少し切ないかもしれませんが、どうぞ
此処は滋賀県栗東市にある、とある住宅
ああっ、寝坊した!
転がり込む様に黒髪の女の子がリビングに駆け込んできた
おやおや、どうしたんだい?スカイ。そんなに慌てて
母親だろう美しいライトブラウンの髪を伸ばした女性は少女に問いかける
お母さんっ!私起こしてって頼んだよね?何で起こしてくれないのよ!
少女はどうやら母親である女性が起こしてくれなかった事に怒っている様である
だから言ったじゃないか。夜更かしはほどほどにしなさいって
うぐっ!
しかし、母親の指摘に思わず言い淀む
そこに
こらこら。朝っぱらから喧嘩すんなって
スカイもタキオンもご飯出来たから、早く手洗ってくる
少女と同じ黒髪の男性がキッチンから声をかけてきた
つけているエプロンは少しくたびれており、この男性が長いことこのエプロンを使っている事を思わせた
あ、お父さんおはよう!
朝一で罵倒される私と笑顔で挨拶される父親。やれやれ、本当に母親というのは大変だねぇ
どうやら、少女の父親らしいその男性に笑顔で挨拶する少女とそれを見て苦笑いする女性
彼女達のいつもの光景であった
こら、スカイ。食べながら話をしない
口の中に物がなくなってから話をしなさいな。別に逃げも取りもしないんだから
食事中に父親と話をしようとするスカイという少女。それを父親の男性は嗜めている
むむむ。今日もブロッコリースープかい?
妻である女性は今日の献立に不満がある様だった
いい加減、母親になったんだし偏食癖をなおさないといかんやろう
男性は苦笑しながらタキオンを諭す
女性の名前はアグネスタキオン
トレセン学園第一期生であり、当時関係者では有名だった『現代のシンデレラ』その人である
学園卒業後は一年学園に残り、従姉妹であり自身と夫が担当するダイワスカーレットのトレーナーが引退するまでのトレーニングを担当した
主に体調管理をメインで行なっていた夫と異なり、様々なデータから導き出した効率的で効果的な指導を行なった結果、スカーレットは世代最強とまで言われる様になる
その後はトレセン学園理事長秋川やよいの要請を受けて、此処栗東市に新設された『トレセン学園栗東教育センター』の医療部門の管理者として赴任する事となる
夫である人物もまた秋川理事長と学園理事会の要請を受けて、『教育センター』の『トレーナー部門管理責任者』としてタキオンに同行している
その後、約10年ほど勤め上げる中で、結婚していた人物との間に娘であるディープスカイをもうけ、それを機に退職する事となる
なお、トレセン学園在籍中より複数の製薬会社と随意契約を結んでおり、栗東への赴任を機に『アグネス共同製薬会社』が設立され、その初代代表取締役に就任している
とはいえ、あくまでも株主で出資者である製薬会社との取り決めの結果、栗東市の利便性や西日本方面への新たな拠点として、またタキオンの新薬開発の一助となるべく創設されたという経緯があった
既に幾つかの新薬を学園在籍中に世に送り出していたタキオンは、製薬会社にとってウマ娘関連の新薬開発に必要不可欠な人物となっていたのである
スカイが成長するにつれて、タキオンは少しずつ家庭を気にするようになり、今はそちらの代表取締役も辞任して、一介の研究員として活躍していたりする
元社長ともいえる同僚に職場の人間は困惑したが、マイペースに新薬の開発に勤しむタキオンを見て、同僚たちも最近ようやく慣れ始めてきたそうだ
夫である彼は妻であるタキオンが学園に在籍中、一度傷害事件の被害者となった際、担当の医師に後日呼び出しを受けた
曰く
少し気になる部分がありまして
との事であった
それをタキオンに告げたところ
何が何でも、キミを病院に行かせる!例え学園がマスコミが、何と言おうとも邪魔はさせない!
