ちょっと散歩してたら光と融合することになった件について 作:ほっか飯倉
二話連続投稿。いい感じに分割したとも言う
「ガイアァァァッ!」
瞬間、俺の姿は光に包まれ、巨大化していく!
着地すると、目の前には巨大な四足歩行の化け物が立っていた。そいつは急に現れて立ちふさがった俺に向かって威嚇するように咆哮する。
「キシャアア!」
「でぇい! ハァ!」
俺はその巨体に向かって拳を振るう。だが、奴はまるで効いていないかのように吠えると、そのまま俺に突進してきた。
体当たりをモロに食らって吹き飛ばされる。どうにか受け身を取り、すぐに構えるが、その間にも怪獣は次々と攻撃を繰り出してくる。
「クッソ!」
「ギィイイッ」
「ぐああっ!?」
捌き切れずに鋭い爪に切り裂かれ、火花が散る。俺は一旦距離を取るべく、その場から飛び退いた。
「いってぇ……」
「グゥウ……。シャアッ」
「こっちだって負けるかぁ!」
俺は反撃に転じようと、今度は自分から走り出す。そして、その勢いのまま跳び蹴りを食らわせた。
「ガウッ!」
「くっ、硬いな」
それでも、やはりダメージはあまり通っていないようだ。ただ、殴るよりはまだ手応えがあった気がする。やつは姿勢が低い。だから、拳では殴りにくいのだ。
しかしこれではラチがあかない。どうにかもっと有効な攻撃ができないか……。蹴りの反動で再度距離を取りながら考える。そこで脳裏に閃く映像。そこでは、巨人が多彩な光の技を使って敵を圧倒していた。
「光……こうかッ!」
俺は体に巡る力を手先に集中させ、投擲するイメージで腕を振るう。すると、赤く光る刃が飛翔して、狙い通り怪獣の眉間に突き刺さった。
怯んでのけぞった怪獣に向かって、俺は更に連続で同じ動作を繰り返す。赤い光が尾を引きながら飛ぶ斬撃は、確実にその体を傷つけていく。
「グルルルル……!」
「よし、効いてるみたいだな」
怪獣は苦悶の声をあげ、その場で身を捩っている。チャンス! 駆け寄った俺は、今度は光を足に集中させ、飛ばさずに蹴りを放つ。
「オラァ!」
「ギャウン!!」
やはり、先程と同じような位置に攻撃しても威力が違うように見える。痛みに怒ったのか、やつは猛攻を仕掛けてくる。俺はそれをなんとか避けながら、隙を見て今度は顎を蹴り上げる。
「ギュオォオオオッ!!」
怪獣が仰け反り、大きな悲鳴をあげる。俺はそれに追い打ちをかけるように、何度も比較的柔そうな腹に連打を浴びせた。
「うおおおぉぉ!」
「グッ、ゴフッ……!」
段々怪獣の動きが悪くなっていく。このままトドメまで持っていけるかと思ったそのとき、ガパッと怪獣の腹が開いた。そして、赤熱した腹部からマグマの塊のようなものを発射したのだ。
完全に攻撃に集中していた俺は避けることができず直撃を受け、吹き飛ばされてしまう。
「ぐうぅ……!」
「キュオオオン!!」
「げほっ」
全身が焼けるように熱い。だが、ここで倒れるわけにはいかない。俺は立ち上がって拳を握り締め、もう一度気合いを入れた。
「俺は、負けない! 負ける、ものかぁぁぁ!」
構えを取りながら思い出す。頭に閃いた映像では、光は様々な形で使われていた。細かく放っていたり、放出して剣のようにしたり。その中には、盾として使っていたものもあった。
俺は自分の体をカバーするような光の壁をイメージする。そして、腕を突き出すと、イメージ通りの壁が出現した。
「これでどうだ!」
「……!」
怪獣は驚きに目を見開きながら、再びマグマを発射するが、壁はそれを阻む。俺はそのまま走り出して、次は光を巨大な剣のような形に収束させる。
「そこだぁッ!」
