彼と彼女の歩く道   作:ノイフェル

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これはトレセン学園2年目のとある日の記憶


 冬のバカップル達

よ!みんな元気してっかよ?ゴルシさんが今回の語り部になるから、よろしくな!

 

 

そう言って彼女はため息をつく

 

 

本来だったら、あたしのトレーナーも一緒にするはずだったんだけど、逃げたんだよなぁ

 

 

というか、最近『トレーナーの人間離れ』が加速してる気がするだよ。あたしやウオッカから逃げ切るトレーナーとか、あたしやタイシン先輩の蹴りうけても平然としてるトレーナーとか、スズカさんのやや本気の蹴り受けても病院送りにならないOトレーナーとかな

 

 

最近トレセン学園のウマ娘達を密かに悩ませている問題。それが『トレーナーの人間離れ』である

 

 

 

や、ウマ娘と関わろうと言うのに、何であなた方は『普通』なんですか?

 

 

トレーナー部門教官となっていた空の第一声であった

 

 

彼からすれば、幼い頃から嫌と言うほど『ウマ娘』という生き物の理不尽なまでの身体能力を見てきた

 

だからこそ、来年度からトレーナーとして働く彼等、彼女達の身体能力の低さに驚く他なかった

 

 

感情的になりやすいのが、『ウマ娘』の特徴とも言えるほどである

 

 

無論の事、学園の初年度のカリキュラムにその辺りをある程度自主コントロールできる様なプログラムも組まれているが、だからとてウマ娘達だけに注意させるのは酷であろうと彼は思っている

 

彼女達だって『ヒト』なのだから

 

笑いもするし、怒りもするし、泣きもする

 

 

 

そして、トレーナーとはそんな少女達と共にレースに挑んでいくのだ

 

言うまでもなく、彼女達ウマ娘にとっては『一生に一度(オンリーワン)』なのだ

トレーナーからすれば、他のウマ娘がいたとしても彼女達の一度きりのチャレンジ

 

トレーナーはそれを彼女達以上に真剣に受け止めなければならない

 

 

 

であれば、上辺だけのやり取りなどで済ませられるはずもない訳で、本音でぶつかるのが当たり前となろう。しかし、彼女達は多感な年頃である以上、『思わず』手が出る事もあるだろう

 

 

それを普通に受け止めるのは、ほぼ不可能

 

であればこそ、己を鍛える必要があると空は考える

 

 

これはトレーナーを傷つけた場合、当事者であるウマ娘にもかなりの精神的ダメージが予想される事と共に、負傷した場合の処理の複雑さにも理由がある

 

 

学内の問題である為に、学園理事会などが情報の流出を止める事自体は然程難しくはない

 

だが、それはあくまでも軽傷であった時に限る

重傷の場合は当然だが、家族への連絡が必要となる

 

その場合、果たして家族たちがウマ娘にどう言った反応を見せるのか?想像するまでもないだろう

 

 

加えて、制度的な問題もある

 

敷地内あるのはあくまでも『応急処置』の出来る施設に過ぎず、学園と専属契約している病院に搬送される事になっているが、当然治療費などが発生する

 

だか、トレーナーやウマ娘関係者というのは制度上かなり曖昧な立場であり、公的には危険作業とみなされていないが、保険業界からは『危険作業』として認識されており、一般的な傷病保険には加入出来ない事となっている

 

 

保険業界も昔はウマ娘関係者でも加入させていたのだが、とある関係者がウマ娘との関係を拗らせた時に、月にどころか毎週一回は病院にかかる様な事態を引き起こした事があった

 

その人物が加入していた保険会社はお世辞にも大きな所ではなかった事もあり、その会社はかなりの人員と資金を消費してしまう

それにより、その会社は経営が悪化し始めた。様に周囲から見えてしまった

 

 

加えて間の悪い事に、同時期に医師とウマ娘関係者が共謀して事件を起こしてしまい、保険業界はウマ娘関係者を『例外』扱いする事を暗黙の了解としたのである

 

 

それが今に至る保険業界からの『危険作業』扱いの理由であった

 

 

 

当然だが、この辺りの事情も理解しなければトレーナー部門教官など勤められる筈もない

 

実際は理事会から色々と愚痴を聞いていた中で知った訳なのだが

 

 

 

「なら、関係会社で保険会社創れば良くね?」

と考える方もおられるかもしれないが、それは非常によろしくない

 

言ってしまえば『ウマ娘関係者』特化というものは現状においては懐疑的な視線を向けられる要素でしかないし、他ならぬマスコミがそう誘導するだろう

 

 

 

 

という訳で、教官としての初仕事は

 

 

 

 

トレセン学園元武道場

現、トレーニングルーム

 

 

という訳で、皆さんには身体を鍛えてもらいます

 

 

空の一言にトレーナー候補生はざわめいた

 

 

 

それ、意味あるのか?

