ちょっと散歩してたら光と融合することになった件について   作:ほっか飯倉

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ちょっとあやかし退治したり星の海に飛び出したり馬主になったりしてたので、リハビリついでに書いてみた


ちょっと散歩してたら光と融合することになった件について

 目の当たりにしている現実が信じられない。だというのに、意識と感覚はその出来事を肯定していて……目の前の怪獣の存在が現実だと否応なしに突きつけてくる。──―今日はいい日だと思ったんだけどなぁ。

 

 俺……寺島頼人は巨人となって襲い来る脅威と戦おうとしているのだ。

 

 

 

 

 

 朝、俺はカーテンの隙間から漏れる朝日を感じて目を覚ました。大きくあくびとのびをしてから枕元のスマホで時間を確認すると午前8時。ゴールデンウィークの真っ最中、つまり休日にしては早起きしてるんじゃないだろうか。

 

 天気もいいようだし、なんだかいい気分になって、いつもなら二度寝して昼前に起きだすところを少し早めに起きることにした。

 

 

「……腹減ったな」

 

 

 健康的な時間に起き出してきたからなのか、なんだか小腹が空いてきた。休日はいつも昼ご飯になるところだが、俺は久々に朝ご飯を作るべく冷蔵庫の中を確認する。

 

 その中から卵を一つとソーセージを一袋取り出し、棚から引っ張り出したフライパンに油をひいてからそれらを一緒くたにぶちまけて、IHヒーターをつけて加熱している間に冷凍ごはんをレンジを解凍、然る後に焼きあがった目玉焼きとソーセージとともに頂く。

 

 手抜きといえば手抜きだが、これだけあればゴキゲンな朝ご飯だ。強いて言うなら野菜が足りない気がするが。

 

 朝ご飯を美味しく完食した後、俺はしばらくスマホを見ながら今日一日をどう過ごすかを考えていた。ずっと引きこもってゲームしているのもいいが、せっかく天気がいい日なのだから外に出て散歩でもしようか。たまにはなんの目的もない外出もいいだろう。ついでにどこかで昼ご飯も食べてしまおうかな? 

 

 そう決めてスマホをポケットに仕舞い、ゆっくりと外出の準備をし始める。普段休みの日のこの時間は寝ていることもあって、なんだかとても新鮮な気持ちがして、気分がいい。後から考えると、まさかこの選択のせい、またはおかげで戦いの日々に身を投じることになるとは思わなかったのだけど……。

 

 

 

 

 

 

 さて、散歩と言っても本当になんの目的もなくぶらぶら歩き回るだけだ。懐かしいな、小さいころはこうやって何も考えずに歩き回ったり、下校中に寄り道して友達と遊んだものだったのだけど、もうずっとそんなことはしていない。あのころの友達はいま何をしているのだろうか……。

 

 そんなことを考えていたからなのか、角を曲がってきた人に思いっきりぶつかってしまった。結構な勢いだったが、相手は大丈夫だろうか? 

 

 

「うわっ! ……大丈夫ですか?」

 

「いたたた……。あっゴメンね、ボク急いでるんだ!」

 

 

 俺とぶつかった人はそう言って、慌ただしく走り去ってしまった。よほど急いでいたのだろう、ぶつかった際にポケットから何か落としたのも気づかないままだった。

 

 しゃがみこんでよく見てみれば、それは青い石──光の反射の具合だろうか、赤い光を放っているようにも見える──がはめられた腕輪のようだ。

 

 流石にアクセサリーの類いの落とし物を放置する訳にはいかないので、それを背負っていたショルダーバックにしまい込み、先程の人が走っていった方を振り返ってみたものの。

 

 

「もう見えねぇし……」

 

 

 どうやらあの人は余程の健脚らしく、既に姿は見えなくなってしまっていた。このあたりには交番もないことだし、こっちから探しに行かないとかもなぁ、などと思い悩んでいた、その時だった。

 

 

 

 

 空が、割れた。

 

 

 

 

 その異常な光景を目にした人々がざわめく中、割れた空から黒い結晶塊が落下、直下の町に墜落した。それだけで十分に非現実的な光景。それに畳み掛けるようにさらに非現実的な出来事が起こった。

 

 落下した結晶塊から、巨大な生物が出現したのだ。その生物は頭部に一本角、腕部は鎌、太く長い尻尾を持ち、総じて現在確認されている地球上の生物とは似ても似つかない特徴だと言える。

 

 まさに宇宙怪獣といった容貌だった。

 

 

「何だ、アレ……!?」

 

 

 当たり前だが、ドラマや映画の撮影にしたって本当にあのサイズのスーツを使うわけがない。怪獣は間違いなく本物で、その威容に圧倒されて凍りつく者、SNSでも利用しているのかスマホをいじる者、カメラで撮影しようとする者、そいつに対する居合わせた人々の反応は様々だったが、その怪獣の起こした行動はたった一つ。

 

 やつは大きく咆哮すると、大暴れして町を破壊し始めたのだ。叩き壊され崩れる建物、崩落に巻き込まれる人たち。事ここに至ってようやく人々は悲鳴を上げて逃げ出し始めた。

 

 俺はやつから少し離れた場所にいたのだが、相手のサイズ感からしてこちらに来るのにはそう時間はかからないだろう。そう判断して逃げ出したが、その途中、自分のショルダーバック──―ではなくその中身、先程拾った腕輪が光を放っていることに気づいた。

 

 暖かな赤い光を放つそれに触れたとき、何か大いなる意思を感じた。何か……守らねばならないという使命のようなものを。──―俺に呼びかけている……? 

