時系列的にはタキオン達がトレセン学園に来て2年目の5月くらいです
よろしければ、どうぞ
エアグルーヴは戦慄していた
昨年1年間彼女たちと付き合いがあったにも関わらず、まるで初めて会ったあの日の様な錯覚すら覚えるほどに
うーりうりうり
やめたまえよ、グルーヴやブライアンにルドルフも見ているだろう?
目の前のアグネスタキオンは奴の座っている足の間に収まり、あろう事か奴に背中を預けている
奴は奴でそんなタキオンを目を細めながら、ひたすら頭を撫で回しているのだ
この生徒会室で、だ
しかも、である
言葉でこそ
おい、待て
とエアグルーヴならずとも言いたくもなろう
去年1年間は本当に面倒ごとばかりが多かった
奴やタキオンにも原因があるとは言え、どちらかと言えば2人は被害を受けた側だろうといえる
特に学校に満足に通えなくなった奴については同情する他ない
それに加えて、遂に奴が暮らしていたマンションからの引っ越しを余儀なくされたのだ
どうやら、元議員のコネで住居を得ていた事がマンション住人や一部の者たちから問題視されたそうだ
だが、そうなれば奴は何処で暮らせば良いというのか?
真っ先に秋川理事長や理事会が手を差し伸べようとしたが、それはそれで彼等は非難する始末
では、役所を頼るのか?と言われても世間は納得しようとしなかった
どうやら、奴は両親の所へと戻るべきだと世間の『良識派』とやらは言いたかったらしい
しかしである
タキオンがトレセン学園に来た理由はタキオンが望んだ事以上に学園側が望んだ事だったのだ
だからこそ、タキオンと奴の生活環境を整える必要があり、トレセン学園が用意した場合は公平性、つまりトレセン学園に常に優位となるという事で元議員が動いたというだけの話
これはタキオンがトレセン学園に入学する条件として、理事会が書面にて記していた
アグネスタキオンとその幼馴染の生活環境などをトレセン学園は関係各位と連携し、それを用意する
と
当然だが、この契約をトレセン学園側つまり理事会は重く見ており、それだからこそ奴とタキオンのマンションが暴露された時には常ならぬ速さでマスコミなどに対応したのである
昨年末の選挙において、総理率いる新党が圧倒的な勝利を飾り、単独で政権与党となった事も恐らくは影響しているのだろう
つまりは、一般市民でしかない奴を特別扱いした事を強調する事で現政権にダメージを与えようとしているのだ
元議員は総理の率いていた超党派に参加していたメンバーであったからだろう
実際、これは国会でも議論されニュースなどにも取り上げられた程だった
だが、その間奴は文字通り『針の筵』の様な生活だったと聞く
紆余曲折したが、トレセン学園内のタキオンの部屋に奴を置くべきではないか?との意見や新規に物件を借り上げるべきではないか?
などの意見がトレセン学園側では飛び交ったらしい
マックイーンの実家であるメジロ家からは、奴を一時的に引き取るか或いはメジロ家の人間として迎えるという意見や元議員の養子にする。と言った話すら出てきた
意外なところでは桐生院トレーナーの実家である桐生院家が分家の養子としたいと申し出てきたり、タキオンと既に契約している製薬会社から住宅を用意する。と言った話すら出てしまう
メジロからすれば、次期当主の最有力であるマックイーンに近しい上にマックイーンの友人であるアグネスタキオンの伴侶ともなれば、その重要性を疑う理由などなかった
それに加えて、マックイーンの後に続くであろうゴールドシップとも親密な関係である事もまた彼の価値を上げる事につながっていた
メジロ家は歴史ある家であるが故に、それ相応の立ち振る舞いを要求されてしまう
勿論、ゴールドシップとてできない訳では決してないが、好んで枠に収まろうという気はさらさらなかった
そうなってしまうとマックイーンやライアン、ドーベルにパーマーやアルダンや当主など彼女に近しい者はゴールドシップのあり様に理解を示すだろうが、彼女から遠いメジロ関係者は不快感を示すだろう事は容易に想像できてしまう
そういったしがらみはゴールドシップにとって好ましくないものであり、その結果として更に突拍子もない行動が増える可能性はある
それでは、ゴールドシップと彼女の風聞しか知らぬ者の間の溝が埋まる事は決してない