 

え、そういう事するのかよ?

 

というか、何で教官が子供なんだよ

 

 

パキッ!

 

 

空の手の中にあったクルミが『砕けた』

 

 

あなた方は来年度トレーナーになる為、此処に来たんですよね?

 

静まり返る候補生達を前に

 

 

やりましょうね?

 

 

 

満面の笑みで空はそう告げた

 

 

 

 

 

 

 

後に東條トレーナーは語る

 

 

あの時の教官は子供である事を一瞬忘れましたね

ええ、怖かったです。本当に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

という訳で『トレーナーの人間離れ』が進行していくこととなったのである

 

 

 

 

当然だが、これは秋川やよい理事長を始めとした理事会やトレセン学園教務部達との協議の結果こうなった

 

 

教務部というのは、トレセン学園にて主に初年度行なわれる一般教養や普通科目の教員が所属している部署。どちらも初年度以降も行なわれる為に生徒達に近い存在とも言えなくも無いだろう

 

 

 

学園の形をとっている以上、通常の高等教育についても教えるべきだという意見はトレセン学園関係者の間で強い

その結果、実現したのが教務部であった訳だ

幸いにして、塾の講師などに資格が必要ない事を利用する事でどうにか教育の形を取る事は出来た。勿論、問題は山積みだが

 

 

酷な話ではあるが、トレセン学園に所属している全てのウマ娘がレースで活躍できる訳ではないのだから、その後のケアも考えねばならない

 

 

折角トレセン学園に来たのだから、何か学んでいって貰いたい

 

 

それが教務部を始めとした学園関係者の思いだった

 

 

 

 

 

 

 

まあ、そこら辺の事情を知っているのは初代生徒会メンバーぐらいなので、彼女の嘆きも分からなくはない

 

 

 

ま、そんな事よりも今回あたしが話するのは去年の冬の話だな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四季の終わりにして、次の芽吹きを待つ季節

 

 

 

そんな冬にトレセン学園は

 

 

 

 

うむ、そっちは任せてもいいか?ブライアン

 

任せておけ

全く、こんな事なら姉貴を引っ張ってくればよかった

 

ブライアン。そう言って暇を作ろうとするな

どれだけ仕事があると思っているんだ?

 

 

トレセン学園開校一年目である為に、全てが手探りで行われているのは承知の通り

 

その先頭に立っている生徒会メンバーはイベントの度に忙しなく動き回る事となっていた

 

 

 

人手が足らん!

会長、奴の手を借りましょう

不本意ではありますが

 

奴?

ああ、名誉会長か。確かにな

奴なら、理事会ともそれなりにコネがあると聞くし、何気に影響力もあるからな。私としては奨めるぞ?

 

 

グルーヴの提案にブライアンも乗り気だった

 

 

しかしだな。彼の立場は微妙だぞ?学園関係者ではあるが、生徒ではないだろう?

 

ルドルフの言う通りだった

彼はあくまでも来年度から始動する『トレーナー部門教官』というのが学園での立場であり、『ウマ娘相談役』としての立場もあるが、どちらかと言えば教職員の立場にある

生徒主体のイベントへの協力を要請するのは、生徒会長としては憚られた

 

更に今年の秋口からの一連の騒動で、彼が少なからず疲弊しているのも知っているルドルフ個人としても彼には休んで欲しいというのが本音である

 

 

お困りの様だねぇ

 

そこに現れたのはアグネスタキオン

彼女は生徒会『庶務』の役職に就いている

 

とはいえ、これは彼女が生徒会室を度々訪れる為に急遽整えた方便であり、形ばかりの役職であったりする

 

 

本来なら、認められる筈もないのだが

 

 

 

 

タキオンか

まあ、奴を抑えられるなら、構わんか?

 

別に手数が多いのは歓迎すべきだろう?

 

しかし、だな

 

 

グルーヴは彼の対策として、ブライアンは偶にとはいえ戦力として役立つならば問題なしとした

 

が、当然ルドルフは難色を示したのだが

 

 

おやおや?折角彼と会える機会が増えるかもしれないというのに構わないのかい?

分かった。形式上という形でならば認めよう。勿論、多少貢献してもらうが

 

 

タキオンの言葉につい流されてしまうルドルフであった

 

 

恋する乙女は無敵だって、それ昔から言われてたし、多少はね?

