ハンズフリー?投降はしないっすよ?
うまぴょいではあ”り”ま”せ”ん”のでセーフ
本作は純愛路線のつもりでお送りしまさ
「参ったな」
「困ったわね」
アグネスタキオンが飛び出して行った後、両親は頭を抱えていた
「明日の早朝には戻らないといけないというのに」
「今日の深夜には出ないと間に合わないのに」
自身の娘が出て行ったことよりも自身の仕事を優先する両親
追いかけなかったのは、近所の目があるからである
普段居ない両親であるから
「あら?珍しいですね、いつ戻られるのですか?」
「へぇ、今回はいつまでいるんで?」
とご近所からの視線は厳しい
此処に自分の娘の事一つも出来ないなどという風聞が立てば、彼等の町内における立場が更に悪化すると思っていたからである
何せ、町内会の事も地元行事の事も何一つしていないのだ
それだけならまだ良いが、半ば育児放棄紛いの事までしていれば、そうもなろう
元々は彼等の職場は此処からかなり遠い為、両親はあまり気にしていなかった。が、流石に自分達に向けられている視線がキツくなっているのを今回改めて感じたという訳だ
もっとも、彼等の予想より遥かに近所からの評判は悪い
子供がある程度育ってからとはいえ、育児放棄など近所の人間からすればあり得ない話であったからだ
だから、両親が彼の自宅を探そうとしても(実は一度も彼の両親や彼自身にも会った事がない)見つかるはずもなく、近所に聞こうにも教えてくれるはずもなかった
そしていたずらに時間のみを消費してしまう
タキオンに持たせていたはずの携帯もタキオンは投げ捨てて出て行っており、両親からすれば打つ手なしであった
最悪、警察に頼る事も選択肢に入るはずだが、両親は真っ先にその選択を潰した
世間体を気にしてのことであった
実はウマ娘教育施設に早期入学すると補助金が出る上に、諸経費に割引もされる
更に子供を預ける事で自分達の負担も減ると両親は考えていたのだが
結局、タキオンを見つけることが出来ぬまま、両親は自分の仕事先へ戻る事になる
一方、彼の自宅に来たタキオンだが
「ほれ、ホットミルク。とりあえず飲んどけ」
「・・・・うん」
タキオンの服は前日の雨のせいでぬかるんだ地面にこけたのか、泥だらけであり、髪もボサボサだった
「とりあえず、着替え持ってくるから待ってろ」
「・・・・」
彼の言葉に力なく頷くタキオン
それを見て自室へと向かった
「タキオン、まず着替えな
そんな格好じゃ風邪ひくぞ」
「・・・うん」
濡れた服だけでも着替えさせようとしたが、タキオンは一向に動かない
別に濡れた床や汚れた所はどうでも良い
それよりもタキオンをどうにかしないと保たない。そう彼は感じた
「風呂入るか?」
「・・・」
「悪いが、無理矢理でも風呂に入れっぞ」
彼はタキオンの手を引き風呂場へと向かった
結局、タキオンは身動き一つしなかった為に、彼は嫌われる事を覚悟してタキオンを風呂に入れ、髪を洗った
だが、タキオンはそれでも身動き一つしなかった
それが事の深刻さを雄弁に語っていた
「タキオンはそこで横になってろ
飯だけは作らねぇとな」
タキオンをソファーに寝かせると彼は料理を始めた
本来ならば寝室なり和室なりに寝かせておきたいが、今のタキオンは1人にするには危ういものがあった
プルルルル
彼の携帯が鳴った
相手を見ると町内会長だった
「もしもし、どうされましたか?」
「おお、すまんなこんな時間に」
「いえ」
相手は町内会長で彼とタキオンの事を町内会ぐるみで助けてくれている人でもある
「そっちに嬢ちゃんは行っとるかの?」
「ええ、タキオンなら居ますが。かなり消耗している様ですが」
「どうやら家で何かあった様でな、頻りにお前さんの家を探しているようじゃの」
「そりゃ、また」
「とりあえず儂達から教える事はないから、今日は家から出ない事じゃのう」
「・・・・良いんですかね?」
「嬢ちゃんが消耗しとると言ったじゃろう?
おおかた両親絡みじゃと思うが?」
「そっ、すね」
「あれには皆不愉快に思っとるから大丈夫じゃろう
じゃけぇ、心配することはねぇからの?」
「・・・ありがとうございます」
「明日の早朝に電話するぞ?
今日一日は見張らせておくさ」
「はい」
つまり、タキオンは両親と何かあったって事か?
彼は頭の隅にその考えを置きながら、お粥を作り始めた
「タキオン、とりあえず食べろ、な?」
「うん」
とは言っても、タキオンの手は動かない
いや、タキオンの手は細かく震えていた
彼はソファーに座るとタキオンを自分の膝の上に乗せた
小学生だった頃のタキオンが好きだった体勢だ
中学生になってからはしなくなったが、なりふり構っていられる場合でも無さそうだと判断した
「タキオン、食べな?」
タキオンの口元にスプーンを持っていく
それから30分程でタキオンはお粥を食べた
そして、そのままでタキオンのお腹に手を回して抱き締めた
何も言わず
「久しぶりに」
タキオンが話し始める
「久しぶりに、家に、帰って来て」
「話がっ、ある、って言うか、ら」
「ウマ娘、の施設に、行けって、迷惑だからっ!」
「うん」
「私、はっ、迷惑なのかい?」
「いっつも、いっつもキミに、迷惑かけて」
「タキオン」
腕の中のタキオンが強張った
「覚えてるか?
最初の頃はいつも喧嘩ばっかりだった事」
「うん」
「でもな、今となっちゃタキオンと居るのが当たり前なんだよ」
「う、ん」
「誰が何と言おうとさ、俺はタキオンと居たい
それじゃ、足りないか?」
「足り、なくない」
我ながら無責任な話だ。彼は内心自嘲した
確かに腕の中の温もりは離したくない。それは間違いないと断言できる。
だが、所詮は子供の言うことと言われてしまえば、どうにもならない現実があった
「愛している」「信じている」
言うのは簡単だろう
だが、想いを貫く為には彼等に持ち得ない物が多過ぎるのも事実
でも
それでも
そんな無力な子供であっても
「一緒にいよう、タキオン」
「うん、うんっ!」
この女の子は護りたい
そう願った
その日、彼とタキオンは一緒の布団で手を繋いで寝た
もう離れたくはないから
短いからスイスイかける不思議
本作は湿り気を多量に含みますが、基本純愛です(2度目)
実はモデルがあったりもします(実体験)
が気にしないで行きまっしゃい!