仮にマックイーンや当主達がゴールドシップを弁護しようものなら、彼等はそれにも不快感を持つだろう
だが、長年アグネスタキオンを支えてきた上にマスコミすら相手取ったいう確かな実績を持つ彼が間に入れば両者の溝が埋まる可能性もある
勿論、マックイーンやゴールドシップの親しい人物である事も確かだがそう言った意味でも彼をメジロに迎えるのはメリットがあるといえる
付け加えれば、メジロの一員となる事により彼はアグネスタキオンやダイワスカーレット、アグネスデジタルやナリタタイシンなどの担当ウマ娘に対しても様々なサポートが出来る
彼にとっても悪い話ではないはずだ。という理屈だった
元議員の申し入れは何のことはない
彼自身が負い目を感じていたからである
自分が辞職に追い込まれていなければ、彼はもっと安定した生活を送れていただろうし、メディアと対立する事もなかったと思っているのだから
養子とすれば、義理の息子の住まいを用意する事に何の不都合もない
桐生院は本格的にウマ娘達のレースが始まった年に当代のウマ娘であるハッピーミークとそのトレーナーである葵をトレセン学園に送り込んだ。
目的は2つ
トレセン学園、ひいては大規模に開催されるウマ娘のレースにおいて桐生院の存在を知らしめる事
それと、有望なトレーナーやウマ娘の卵を探し出す事であった
ハッピーミークも葵も決して凡百の才を持つ者ではない
ミークは全距離に適性を持ち、追い込み以外の差し、先行、逃げに対応する事の出来る桐生院の歴史の中でも傑出したウマ娘だ
葵もまた、私人としてはどうあれ、ウマ娘を育成するトレーナーとしての実力は非常に高いと桐生院も判断していた
しかしながら、桐生院の知識や経験を生かして育て、葵が完成させたはずのミークであったにも関わらず、ナリタタイシンに敗北したのだのである
惜敗などというものではなく、2着であったミークに大差をつけての圧倒的なナリタタイシンの勝利だった
この敗北の時までは桐生院本家はそこまで2人の事を問題視していなかったが、流石に大差、厳密に計算すると12バ身もの差をつけられた上での敗北ともなれば本家とて慌てる他ない
そして、ナリタタイシンの臨時トレーナーをしていたのが、かの『シンデレラの王子様』と知った者達は驚きを隠せなかった
彼等からするとアグネスタキオンのおまけ程度であった彼にトレーナーとしての価値が出てきたからである
別に葵やミークが報告していなかった訳ではなかったが、とりわけ重大な報告とはしていなかった。それ故に彼ら本家達の驚き様な尋常ならざるものとなったのだ。なまじ桐生院はウマ娘というものに長く関わっていた為に子供1人がそこまで影響を与えるなど想像の範疇ではなかったから
これにより、桐生院は彼を自派閥に取り込もうと躍起になることとなったのだが、同じくウマ娘の育成の大家である他の名家やメジロにトレセン学園の出資者の一つである秋川家などの動きもあり、自重しなければならなかった
ところが、彼が世間から非難される様な風向きになると各団体はその対応に追われる事になった
これを見た桐生院の一部は、この状況を好機と考え動き始めた
彼の情報をそれとなく、マスコミ各社にリークしたのだ
これにより彼に対する風当たりが更に強くなる事をその者達は期待したのである
当然だが、葵もミークもそんな事は一切知らない
混乱を助長しながら、その一方で彼に救いの手を差し伸べることとしたのである
全ては桐生院の繁栄の為に
そんな状況であっても、タキオンは奴に対する態度を変えなかった
いや
家がないだって?!良いだろう。すぐにヒシアマゾンとフジキセキに確認を取って、私の部屋に来たまえ。ああ、気にする事はないさ。もしも却下されたならばキミの立場を使ってトレーナー寮の一室でも使わせて貰えば良いからねぇ
と何処かウキウキした様にタキオンは奴に言い放った
私がそれはまずくないか?と問うと
今更だろう。彼と私は昨年の秋頃までは共に生活していたのだからね。トレーナー寮とて単身用とファミリー用の二種類が整備されているとも聞く。問題になるとは思えないさ
しかしだな、タキオン
お前のいう事も分かるが、奴は良いとしてもお前は学生だろう?
