ちょっと散歩してたら光と融合することになった件について   作:ほっか飯倉

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これの一話を書いてたのが去年のゴールデンウィーク。もう一年たったんですねぇ

何やってんの俺。もう書き方覚えてないんだけど


光を探して

翌朝、準備を済ませて玄関で待っていると、昨日とは少し違う服装のトーカが現れた。いろいろ用意はある、とは彼女自身の談だが、生活するにあたっての荷物などは本当にあったらしい。

ここから駅まで徒歩数十分、さらに電車で二時間かかる予定であるから、動きやすい服装の方がいいかも、とは言っておいたが、そういう条件のうちから選んで着られるほどにあるとは、思っていなかったが。

 

「忘れ物はないかな……」

「ボクは大丈夫だよ」

 

俺の独り言にトーカが答える。それに続けて俺は言った。

 

「とりあえず向こうについたら早めに昼ごはんにして、それからアグルの人を探す、ってことでいいよな?」

「そうだね、探すと言ってもただ目撃されたあたりを歩き回る感じになっちゃうけど」

 

まあそれも仕方ない。変身者が何処のどなたか分からない以上、心当たりの場所を回るしかないのだ。

 

「まあ、トーカのおかげで近くにいればわかるってだけでだいぶマシだよ。まさかすれ違う人全員に『あなたは巨人に変身できますか?』なんて聞くわけにもいかないしな」

「ふふっ、確かにそれは言えないね。まぁ、ボクに感謝しなよ」

「ああ、ありがとう」

 

素直に感謝を伝えると、本当に礼を言われるとは思わなかったのか、彼女は照れたようにはにかんだ。

 

 

 

 

 

そうして俺たちは駅へ向かった。

駅のホームに着く頃にはちょうど電車が来る頃だった。俺たちは一番前の車両に乗り込む。席はほとんど埋まっていたが、運良く空いているところがあったのでそこに座る。

 

「さて、こっから二時間か」

 

そう俺が言うとトーカは言った。

「ねぇ、せっかくだし何か話さないかい? キミのこととか聞きたいんだよね」

 

俺は少し考えた後、答えた。

 

「じゃあ……そうだな。俺の話でもするか。といっても特に話すようなことは無いんだけど……」

 

そう前置きをして、俺は自分のことを話しはじめた。

家族のこと。趣味。卒業後の目標など。思いついたことをつらつらと口に出していく。すると、意外と会話の種は眠っているもので、気づけば目的地まで到着していた。

 

「おっと、降りる準備しないと」

「あ、うん」

 

ホームに降り立った俺たちはとりあえず改札へ向かう。しかし、ここで問題が発生した。

 

「うわ、すげぇ人混み」

 

改札口付近にたどり着くと、そこにはかなりの数の人がいた。みんな一様にスマホを見ながら歩いている。おそらくSNSで話題の巨人についての情報を確認しているんだろう。

 

「これじゃあアグルを探すどころじゃないね」

「そうだな……どうする?」

「う〜ん……こうなったら手分けして探そうか」

 

なるほど、確かにそれも悪くはないと思うけど……。

 

「聞きたいんだけど、トーカの……デバイス? って、この辺の地図って出せる?」

「え? ……ああ、出せないね。だったら下手に別れるのは良くないかも」

「というか、俺だけじゃアグルかどうか判別できないしな」

 

……ということで、俺達は連れ立ってアグルの人を探すことになった。それからしばらく、俺たちは駅の周辺から捜索していたが、有力な情報は得られず仕舞い。一旦休憩することになった。

近くにあった喫茶店に入り、適当に飲み物と軽食を注文して席に着く。そこでふと思ったことを口に出す。

 

「思ったんだけどさぁ、アグルの人ってどんな奴なんだろうな?」

「どんな、とは?」

「いや、だからさ、性別とか、年齢とか……。というか、適性ある人が選ばれるっていうけど、そのへんどうなるんだ? 例えば、適性高いけどめっちゃ年食ってる人だったりさ」

「えっ……と……どうなるんだろ?」

 

悩みだすトーカ。実際のところ、個人的には年上の相手は少々苦手なので、同年代あるいは年下、できれば男性だと嬉しいのだが。

 

