【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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34.慟哭の夜をこえて 3/3

 

──竜装合体!!

 

「「「「「キシリュウオー、ファイブナイツ!!」」」」」

「キシリュウネプチューン、コスモラプター!」

 

 並び立つ二大巨人が、標的に迫っていく。対するキマイラマイナソーもまた、臆することなくそれに応戦する。

 

「トリケーンカッター!」

「アンキローゼショット!」

 

 ファイブナイツが連続で攻撃を繰り出し、その隙にネプチューンが距離を詰める。カガヤキソードで斬りつけながら、至近距離でクラヤミガンを発射する。

 

「〜〜ッ、シィネェッ!!」

 

 しかしそれらはマイナソーを圧倒するには至らず、むしろ余計に狂暴化させるに至った。キマイラは複数の顔を持ち、それぞれが戦闘能力をもっている。──そして、激しい憎悪をも。

 それを糧にして、マイナソーは動いた。目にも止まらぬ速度で戦場を駆けずりながら、黒い靄を纏った爪を炸裂させた。

 

「ぐあ……っ!?」

 

 ファイブナイツとネプチューンが、同時に攻撃を浴びる。いずれも攻撃力を重視した形態とはいえ、たった一撃で相当な衝撃が走った。

 

「やっぱこいつ、強ぇ……!」

「流石、センパイの出したマイナソーや……!」

「感心しとる場合かボケカス!!」

「──皆、見ろ!」

 

 ゴールドの声にはっとする。マイナソーはタマキからさらにエネルギーを吸い上げ、ますます巨大化していくではないか。

 

「どうなっているんだ……!?」

 

 

「──フハハハハ、アレがリュウソウ族から自然発生したマイナソーの底力というわけ☆DA!」

 

 戦況を見守るワイズルーは、その光景を前に興奮していた。タマキから自然発生したマイナソーは、その性質ゆえか成長も速く段階も細分化されている。完全体になる寸前には、それこそナイトロボたちが豆粒に見えるほど巨大化してしまうだろう。

 

「フフ、いつものマイナソーとは格が違う!同じリュウソウ族の手で!今度こそ!ジ・エンドオブ・リュウソウジャ〜〜〜〜!!!」

「………」

「どうしたクレオン?一緒に狂喜乱舞するのだ!ワンモア、ジ・エンドオブ・リュウソウジャ〜〜〜〜!!!」

 

(喜べるかよ……バカじゃねーの)

 

 遠回しに自分のつくったマイナソーが格落ちだと言われているようなものなのだ。ワイズルーにそんなつもりがないとしても、いい気がするわけがなかった。

 

 そんなクレオンのささやかな憤懣を踏み砕くかのように、先ほどの倍近くにまで巨大化したキマイラマイナソーは猛威を振るっていた。

 

「「「「「ファイブナイツ、アルティメットキャノン!!」」」」」

「キシリュウネプチューン、コズミックブレイカー!!」

 

 二大巨人が必殺の一撃を放つ。五大騎士竜のエネルギーを込めた砲弾と、コズミックエナジーの攻撃。

 しかし弩級キマイラマイナソーにとって、それは致命傷となりうるものではなかった。鋭い爪が一閃すると同時に、その膨大なエネルギーはあっさりと弾かれてしまった。

 

「なっ……!?」

「うそ──」

 

 茫然としている間は、なかった。

 

「シィネェェェ!!」

 

 ふたたび靄を纏った爪が振るわれる。長く伸びたそれは、弩級巨大化によって凄まじいリーチの長さを獲得している。

 回避が間に合わない──咄嗟に受け身をとった二大巨人だが、次の瞬間には大きく吹き飛ばされていた。

 

「ぐああああ──ッ!!?」

 

 吹き飛ばされた衝撃で、鎧となっている騎士竜たちが剥がされていく。やがてただのキシリュウオーとキシリュウネプチューンになってしまった彼らは、それすらも保てずにいち騎士竜の姿へと戻されてしまった。

 

「ッ、ティラミーゴ、大丈夫か!?」

「痛つつ……わ、ワガハイは、なんとか」

「モサレックス、おまえは!?」

「……問題ない、まだ戦える!」

 

「そもさん、汝らに問う!──ここはふたたび陸と海を結集すべきときではないか!?」

「ディメボルケーノ……──おう、やってやるぜ!!」

 

 ふたたび、竜装合体。今度はティラミーゴを中心にモサレックスとディメボルケーノが装甲となり、陸海が一体となった巨人が誕生する。

 

「──ギガントキシリュウオー、いくぜぇ!!」

 

 単独でナイトロボとなれる二大騎士竜が合体しているギガントキシリュウオーは、それだけに通常のキシリュウオーなどよりは遥かに巨大である。それでもなお、今のキマイラマイナソーには及ばない。

 