あの、その、だな
タキオンの発言に疑問を挟むブライアンだったが、最後はブライアンらしくなく弱々しい口調だった。無理もないだろうとは私や会長も思ったが
ふぅん?ああ、そういう事かな?
別に彼とうまぴょいやすきだっち、うまだっちするわけでもないから、その懸念は無用さ
別に君やあの人の理性を疑う訳ではない。しかし、問題となりそうな行為は慎むべきだと思うのだが
会長が言いにくそうに指摘する
そもそもの話、こう言った話をする場合は
ここは私達の中で唯一告白経験まである会長に説得してもらう他ないだろうと判断せざるを得なかった
しかし
ふむ。ルドルフ、君がそう言うのかな?
会長の発言をうけてなお、タキオンは余裕を隠そうとしない
おっと
タキオンの懐から、テープレコーダー?の様なものが落ちた
そして
彼女のいる貴方にこの様な事を言うのは間違っている事は重々承知している
しかし、私は貴方との触れ合いが何よりも尊いものであると最近思えてきたのさ。だから、私と
ガチっ!!
突然の事に身動きが取れなかった私とブライアンを他所に会長はテープを止める
ああ!なにをするんだい、ルドルフ?!
それは私のセリフだ!いつの間にこんなものを取ったというんだ、君はっ!!
抗議の声を上げるタキオンに真っ赤な顔をして反論する会長
心配しなくても、私や彼ではないよ
いや、心配しなくて済む要素がどこにもないと思うのだが
これはカフェの仕事さ。やはり彼女も良い仕事をするものさ
私達の視線を受けて、タキオンは疑問を解消した
あ、やっぱりか
相変わらず、カフェのお友達は優秀すぎるなぁ
今まで椅子と化していた奴が言葉を挟む
そういえば、貴様居たのだったな
酷くね、グルーヴ?
そんな事をいうなら、ハナさんの所のサブトレーナーに泣きつくぞ、俺は
ほう、それは中々面白い事になりそうだな
ふぅむ、それはそれで良いデータが取れそうだねぇ?
どういうことだろうか?
私の言葉に奴が痛いところを突いてくる
それにブライアンを始め、皆が興味を持ってくる
ええぃ、奴め余計なことをっ!!
この前、ハナ先輩から相談を受けてね?
何でもグルーヴが特定のサブトレーナーにだけ当たりが強いらしいのさ
ま、グルーヴだから期待の裏返しだと思うけどね
したり顔で奴は話す
元々エアグルーヴは自身にも他者にもそれ相応の立ち振る舞いを求める。別に悪いことじゃない
実際、皇帝なんて呼ばれているルドルフや女帝なんて呼ばれているグルーヴは本人だけでなく、ルドルフのトレーナーであるハナ先輩やグルーヴの担当しているトレーナーにもそれ相応のモノを求めて然るべきなんだよ
ただ、沖野さんや桐生院さんみたいにトレーナーのしての力量は確かなんだけども日常生活においては
仕方のないこととも言えなくもないけどな
担当ウマ娘の生活環境から本人の気質まで把握した上で、的確なトレーニングやサポートをしなければならないのがトレーナー
更に慢性的なトレーナー不足により、今年からトレーナー職に就いたものでも一定の基準を満たせばチームを持たなければならないからな
奴の言う通り、今年から始まったウマ娘達によるレースの拡大は我々ウマ娘の活躍の場を増やす事に繋がった
だが、それと同時にウマ娘を指導する立場であるトレーナーの需要も爆発的に増加する事となってしまったのも事実だろう
しかも、担当するウマ娘は難しい年頃の娘ばかり
奴の様に幼い頃からウマ娘という存在に慣れているならいざ知らず、画面越しや知識でしかウマ娘を知らないトレーナー志望の者も多いと聞く。当然だが、トレーナー『学園』と言う以上、そこでのトレーナーや候補生とウマ娘の問題があってはならないとの建前がある
そこで、半年から一年かけてトレーナー志望の者達は様々な知識を身に付けさせる制度を設けている
どうしても、人生経験などの理由から指導する側であるトレーナーのほうが抑止力とならなければならないケースが増えるだろうからな
レースに勝利すれば、それなりの賞金や名誉が手に入る以上、それ目当てのトレーナー志望者が現れないとも限らない
こう言った事情から、トレーナーを安易に増やすわけにはいかず、それはそのままトレーナー数の不足となってしまう
だからこそ、基準を設けてトレーナーによるチーム編成を推奨しているのだ
それはそうとして、だ
おい、お前
いつまでそうしているつもりだ?
