【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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ヒロアカ×リュウソウジャー
よくある中世欧州風ファンタジー世界でございます。もうこれヒロアカじゃなくても良くね?とか言ってはいけない(戒め)



1.竜装!スリーナイツ 1/3

 

 パチパチと、篝火の爆ぜる音が響く。

 

 村の中心にある丘の頂にはただ今、夜にもかかわらず大勢の村人たちが集っていた。橙に照らされた表情は、いずれも厳粛そのもので。

 

 その輪の中心に立つ老人は長老であるソラヒコだった。そして彼と向かい合うようにして、三人の若者が直立している。

 

「オチャコ、テンヤ、エイジロウ。以上三名を、竜装騎士に任ずる」

 

 ソラヒコ長老の言葉に、両隣に立つテンヤとオチャコがごくりと唾を呑むのがエイジロウにはわかった。尤も自覚がないだけで、彼自身も緊張のあまり同じ反応を示していたのだが。

 

「おまえたちに"リュウソウケン"を授ける。──マスター、」

 

 応の返答とともに、マスターと呼ばれた三名の男女がエイジロウたちに歩み寄る。うち二名がテンヤ、オチャコとよく似ているのは偶然の一致ではない。ただ、この儀式は血縁よりも濃い契りを結ぶ場である。彼らもエイジロウも、置かれた立場は一分も変わりはしない。

 実際、長老の言葉を受けて真っ先に飛び出してきたのは、真紅の外套を纏った男だった。まだ少年のエイジロウに比べ、頭ひとつぶんも背丈が大きい。体格もまた然りであった。

 

「おめでとさん、エイジロウ。今日からキミも俺らレッドソルジャーズの仲間や!」

「!、タイシロウさん……じゃなかった、マスターレッド!よろしくお願いしますッ!!」

 

 それに続き、

 

「テンヤ、おまえは我々ブルーパラディンズの所属になる。頼りにしてるぞ」

「テンセイ兄さ……ではなかった、マスターブルー!このテンヤ、誠心誠意、騎士の使命を果たすことを誓いますッ!!」

「オチャコ。ピンクソーサラーズに入ったからには、魔法の練習がんばらないとあかんねぇ」

「う……が、がんばるよお母ちゃん!」

「マスターピンク!」

「あ、そうやった……」

 

 見知った者どうしの会話に張り詰めた空気がほぐれるが、儀式は未だ終わっていない。"マスター"と呼ばれる騎士団の各団長たちから、新任の騎士たちに剣が下賜される。それは鍔が竜の頭部を模した形状になっている、特別な剣だ。──名を"リュウソウケン"。

 

「今日このときより、おまえたちは正義に仕える勇者だ。我ら"リュウソウ族"の名と歴史に恥じぬよう、その剣を振るうのだぞ」

 

 長老の言葉に頷きつつ。エイジロウは改めて、彼らリュウソウ族の使命に思いを馳せた。

 

 

 *

 

 

 

「エイちゃーん!騎士就任おめでとー!」

「タイシロウさんのとこに入れて良かったなぁ」

 

 儀式が終わるなりそう言って肩を組んできたのは、エイジロウの親友であるトモナリとケントだった。彼らは騎士ではないが、トモナリは村の食糧を獲ってくる狩人として自分に負けないくらい鍛えているし、ケントは武器職人の家のひとり息子だ。幼い頃より一緒に野山を駆けずり回り、自分たちの将来について熱く語りあってきた。

 

「おまえのためにでっかいイノシシ捕まえてきたんだ。今日は好きなだけ肉食わせてやんべ」

「マジか、サンキューなぁ!」

「見たらビビるデカさだぜ。あ、テンヤとオチャコも来るか?」

「気持ちは嬉しいが、今日は自宅で家族が祝賀会をしてくれることになっている。すまないが遠慮させてもらう」

「うちもなんよ。せっかく誘ってくれたのに、ごめんっ!」

「そっかぁ、ふたりんとこはマスターが兄貴とおふくろさんだもんなー」

「でも肉が余っちまうなぁ、どうする?」

 

 そのときだった。三人に、大柄な影が覆いかぶさったのは。

 

「だったら俺も混ぜてくれや〜」

「うおッ、マスターレッド!?」

「今はタイシロウでええよ。それより肉、あるんやろ?楽しみやなぁ!」

「ええ〜……。タイシロウさんいたら逆に足りないっすよー」

 

