かなり暗いです
それだけはお覚悟を
アグネスタキオンは最近、自分の研究室を手に入れた
トレセン学園の本校舎の一階の東端である
昇降口からも遠く、しかし通用門からは近い
学園からのタキオンへの気遣いを感じさせるところであった
此処に彼女と彼は花瓶を複数用意し、花を飾った
黒い百合であった
これを彼女達は研究室のあちらこちらに飾っていた
「まるで私達だね」
タキオンと彼はそう言って笑い合った
タキオンが嘗て研究していたのは『ウマ娘の限界』についてだった
だが、今研究しているのは『ウマ娘の能力低下』の為の研究である
タキオンは自分が不幸とは思っていない。
ただたまに思うのだ
私がウマ娘でなければ、この様な生活を送らなくても済んだのではないか?と
だからとて、今の自分に求められている役割はこなす
私と彼はただのマリオネット
大人達の思惑通りに踊り、そのうち打ち捨てられる替えのきく人形
彼を思っているのは間違いない。彼の想いを疑う事もない
彼に想いを寄せるのも良いだろう
だが、貴女達では無理なのだ
人形劇の人形になりきれるはずがない
私も彼もただの人形
踊り疲れても、観客の望むままの夢を魅せる。それだけのもの
貴女達にそれは似合わない
だから、彼と歩めない
ただ、願わくば
私のたった1人の妹分にだけは輝かしい明日を
アグネスタキオンはそれだけを願っている
タキオンも俺も所詮は凍った池の上で踊っているに過ぎない
ルドルフもマックイーンもゴルシもグルーヴもブライアンも皆明日を見ている
俺たちは明日なんて見てないんだ
ただ、生きていた証が欲しいだけなんだ
誰かの大切にならなくて良い
誰かの為に生きてなくても良い
タキオンの生きた証はマックイーン達が守ってくれる
タキオンの願いは彼女の妹分が叶えてくれる
それで良い
俺はただのパペットドール
操る相手がいなければ忘れ去られるだけ
それで良い
ただ、もしもこんな俺がタキオン以外に願えるならば、我が儘がゆるされるのであれば、彼女が願う未来を
彼は願う
タキオンの幸せを
タキオンの願いを
そして
〇〇〇〇の願った未来を
町内会長は半年前にこの町から巣立っていった2人を心配していた
あの2人は歪だった
親に見捨てられ、幼馴染のみを見ていたアグネスタキオン
幼馴染だけを見ていて、親すら打ち捨てた少年
人々は言う
ウマ娘と人の理想形だと
冗談にもならない
あの2人はどちらが欠けてもダメなのではない
アグネスタキオンが彼より先に死ぬとしたら、寿命のみ
それ以外の要因なら、彼が先に死ぬだろう
アグネスタキオンは彼がいないと生きていけないだろう
彼はアグネスタキオンがいないなら死ぬだろう
同じようで違う
アグネスタキオンは彼を失っても可能性は極小だが生きていける可能性がある
彼はアグネスタキオン以外に意味はない
彼の中ではアグネスタキオンは1で
その他は等しく0なのだ
そして、彼もまた0のうちに入っているだろう
町内会長が2人を気にかけていたのは、様々な事を見てほしかったからだ
山の向こうの景色
空の果ての景色
海の向こう側の景色
その他にも幾らでも2人が知らない景色がある
だからこそ、2人の周りの大人達は守ったのだ
たが、トレセン学園の話が漏れた事で全てがおかしくなった
タキオンの母親は彼女をそこへ入れようとし、中学校もウマ娘である彼女を持て余していたから、そこへ入れようとした
彼が気づいた時には手遅れだった
アグネスタキオンは両親との関係が完全に切れ、少年は彼女を守る為だけに家族も知人も全て捨てた
せめて、あちらの中学校へ通わせようと手を尽くしたが、結局思慮のない大人達によってそれも阻まれた
トレセン学園に通う彼女はこれから出会いの中で得るものもあるだろう
だが、彼にその機会はもうあるまい
トレセン学園に頻繁に出入りしていると言う話は聞いた
だが、あれではただの見世物だ
そして、彼の価値観はそこで終わる
タキオンという少女の為の装置
ウマ娘に未来(夢)を見せる為だけの機械
それに成り下がる
しかし、彼にできることはもう、ない
シンデレラは12時に魔法が解ける
タキオンと少年の現実(夢)もいつか、終わる
ゴールドシップは自宅で考えていた
何かがおかしい
ゴールドシップの優れた嗅覚と第六感はそう言っていた
だが分からない
ゴールドシップの疑問が氷解するのはそれから一年後の事であった
2人は勿論花言葉を知っていてその花を好んでいます
過去編も何処かで入れることになるでしょう
お気に入り登録と評価バーの色で恐慌状態になりますよー
短すぎますが、ご堪忍下さい