 

 

「まさか、俺に戦えっていうのか……?」

 

 

 当然俺は迷った。仮に光が力を貸してくれるとしても、俺自身そういうキャラではない。どんな形であれ、巨大なバケモノに立ち向かうなんてこと、正直やりたくはなかった。

 

 しかし、迷っていられたのはそこまでだった。やつが破壊したホテルの破片がこちらまで飛んできたのだ。それは近くのマンションに直撃、崩れたガレキが俺の上に降ってくる。幸い下敷きにはならなかったが、このままではいずれそうなってしまうのは間違いない。

 

 どうせ走って逃げたところでガレキが飛んできてしまえばお終い。直接飛んできても避けられるわけがないし、建物に当たって崩れてしまえば絶望だ。

 

 恐い。恐ろしさに足が竦みそうになるが、それでも身を守るため、光に身を任せるしかないのなら……。

 

 

「クソッ、やるしかないのかよ……。うおぉぉぉぉッ!」

 

 

 込み上げる恐怖を抑えるため雄叫びをあげながら、俺は腕輪をはめた腕を空に突き出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 こうして俺は巨人となったのだが、どうやら想定した中で最も遠慮したい形、直接殴り合うことで戦え、ということらしい。残念ながら俺に喧嘩の経験は殆ど無い。

 

 ちょっとした拳法と剣道の経験ならあるが、それらの経験がどれほど殺し合いで役立つというのだろうか。

 

 救いがあるとすれば、巨人になってから力が漲っているということだ。具体的にどうなっているかはわからないが、これがあの光の力なのだと思う。

 

 俺は湧き出る力で拳を固め、目の前の怪獣に殴り掛かった。やつが破壊行動にのめり込んでいたためか拳はクリーンヒットし、転倒。ようやくやつは町の破壊をやめた。

 

 先制攻撃は成功したが、それは敵の意識がこちらに向いたということだ。

 

 やつのなんとも例えられない目が俺を捉える。その顔面に表情は窺えなかったが、自分に殴り掛かってきた不届き者に対して怒りを覚えていることがなんとなくわかった。

 

 相手の態勢が整う前に攻勢をかけようとした俺は、しかし予想外の反撃を食らうことになる。

 

 まだ立ち上がれない怪獣に向かって飛びかかろうとした俺に浴びせられたのは、やつが頭部から放った光弾だった。

 

 弾ける火花、撃ち落とされる俺。

 

 

「ぐあぁぁぁッ!」

 

 

 痛い! 普通に生活しているだけなら味わうことのない痛みが顔面に広がる。けれど怯んでいられない、早く立ち上がらないと……。

 

 そう考えながらに起き上がろうとしたが、その前に怪獣にマウントポジションを取られてしまう。

 

 これが普通の人間相手ならパウンドなりなんなりするところなのだが、やつのそれは拳ではなくその鋭利な鎌による刺突となる。

 

 勢い良く振り降ろされる刃を首の動きで必死に回避し続ける。ここでとっさに防御ではなく回避を選べたのが功を奏したのだろう、何度目かでその鎌は俺の頭の横、地面に突き刺さる。

 

 続いて襲ってくる反対の鎌を内側から殴って逸らし、その腕でやつの首を抱えて下半身を浮かせる。その隙間に膝を差し込み、蹴り上げることでやつをどかすことに成功した。マウントポジションからの脱出なんぞ初めてやったぞ……。

 

 今度こそやつが立ち上がる前に態勢を整える。先程俺が反撃を食らったのは、形勢有利かに見えて調子に乗り、隙だらけだったためだろう。

 

 もっとピリッと集中して挑まねば、身を守るために戦っているのにまた傷つけられることになる。そんなのはもうお断りだ。

 

 今度は飛びかかるようなことはせず、最速でやつの背中に馬乗りになる。そしてそのまま全力で拳を連続で叩き降ろす! 

