朝起きたら自分だと名乗る美少女がいた   作:スカアハ

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第3話

私達は今現在、窮地に立たされている。彼女も私も立ち止まることしかできずに今すぐここから逃げ出したい一心だ。しかし、どうあがいてもいずれはこの困難を乗り越えなければいけない。彼女も同じ気持ちだろう、だからお互いに帰ろうとは言わずただ立ちすくんでいる。でもできれば今すぐ帰りたい。なぜこんなことになったのか、それは数十分前にさかのぼる。

 

 

私たちは一緒に住むことを決めたが、人が生活するには衣食住は不可欠だ。そのうち、食と住は事足りていたが衣が足りなかった。そう、服がないのだ。私はお洒落に興味がなく、服も必要最低限しかもっていない。それに加え、一般的な一人暮らしの成人男性というのは女性用の服は持っていない。持っている男は一般的でないのでここでは考えないものとする。なので、彼女にそのことを伝えると彼女も納得し一緒に服を買いに行くことになった。

服を買いに行くまではよかった。Uから始まる某衣料品量販店に行き、適当に見繕っていくつか買った。しかし、問題が起きたのはその後だった。

 

「なあ、下着ってどうする…?」

 

彼女が恐る恐る私に聞いた。

 

「買えばいいんじゃない?」

 

「どうやって…?」

 

「そんなの普通に買いに行けば…」

 

ここで私も気づいた。女性用の下着の買い方なんて知らない…。それはそうだろう、普通男は女性用の下着なんて買わない、買うとしたらそれは何か事情がある人か一部の変態ぐらいだ。

 

「うん、普通に買いに行けばいいと思うよ。私は適当に時間つぶしてるからいってらっしゃい!」

 

知らないものは仕方ないよね!そもそも私は使わないし!そう思いながら、私には関係ないと言わんばかりに強引に一人で買いに行かせようとしたが

 

「ふざけんな!おまえも来い!わかってるんだぞ、買い方知らないし使わないし自分には関係ないとか思ってるな!」

 

さすが自分、よくわかってるじゃん。そうです、関係ないです。だから巻き込まないで。

 

「なんだその顔。巻き込むなとか思ってるのか!?」

 

「いや、だって無理無理無理!逆の立場だったらついていくか?」

 

「いかない」

 

即答してんじゃねえよ。たしかに、彼女の気持ちもわかる。いきなり、今日からお前女な!下着買って来いよ!なんて状況になったときには困惑や恐怖、不安などでいっぱいになり、せめて誰かについてきてほしくなるだろう。でも嫌です。気持ちはわかってもいきたくないです。お前も私なら私の気持ちもわかるだろ?配慮してくれ。そんな私の思考とは裏腹に彼女は泣きそうだった。

 

「なぁ、頼むって…ついてきてよぉ…」

 

おい、そんな泣きそうな顔で言うんじゃない。泣きそうな彼女を前にすると罪悪感が重くのしかかり始める。泣く子と地頭には勝てないというのは本当で、泣いている子が美少女ならなおさらだ。

 

「わかった、一緒に行くよ…」

 

「ほんと!?ありがとう!!私って良い人だったんだ!」

 

変なナルシズムを発露しだすとともに満面の笑みを浮かべる彼女。悔しいがめちゃくちゃ可愛い。ついて行くだけでこの笑顔が見られるなら安いものだろう、そんなことを思った。けれど思ったのも束の間で、現在目の前にランジェリーショップがある状況で思うことは今すぐ帰りたい、ただそれのみだ。過去の自分に言いたい、安くなんてなかった、価値は刻一刻と変化するもので笑顔の価値は下がらずとも同伴の価値が上がり滅茶苦茶後悔し始めていると。

 

「よし、行ってこい」

 

「!?ついてくるって言ったじゃん!」

 

「ここまでついてきただけありがたく思ってほしい、もう無理、ほんとに無理、場違い感が尋常じゃない、帰りたい」

 

「見た目違うだけで、私もまったく同じこと思ってるから、ほんとに無理だから、帰りたい」

 

お互いに帰ってもどうせいつかは来なければならないことはわかっているため、彼女とあーだこーだ言い合っても帰るという結論には至らなかったが時間だけが無為に過ぎ去っていった。

ランジェリーショップの前で言い合うこと数時間ようやく彼女も覚悟を決めたらしく、行ってくると何とも小さく悲しい声で言い出した。とぼとぼと歩き出した彼女の背には哀愁が漂っており、その目は死んでいた。恐らくランジェリーショップにああも死んだ目で入る女性はおそらく彼女が人類で初めてではないだろうか。

ランジェリーショップの前で気まずいながらもひたすら待った。この気まずさが彼女へのせめてもの手向けだ。彼女が戻ってきたのは数十分後だった。死んだ眼はよどみを増しており、その背に背負った哀愁は職を失ったことを家族に隠しながら公園のブランコに座る中年男性をもしのぐだろう。

 

「大丈夫か?」

 

「ダイジョブです…」

 

彼女の大丈夫には感情が一切こもっていなかった。大丈夫じゃないですねこれは。一体中でなにがあったんだ…。

 

 

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