夢はいつか叶う
そして、終わる
本編最終話です
どうぞ
激動の四年が過ぎ去り、アグネスタキオンたちは栗東に新設された『トレセン学園栗東教育センター』に赴任する事となった
同行者は彼は勿論の事、シンボリルドルフ、ナリタタイシン、サイレンススズカ、ミホノブルボン、ライスシャワー、ダイワスカーレットである
普通に大所帯であった上に豪勢と一言で片付けられないレベルのメンバーだった
初代会長シンボリルドルフに二代目会長ダイワスカーレット
初の海外勢とのレースであったジャパンカップをその実力で文字通り『蹂躙』し、日本のウマ娘のレベルの高さを世界に示したナリタタイシン
今なお、『異次元の逃亡者』として名を馳せるサイレンススズカ
信念に生き、その身をウマ娘という存在と彼に捧げた『不朽のウマ娘』ミホノブルボン
風評など気にする事なく、ただ自らの想いの為にターフを走り抜けた『漆黒の刺客』ライスシャワー
マルチな才能を発揮し、近年急速にその名を世間に知らしめた『トレセン学園一の頭脳』アグネスタキオン
自身の道を信じ抜き、マスコミや世間と闘い続けている『鬼子』と呼ばれている彼
大凡何かのイベントであったとしても、ここまでのメンツを集める事は叶うまいと思われるものであった
新幹線で京都駅まで行き、米原方面の新快速に乗り換え滋賀方面へと戻り、草津駅で下車し、そこからバスで向かう事とした
実は最寄駅ではないのだが、本数の問題などからこのルートを選んだのである
荷物自体はタイシンの自宅宛に郵送しており、彼女達が到着して1時間後に荷物が着く様に手配していた
言うまでもないが、このメンバー
非常に目立つ
ただでさえ容姿端麗なタキオン達であるのに、諸々のレースにより知名度が段違いとなった彼女達である
ましてや、タキオン、ルドルフ、タイシンは恋をしている
女性は恋をすると化ける
とは良く言ったもので、元々美しかった彼女達は更に美しくなっていた
思わず顔面偏差値が平均クラスの彼が躊躇するほどに
とはいえ、躊躇した分だけ距離を詰められるので然程に意味などなかったりする
バスに揺られる事約30分程で教育センターの正門前に着く
最寄り駅である手原駅は草津線であり、先に触れた通り本数が少ない
JRは増便を検討したが、教育センター側はこれを謝辞している
一応手原駅の場合はシャトルバスを運行しているので、こちらの方が便利なのだが、今回は先にタイシンの家に寄ることとなっているので、こうなった次第だ
そうは言ってもバス停ひとつ分なので、然程に距離が離れているわけではなかったりするのだが
でかくね?
ふむ、豪邸だね
奮発しすぎではないのか、タイシン?
そうでもないって
タイシンは否定するが、明らかに大きすぎる邸宅である
一体何人住むつもりなのか?と言わんばかりの広さであり、しかも別の棟まである始末
タイシンとしては、教育センターに遊びに来る友人達の受け皿という意味もあってこの規模としていたのだが
建前上は
費用については、ジャパンカップの賞金やマックイーンやブライアン、ハヤヒデやチケットなどが多少援助してくれたので金銭的負担は思っていたのよりは軽かった
本来なら、レース勝利の際の賞金はトレーナー。つまり彼との契約内容によって、ウマ娘とトレーナーで分ける事になっているが
ボクは口を出しただけ
結果を出したのはタイシンの努力あっての事
と賞金を受け取ろうとしなかった
それでもタイシンが納得するはずもなく、彼のアパートに行って彼の為に料理を振る舞ったりして、少しでも彼に返そうとした
彼とタキオンが一年目に住んでいたマンションであったが、マンションの住民とトラブルになりかねず、またマスコミや面白半分で凸してきた配信者などがマンション周辺に待機していたり、そこで配信していたりしていた為、彼はマンションからの退去を決意
マンション入居にあたり、尽力してくれた元議員の元にトレセン学園理事会の一人と共に赴き、今までの事に感謝し、この様な事になった事を陳謝した
また、マンションの管理会社に対しても、一連の騒動により多大な迷惑をかけた事と同じマンションの住民にも迷惑をかけた事を謝罪し、そこを引き払う事を伝えた