 

 

 

 

 

この申し出に対して、秋川やよい理事長は温かい目で報告に来たルドルフを見ていたとされる

 

 

 

 

 

という訳でタキオンが此処にいるのは問題なかったのだが

 

 

 

忙しいのは見たらわかるだろう

暇なら手伝え。それか姉貴を呼んできてくれ

 

タキオンか

お前からも会長を説得してくれ。流石に手が回らん

 

ブライアン。それは無理だろうね。先程マックイーンが彼女とチケットを引っ張っていったのを見かけている

 

ちっ、流石マックイーンだな

先手を取られたか

 

グルーヴ。つまり彼を呼ぶ事をルドルフが渋っているという事なのかい?

 

そうだ

気持ちは分かるのだがな

 

 

グルーヴとしても、なんだかんだで付き合いのある彼をわざわざ引っ張り出したくはない

ないのだが、予算編成を終えたというのに、関係各所から追加の予算請求が回ってきているのだ

だが、秋川理事長と駿川秘書は関係省庁との話し合いの為に不在

こうなると、生徒会メンバーでは対応しきれないのである

 

彼女達はあくまでも生徒であり、彼は教職員。しかもそれなりのポストである事の違いである

 

生徒会の場合だと、理事会に対しての要求は理事長を通してしか行えず、困っているのだ

 

 

 

寧ろ、グルーヴとしては彼を『生徒会顧問』として迎えられないのかを真剣に考えていたりする

 

 

なるほどねぇ。ルドルフ、仕方ないじゃないか。彼を呼ぼう、そうしよう

 

気のせいか?明らかに私情が混じっている気がするのだが

 

食い気味にルドルフを説得しようとするタキオンに彼女も思わずツッコミを入れた

 

だが

 

当たり前だろう。彼は私の彼氏なんだよ?なのに最近はトレーナー候補生との仕事や理事会との話し合いに、タイシンやスズカ達のトレーニングばかりじゃないか!もう1週間も彼の手料理を食べていないし、声だって数える程しか聞いていない!しかもだよ?それも全て電話越しという味気のないものばかりじゃないか!何度も言うが、私は彼の彼女なんだよ?その彼女を放っておいて、他の女性とイチャイチャするとか流石の私も怒らざるを得ないと思わないかい?ルドルフ

 

 

と、驚きのワンブレスであった

 

 

 

おい、ここでタキオンするな

そういうのはルドルフと2人の時にしろ

 

 

とブライアンはタキオンの言葉を遮る

 

 

 

 

 

トレセン学園豆知識

 

タキオンする

彼がいない場合、惚気る。彼について愚痴る行為

なお、副次的効果として、周囲の『彼氏いないウマ娘とヒト娘』に多大な精神ダメージを与える

 

 

 

 

むぅ。そうは言うがね

 

 

タキオンは不貞腐れる

 

 

タキオン

アンタの言い分も分からなくはないが、私もグルーヴの奴も相手が居ないんだ

少しは自重してくれ

 

 

ふぅん?流石にこれ以上は私も許容出来ないが?

 

する必要もないし、される必要もないから安心しろ

 

 

タキオンの言葉を一刀両断するブライアン

 

 

奴に魅力が無いとは言わんが、私の好みではない

そういう事だ

 

 

タキオンとルドルフの剣呑な視線を意にも介さないブライアンであった

 

 

 

 

とにかく、彼を呼んでくればいい訳だね!早速彼を呼んで

 

 

よお。呼んだかぁ?

 

 

耳と尻尾をご機嫌そうに動かして、彼を呼びに行こうとしたタキオンだったが、当の本人の登場であった

 

 

 

 

タキオンはどうして?と困惑した

彼を呼びに行く→彼と話できる→つまり、彼と久しぶりにイチャイチャ出来る

 

それがタキオンの計画だった

 

ところが、彼が此処に来てしまってはその予定が全て崩れてしまうでは無いか

 

 

 

ど、どうしてキミが此処にいるんだい?

 

タキオンは思わずorzと膝をつきながら、彼に問いかける

 

 

ん、ああ。呼ばれたからな

 

彼はタキオンから視線を外しながら、答える

 

 

 

 

何故かと言うと、タキオンは制服の上に彼のお手製白衣を着ている

つまり、タキオンはスカートな訳であり

 

 

彼はタキオンの後ろのドアから入室してきた

当然である。生徒会室に出入り口は一つしかないのだから

 

タキオンは先程まで席について事務処理をしていたルドルフと話していた。つまりは部屋の入り口側から室内に進んだということ

そして、タキオンは正面方向、ルドルフ側に膝をついた

 

 

 

 

つまり、そう言う訳である

 

 

 

 

 

 

見慣れた光景と言えなくも無いが、それでも1週間もの間、タキオンと触れ合えなかった彼にとって、その景色は猛毒であったのだから直視出来ないのは当たり前であろう

 

 

ただ、彼氏として一言だけ

 

 

黒は攻めすぎじゃないでしょうかねぇ

 

 

との事らしい

 

 

 

 

 

 

 

 

何のことかは知らないがヨシッ!(突然の学園猫)

 

 

 

ふむ、とりあえず来てくれたのならば色々と頼みたいが構わないかな?