そこのルドルフが羨ましそうにしているのだが?
待つんだ、ブライアン。別に羨ましがってなど
残念だが、ブライアン。それは認められないよ。私も彼との最近触れ合いが足りてないからねぇ
ブライアンの発言に動揺を隠せない会長に奴のそば(彼氏いないグルーヴの精一杯の表現)から離れようとしない
それどころか、奴の手を自身の身体の前で組ませようとする始末である
奴も奴でタキオンの頭の上に顎を乗せて、タキオンをしっかり抱きしめる始末である
だから、それを止めろと言っている!
思わず、私は血を吐かんばかりの声をあげそうになった
そういえば
『あの』計画性の化身ともいえるエイシンフラッシュが奴とタキオンの所に来たと噂で聞いた事がある
なんでも、フラッシュの担当トレーナーとそれなりに上手くいっているそうだが、フラッシュとしてはもう少し踏み込んでいきたいと思っているらしい。そこで、『トレセン学園一のバカップル』と言われている2人に助言を求めたそうだ
だが、相手は草食系に見えて肉食系のタキオンとウマ娘と比べても遜色ないどころか、下手をすると上回りかねないほどに愛が重い奴だ
エイシンフラッシュは2人にアドバイスを受けて、満足そうに部屋を後にしたとスズカから聞いた
その後、フラッシュは担当トレーナーと将来婚約する事を誓い合ったと聞いているが、どうにも腑に落ちん
それはそうとして、だ
現在、私とブライアンがソファーに座っており、対面のソファーに会長と奴にタキオンが座っている状態だ
何?おかしいだと
心配するな。私とてそう思っているからな
かいちょー、いる?
また面倒なのが来たな
私は内心で頭を抱える事になった
ぼくの名前はトウカイテイオー
会長に憧れてトレセン学園に入学したんだ
地元では結構強いと思っていたんだけど、此処にはもっと凄い強い人達がいる事を知った
会長こと『皇帝』シンボリルドルフ先輩
副会長の『シャドーロールの怪物』ことナリタブライアン先輩
書記の『女帝』エアグルーヴ先輩
他にも『芦毛の怪物』ことオグリキャップ先輩に『白き稲妻』ことタマモクロス先輩など沢山いる
先輩達の一部は今年の一月から既にレースに出走していて、確たる結果を出しているからね
でも、ぼくが何よりも驚いたのは同級生のダイワスカーレット
彼女は脚付きが良いと思ったから、一度真剣勝負したんだけど、六バ身も離されて負けたんだ!
ショックだった
無敵のテイオーで名が知られていたのに、あっさり負けるなんて!
しかもだよ!!
おい、スカーレット。スタート失敗してんじゃねぇか。兄貴にまた指導されるぞ?
ま、仕方ないよな。それでも先頭を譲らなかったのは流石だけどよ
とレースを見守っていた2人が言ってきたんだ!
つまり、ぼくはスタートに失敗したダイワスカーレットに負けたって事?
それは流石に納得できなかったから、もう一回勝負を挑もうとしたんだけど
ごめんなさい。トレーニングしてくれている人達からはあまり走らない様に言われているの
と断られてしまった
だから、かいちょーに話をしに来たんだけども
ふむ?確か彼女は
トウカイテイオーだったな。スカーレット達から聞いている
誰?この2人
後にシンボリルドルフは語る
別に彼女が悪いわけではないのは理解している。だが、しかし何故あのタイミングでよりにもよってテイオーが来たのだろうか。私は何か悪い事をしたのだろうか?
