で外に出てもいないのに?頭の中に疑問ばかりが浮かび上がる。とりあえず、彼女を起こすべきなのだろうか…、いやしかし起こそうとした瞬間痴漢扱いされはしないだろうか…。そんなことをうだうだと考えていると布団の中からかわいらしいうなり声が聞こえる。

 

「うぅ…」

 

唐突に聞こえたかわいらしい声に思わずビクッと身を震わす。おい、まさか起きるのか?こっちはまだ何も準備ができていないんだぞ。どうすればいい?第一印象は良くすべきか?いやいや、何か武装しておくべきか?いやいやいや、それで通報されたら捕まるだろ、自分が。何を考えているのか、そもそも何を考えればいいのかもわからなくなるほど狼狽しているうちに彼女が目を覚ました。

 

「今、何時…?あれ、スマホは…?」

 

寝ぼけた声で彼女がそう言うと、手を闇雲に動かしながらスマホを探していた。しかし、ここで思い出していただきたい。彼女は私と同じ布団の中に入っているのだ、そして私もこの異常な状態の中、布団からは出れていなかった。そうなると彼女の手が私の体に触れるのは仕方のないことだ、なのでどうか痴漢扱いしないでくださいお願いします。そんな釈明をだれに向かってでもなく考えていると

 

「…っえ、だれっ!?自分!?」

 

自分!?自分?自分って私?なんで?そもそも性別が違うだろ、というか自分!?

 

「夢か、もう一回寝よう…」

 

何もなかったかのように彼女は布団をかぶりなおしながら寝ようとした。

おい、自己解決するんじゃない、こっちは何も解決してないんだよ。

 

「…あの、どちら様でしょうか…?」

 

自分の中にあるわずかながらの勇気を振り絞って聞く。普段コミュニケーションを全くと言っていいほどとらないためか、声はかすれていてもしかして聞こえてないんじゃないかというぐらいの声量しかでなかった。実際、彼女には一切聞こえていなかったようで、彼女は私の勇気ある行動を無視し寝ようとしている。

 

「あのっ、どちら様ですか?」

 

今一度先ほど振り絞った勇気をさらに振り絞りもう出ないんじゃないかっていうぐらい振り絞って声をかけた。実際もうこれ以上の勇気は出ない、無視されたら諦めてとりあえず寝よう。

 

「いや、お前だけど」

 

振り絞った勇気は功を奏したようで返答が返ってきた。しかし、彼女はこの現実を夢だと思っているらしく返事も投げやりでなんだこいつと言わんばかりの表情だ。

 

「えぇと、私はそんな美人でもなければ、そもそも女性でもないんですけど…?」

 

はぁ?と言わんばかりの怪訝な表情で彼女は自分の体に触る。

 

「…ないっ、えっ、ある、下にないのに上になんか柔らかいのがあるっ!?なんでっ!?」

 

彼女は驚いたように、それがあり得るはずがないとばかりに何度も自分の体を触って確かめた。どうやら彼女は本当に自分のことを私だと思っているようで困惑の表情を浮かべ、ついには自分の顔をはたきだした。

 

「痛い、夢じゃない?なんで?」

 

「あの、結局どちら様でしょうか…?」

 

「いや、お前のはずというか、えっ、家は自分の家だし、でも自分は女じゃなかったし、えっ、どういうこと?もうわけわかんない…」

 

泣き出しそうな彼女を見て、目を覚ませば家に知らない女性がいてそれが自称自分?困惑してるのはこっちなんですけど…とは言えなかった。とりあえずこういう頭がおかしい人の相手をする時はむやみに刺激しないほうが良いって聞いたことがあるし否定しないように徐々に追い出す方向でいこう。

 

「えと…貴女が私だっていう証拠とかありますか…?」

 

「証拠って…?」

 

「私しか知らない秘密とか?そういうのないですか?」

 

「えーと、中学生のころに自分オリジナルの念能力書いたノートを作ったり、いまでも大学の講義中に自分のスタンド能力考えてるとか?」

 

「わかった、もういい信じます、信じるからやめて、人に言われると恥ずかしい」

 

何で知ってる?両方とも誰にも言ってない、前者はノートを見られた可能性もあるからわずかな可能性もあるが後者に至っては完全に自分の脳内で完結させたことだ。ほんとに自分?まじで?

 

「あの、スマホ貸してもらってもいいですか?」

 

「あ、はい」

 

パスコードも聞くことなく自分の物のように私のスマホが使われる。何をするのかと思えばインカメラで自分の顔を見ているらしい。家に手鏡がないことも知ってるのか…。

 

「うわぁ…めっちゃかわいい…」

 

そう彼女がつぶやく。それもそうだ、肩までかかった濡れ羽色の髪、白く透き通った肌、ぱっちりとした大きな瞳、その他にもどこをとっても美少女と呼ぶにふさわしい。こんな異様な状況でなければおそらく見とれていただろう。えぇ…まじか…そうつぶやく彼女は自分の顔が自分のものと思えていないようだった。このなんともいえない気まずい静けさを打ち破ったのはぐぅーというかわいらしい音だった。

 

「あ、えと…」

 

恥ずかしそうに彼女は自分のお腹を手で隠しながら、うつむいた。

 

「とりあえず、朝ごはんでも食べますか…?」

 

「えと、はい…」

 

どういうわけか、私は自称自分を名乗る美少女と朝食を食べることになった。

 

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