などとしばらく考えていたとき、注文していたサンドイッチとアイスコーヒーが届く。同時にトーカの注文したストロベリーパフェも届いた。

 

俺は備え付けのスティックシュガーを数本抜き取り、まとめてザバーッとコーヒーに注ぐ。ついでにミルクもいくつか投入。それを見たトーカが、引いた様子で言う。

 

「ねぇ、よくそんな甘そうなの飲めるね……」

「まあな。でも、これくらい入れないと甘さが足りないんだよ。というか、これがどういうもんか分かんの?」

「一応、ね。ボクの国にも似たようなものがあったんだよ」

「ああ、なるほどね」

 

トーカはパフェをつつきながらさらに言う。

 

「絶対それ体に悪いよ。病気になるんじゃない?」

「うるさいよ。というか、トーカのパフェも健康的な食べ物じゃないだろ」

「いや、それはそうだけどさぁ……」

 

うまく言い返す方法が思いつかなかったのが悔しいのか、彼女はそれきりむすっと黙ってパフェをつつく作業に戻った。味が気に入ったのか、そのうちニコニコし始めたが。かわいいなオイ。

 

「さて、と。そろそろ行こうぜ。早く見つけないとな」

俺はサンドイッチの欠片を口に入れ、コーヒー*1を飲み干して立ち上がると、トーカもそれに続いて完食する。そして会計を済ませ、店を出た。

それからも俺たちは町中を駆け回り、時には声をかけてアグルのことを尋ねたが、成果は無かった。そして日が傾き始めてきた頃。

 

「もうそろそろ電車の時間だし、そろそろ帰ろうぜ」

「そうだね。今日はこれ以上探しても無駄っぽいし」

 

トーカの言葉に俺はため息をつく。

 

「はぁ……。結局収穫なし、か……。というか、どうせまだ休みだし、どっかで泊まって連日探した方が良かったかもな……」

「あぁ、そういうことなら。ついて来て!」

 

そう言って、俺の手を引いて歩き出すトーカ。俺は慌てて引き留める。

 

「ちょ、ちょっと待った! どこに行くんだ!?」

「いいからついてきてってば」

 

結局、俺は手を引かれるがまま、きょろきょろとなにかを探す彼女の後について行った。

そうしてたどり着いた先は、建物と建物の間、ちょっとした空き地だった。少し歩いたら駅前の街が広がっているというのに、がらんとした空間がそこには存在していた。

 

「ここなら都合がいいかな」

 

そう呟いて、彼女は腰のポーチをごそごそ探って、一つのカプセルのようなものを取り出した。そして、カチリとそれの上半分を回し、空き地に放り投げる。

 

すると、ぽん、と音を立てて、白い煙が立ち上る。

 

「……なんだこれ?」

「まあ、見てて」

 

そう言われて向き直ると、さっきまで空き地だったところには1Kほどのサイズの家……のようなものが鎮座していた。いやこれは宇宙船?

 

「えぇ……。ホイ○イカプセルかよ……」

「ホ○ポイカプセル? ……まぁ、だいたいそんな感じかな」

 

「とりあえず入ってみて」と言われ、仕方なく俺も中に足を踏み入れる。案内された部屋はSFじみた内装だったが、本当に一人暮らしの部屋といった作りだった。きちんと整理整頓されていて、しかしいくらか生活感を感じる。

 

「えーと、それで、これは一体なんなの?」

「これはボクの拠点だよ。ここで寝泊まりしてる」

「……マジ?」

「うん、まじ」

 

俺はしばらく呆然としていたが、気を取り直す。こんなことをしている場合ではない。

 

「というか、なんでわざわざここに?」

「ん? ああ、だってさ、他の人には見られたくないじゃない?」

「そりゃそうだけど……。でも、不法侵入とかにならないのか、これ」

「大丈夫だと思うけど……後でステルスつけて宇宙まで上がっとこ」

 

不安げな表情を浮かべて何事か呟くトーカだが、俺は構わず通された部屋の探索を始める。

 