 なんのかんのと言いながら、連れ立って歩き出す四人。峡谷の合間に拓かれたこの村では、皆がこうして互いを慈しみながら生活を営んでいる。それは、彼らリュウソウ族が単なる一部族ではない、特別な存在であることにも起因していた。

 

 

 *

 

 

 

 少年は、走っていた。夜の冷えた空気の中であるにもかかわらず、玉のような汗を頬に流して。

 

「はぁ……っ、はぁ……っ」

 

 息はとうにあがり、脚の筋肉は悲鳴をあげている。それでも立ち止まることはできない。どこまでも追いかけてくる無数の足音がやまない限りは。

 

──どうして、どうしてこんなことに。

 

 齢十歳にして、少年は己の運命を呪うことしかできなかった。

 

 

 *

 

 

 

 翌朝。エイジロウ、テンヤ、オチャコは連れ立ってとある場所へ向かっていた。

 

「ふたりとも、これが俺たちの初任務だ!くれぐれも不手際のないよう、気を引き締めて臨もう!」

 

 テンヤのよく通る大声は今に始まったことではないけれど、エイジロウとオチャコは顔を見合わせて苦笑した。

 

「不手際っつっても、神殿にお供えものしてくるだけだぜ?……あ!オチャコ、メシはちゃんと食ってきたよな?」

「うん、食べて……──!それって私が空腹に堪えかねて途中で食べてまうかもしれへんってこと!?」

 

 「なんでやねん!」と軽く掌を突きだすオチャコ。やべ、と思ったときにはもう遅い。

 次の瞬間エイジロウは、十数メートルも吹き飛ばされていた。

 

「ああっ!やっちゃった……」

「こら!そういうところだぞ!」

 

 眼鏡の奥の負けじと四角張った目は、大柄な体躯と相まって迫力がある。オチャコはしゅんと縮こまるしかなかった。一方、崖の壁面に叩きつけられて痙攣していたエイジロウは程なく、何事もなかったかのように復帰してきたのだが。

 

「痛てて……。さっすが、村一番!」

「褒めてくれてるんやろうけど、嬉しくないから!」

 

 むしろこの怪力、オチャコにはコンプレックスそのもので。魔導士の長たるマスターピンクを母にもつ彼女がそのような特徴をもっているのは、村一番の大工である父の影響だろうと考えられている。生来無邪気で能天気な性質のオチャコはそれで父を恨んだりはしていないが、悩みの種であることに違いはないのだった。

 ともあれ、今は任務のことである。厳粛な表情を浮かべ、テンヤは続けた。

 

「油断は禁物だぞ。ゆうべ兄さんに聞いたんだが、村のすぐ外にまで"ドルイドン"の兵が進出しつつあるらしい。もしかすると、村のことを嗅ぎつけたのかもしれないと」

「けど、結界があるだろ?」

 

 村の周辺は結界で覆われていて、魔力の込められた御符をもつ者以外出入りができない。そればかりか、村の存在を感知することさえかなわないのだ。

 ただ、守りも絶対ではない。その、"出入り"が問題だった。

 

「騎士団の遠征が年に一度あるだろう。その動きを追えば、俺たちがどこを本拠としているか探るのは難しいことではない」

「じゃあ、ドルイドンが私たちを潰そうとしてるかも……ってこと?」

「俺たちリュウソウ族は、奴らにとって最大の障害だからな」

「………」

 

 ドルイドン。村から出たことのないエイジロウにとって、それは御伽話に出てくる悪者と同じ、現実感のない(ヴィラン)だった。

 ただ現実に、彼らは"マイナソー"と呼ばれる怪物を生み出し世界中を脅かしている。

 

「……あいつら、宇宙から戻ってきたんだよな」

 

 確認するようにつぶやくと、テンヤが頷いた。

 

「うむ。かつて恐竜が栄えた時代、ドルイドンは俺たちの祖先と相争っていた。だが今から6,500万年前、巨大隕石によってこの星が氷河期に突入したのをきっかけに、奴らは宇宙へと逃げたんだ」

 

 見てきたようにすらすらと諳んじるテンヤは、叡智を重んじるブルーパラディンズへの入団が許されるだけの知識を備えている。それでいて、鍛えられた身体の仕上がりにおいてもエイジロウを凌いでいて。村の少年たちの中でも、テンヤは頭ひとつ抜きんでた存在だった。

 

「奴らを退治して、侵略を阻止する!──それが、私たちの使命ってことやね!」

「うむ!だから今回の任務は、その使命を果たすための重要な第一歩ということだ。わかってくれたか?」

「……おうよ!」

 