幸いというべきか、トレセン学園理事長秋川やよいとその秘書駿川たづなと理事会のメンバーは彼が学園に訪れた際の理由などの履歴を全て残しており、通用門担当の警備員とも連携し、事実確認を行なった
ダブルチェックは基本であった
それにより、彼の出勤記録を作り、そこから彼の給料を算出した
その給料を転宅の際の元本にする様に彼に伝えたのである
転宅について、管理会社の担当は
寧ろ自分達の不手際のせいで、お二人の平穏な生活を守れなかった事を謝罪し、せめてもの償いに彼の新居の手配をさせて欲しいと願い出た
彼等管理会社からすれば、セキュリティーやプライベートの保護などを行えるとの信頼を裏切ったのだから
同席していた理事会の人物はこの提案に迷っている彼に対して
君が彼等に遠慮する気持ちも分かるつもりだ
しかし、彼等とて立場がある。安心を謳っていた筈のマンション内でのプライベート情報の流出に加えて住民間でのトラブル
これで君が出ていくならば、彼等の信用は地に堕ちたままとなる
せめて、彼等のアフターケアを受け入れてやってはどうかね?
その通りだった
彼の住むマンションの住民の一部が騒いでいるのは事実だが、それ以上にこの管理会社が管理している他の物件の住民からは
子供が必死で生活してるのに、同じマンションの住民はなにやってんの?
しかも、そのマンションにその子目当ての人間が押し寄せているんでしょ、迷惑と言うのは分かるけど、管理会社は施設警備員配置してるし、そこまで問題にしないといけないの?
というか、そいつらはどうしたいのさ?
その子供に出て行けとでも言うつもりなの?
とかなりの論調で管理会社に抗議ともいえる電話が入っていたのだ
というもの、とある住民がSNSで
自分の住んでいるマンションに例の子供いるんだけど、ホント迷惑
さっさといなくなって欲しい
との呟きをしたところ
その子供、親とほぼ連絡とってないって知ってる?
親の支援も当てにできない子供を追い出すって本気?
迷惑って何?ニュースなどではマンションの敷地内には立ち入れないと聞いてるし、そこら辺は警察の特別巡回地区に指定されてるって話だよな
居なくなれっていうなら、寧ろ自分が引っ越せば良いだろ?
管理会社だって、そういう訳なら費用を持ってくれるだろ?
と痛烈な反応が帰ってきた
警察は彼が傷害事件の被害者になった一件の後、警察庁長官や警視総監なども動くと言う大騒動になった
所轄の一部の警察官が意図的なサボタージュをした結果、彼が刺されてしまったのだから
加えて、それを隠蔽する様に指示した事も明るみに出ると、そのエリア担当の警察署に査察が入る事となった
その結果、署員の一部がこれに関与していた事が明らかとなり、即刻懲戒解雇の処分を下した
曰く
市民の安全を守るつもりのない人物など警察には残念だか不要
加えてそれを後押しするかの様な行為がある事など絶対に許容出来ない
との事であった
中途半端な時期にも関わらず、異例とも言える人事異動が発表され、関わりの少なかった警察官は新年早々に他の署へと移動させられる事と決まっていた
これは『処分』であり、決して『温情』ではない
人事異動が発令されるのは、基本的に年に2回
9月と4月である
つまり、それ以外の時期での異動は関係者ならばこう思うだろう
お前、何やった?
と
つまり、新しい環境においていきなり同僚からの白い視線に耐えなければならなくなる訳で、これが彼等に与えられた『処分』だということである
その後所轄は襟を正し、トレセン学園と彼に非公式ながら謝罪
彼の自宅からトレセン学園までのルートの巡回の話をした
ところが、彼からは
それよりも、マンションの状況をどうにかして欲しいです
との要請があった為に特別巡回地区となり、周辺住民とマスコミなどのトラブルを未然に防ぐ対応を取り始めた
彼については定年退職した後に技能指導員として再雇用された人物を『人格面』などの精査をした上で配置する事となる
なお、呟いた人物はこれで世間の同情をひこうとしたのだが、皮肉にも逆効果となってしまった
あまつさえ
その話を詳しく聞かせてもらってもいいでしょうか?