と
トウカイテイオーは悪くいうと、少し生意気なウマ娘である
だが、それは自分を周りに認めて欲しいという自己肯定からのものでもあった
ぼくは凄いから、見て欲しい。褒めて欲しい
という切なる叫びなのだ
そして、そんなウマ娘を放っておけない人物がこの場にいたのである
つまり
なるほどな
つまり、トウカイテイオーはスカーレットに負けたのが納得できないのではなくて、スカーレットとの力の差を正確に理解したかった、という訳やね
うん!そう
負けて悔しいのもあるけど、ダイワスカーレットが本来の実力を発揮できていないのに負けたってだけじゃ、意味がないと思うんだ
しかし、スカーレットがスタートに失敗したのか。となればいよいよアレを使うべきかも知れないね
セヤナァ
因みにメタ的な言い方をすればスカーレットの能力は
速さD スタミナD パワーE 根性C 賢さC
であり、デビュー前のテイオーと比べてかなり高いステータスとなっている
更に『直線加速』『集中力』などを有しており、元も子もない言い方になるが、負ける方がおかしい差があったのだ
しかし、タキオンと兄である彼にとって看過できない問題があったが、此処では問題とならなかった
というわけで、だ
へぇ、じゃあタキオン先輩とお兄さんがダイワスカーレットのトレーナーなの?
や、原則一年目はデビュー出来ないきまりだからね、テイオー
そうだねぇ。とはいえ、私とキミがスカーレットのトレーナーになる事はほぼ確定だろう?
否定はせんがなぁ
何というか、タキオンにせよ、奴にせよ少しは周りを見ろと言いたくなる
会長がションボリルドルフとなっているというのに、ええい!
ところで、タキオン先輩とお兄さんって付き合ってるの?
何故今それを聞くのだ、トウカイテイオー!!
テイオーの質問に思わず罵声を浴びせたくなったぞ、私は
というか、見ればわかるだろう!?
恋人でも無いものがどうして二人羽織などするというのだ!
出来るわけないだろう?!そんなふしだらな事が
そりゃ、ねぇ?
愛してるよタキオンを
キミから愛という言葉を引き出すのに、凄く時間がかかった気がするよ。まったく
テイオーの質問に奴は笑顔で答える。タキオンも凄く嬉しそうだった
不思議なものだな
奴からはタキオンの顔が見えないし、タキオンからも奴の顔が見えるはずもないのだが、それでも何の問題がない様に見える
以心伝心とでもいうのだろうか
ふーん
でも、かいちょーもお兄さんの事が好きみたいだけど?
テイオー!!
お前は何をいいだすのだ!!!
ブライアンも顔を顰めているし、会長に至ってはションボリルドルフだというのに、顔が真っ赤だぞ!
それは嬉しい限りだが、俺が一生涯をかけて幸せに出来る人数などたかが知れていると思っている
タキオンを第一に考えたいし、スカーレットやデジタルにウオッカも可能な限り幸せな人生を送ってもらいたいと思うし、そのための手伝いをしたい
そんな奴がルドルフの真剣な思いに応えられると思うか?テイオー
・・・・・・まあ、奴なりに会長からの告白を真剣に受け止めているという事なのだろう
やれやれ、奴くらい真摯に向き合う事が出来るのであれば、学園生徒とトレーナー間の恋愛とて認めさせれるだろうに
でもさ、好きっていうのは止められないものだってどこかに書いてあったよ
それに先輩とかいちょーだけの問題じゃなくて、タキオン先輩も関わる事でしょ?
ほぅ
テイオー。中々言うな
私は内心で感心していた
そも、間違われそうになるが、トウカイテイオーというウマ娘は決して勢いだけの人物ではない
文武両道を是とするシンボリルドルフに憧れているのだ。唯、レースに強いだけで皇帝に届くとは彼女とて思っていない
私は別に構わないと思っているよ
解せぬ
タキオンの発言を受けて、奴は不本意そうな顔をする
そもそも、幼い頃の私ならともかくとして、今の私がキミにそこまでの負担をかけると思っているのかい?スカーレットもデジタルもウオッカもだよ
タキオンは奴の言葉を否定する
しかし
実験室の掃除
うっ!
寮の自室の整理整頓
ぐっ!
好きあらばサプリメント生活
くぬっ!