 当然、自分も彼に負けてはいられない。未熟なところは多分にあるといえど、騎士と認められた以上自分は一人前の働きを期待されている。ふんすと鼻息を荒くしながら、先頭に立って歩き出す。

 

 程なく、目的の建造物が見えてきた。建造物と言っても、断崖を掘削して造られた人工の磐屋だ。

 ここには、リュウソウ族の神が祀られている。幼い頃から何度もそう聞かされ、特別な神事の際を除いては近づくことを禁じられてきた。

 

「神さまかぁ……どんなんなんやろねぇ」

「そうだなぁ……」

 

 その正体について知るのは、村でも長老とマスターたちだけだ。エイジロウもマスターレッドことタイシロウに聞いてみたことはあるが、掟につき話せないのだとすげなくされてしまった。

 とはいえ、きょうは神殿の中に入るのだ。たとえば石像であるとか、絵であるとか、その一端に迫る手がかりくらいはあるかもしれない。

 

「っし、行こうぜ!」

 

 そんな期待を抱きつつ、エイジロウは仲間たちにそう声をかけた──刹那、

 

「……!」

 

 生ぬるい風が、頬を撫でる。──客観的にはそれだけのことだったのだけれど。

 

「どうした、エイジロウくん?」

「感じる……イヤな気配だ。結界の、すぐ外……」

「えっ?それって──」

 

 オチャコが訊き終わらないうちに、エイジロウは走り出していた。

 

「エイジロウくんっ!?」

「様子見てくる!先入っててくれ!!」

 

 そう叫びながら遠ざかっていくエイジロウの懐には、供物の入った麻袋がしっかりと抱えられている。

 

「先に入ったところで、供物がなければ任務は果たせないんだぞ!?」

「あー……だったら、追うの一択ちゃう?」

「やむをえないか……!よし行こうっ!」

 

 こういうとき、即座に方針を切り替えられるのがテンヤの美点である。とはいえ彼に全速力で走られてしまうと、オチャコはついていけないのだが。

 

 

 *

 

 

 

 森の中、少年はひっそりと息を潜めていた。正確には、限界まで荒ぶった息を必死になって抑えていると言うべきか。

 そうせざるをえない理由は、たった今すぐ傍を通った影の存在に起因する。シルエットこそ人型だが、()()がヒトでないことは既に知られている。

 

 ドルン兵。ドルイドンの怪人たちに使役される、無慈悲なる尖兵。現に今も、いたいけな少年の命を狙って辺りをうろついているのだ。

 しかし、どうして自分が執拗に狙われているのか。少年には見当がつかない。そしてその理不尽に対する想いは恐怖だけではない、弱冠十歳の少年に似つかわしくない憎悪につながりうるものでもあって。

 いずれにせよ、今は奴らをやり過ごして、隙を見て逃げるしかない。そう心を決めたとき、不意に頭上に翳が差した。

 

「あ──」

「………」

 

 ドルン兵だった。繁葉を分けるようにして、頭を覗かせている。

 

「!、うわぁああああ──ッ!!」

 

 絶叫。聞き届ける人間がいなければ、それは少年の断末魔となっていたかもしれない。

 しかし。この森には、彼らがいた。

 

 

「うぉおおおおおおッ──!!」

 

 負けぬ雄叫びとともに、エイジロウは()()()()()

 完全に虚を突かれたドルン兵は、脳天にリュウソウケンを叩きつけられて昏倒する。

 

「!?」

 

 突然の闖入者に驚き慌てるドルン兵たち。しかも臨戦態勢をとるより先んじて、テンヤ、遅れてオチャコも参戦してきた。

 

「ドルイドン……!エイジロウくんの言った通りだったか!」

「はぁ、はぁ……──きみ、大丈夫!?」

 

 少年は答えず、呆気にとられたような表情を浮かべている。未だ状況の変転が呑み込めていないとしても無理はない。

 見たところ目立った怪我もないため、三人の意識は自ずからドルン兵の群れへと向いた。

 

「っし……行くぜー!!」

 

 獰猛な笑みを浮かべ、吶喊するエイジロウ。

 

 果たして、そこからは一瞬だった。彼らの人間離れした所作と剣捌きに、所詮は烏合の衆でしかないドルン兵の群れは圧倒された。せめて彼らを分断し、数を恃んで袋叩きにできればこの少年騎士たちを屈服させられたかもしれないが。