「おぉ……。風呂もあるじゃん。トイレも綺麗だな。ベッドもふかふかすべすべしてる。テレビもゲームも完備か。快適だな」

「ちょっと! 一応女の子の部屋なんだから、あんまり見ないでよね!」

「いや、でもさぁ」

 

「文句あるの?」という風に睨まれ、思わず謝って俺は部屋の隅っこに移動する。しばらく待っていると、トーカは部屋の片隅の機械を操作したあと、何かを手に持って部屋に戻ってきた。

 

「はい、これあげる」

 

そう言って差し出されたのは、小さなUSBメモリのようなものだった。

 

「なにこれ?」

「それ、このシップのアクセスキー。それさえあれば、いつでも来れるよ」

「へぇ……。すごいな、こんなものがあるなんて」

「あ、でも、他の人に教えちゃダメだからね。それから、来るときはできれば事前に連絡入れて欲しいな」

「わかってるって。俺もこんなのを悪用する趣味はないし、後半は当然だよ」

 

そう言うと、トーカはほっと胸を撫で下ろす。

 

「あと、悪いけど寝るときは上の部屋でマットとか使ってね。お客様用の布団とかないから」

「おう。分かった」

 

それから俺はトーカに連れられ、その上の部屋へと移動した。そこはなにもない空間になっていて、壁際にいくつか棚があるくらいだった。トーカはそこにあった毛布とマットを一組取り出し、それを床に置いてくれる。

 

「はい。じゃあ、寝るところも確保できたことだし、ごはん食べよ? ボクが作ったげる」

「えっ!? お前料理できるのか!?」

「失礼な。こう見えても自炊歴長いんだぞ」

 

そう言いながら、トーカは部屋を出て下のキッチンへと向かった。俺は手持ち無沙汰になり、なんとなく窓の外を見る。空はまだ夕焼け色に染まっていて、町中の喧騒が遠くから聞こえてくる。その景色を見て俺はため息をつく。

 

「……なんか、こういうの久しぶりかもなぁ……」

 

一人暮らしをしていると、当然人の手料理なんて食べられる機会は限られる。俺は、少しワクワクしながらトーカの晩ごはんを待つことにした。

と、そこで外の異変に気づく。どうにも外が騒々しいのだ。ただ騒々しいのではなく、悲鳴が聞こえてくる。それも、一つではなく複数。

 

「なんだ……? もしかして!」

 

俺は慌てて立ち上がり、一応エスプレンダーを持って外へ飛び出した。なんと、遠くの山が崩れ、そこから岩のような外殻に包まれた巨大生物が這い出て来ているではないか。

 

「うわああああ!!」

「きゃああああ!」

「逃げろ! 化け物だ!! 殺されるぅ!」

 

人々が我先にと逃げ出している中、怪獣が街を破壊していく。ビルは崩れ、人々は倒れ伏している。そんな阿鼻叫喚の地獄絵図の中で、そいつは悠々と闊歩していた。

 

「前のとは違う……!?」

 

思わず声が出る。昨日戦った……トーカはコッヴとか呼んでたやつは両手が鎌状になっていたり発光体があったり怪物じみた見た目だったが、今回の相手は四足歩行のやや獣のような印象を受ける。

 

「見たことないやつだ。多分、この星特有の怪獣なんじゃないかな」

 

後ろを見ると、トーカも外に出てこちらに来ていた。俺は少し驚いたが、それよりもあの怪獣の方に興味があったので気にせず話を続ける。

 

「というと?」

「昨日のやつはボクたちの星にも似たようなのが出たんだけど、アレは見たことないんだ。つまり、対策がわかんない」

「なるほどね。……ま、なんとかするよ。念の為にエスプレンダー持ってきて正解だったな」

「気をつけてね」

「おう。晩ごはん、楽しみにしとく」

 

言いながら俺はエスプレンダーを腕に嵌めた。胸に手を当てることで意識して心拍を落ち着かせる。

 

「よし、行くぜ──」

 

続けて恐怖を抑え、気合いを入れるために腕を高く掲げ、叫ぶ! 

 

「──ガイアァァァッ!」

 

 

 

*1
誰がなんと言おうとこれはコーヒー

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