 

仕方ないなぁ

 

目の前の惨状は見ない事にして、ルドルフは彼に依頼した

彼としてもルドルフの力になりたいのは事実なので、問題ない

 

 

とりあえず追加予算を理事会に通せばいいのな?

他にやる事は?

 

 

彼女達生徒会メンバーは優秀である

となれば、彼女達が出来ない事で自分に出来る事

かつ『常ならば出来ている事』となれば、秋川理事長達が外出している為に出来ないであろう理事会とのやり取りだろうと見当をつけた

その上で『クリスマス』のイベントが既に来週に迫っている現状で理事会を通さなければならない案件はほぼ追加予算申請だろうとも考えた上で発言した訳だ

 

 

流石だな

やはりなんだかんだで優秀なのだな

 

この理解力にはグルーヴも感心する他なかった

 

 

その通りだ。苦労をかけるとは思うが、頼めるかな?

 

 

大丈夫、問題ない

 

 

空からすれば、理事会はただのお節介焼きの集団でしかなく親しみやすい年上の集団でしかなかった

 

 

 

勿論、彼等は様々な利権の絡むトレセン学園をやよいの協力要請を受けてから、僅か10年もかからずに現在の形にした者達である

はっきりいって、規格外と言っても良いほどの経済力や組織力、調整能力を有している

 

だが、彼等からすれば空は必死になってタキオンを守ろうとしているその姿を見て、彼等なりに支援しようとしているだけに過ぎない

 

功利的といえる彼等にしては珍しい行動でもあったが、この変化にはやよいの説得以外にも理由があった

 

 

 

あまり知られていないが、学園理事会も学園内に常駐しており、彼等は生徒達を直に見ている

勿論、窓から見る程度だが

 

であればこそ、ウマ娘達の楽しそうな姿を見ている訳であった

 

彼等とて暇では決してないが、ほとんどの職務から退き名誉職や相談役などをしている彼等はオンライン会議で充分その職務を果たせていた

 

 

意外かも知れないが、学園通勤者の中で一番早く学園に来るのは彼等理事会であり、朝の6時には既に学園に着いている

 

 

 

 

グルーヴの称賛に

 

 

タキオンについて行こうとしてんだから、このくらい出来ないとな

 

 

と満更ではなさそうだった空だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

って事があった訳だよ

 

 

ゴールドシップはそう言って、カメラ(・・・)を見ると

 

 

 

 

 

経緯は分かった

で、続きはよ

 

ゴルシネキ前置き長い、訴訟

 

早くタキオンするを見せるんだってばよ

 

いい加減寒いので、本題に入ってくれませんか?

 

全裸してる自分が悪いんだよなぁ

 

 

 

などのコメントが流れていた

 

 

 

 

 

実は今回試験的にメジロ、秋川、桐生院が合同で『放送局を介さない試験的情報の発信』を行なう事としていた

 

世間ではSNSなどの情報発信方法は多くなったにも関わらず、今なお放送局を持つマスメディアの影響力は脅威であった

 

 

正確な、中立的な情報を発信するならまだしも、彼等独自の『方向性』を持たせて情報を発信するのが彼等の常套手段である

 

 

今年も終わりになろうという最近、ようやく国会でも重い腰をあげる事にしており、既に報道各社は国会に対して

 

 

放送倫理、番組向上機構(BPO)の組織改革に各社連携して取り組んでいくので、もうしばらくの猶予を

 

 

と懇願した為に国会で審議はするが、準備委員会の設置は見送られる事となった

 

 

これは秋の苛烈ともいえる措置に続いて、この様な事をした場合『言論の自由』と『民主主義』の否定にもつながりかねないとの危惧からの判断だった

 

決して、報道各社に対して配慮した訳ではなかった

 

 

 

 

だが、この決定に対してあまり良い顔が出来ないのがトレセン学園関係者である

 

 

何せ既に彼等は何度もこちらが用意したルールを破っており、その度に問題となっている

 

 

別に学園関係者が被害に遭うなら、まだ許せたが『学園からの要請』を受けて協力してもらっていた彼に対してのそれは常軌を逸していた

 

 

 

良く芸能人や政治家、スポーツ選手などと同じく有名になったんだから仕方ない

 