 

 

「オラァァァァァッ!」

 

 

 叫んで自らを鼓舞しつつ、こいつが俺を振り落とそうとする動作を見逃さないようにしっかりと観察する。

 

 それにしても、このまま殴り合うだけでこいつを倒すことができるのだろうか? そう考えた瞬間、俺の脳裏に一つのビジョンが浮かび上がる。

 

 そのビジョンのなかでは、俺──―ではなく、おそらく誰かが変身した、もしくはこの巨人そのものが、光を使った技を使っていた。

 

 その中でも一際威力が高そうな技に俺は注目した。腕を揃えて額にかざしてかがみ込みながら力を溜め、そこから立ち上がりつつチャージした光を刃の形で放つその技は、このバケモノを倒すのに十分な威力を備えているように見えた。

 

 しかしこの技を使うには時間がかかる。その隙を作るため、こいつを怯ませる必要があるだろう。

 

 そこまで考えたところでやつが大きく体を振ったので、その勢いに逆らわず転がって距離を取る。

 

 距離を取った分やつは距離を詰め、鎌での接近戦を仕掛けてくる。その鎌を避け、弾き、どうにか作り出した隙に左ジャブ・左ジャブ・右ストレートのコンビネーションをボディに叩き込む。そうするとボディを防御したので──―

 

 

「でやあぁぁッ!」

 

 

 ──―顔面に後ろ回し蹴りをブチ当てる。この一連の攻撃の相手が人間にクリーンヒットしたなら、昏倒では済まされないもの。如何な怪獣でも目眩がしたらしい、無防備な姿を晒している。

 

 ──―ここだ! 

 

 直感的ここしかないと感じた俺は、バク転でいくらか距離を取り、必殺技──―光の刃を放つことから名付けてフォトンエッジを撃つチャージを開始する。

 

 先程ビジョンで見た通りの動き。体のそこから湧き出るような、もはや熱いとまで言える力を溜め込み、そして刃として放出する。

 

 

「これで……トドメだぁぁぁッ!」

 

 

 額から放つその刃は狙い過たず怪獣の胴体に直撃、その全身を斬り刻んで木っ端微塵に爆散させた。──―これで……終わりか……。

 

 怪獣を倒し、一気に脱力した俺は、その場に跪く。そしてそのまま、元の体に戻っていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 まさか開けた場所、しかも怪獣と巨人が争っていた場所で座り込んでいるのはマズいだろう。誰かが見ているとは思えないが……。そう思っていたものだから、声をかけられた俺は激しく動揺してしまった。

 

 

「キミ、ボクが落としちゃった『ガイアの光』を使ったんだね?」

 

 

 ……いや、動揺したのは声をかけられたことそのものというより、その内容だろう。なぜ目の前の人物──―よく見たらぶつかった人じゃないか──―にバレているのか、まさか変身するところまで見ていたわけではあるまいし。

 

 

「……いったいなんのことですか」

 

「ごまかさなくてもボクにはわかるよ。キミから『光』を感じるから」

 

「光……?」

 

「その右腕の腕輪、その中には地球の守護者、ウルトラマンガイアの光が宿っているんだ。……キミはガイアに選ばれた。そんなキミに頼みたいことがあるんだ」

 

「頼み事って……まさか」

 

 

 そこまで言われて察しがつかないほど俺はバカじゃない。多分、この人の頼みとは──―

 

 

「そう、キミに戦ってほしいんだ。これから訪れる脅威から、この星を守ってほしい」

 

「そ、それは……」

 

 

 正直、冗談じゃない。自分が世界を守る守護者? そんな柄じゃない。ただ、そんなことを人に頼まざるを得ない理由もあるのだろう。そんな雰囲気が、目の前の人物からは感じられた。

 

 

「お願いだよ、ボクには……ボクはまだ、戦えないから……。それでも、悲劇を繰り返したくないんだ」

 

「まるで、見てきたみたいに言うんですね」

 

「そう。ボクの星はあいつ……根源的破滅招来体に滅ぼされたんだ」

 

 

 なんとなく察していたが、やはりこの人はいわゆる宇宙人というやつらしい。その姿は、俺が想像していたよりもずっと地球人に似ていたが。

 

 そしてどうやら、自らの星を滅ぼしたやつが次に襲うのは地球だと、何らかの方法で知ってここまで来たようだ。

 

 

「キミにしか頼めないんだ! ガイアが選ぶのは、その星で彼の……大地の力を使うのに適した人。きっとそれがキミなんだよ! ……本当に、戦うこと以外なら何でもするから」

 

 

 この人とは初対面だ。どこまで信用できるかなんてわからない。それでも、「何でもする」とまで言い切ったこの人のことは、信じたいし報いたい、そう思った。

 

 それに……もしかしたら、自分はこのために生まれてきたのではないか、そんな予感がするから。

 

 

「……わかりました。本当に俺しかいないなら。俺がやらなきゃピンチの連続だって言うのなら、やります」

 

「ホントに!? ありがとう! じゃあ、自己紹介。ボクはトーカっていうんだ、よろしくね」

 

「俺は頼人。寺島 頼人です、よろしく」

 

 

 こうして、俺は戦いの日々に身を投じることとなったのだ。長く辛い、それでも誰かがやらなければならない戦いに。

 

 

 

 




「ところで失礼ですけど、あなたってどっちなんですか?」

「どっちって、なにが?」

「性別」

「なっ、ホントに失礼だな!見たらわかるでしょ、ボクは女だよ!」

「すいませんでした……」
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