おい
奴の呟きにタキオンは冷や汗を出し始めたぞ
アグネスタキオンは去年の秋頃に彼と住んでいたマンションからトレセン学園の学生寮へとその住まいを移すこととなった
それに伴い、タキオンが同室となったマンハッタンカフェが言うには
これで良く、あの人は生活できていましたね
との事
タキオンは
いやいやいや、違うんだ!いいかい、彼がいる以上は掃除や片付けが苦手な私がそれをするよりも、それを得手とする彼がしてくれた方が効率が良い。その時間を私は研究などの時間に充てる。彼は私の役に立って嬉しい。どうだい!一挙両得というやつではないだろうか
と言っていたが
そうですか
しかし、タキオンさん。貴女は良いのですか?
な、何がだい?
女子力というか、女としてそれはどうかと
ぐはぁっ!!
カフェの無慈悲ともいえる指摘にさしものタキオンも胸を抑えて倒れこんだらしいな
どうやら、少しは気にしていたみたいだが
タキオンは彼に
彼が3食作らなければ、タキオンはむくれる
たまに喧嘩した時などは、自分の研究室に閉じこもり食事はサプリメントになってしまう
なお、彼の作る弁当には必ずタキオンの嫌いなブロッコリーやセロリを使った品が一つ入っている
タキオンは涙目になりながらも、それを食す事にしていた
正確には食べなければならなかった
でなければ、彼が怒る
別に怒声を上げるわけでも、罵声を浴びせるわけでもない
ただ
・・・・・・
弁当箱に残る物を見て、無言でタキオンを見つめてくるのだ
しかも、
一度だけ、オグリキャップに食べてもらった事がある
しかし、即バレた
何せ、オグリキャップのそばには
更にオグリキャップも素直な性格の為にお礼を言ってくるのだ
例えバレなかったとしても、タキオンの良心が保たない
ちなみにそれから毎日オムレツの中にブロッコリーかセロリのペーストを入れていたので、彼は余程怒っていた様だった
それも辛かったが、タキオンとしては彼がいつもの様に抱きしめてくれなかったり、膝枕してくれなかった方が辛かったりする
一応、タキオンも料理の練習をしている
タマモクロス曰く
なんでタキオンは薬の調合が出来るのに、料理はからきしなんや!?
との事
タキオンにもわからない
適量は分からないにせよ、タキオンの作るものは何故か高確率で
これはもう、マスターカーボンを名乗るほかないのではないか?と皆が真剣に議論した事もあったほどだった
なお、彼曰く
いや、マスターカーボンはしゃもじ投げの腕も一流じゃないとダメだからな
との事でタキオンのマスターカーボン命名は避けられた
余談はともかくとして、タキオンとしても女性として彼の伴侶として多少なりとも料理が出来る様に努力していくつもりだった。それと片付けが出来る様にしていこうと固く誓ったとかなんとか
どこぞの歌姫の様な『汚部屋』と言われるのはうら若き乙女として我慢ならないからである
この努力が漸く一年後実り、人並みにアグネスタキオンは片付けが出来る様になったのは少しだけ未来の話である
勿論、それには
余談ではあるが、タキオンが研究室を片付けてから彼を出迎えた際、アグネスタキオンという少女にしては珍しく、
彼はその後、ナリタタイシンとのトレーニング終了後
タ”イ”シ”ン”ン”ッ”!
え?どうしたのさ
俺のタキオンが、タキオンが
一人でお片づけ出来る様になったんだよぉぉぉぉっ!
あ、そう
と彼が滅多に見せない涙目で小柄であるタイシンに抱きついていたりする
勿論、タイシンはそっけなかったが、尻尾は全力稼働し、耳は他者よりも彼の滅多に見れない弱気な言葉を聞き逃すまいとそちらのみに集中。顔は真っ赤であった
勿論、トレーニングが終わってからと言うことは周りの目もあるわけで
あれ?顧問
なにあの顧問可愛いんだけど
彼タイ。なるほどね
尊みの波動を感じて駆けつけてみれば、なんと言う事でしょうっっ!・・・・・・はぁ、尊いですなぁ
とまぁ、公開処刑の様相をていしていたが、タイシンからすれば逃すべきでないBIG Chanceであった為にそれどころではなかった
なお、後日この現場を撮影していたあるウマ娘の存在を知ったタイシンは
別にアンタが何を撮ろうと構わない。けど、それを当事者であるアタシに渡すくらいは期待してもいいはずだけど?