との世間の意見を聞いている

何度も学園に抗議文や電話を貰ってもいる

 

 

 

しかし、芸能人やスポーツ選手などは個人で活動しているといっても、必ず事務所なりスポンサーなどがついてくるものだ

 

スポーツ選手の場合、活躍して直ぐにはスポンサーはつかないだろうが、それでも彼等を守る環境はある

 

政治家などは言うに及ばずだろう

 

 

 

それに対して、彼はあくまでも元議員の後ろ盾があったとはいえ、基本的に自身で解決する必要があった

 

しかもご丁寧にその後ろ盾をしっかり剥がした上で彼を吊るし上げようとしたのだ

その為だけに『自称有識者』を騙る連中を用意したり、『有名人』を起用したコメンテーターなども揃えた

 

 

だが、本当の関係者からすれば、彼等の指摘の大部分は的外れであり、学園側が情報を遮断しているにしても酷いものだった

 

 

 

 

それに対しての彼等報道各社の謝罪は形ばかりのものであり、まだコメンテーター達からの謝罪の方がマトモであった

 

 

 

彼等報道各社は燃料を投下して、種火を燃え上がらせた後はひたすら風を送り続けただけで、その燃えたものに対する補償は『報道の自由』の一言で片付けてしまう

 

 

 

 

であればこそ、学園は専用チャンネルを用意した

しかしながら、知名度などの問題もあり、世間に対する対策としては弱すぎた

 

 

であればこそレースなどて認知されて始めてきた事を受けて、有名動画配信サイトでチャンネルを開設する事になったのだが、それをゴールドシップが嗅ぎつけて

 

 

面白そうじゃねぇか。あたしに任せろ!

 

 

との説得にメジロ当主が折れ、秋川と桐生院にも根回しした結果実現したのである

 

 

 

 

 

 

 

お?タキオン聴くのが希望か?

 

 

と彼女がコメントを拾うと

 

 

 

や っ た ぜ

 

おいバカやめやめろ

 

自分から地獄の蓋を開けに行くのか(震え声)

 

トレセン学園最強火力来たな、コレ

 

でも、気になるでしょ?

 

気になる

 

そりゃあ、ねぇ?

 

気にならないはずがないんだよなぁ

 

俺もそーなの

 

怖いもの見たさかな?

 

 

 

うっし、ならタキオンする。を語ってやるから覚悟しながら聞いていけよ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼を加えた生徒会は動きを更に活性化させる事となった

 

生徒会メンバーでは手の届かないところは教職員である彼がカバーし、生徒会以外との連絡はタキオンが行なう事で更なる作業の効率化を実現できたからである

 

 

更に

 

 

ふん。やはりお前のコレは美味いな

 

『料理研究会』に属しているのは伊達ではない。ということか

 

うんうん。久しぶりのキミお手製の菓子は美味しいねぇ

 

うん。美味しいのだが、その、なんだ。女子力というもので圧倒的に負けているような気がしてならないのだが

 

 

余裕が出来た彼は調理室にて手製のクッキーを焼き上げて、カフェおすすめのコーヒーと共に彼女達に提供した

勿論、紅茶も用意している

 

 

 

これには些かストレスが溜まり気味だった生徒会メンバーもニッコリだった

 

まあ、ルドルフはその圧倒的戦力(女子力)の差に慄然としていたのだが

 

 

 

 

あともう一人

 

 

で、あとどうすんの?

 

 

ナリタタイシンが生徒会室で手伝っていた

 

 

 

彼を急遽ルドルフが呼んだ為にトレーニング(2人きりの時間)を奪われる事になったタイシン

ならば、彼の手伝いをしようと生徒会室で合流したのである

 

 

 

 

いや、なに。最近タイシンが彼に対して非常にアピールしているのを見るとだな

何というか、すごく負けた気分になるんだ

 

あの人のそばに居たいから、健気に頑張るタイシン

うわぁぁん、タイシン可愛いよ”ぉ”ぉ”っ”!

 

 

 

とは彼女の親友達の言葉である

 

 

 

 

実はタキオン、ルドルフにタイシン

現在、3人の中で今一番彼のそばにいる時間の長いのはタイシンだったりする 

 

既に再来月に迫っているデビュー戦に向けてタイシンはスズカ達と調整しなければならないので、当然トレーナー(仮)である彼の元でのトレーニングの機会が増えている

 

更にライブの練習も行なわなければならない以上、俯瞰的に見る人物は必須であり、それが彼になっているのは当然ともいえよう

 

 

正直なところとして、通常メニューは彼抜きでも問題ないが、ライブの練習だけは彼を観客として練習せねばならない

 

 

故にタキオンの不満は高まり、ルドルフのもやもやは募る一方でタイシンはご機嫌なのだ

 

 

 

とはいえ、別にタキオンから彼を奪い取るつもりはタイシンに毛頭ない。ないのだが、やはり彼女も女である

 

どうしても『独占欲』というものは出てきてしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし

 

 

 

だから、そういうのはやめろと

 

無駄だ。グルーヴ、諦めろ

 

(うらやましくなんてない!うらやましくないもん!)

