彼と彼女の歩く道   作:ノイフェル

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暫くは湿度多めでお送りします

普段マイペースな娘が曇るのはキツくもあり、それも良いと思う自分がいます(外道)

かなり胸糞な表現かもしれませんが、ご理解のうえご覧下さい


 てんき

 

 私はアグネスタキオン

 

ウマ娘としてこの世に生を受けた

 

 

ウマ娘とは何か?

と問われたならば、答えに窮する

 

 

実のところ、自身のこととはいえ、ウマ娘について科学的に調査も行われているが判明している事はそう多くはない

 

身体能力が高いこと。五感も優れていること

そのくらいだろうね

 

 

まぁ、その辺りはどうでも良いと思っている

別に私がウマ娘だったとして、そこまで生活に影響を与える事はないからね。幼馴染と一緒にご飯を食べ、学校に行き、バカな話をして過ごす。

そんな日々が続くと思っていたんだ。愚かにも、ね

 

 

 

 

 

 

 

ああ、そう思っていた昔の私を全力で殴り飛ばしたくなるよ。本当に

 

 

 

 

 

いつもの様に放課後、中学校で研究をしていると教員が私を呼びに来た

 

 

学校においてはそれなりに真面目にしているせいか、優等生と見られていた。興味のある内容は殆ど無かったが、一々教師にとやかく言われるのも面倒だからね

 

ああ、幼馴染はその辺りは少々不器用であった為か、どちらかというとあまり成績は良く無かったね

 

そのお陰で私が彼に勉強を教える事が出来るのだから、良しとすべきなのだろうが、ね

 

 

 

学内で問題を起こすのは面倒だからと呼び出しに応じたのだが

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウマ娘の為の教育機関、ですか?」

 

「そうだね。現在その様なものをつくる為に世の中から広く人材を求めているそうだ」

 

「それは、また」

 

 

確かにウマ娘と一般的な同年代の人間を比べると身体能力において、前者が勝るのは事実

どうしても、ウマ娘は力をセーブしなければ上手く社会に溶け込めないのだ

 

実際、窮屈である事は間違いない。間違いではないのだが

 

 

「勿論、本校にそのまま在籍してくれても構わないと私は思っている

例えウマ娘であろうが、なかろうがキミはうちの大切な生徒だ

だが、もしもこの環境が不自由であると感じているのならば、この様な進路もあるということを知っておいて欲しいのだよ」

 

「ありがとうございます」

 

 

うちの学校はそうでもないが、色々と噂話程度ではあるが聞こえてくるのも事実

 

幾ら本人が社交的であっても、相手がそうであるとは限らない

どうしてもウマ娘は異質なものだからね

まして、身体能力という絶対的な差が存在する

 

だから、ウマ娘達は運動系の部活に入る事が出来ない

いや、明確にその様な規定はないのだろうが、基本的な身体能力の差から倦厭される行為だ

 

仮に陸上部などにウマ娘が所属すれば、幾ら他の生徒が努力しようとも届かない部分が確かに存在する

 

 

私の様に元々運動系の部活に興味を持たないのは少数だろう

 

本能として、走りたいという欲求は存在するのだから

 

 

 

であるからこそ、ウマ娘専用の教育施設という事か

 

そこでなら、ウマ娘達も研鑽を積み、更なる高みへと至る事が出来るのだろう

 

 

 

「急いで決める必要はない

君のこれからに関わる重要な話だ。ゆっくり考えてくれて構わないし、何か知りたい事があれば聞いてくれて良い。いつでも力になろう」

 

「重ねてありがとうございます。校長先生

良く考えさせてもらいます」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話が終わって部室に戻ったものの、あまり気分が乗らない

 

今日は此処までとしようか

 

 

 

今日の夕飯は何だろうか?

 

先週のオムレツは絶品だったのだが、次の日にレバニラ炒めを出してくるのは本当にやめてほしい

 

 

いや、私にはグラタンだったし、その日は彼は自分の家で食べていたから大丈夫と思ったのだろうけどね

 

割と私は嗅覚も良い方なんだ。調理と食事中にらついた匂いが次の日にも多少残っていたから、正直いってキツかった

 

 

いや、彼の嗜好にまでとやかく言える立場ではないのだけどね

それでも、気になるものさ

 

 

 

ああ、因みに私が一番好きな匂いは彼の自室の匂いなのだが、それについては墓まで持っていく秘密だろうね

 

流石に彼でも引かれる可能性が高いと思うから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アグネスタキオンの1日は

彼に起こされることから始まる

 

その後、彼の朝ごはんを食べ、一緒に登校

 

クラスは違うので、昼休みに彼手製の弁当を食べる

 

放課後はタキオンが科学部で彼は剣道部

 

だいたいが彼の方が後に部活を終える為、タキオンは自宅で研究を進める

 

部活の終わった彼は自宅でシャワーを浴びてから、タキオンの自宅にて夕食を作る

 

仕込みの間に洗濯と風呂を入れてくれる

 

 

その後、片付けを終わらせてから彼は帰宅

タキオンは1日の疲れを癒し、洗濯物を干す

 

 

これで一日は終わる

 

 

 

 

 

 

元々は彼の自宅ほどキッチンにものが揃っていなかったのだが、タキオンが両親にせめて調味料や道具を揃える様に頼み込んだ為、彼の自宅以上に充実したものとなっていた

 