などと言った『自称社会的正義を守る』配信者とやらが接触を求めてくる始末だった
ある意味では世間の同情を買えなかった一部の住民達は
なら、彼方から退去させれば良い
との発想に至った訳である
住民同士のトラブルにはあまり手を出せない管理会社としては、事情を他の住民から聞いて、知っているだけに歯痒い思いをしていたのだ
彼等は自社物件ではなく、府中にて良心的な経営をしているとある不動産屋を紹介
その不動産屋からかなり古いが、事情を知っても受け入れてくれる大家のいるアパートを紹介される事となる
なお、契約自体は元議員が継続する事となり、『空き部屋』でありながら、彼がトレセン学園を離れる日まで続く事となっていた
タイシンはそのアパートをナイスネイチャから教えてもらい、週に一度程度通う事にしていた
実はタイシンの料理スキルはそこまで悪くなく、以前の一件から同室のスーパークリークやタマモクロス、ナイスネイチャなどに師事していたりする
なお、それは世間で言うところの『通い妻』そのものであり、それを知っているハヤヒデやチケット、ネイチャなどは揃って優しい視線をタイシンに向けていたりする
側からするとタイシンは『小柄』で見方次第だが『幼く見え』、そんな人物が『通い妻』していた訳で
もしもし、ポリスメン?
と下手すればなりかねない案件であったりした
ナリタタイシン
少しだけ幼い自身の容貌に不満を覚え始めている恋をする少女であった
因みに栗東と言うのに、教育センターの最寄駅である手原駅にアクセスするには栗東駅の隣駅である草津駅からしか草津線にはアクセス出来ない
しかも、新快速だと栗東は通過されてしまう
当時、トレセンの側に住んでいた作者はいつもこの謎仕様に困惑していたりしたのだが
なお、ホテルも栗東より草津駅の方が多かったりするし、バスでのアクセスも何故か草津駅の方が便利だった記憶がある
駅前も栗東より、5年ほど前に出来た商業施設の所為で草津駅の方が利便性が上がった
荷物を運び込んだタキオン達は早速センターに向かうこととした
歓迎っ!
よく来てくれた
え?やよいさんがなして此処におっとよ?
地が出ているよ
失礼
何故秋川理事長が此方に?
秋川やよい理事長に迎え入れられた2人は驚き、特に彼は滅多に見せない方言全開になるほどの衝撃を受けていた
実は
要約すると
トレセン学園創設時の混乱期を乗り切った手腕を買われて此処に来たそうだ
となると、トレセン学園は?
うむっ!
樫本君に任せている
樫本ちゃん、ファイトやで
因みに樫本トレーナーはその話を受けた晩
彼女は同僚である東條、沖野、桐生院と飲みに出かけ、潰れて帰ってきた
オグリやフラッシュ、グルーヴのトレーナーは?
此処は独り身専用です!