 

(これが積み重ねてきた時間の重みだっていうの!)

 

 

エアグルーヴが止めようとするも、ブライアンが悟った顔で止める

ルドルフは内心でルナちゃん化して、タイシンは戦慄していた

 

 

そこには

 

 

いやぁ、昨年ぶりだねぇ。この格好は

 

や、おま、まぁええか。知らんぞ俺は

 

 

明らかに大きすぎる服を着たまま、事務処理をするタキオンの姿があった

 

 

 

 

コードダブル

 

所謂『二人羽織』であり、タキオン達の地元ではバカップルの証となっているカップル最終形態の一つである

 

彼の膝の上に座り、彼に背を預け、彼の温もりの中で平然と作業するタキオン

 

その姿はまるで

 

 

玉座に座る女王の様であった

 

とルドルフ達は後に語った

 

 

 

この姿を前にしては、さしもの未来の『皇帝』『女帝』『怪物』『羅刹』も膝を折る事になった

 

 

 

因みに『羅刹』とは、ジャパンカップの第一回にて圧倒的という表現すら生温い絶望を海外勢に叩きつけたタイシンに対する海外からの異名であったりする

 

 

本人は

 

あっそ。それで?

 

と呼称などに一切興味を示さなかったそうだが

 

 

タイシンにとっては、彼をよく知りもしないで否定した海外勢などにどう思われようが、言われようがどうでも良かった

 

それにあちら(海外)からこちら(日本のウマ娘)に勝負を挑んでおきながら、あの体たらくで何を言おうとも『負け犬の遠吠え』にしかならないだろう

せめて、2着を海外勢がとっていればまだ変わっただろうがそれすらマックイーンであり、日本のウマ娘2人がワンツーフィニッシュというあちらからすれば面目丸潰れであり、立つ瀬などあるまい

 

タイシンからすれば

 

他人(ひと)の事言ってないで、自分達の後の事考えたら?

 

と言いたくもなろう

 

 

 

 

 

 

ともあれ、バカップル最強兵装の一角を見せつけられた生徒会メンバーとタイシンは驚いた

 

 

 

そんな、バ鹿な

(あの距離に幼馴染で彼氏とはいえ、異性がいるのにタキオンは動揺しないとでもいうのか?)

 

やれやれだな

(あの距離だぞ?体温は愚か、吐息すらかかるところにいるにも関わらず、平静を維持している?そんな事が出来るのか⁈)

 

 

グルーヴもブライアンも内心驚愕していた

それはそうだろう

 

ウマ娘とは感覚に優れている

特に視覚、聴覚、嗅覚のそれはヒトを遥かに凌駕している

 

 

にも関わらず、アグネスタキオンは彼と密着状態、しかも同じ服を着ているという事は彼の体熱や匂いなども文字通り『すぐ側』で感じているはずだ

 

 

それでもなお、彼女は平然としているのだから、グルーヴとブライアンの受けた衝撃は驚愕などというレベルではなかった

 

 

 

 

 

一方

 

 

(ううううっ、うらやましくなんてないもん。ルナうらやましくなんてっ!・・・・ううっ、うらやましいよぉ〜)

 

 

最早生徒会長としての凛々しい姿など何処へ行ったのか、涙目でタキオンに抗議するルナちゃんと

 

 

(え?アレが例のやつなの?いやいやいや、確かに羨ましいけどっ!あそこにアタシがいて耐えられる?無理。嬉しいだろうけど、アイツを襲わない自信ない)

 

思考が乱れに乱れるタイシンであった

 

 

 

 

 

 

 

実際、これを初めてした時にはタキオンも相当苦労したものだ

 

 

 

彼を襲わない様にするのには

 

 

何せ、彼は当時両親との関わりのなくなったタキオンを心配して、このような事をしてのは分かっていた

 

 

だが、その頃には彼の事を意識し始めていたタキオンにとって、それ(二人羽織)は生殺しに近い拷問だった

 

 

 

子供特有の高い体温が2人分衣装の中に籠ると当然ながら、発汗を促してくる。当然彼の匂いもタキオンからすれば凄いものであった

そして、当時の彼はタキオンを純粋に勇気づけようとしてしてくれているのもタキオンはわかっていた

 