と穏便に交渉した結果、そのデータを獲得したとかなんとか
余談ではあるが、暫くの間
アンタ、この前トレーニングしてる他のウマ娘達の前でアタシに抱きついていたんだから、色々聞いてくれてもいいと思うんだけど?
と彼を振り回したとされる
彼氏による大攻勢の結果、タキオンの乙女心は大破する事となってしまう
なお、流れる様ないっそ無慈悲とすら言える
でも、得意なんだから良いんじゃないの?
では、テイオー
テイオーがもしも好きな人が出来た時に、料理も出来ない。片付けも出来ない。更に手伝いもしない人だったとして、それを受け入れるかい?
うーん?
それは確かにそうかも
蹲るタキオンを他所に奴はテイオーと普通に話をしている
おい、貴様
タキオンの事をあ、あい、愛しているのではなかったのか?
ん?勿論
だけどね?
最近思ったのさ、タキオンを甘やかしては彼女の為にもならない
時にはタキオンに嫌われる覚悟できつい事をしなければならないんだ、とね
いや、その精神は立派だとは思う。しかし、泣きそうになっていなくはないか?
な” っ” て” ま” せ” ん” っ”!!
明らかに泣いているというのに、奴は頑なに認めない
しかし、私の気のせいだろうか
《b》会長が少しウキウキしている気がするのだが《b》
ここから暫くは生徒会役員による高度な視線での会話をお楽しみ下さい
(おい、グルーヴ。どうにかしろ)
(無茶を言うな。明らかに会長はかかっているぞ
私だけでどうにかなるものか)
おおっと、ゴール前の彼が涙目になっているのを確認したシンボリルドルフ!
これは速い!前方にいたトウカイテイオーをあっさりかわしたぁ!
先頭を行くのはアグネスタキオン!
しかし、様子がおかしいぞ?
シンボリルドルフ、スピードが衰えないっ!
これはかかっているのかぁ!
前方のエアグルーヴは決死のブロックに入るぅ!
エアグルーヴのやや前方のナリタブライアンは必死に逃げる!
エアグルーヴ!ダメだ、暴走する皇帝は女帝であっても止められないのかぁっ!!
(私では無理だ。ブライアン貴様も手伝え!)
(なんで私が
こういうのはお前や姉貴の領分だろうに)
残るはナリタブライアンとアグネスタキオン!!
さぁ、皇帝は怪物を射程距離に捉えたぞ、どうするナリタブライアン!!
(ちっ、柄でもないというのに)
おい、アンタいい加減にしろ
それとお前もそろそろ帰ってこい
ナリタブライアンはルドルフの頭をはたいた
・・・・・・はっ!すまない、思わず我を忘れていたよ
やれやれ、彼の泣き顔だけで暴走するとは困ったものだねぇ
な、泣いてねぇし?
と言いながら、タキオンの胸にダイブする奴とそれを満足そうに受け止めるタキオンを見て、私たちはどうしようもなく敗北感を味わうこととなった
なお、後日
え?エアグルーヴ先輩。言いにくいんですけど、
と残念そうなものを見るような目で言われた
どうにも2人はまだ自重していたらしい事をそこで初めて私は知る事になる
曰く
らしいとの事だそうだ
私はどうやら
余談ではあるが、奴の起居する場所については2つの寮の寮長であるフジキセキとヒシアマゾンをどうやって説得したのかは知らないが、一時的にタキオンの部屋に住むこととなったそうだ
これにより、同室であるマンハッタンカフェのただでさえ多かったコーヒーの消費量が倍程に膨れ上がったらしいが、因果関係は不明であった(大本営発表)
というわけで、そろそろバカップルする事を自重しなくなった2人と苦労人ポジとなったエアグルーヴのお話でした
会長?
快調に彼へとアピールしてますね
ではご一読ありがとうございました
バッドエンドのifいります?
-
いる
-
いらない
-
それより更新だろ?