ココンとグラッセは呆れながらも、しょうがないなぁという顔をしていたそうだ
その年、樫本トレーナー改め樫本理事長代理は『アオハル杯』の開催を理事会に提案する事になるのだが、それはまた別の話である
という訳で教育センター所長に秋川やよいトレセン学園理事長を据え、新たな時を迎えることとなった
その後、教育センターにて次世代のウマ娘やトレーナー養成にタキオンや彼は奔走し、6年後タキオンの育ての父親との和解が成立した
既にタキオンと彼は結婚しており、その事は手紙で知らされていた父親はタキオンと彼に今までの事を謝罪し、それ以降は家族としての関係を戻すこととなった
父親は今まで働いていた会社を退職し、栗東に引っ越す事として、教育センターから徒歩数分の距離にあるスーパーでアルバイトしながら生計を立てる事にした
勿論、失われた時が戻る事はないが、それでもタキオンと父親は徐々にその関係を戻していくと彼は確信していた
その翌年、彼もまた自身の両親と話し合いの場を設け、話し合いを初めてした
従兄弟達との関係も漸く元に戻ったのである
だが、それから僅か2年後に彼は病に倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまう
この訃報に秋川やよい理事長以下トレセン学園理事会やメジロ、秋川当主などはタキオンに弔電を送り、彼の葬儀には代理人として駿川たづな女史が参列する事となった
それから僅か半年後
アグネスタキオン、シンボリルドルフ、ナリタタイシン、ダイワスカーレット、アグネスデジタル、ウオッカにゴールドシップをはじめとした彼と親しかったウマ娘達の姿は劇場にあった
よく来てくれたね
歌劇作家として有名になったテイエムオペラオーが迎えてくれた
久しぶりだね、オペラオー。彼の葬儀の時の弔電嬉しく思うよ
此方こそすまないと思っているよ
本来なら参列すべきだったのだがね
彼女は無念そうに表情を歪めた
地方巡業の最中であり、ましてや南九州へと巡業していた時に彼の訃報を知った
何度も迷ったが、泣く泣くプロとしての責任を果たした
彼女にとって、彼が『この作品』の完成を前に亡くなるというのはあまりにも辛い話たったのだから
オペラオーの脚本を書いた舞台は
幼い頃、両親からの愛を受けられなかった少女がとある少年と出逢い、恋心を育みながら様々な障害を乗り越えて、やがて結ばれるという内容だった
それはまさにタキオンと彼の人生そのものだったのだ
『彼と彼女の歩く道』
それがその劇のタイトルであった
そしてそれは、新進気鋭の歌劇作家であるオペラオーの作品である事もあり、マスコミも喜んでそれを報道して
しかし、この作品はかなり事実に寄せた内容となっており、『ノンフィクション芸術』と揶揄される程の内容であった
故にマスコミを想起させる役どころは観ている者がはっきりと嫌悪感を示す程度の演出となっており、それがかえってオペラオーの不満を表していた
その後、『彼と彼女の歩く道』はドラマ化や書籍化されるなどと言った一大旋風を巻き起こす事になるのだが、それは少しだけ先の話である
1人の少年と
1人の少女がいた
ねぇ、キミ
何でそんなに楽しそうに走るの?
ふぅん?キミは私を怖がらないんだね?
そんな事ないよ
だって、そんなにキラキラしてるもん
ねぇ、お名前は?
騒がしいね。私はアグネスタキオン。もう良いだろう?
あ
アグネスタキオンは煩わしそうにその場を走って何処かに行った
少年はその走りに、輝きに魅せられたのだ
凄いなぁ。ボクもあんな風になれるのかなぁ?
少女がいなくなった場所で少年はそう呟いた
七色の幸せ
星空の約束
今も晴れない雨の中
届かないキミにだけ
こんなに愛してるのに
求めては増える分だけ
短くなる夢の続き
空に咲く
虹になりたい
彼と彼女の歩く道
終幕
幼い頃の夢だった
少年は何も知らず、ただその姿に憧れた
その少年と憧れを抱かれた少女の物語
まさか、此処までの評価やお気に入りなどを頂けるとは思いもよりませんでした
多数の感想を頂き、ただただ恐縮する次第です
投稿時に入院なども相まって、中々筆が進まなかった事もあり、長々と続けてしまった感があります
そもそも、創作活動に興味を持ったのはリア友が今年このサイトで小説投稿をしている事を知った事がきっかけでした
その友人はコロナ禍において、不幸にも命を落とす事となりましたが、彼としていた話の中の
アグネスタキオンの萌え袖くるくる可愛くね?
との話と自身の夢の内容を合わせた結果がこうなりました
低評価を頂いたり、誤字を指摘されたりと至らぬ私ではありますが、此処まで来れたのは偏にこの小説を読んでくださった皆様のお陰であると思っております
伏して御礼申し上げます
今後とも創作活動を続けていこうと思いますので、ご縁がありましたらまた何処かでお目にかかれたならば、幸いです
最後のアンケートを実施しますので、宜しければお付き合いくださると嬉しく思います
皆様重ね重ねありがとうございました
閑話需要ありますか?
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あるある
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ない、ですねぇ