とすごい剣幕で迫られた
更にそれが伝わったのか、スズカ達は学園内で彼が裏門から病院までの迎えが来るまで彼のそばから離れなくなった
病院までの送迎については我らが常識人にして、苦労人であるナイスネイチャの知り合いで、前回海水浴の際にタキオン達を送迎してくれた鉄さんが快く引き受けてくれた
彼の仕事は作業員の仕事の割り振りと、作業員が帰社してからの前貸などの担当であった為に、昼間は比較的暇なのであった
その頃は冬であり、現場で何らかのトラブルがない限りは、鉄さんは動ける立場であったから、ネイチャの要請を受けたのだ
タキオンとしても、全く見ず知らずの人に頼むより、多少でも見知ってた人の方が安心できた為に、これを全面的に受け入れる事にした
更に鉄さんは所謂『
そして、病院で判明したのは
幼い頃から身体に無理な負荷をかけ過ぎた上に、健康管理を怠っていた事による身体のバランスが崩れている事
だった
今すぐどうなる訳ではないが、将来早逝する可能性がある。との診断がされる事となった
勿論、定期的な検査によるデータの比較は必要不可欠であったが
結果として、この診断を受けたタキオン達は渋る彼を関係者総動員して説得にかかった
共に生きてくれるのだろう?なら、キミは長生きする努力をするべきじゃないのか?
最終的には涙ながらに彼を押し倒して、説得したタキオンの活躍でようやく通院する事と、治療する事を受け入れさせた
今、栗東市で専業主夫をしていながらも、彼は週に一度は隣の市である滋賀県草津市の病院に通院している
此処には傷害事件の担当であった医師が在籍しており、彼の主治医という立場になっていた
曰く
あの時、私は警察の言いなりにしかなれなかったからね
この位はさせて欲しい
との事だった
しかし、この医師は家庭を持っていたはずだから、色々問題があると彼は謝辞したのだが、未だに地元では影響力を有していた彼の元後ろ盾であった元議員を始めとした有志によるこの医師への諸々の支援により、金銭的な不安を解決していたりする
タキオンは産後、落ち着いたと判断すると少しずつだが、仕事を始めた為に、スカイの面倒は彼が必然的にみることになった
その結果、ディープスカイは近所や知人では有名な程の『ファザコン』になってしまったのは仕方のない事、なのだろうか?
ねぇねぇ、父さん母さん!
今日はどこ行くの?
さて、何処に行くつもりなのかな?私も知らなくてね
朝食を食べ終えたスカイとタキオンはリビングでまったりしながら、話をしていた
そろそろ迎えが来るはずなんだが
ピンポーン
彼がそう呟いた時、迎えが来たようだった
や、迎えに来た
黒色のワゴン車に乗ってきたのはナリタタイシン
助手席には
おはよう、皆。元気そうでなによりだ
かつて『皇帝』と呼ばれていたシンボリルドルフの姿があった
今日は悪いな、2人とも
別にいいって、アタシとルドルフがしたいからしてるだけなんだし
車で最寄りの栗東インターから岐阜方面に車を走らせている車内で助手席に乗る彼は運転手のタイシンと後部座席のルドルフに詫びた
こちらとしては、キミやタキオン。それにスカイの力になれるならありがたい限りだよ
やれやれ。本当に君たち2人は結婚しないつもりなのかな?
2人の答えにまだ、2人は自分の夫に未練がある事を分かっていたが再確認したタキオンはため息混じりでそう言った
そうなんですか?ルドルフ姉さんにタイシン姉さん
母親の言葉に思わず聞いてしまうスカイ
なお、年齢的には2人より歳下のスカーレットやデジタルは『叔母さん』なのに、歳上で、しかも家族でもないはずの2人を『姉さん』呼びする事については最早彼とタキオンはツッコミを放棄している
その理由について、2人は一切触れるつもりはなかったのだから
なお、既にそれなりの年齢にも関わらず、タキオンは勿論、ルドルフとタイシンも二十代と言っても通用する美貌を保っていた
製薬会社に勤めているタキオンだからこそ、化粧品などの方面にも顔が効くし、此処には
本人としては意味不明だが、現在彼は美容健康食品を世に送り出す仕事をしている
しかもそれが、ウマ娘に効果的となればもうこれはヒット間違いなしのものであった
結果、彼は専業主夫をしながら、メニューの開発に勤しんでいたのである
その恩恵を一番受けているのが、彼の妻であるタキオンであり、頻繁に彼の自宅を訪ねるルドルフとタイシンなのだ
確か『かさまつ食事処』だっけ?