それでも、意識している異性とほぼ密着している行為というのは、いくら早熟なタキオンであったとしてもスルー出来る状態ではなかった

 

 

 

彼が自分の事を心配してしてくれている

彼は下心なく、この様な事をしてくれている

 

 

そんな事は当時のタキオンも承知していた

 

問題は、ウマ娘という存在であるタキオンとて理性的ではあるが、割と本能の厄介さというものも認識していた

そして、それが彼に対して発揮される事になれば、ロクな事にならない事も

 

 

 

であるからして

 

 

ううっ、温かいし、気持ちいい。だけど良い匂いもするし、彼の鼓動だって聞こえてくる。が、我慢するんだ、アグネスタキオン!彼の信頼を踏み躙ってしまえば、二度と関係は元に戻らないんだぞ!

 

彼女は理性を総動員して、なんとかこの窮状を乗り切ろうとした

 

 

 

だか

 

待ちたまえ。彼は私達ウマ娘の事を知らない訳ではないのだろう?となれば、これはもう彼からのプロポーズと受け取っても良いのではないかな?

 

タキオンの中の本能(悪魔)が囁く

 

 

そ、そういうものなのだろうか?

 

タキオンとて、まだこの頃は『若い』というよりも『幼い』と形容する方が似合う時期

 

大人ですら道を誤る選択をする事が多い、この誘惑に抗う事は

 

 

待つんだ、本体。そうして一時(いっとき)の感情に流されてしまえば、その後に残るのは何か良く考えたまえ

 

負けじと理性(天使)も出てきて反論する

 

 

確かにヒトは過ちを繰り返す

しかし、一時の感情に流されて(温もり)を手放すことが果たして正しい選択と言えようか?

 

 

否!

間違いなく否であろう

 

 

アグネスタキオンは彼という存在に救われ続けてきた

にも関わらず、その彼の今までの行為(好意)を受けておきながら、その様な真似をした場合、彼との関係はどうなるだろうか?

 

 

 

しかしだね。彼は私に惚れているのだから、繋ぎ止めるのは容易だと思うのだが

 

本能(悪魔)は尚も抗弁する

 

 

その意見には賛同しかねるよ。確かに彼は私に好意を持ってくれてはいるのだろう。しかし、よく考えてみたまえ。私は彼と共に調べたはずだろう?『幼馴染と関係を持とうとしたウマ娘(先達)の失敗談』を

 

 

理性(天使)はなおも静止する

 

 

確かに彼がタキオンに対して好意を持っている事は間違いないだろう

 

だが、しかし

それに甘えて彼に対して不誠実な行動を取った場合、果たして彼が受け入れてくれたとしてもタキオンの良心が保つだろうか?

 

 

恐らく保つまい

 

 

 

 

そんな未来などアグネスタキオンは到底耐えられるはずもない

 

 

 

また、あの誰もいない自宅に戻るのか?

母親からの手料理一つなく、父親からはただ手紙とお金だけ

 

 

 

自由かも知れない

しかし、そこに他人(家族)の温もりはない

 

 

 

 

だから、タキオンは踏みとどまったのだ

彼を失いたくなかったから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事があったとは知るよしもないルドルフとタイシンの驚愕をタキオンは

 

 

(私はね、ルドルフやタイシン。君たちが羨ましいよ。確かに唯一無二の理解者で常にそばに居てくれる空がいる。だが、私は親の温もりを忘れて育った。怖いのさ、そんな私が彼と共に生きていけるのかが)

 

 

 

愛を知り強くなる者がいれば、逆に弱くなる者もいる

 

彼は前者で自分は後者だと、この時のタキオンは思っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、それはそうとして、だ。この特等席は例え君たち相手でも早々譲れはしないのだがね

 

 

タキオンはそう呟いた

 

 

 

 

 

 

なお

 

 

(あがががが。タキオンそんなに身体を預けるなって。嗚呼畜生いい匂いがするし、相変わらず柔らかいし、ああもぅタキオン最高すぎるんだけど、もう少し俺が異性である事を意識してくれませんかねぇ。り、理性が、理性が保たん。でもタキオン悲しませたくないし、嫌われたくないし、グルーヴ達の目もあるし。過去の俺ぇ!なんでこんな事をしたんだ。いや嘘です、ごめんなさい。最高です、はい)

 

 

と絶賛混乱中の空がいたが、まぁ余談だろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、後日

 

 

へ、へぇ。これが、そうなんだ。うん、悪くない、いやいいじゃん、これ

 

 

とは『二人羽織』をしてもらったナリタタイシンの感想である

 

 

 

っっっっ!!