叫び、剣を開放された腹部に突き刺す。想像した通り、そこが弱点だったらしく、怪獣は苦痛の雄叫びをあげた。
「ガァァアアッ!」
「はあああッ!」
更に、俺は剣を引き抜き、大上段に構えて全力で振り下ろす。光の剣は怪獣の体を真っ二つに引き裂いていった。やがて、両断された怪獣の体は地面に倒れ伏し、爆散した。
戦闘が終わると同時に俺の姿も元に戻り、エスプレンダーを外す。
「ふう……」
「お疲れ様」
「おう。ちょっと苦戦したが、なんとかなったぜ」
「うん。カッコよかったよ」
「そう? あ、ありがとう」
元いた場所まで戻ると、トーカが待っていた。そして、可愛らしい笑顔でそんなことを言うものだから、ちょっと照れてしまう。
「でも、やっぱりすごいね。あんな怪獣と戦って勝っちゃうなんて。訓練してたわけじゃないんでしょ?」
「いやぁ、正直危なかったけどな。あの技がなかったら負けてたかもしんねぇ」
「そう! ボクまだ教えてないのに、光の技使ってたよね!?」
「んー、なんつったらいいか……。頭の中にイメージが浮かんできたんだ。こうすればいいって感じに」
「あ、それボクのときもあったよ」
「そうなのか?」
俺が聞き返すと、トーカはコクリとうなずいて言った。なんでも、最初に変身したとき、俺と同じように頭の中に浮かんできたそうだ。そのあと、実際に使いこなすまでに大層練習したらしいが……。それにしても、光を使った技のイメージが湧くというのはどういうことだろう。やはり、俺たちの前にガイアだった人の経験だった、とか。
俺は思考を中断して空を見る。日はすっかり落ちていて、夜になっていた。
「結局、アグルの人は見つからなかったな」
「そうだね……。いや、ちょっと待って」
トーカが何事か考え込むように腕を組む。
しばらく黙っていたが、やがて顔を上げると、口を開いた。
「ちょっと遠いけど……アグルの光、感じるよ!」
「なにぃ!」
「行こう! 多分こっち!」
トーカが駆け出して行く。俺は慌ててその後を追う。彼女の後を追って走ると、すぐにその人を見つけることができた。男性だ。俺よりやや年上くらいの、眼鏡をかけた生真面目そうな人だ。
「あの、貴方が青い巨人になってた人ですよね!」
トーカが勢い込んで尋ねる。が、しかし、男性は驚いたように目を丸くしたあと、首を横に振った。
「私は違います。別の方です」
「えっ、そうなんですか……?」
「そうです。人違いです。それでは」
「あっ、はい……失礼しました……」
人違い? いや、待てよ……おかしくないか? そのまま男性は去って行こうとしたが、俺は彼を引き止めた。気になることがあったのだ。
「ちょっと待って下さい。なんで『人違い』なんですか?」
「……いや、私じゃないんですから、人違いとしか……」
「だから、なんで人が巨人になっていることに疑問を抱かないんですか?」
気になったのはそこだ。シルエットだけならかなり人間に近いとはいえ、人間が巨人に変身しているとは思わないだろう、普通。やや無理筋な理由だが、どうだろうか。
俺の問いに、男性は困惑したように眉根を寄せた。そして、少し迷うような仕草を見せたあと、ゆっくりと語り始めた。
「……そうです。あの青い巨人は、私が変身しました。それで、どうするんですか? マスコミにでも駆け込む? 無理ですね。証拠もないし荒唐無稽だ」
「違います! ボクはいろいろ事情を知ってて、こっちの人はさっきの赤い巨人に変身しました! ボクたちといっしょに戦ってほしいんです!」
男性の言葉を遮り、トーカが言う。すると、彼は呆れたような顔をしてため息をついた。
「お断りです。私はもう二度とあんなことはしない」
「そんな……貴方は選ばれたんですよ! せっかく戦えるのに……!」