タイシンは車を走らせながら聞く
だね。聞くところによると、尾張一宮より、各務原から降りた方が早いらしい
確か、一宮インターは混むところだったね
そうなの?父さん
今日はタキオン一家とルドルフ、タイシンで3人の同期であるオグリキャップの経営する店に行く事となっている
何でも、明日タキオンと彼の結婚記念日である事から、前祝いとしてささやかながら食事会をしてくれるとの申し入れが先月オグリの夫である矢上純元トレーナーからあったのだ
それに合わせて、彼女の店で同窓会の様なものをしようというのが、オグリ夫妻からの提案だった
彼は申し訳ないと断ろうとしたのだが
2人の折角の好意を無碍にするのはどうかと思うよ?
とのタキオンの説得と
オグリさんと会えるの?
父さん、行きたい!
との愛娘からのお願いに彼はあっさり降伏した訳である
栗東から各務原までは、約2時間ほど
タイシンはその間、常に運転していたが気にする事はなかった
何せ、久々の彼とのお出かけである
ルドルフもそうだが、タイシンは内心ウキウキであったのは言うまでもない
なお、ルドルフにせよタイシンにせよ実は実家や親族からかなり文句を言われている
ルドルフ、タイシン共に理解ある両親だったのだが、残念なことに『皇帝』『羅刹』とまで謳われた2人の名声をあてこんだ親族からかなり色々と言われていたのである
2人の苦労を知っている両親などはその意見に全く同意できなかったし、反論したのだが『皇帝』『羅刹』の親族であるというステータスに酔ってしまった親族は聞く耳を持たなかった
特にタイシンは酷いものだった
ルドルフは従姉妹であるトウカイテイオーが活躍したし、テイオーも結婚しているので、『多少』マシだったが、そういった親族の目立った活躍がないタイシンはそれこそ連日連夜の様に見合いの話が舞い込んできた
だからこそ、彼女は栗東市に家を建てたという理由もあったのだ
実家に戻れば口煩い親族が結婚を押し付けてくるのは目に見えていたから
そして、それは同期が結婚していくたびに弱まるどころか強くなる一方であり、特に国際レースであったジャパンカップで活躍したタイシンの元には国外からの見合い話も舞い込んできていた
そして、大体が社会的地位のある人物や経済的に裕福な人物である
そういった者達とのコネを求める親族が更にやかましくなるのは言うまでもないだろう
同じような状況にあるのが、メジロマックイーンだろう
彼女は特に名門『メジロ家』の若き当主であり、彼女自身もまた優秀なウマ娘であるからして、その面倒さは推して知るべしであろう
だが、そんな事をおくびにも出さない
ルドルフもタイシンも今のこの生活が気に入っているのだから
ところで父さん?
どした?スカイ
母さんの事一番好きなのは、私だよね?
おっと、それは空さん認められないなぁ
愛する娘であったとしても、それはちょーーーっと認められないかなぁ?
え、でも母さん私の事しっかり見てくれるから、私でしょ?
よし、スカイ
家に帰ったら少し母さんを交えて話をしよう
どちらが母さんを愛しているか、しっかり話し合おうじゃないか
いや、そこで張り合うのはやめようと思わないのかな?
幸せなのだから、良いのだ
と言う訳で、彼がもし長生きしていたら?
という番外編でした
需要があれば書きますが、基本的にこの話の続きは書かないつもりです
ではご一読ありがとうございました
閑話需要ありますか?
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あるある
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ない、ですねぇ