 

ルドルフは声にならない悲鳴を上げそうになる自分を必死に堪えていた

 

 

 

次は自分の番なのだから

 

 

 

 

 

 

 

そして

 

 

(これは、ああ。駄目だ、彼に溺れてしまう。彼の温もりと匂いを膝枕以上に感じてしまうな。なるほど、タキオンがこれを知れば戻れなくなるが、大丈夫かい?と言っていたのも頷けるな。これは確かに下手なものよりも危険極まる。でも、手放しなくないな)

 

 

とルドルフは葛藤する事になる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なお、後にトレセン学園公認カップルとなったオグリキャップとそのトレーナーである矢上純氏も自分達の先達に倣い、『二人羽織』をしようとしたのだが、そのあまりの危険さに断念したというエピソードもあったりする

 

 

その為、二人羽織はバカップルの最高レベルの証としてトレセン学園の生徒達に長く伝えられていく事になるのだが、それはまた別の話であろう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ってな事があったらしいんだよ。どうだお前ら、満足したか?

 

 

語り終えたゴルシはカメラを見ると

 

 

 

 

けふっ(吐糖)

 

無理ぃ、でもしゅきぃ

 

だから、あれほどやめろと言ったのに

 

恋人いるワイ氏

今彼女にその話ししたら、普通にドン引きされた件について

 

そりゃ、そうだろ

 

こ、これが人生をタキオン氏に捧げた人物のスペックだと言うのか!

 

ええい、トレセン学園のウマ娘の精神力は化け物か!

 

まだだ!まだ終わらんよ!

終わりませんよね?ゴールドシップさん

 

二人羽織とか都市伝説だと思ったら、そんな事はなかった件について

 

ゴールドシップ君。後で話があるから、時間を空けておきたまえよ?

 

いやぁ、色々お腹いっぱいですわぁ

 

てか、ホントタキオン彼氏との関係どうなってんのさ?

 

これが『皇帝』と『鬼脚』なんですか、本当に?

 

 

 

等のコメントが流れていた

 

 

 

 

 

 

 

ん”っっ?!

 

 

笑いながら、コメントを見ていた彼女はその中に見逃せない、否見逃してはならない(・・・・・・・・・)コメントを見つけた為に変な声を出した

 

 

 

彼女は手元のコメントだけを映し出す機器を操作して、少し前のコメントを見ると

 

 

 

 

ゴールドシップさん、ご愁傷様ですわ

 

や、おいたが過ぎたようだな

なぁ?ゴールドシップぅ?

 

え、なんか怖い人がいるんだが

 

もしかして、リアル関係者?

 

 

 

 

 

と既に見逃してはならないコメントがあった事にようやく気がついた彼女は背中から冷や汗が吹き出した事を自覚した

 

 

 

 

そして

 

 

 

チャンチャンチャン

チャチャチャ、チャチャチャー

 

と彼女の携帯がメールの着信を告げた

 

 

この、着信音は

 

 

 

恐る恐る携帯を開くと

 

 

 

 

 

発信者

 

ダイワスカーレット

 

 

件名

 

あのね

 

 

本文

 

ねぇ、アンタなにやったのよ?

さっきからお兄ちゃん無茶苦茶怖いんだけど。スズカさん達やタイシンさんも明らかに怖がってるくらいのヤバい雰囲気なんだけど、ホント大丈夫?

 

 

追伸

アタシはフォロー出来ないから、自分でどうにかしなさいよ! 

あと、お兄ちゃんそっちに向かったわよ

 

 

 

 

 

わ、悪いけど、急用が入ったんでまた配信するな!皆またな!

 

 

友人(スカーレット)からの警告を受けた彼女は急いで配信を止めると逃げようとした

 

 

 

 

しかし、此処は学園内の一室である

 

 

 

と、とにかく謝るとしても、こっちから行かないとヤベェからな

 

彼女でも怒れる彼は怖い

怖いけど、逃げる訳にはいかなかったりする

 

 

何せ、最終的に彼女のフォローをしてくれるのは彼と彼女のトレーナーだけなのだから

 

だが、彼女のトレーナーは彼にとって教え子であり、トレーナーからすれば彼は教官である

 

どうしても、年下であるはずの彼にトレーナーは勝てなかったりするこだ

 

 

 

 

ゴールドシップの逃走劇が今、始まる




因みに扉を出たところに満面の笑みを浮かべた空がいた為に、彼女の逃走劇は僅か10秒程で終わってます



中々イチャイチャだけを書けない私を許してください

何でもしますから!



という訳でご一読ありがとうございました

 閑話需要ありますか?

  • あるある
  • ない、ですねぇ
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