更にタキオンは彼に頼み込み、こちらでの夕食を実現した

 

 

研究の時間を増やす為との建前であったが、本音は誰もいない自宅なら、せめて彼の匂いが欲しかった為である

 

 

いくら大人びたタキオンとて、まだ中学生。

小学校の頃から両親とは殆ど話をする時間が無くなっていたタキオンにとって、彼との時間は何よりも大切だったのだ

 

叶うならば、彼にこちらで寝泊まりして欲しいのが偽りなき本音だが、彼もそこまでは許容しなかった

 

自分の身近な彼との繋がりを求めていたタキオンにとって、それは辛い答えではあった。だが、それ以上に彼に嫌われたくないから涙をのんで諦めた

 

『せめて、彼と一番近しい場所に』

アグネスタキオンという少女の願いだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ、タキオンにとって校長先生の提案は興味こそ惹かれるものの、考慮に値しないものだった

 

ウマ娘というものに対する興味はあれど、それだけの為に彼との繋がりを断つ等、タキオンに選択する気はなかったのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、アグネスタキオンは中学生である

 

 

しばらく後、その事を痛烈に実感する事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どういう事だい、それは!!」

 

それは本当に珍しくタキオンの両親が揃って自宅に帰ってきた時の事であった

 

「落ち着きなさい、タキオン」

 

「そうよ」

 

「落ち着けだって?落ち着けるわけがないだろう!!!」

 

タキオンの両親が宥めようとするが、タキオンは止まらない

 

 

「一年振りに家族揃ってみれば、私にウマ娘の教育施設に行けとはどういう事なのさ!」

 

 

タキオンの両親が帰ってきた理由、それはタキオンへのウマ娘教育施設への転校の話であった

 

 

両親は言う

このままの生活では彼の負担になる

それにタキオンにとっても、そこへ行く方が為になる筈だ、と

 

 

 

手紙のやり取りもメールや電話のやり取りすら殆どしてこない両親。いつも傍で文句を言いながらも付き合ってくれる彼

 

どちらをタキオンが重視するなど論ずるまでとない

 

 

 

だが、タキオンは中学生であり、親の庇護下であるのも間違いではない

 

 

 

「私は今の生活で満足している

それじゃあダメなの?」

 

「あなた」

 

「タキオン。彼にはいつも面倒をかけているじゃないか

仮にこのままの生活を続けてどうする?

高校も同じところへ行くつもりか?」

 

「勿論だとも。それがいけないとでも言うつもりなの?」

 

タキオンの答えに父親は

 

「彼の人生はお前の為にある訳じゃない

確かに彼や彼のご両親は何も言ってきていないが」

 

「何だ、それは。私が寂しい思いをどれだけしていたのか!彼のおかげで今までやってこれた!

あなた達は何をしてくれたと言うんだ!家とお金を用意しただけじゃないか!

それで一番辛い時期を1人にして!彼に押し付けておいて!

今更、正論を振りかざすのか!」

 

タキオンを椅子を蹴飛ばすと、自宅から飛び出した

 

「タキオン!」

 

「待ちなさい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久々の卵かけご飯か」

 

彼は自宅でのんびりしていた

というのも、幼馴染であるアグネスタキオンの両親がほぼ一年振りに帰ってきたからである

 

アグネスタキオンという少女は分かりにくいが、非常に情の強い人物である

 

だからこそ、滅多にないこの機会にしっかり親と話をしたり、甘えたりするべきだと思い、今日は自宅で過ごしていた

 

 

 

 

実のところ、はじめの頃はタキオンの都合に付き合うと言う事で嫌であった

 

何度も喧嘩したし、泣かされも泣かせもした

 

 

だが、その中でアグネスタキオンという少女が何よりも『孤独』を恐れている事を知り、彼も余り両親に会えなかった事もあって今の形に落ち着いた

 

知り合いの中には『歪な関係』と言うものもいる

 

 

だからどうしたと言うのか

元よりまともな関係でないのは承知の上

 

 

 

 

 

 

 

 

 

タキオンも彼も結局は両親に捨てられている様なもの

 

 

確かに彼の両親は少なくない愛情を注いでくれたのかも知れない

 

それでも思うのだ『仕事ばっかりでボクの事はどうでも良いの?』と

 

 

タキオンもそうだろう

 

 

 

 

依存だの執着だの言いたい者には言わせておけば良い

 

 

 

 

 

互いが互いを必要とする関係。歪でいつか壊れる関係であったとしても、今だけはそれで良い

 

 

 

 

 

 

そう彼は考えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドンッ

 

 

 

 

 

 

 

そんな事を思っていた彼だが、不意に物音がしたのまでは聞き逃さなかった

 

彼の家は全て雨戸が閉まっており、窓から外は見えない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タ、タキオン!どうしたんだよ!」

 

玄関から外に出るとそこには

 

 

 

 

「う、うう」

 

涙で顔を濡らして蹲る幼馴染の姿があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月も星も見えない夜

 

何かが始まり、何かが終わりを告げる




 親の都合で振り回される子供。悲しいですが、よくある事なんですよね

この様な作品にお気に入りしてくださった方、ご覧になってくれる皆様には深くお礼申し上げます
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