「それが間違いです。私は自分の身を危険に晒すつもりはないんです。そんな義務はない。……そっちの君も、さっきの話が本当なら、ヒーローごっこはすぐにやめた方がいい。あんなことは自衛隊にでも任せればいいんですよ」
そう言って、男性はその場から立ち去ろうとする。が、そこで俺はあることに気づいた。彼の左手、その薬指には指輪が輝いていた。この人、既婚者か……。なら、自分の命は自分だけのものではないだろう。なおも説得しようとしていたトーカを止める。
「……ッ、なんで止めるの!?」
「まぁ、落ち着け。あの人は戦う意思がないみたいだし、俺たちも諦めよう」
「でも、このままじゃ……」
「いいんだ。……ま、俺が一人でなんとかすればいいだろ」
「うぅ……わかったよ」
「わかってくれたようですね。それでは」
俺の言葉に、男性はホッとした表情を浮かべて去って行った。
その後、俺とトーカは宇宙船まで戻って一泊することにした。作ってくれていた晩ごはんの途中でも、終始トーカは何か言いたげな様子だったが、結局何も言わなかった。
翌朝。
俺たちは宇宙船を回収し、電車で帰ることにした。宇宙船でかえればいいんじゃないの? とは聞いてみたものの、座標設定が細かすぎて事故になりそう、とのことだった。帰り道は昨日と違い、特に何事もなく進んだ。トーカは途中で眠ってしまったので、俺がおんぶしてやったくらいか。寝ている時の彼女もとても可愛らしく、つい頬が緩んでしまった。
家に着いてからもトーカはまだ起きなかったので、俺はトーカを俺の部屋まで運び、クッションマットに寝かせておく。
しばらくして、トーカがようやく目覚めた。
「あー……よくねた。あれ、ボクなんでこんなとこに……」
「おはよう。ぐっすりだったな」
「あれ……? あっ! もしかしてここまで運んでくれたの? ごめんね」
トーカは体を起こすと、恥ずかしそうに謝った。別に謝ることじゃないと思うけどな。俺はトーカに気にしないように伝えてから聞いてみた。なんで電車で寝てたのか、ということを。トーカは一瞬キョトンとしたが、すぐに合点がいったようで、答えてくれた。
「昨日、アグルの人の説得しようとしたとき、ボクを止めたでしょ? なんでかなって考えてたら、寝れなくて」
「あぁ、アレな。あの人、結婚してたっぽいし。ただでさえ命張ってくれって頼むのに、既婚者には言い難いよなぁ、と思って」
「でもさ、そうだったとしても、自分が戦わなきゃ奥さんだって守れないのに……」
トーカが呟くように言う。確かにその通りかもしれない。でも、今の一応平和な世の中に生きる人には難しいだろう。
俺だって、自分の身が一番可愛い。ウルトラマンとして戦うのもできれば避けたかった。俺がそうしなかったのは、自分の身を守るためだし、戦い続けることを決めたのだって自分のためでもある。誰かのためじゃない。
でも、トーカの気持ちもわかる。俺も、父さん母さんの身に危険が迫っていたら、やっぱり戦うだろうから。そう、あの人なら絶対にそうする。だから、彼女の言葉には何も返さなかった。
「ねぇ、頼人。君は一緒に戦ってくれるよね?」
「もちろん。俺は戦いから降りたりしないよ」
少し不安げな彼女を励ますため、俺ははっきりと口に出しておく。トーカはそれに笑顔を返すと、俺の方を見て右手を差し出す。
その手をしっかりと握り返しながら、俺も笑いかけた。
──―アグルを探して協力を求めるのは上手くいかなかったが、ヒーローは一人でも戦い抜くものだろう。俺はあの人からそう学んだ。
あの人のような立派な人間にならなければ。
それが、ずっと昔から、俺が自身に定めた生きる理由だから。