 

「エイジロウくん、オチャコくん!」

「おうよ!」

「おけ!」

 

 呼びかけられたふたりは間髪入れずに地面を蹴ると、テンヤの肩を介してさらに高く跳躍。ドルン兵の頭上から、勢いよく刃を振り下ろした。

 

「ドルゥッ!?」

 

 うめき声とともに、標的とされたドルン兵が一刀両断に処される。それを目の当たりにした生き残りたちは、

 

「ド……ドル……ドルゥゥゥッ!!?」

 

──逃げていった。それはもう一目散に、である。

 

「っしゃあ、勝ったぁ!!」

「うむ、初陣かつ初勝利だな!とはいえ油断は禁物、勝って兜の緒を締めよ、だ!」

「あはは……結局剣で戦っちゃったよぅ」

 

 三者三様の反応ながら、彼らは揃ってほっと胸を撫でおろしていた。新米である三人だけで迎えた初陣、本来であれば危険と隣合わせだったのだから。

 とはいえ、連中を蹴散らして終わりではない。次の瞬間には、彼らは揃って追われていた少年のもとへ駆け寄っていた。

 

「きみ、怪我はないか?」

「……はい。あなたたちは、"勇者(ヒーロー)"ですか?」

 

 どこか冷めた問いに、三人は一瞬返答に窮した。──ドルイドンを始めとした悪党と戦い人々を守ることを生業とする者たちのことを称して"勇者"と呼ぶ。とはいえそれは()()()()()()話であり、彼らリュウソウ族には当てはまらない。

 

「そんなような……モンかな」

 

 結局、そう当たり障りのない返答をしたのはエイジロウだった。外の人間に対し、リュウソウ族のことは秘密にしなければならない以上は、奥歯にものが詰まったような答え方をするしかない。

 その後ろめたい心情を察知したのか、少年は胡乱な目をエイジロウたちに向けた。奇妙な沈黙に息苦しくなる。三人揃って、嘘や隠しごとは不得手なので。

 

「……そうですか。救けていただき、ありがとうございました」

「へ?」

 

 予想に反して、少年の反応は慇懃ながら淡白なものだった。それだけならまだしも、踵を返して立ち去ろうとしているではないか。

 

「ちょ、ちょっと待てよ!この辺、まだ危ねえかもしれねーだろ。近くの村か街まで送ってくよ」

「結構、です。僕のことは……放って、おい……」

 

 語尾が消える。あ、と思った瞬間、少年の身体はぐらりと揺らめいていた。

 

「ッ!」

 

 前のめりに倒れる身体を、エイジロウが咄嗟に抱きかかえる。──熱い。

 

「すげえ熱……。──オチャコ、」

「えっ私?」

 

 「むりムリ無理!」とぶんぶん両手を振るオチャコ。魔導士ならば回復魔法のひとつやふたつ使えて然るべきなのだが、彼女はそのあたりどうも不得手なのだった。

 

「……しょうがねえ。村に運ぼうぜ」

「!、しかし、外の人間を入れるのは……」

 

 ドルイドンに限らず、外の人間にも感知されないための結界である。その意味を無に帰すような行動はどうかと生真面目なテンヤが主張するのは、エイジロウにとっても予想しえたことであった。だからといって、引き下がるつもりもない。

 

「村に引き返すのが、この子にとって一番安全だろ。違うか?」

「それは……」

「テンヤくん。こういうとき、テンセイさんならどうすると思う?」

「!」

 

 目を見開いたテンヤは、ややあって深々とため息をついた。

 

「……兄さんなら、困っている人を最優先に考えるだろうな」

「そゆこと!」

 

 

 然して、彼らは少年を連れて村へ戻ったのだった。

 

 

 




レッドソルジャーズ:竜装騎士団その1。勇猛果敢な熱血漢が多く、戦場では切り込み役を務める。団長はタイシロウ。
ブルーパラディンズ:竜装騎士団その2。冷静沈着かつ叡智に長けた騎士が選ばれる。その傾向ゆえ代々騎士を務める家格の高い者が多い。団長はテンセイ。
ピンクソーサラーズ:竜装騎士団その3。魔導士=魔法使いが所属する。魔法と一口に言っても色々あるので、実はいちばんバラエティ豊かなチーム。団長はオチャコの母。

あまり意味のないオリ設定ですが、一応こんな感じ。
ご存知かと思いますがタイシロウは原作のファットガムです。
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