「及ばなくてもなぁ……迫ることはできんだよっ!!」

 

 雷を纏った回し蹴りを炸裂させる。「グアァァ!!」とうめき声をあげてマイナソーが後退する。間違いなく、効いている。やはりでかぶつには、同じ大出力のでかぶつが効果を発揮する。様々な動物が融合したような姿をしていても、相手が一匹のマイナソーであることに変わりはないのだから。

 

「ギガント、ファイヤーストームっ!!」

 

 両肩にボルケーノキャノンを連射しながら身体を高速回転させ、焔の竜巻を巻き起こす。高温の渦の中に巻き込まれ、キマイラマイナソーは身動きがとれなくなる。

 

「ウグウゥ……、シ、ネェェ……!」

「死ぬのは──てめェだぁ!!」

 

「「ギガント、ダブルバイトォ!!」」

 

 焔を纏うティラミーゴヘッドと、電光を纏うモサレックスヘッド。それらを同時に叩き込む、ギガントキシリュウオーの必殺技。

 しかし次の瞬間、驚くべきことが起こった。キマイラマイナソーもまた、両腕から生え出た頭部で見様見真似のカウンターを繰り出してきたのだ。

 

「なっ!?」

「猿真似か……!」

 

 異形の拳と、拳とがぶつかり合う。猿真似と形容してはいたが、その力はほとんど拮抗していた。

 

「ッ、」

「なんて、パワーだ……!!」

 

 真正面からのぶつかり合いでは、やはり分が悪いのか。それでも、ここで退くわけには──

 

「シネエェ……!!」

「!?、ぐあぁぁっ!!」

 

 噴き出した憎悪の瘴気が、ついに彼らを弾き飛ばした。

 

「ティラ、ァ……」

「ッ、皆……!」

「ギガントキシリュウオーでも……駄目なのか……!」

 

 不幸中の幸い、こちらはまだ合体解除にまでは至っていない。態勢を立て直せば……とも思うが、マイナソーは時間が経てば経つほどエネルギーを吸収して強くなる。宿主のタマキは反比例するように衰弱していく。時間との勝負、しかし決め手がない。どうすれば──

 

「あいつを上回るだけの大出力があれば──」

「!」

 

 つぶやかれたその言葉に、レッドははっとした。大出力を生み出す方法なら、あるではないか。シンプルで簡単な、たったひとつの方法が。

 

「なんとかなるかもしれねえ……!」

「どうしたんだ、エイジロウくん?」

「何か思いついたん?」

「おうよ!──皆、全合体だ!!」

 

 "全合体"──その言葉に皆、はっとしつつも目を剥いた。

 

「いや……無茶だ!竜装合体は騎士竜同士に負担がかかるんだ、いっぺんに大量の騎士竜を合体させたりしたら、何が起こるかわからない!」

「──いや、きっと大丈夫ティラ!」

「!?」

 

 断言したのは、他でもないティラミーゴだった。

 

「ワガハイもモサレックスも、色々な合体を試してきたティラ!ワガハイたちが中心になれば、ちょっとくらいなんとかなるティラ!」

「緊急事態だ……やむをえまい。いずれにせよ短期決戦だ」

 

 即座に決着をつけようというなら、なんとかなる。彼らだけでなく、騎士竜たちはみな意気軒昂だった。

 

「いちかばちか……やるしかねえか」

「おうよ!──いくぜぇ!!」

 

──竜装合体!!

 

 ギガントキシリュウオーのパーツが組み換えられていく。胴体にティラミーゴヘッドが戻り、あちこちにスペースともいえないスペースが生み出されていく。そこを狙ったように、パーツ形態となった各騎士竜たちが組み付いていく。

 どんどん積み上げられ、分厚くなっていくボディ。最後に駆けつけたパキガルーが拳となれば、ついに完成だ。

 

「合体完了!名付けて──」

 

──ギガントキシリュウオー・ナインナイツ!!

 

「な、なんじゃああの化け物ハアァァァ!!?」

「ちょっ……ワイズルーさま痛ぇっス!!」

 

 「ってかブーメランだし!」とぐいぐい揺さぶられながら叫ぶクレオンだが、パニック状態のワイズルーには聞こえていないようだった。

 まあ確かに、9体もの騎士竜が合体したその姿は、いちおう人型をしているというだけでほとんど怪獣そのものだった。少なくとも、騎士とはいえまい。

 それだけの変わり果てた姿であるから、当然騎士竜たちにも大きな負担がかかっていて。

 

「いけるか、ティラミーゴ?」

「なんとか……でも、やっぱり長時間は無理ティラ……っ」

「それに、ほとんど動けん……」モサレックスも追随する。「無理に動くと、瓦解してしまうぞ……!」

 

 しかし、微動だにしないというわけにはいかない。キマイラマイナソーは怯えた様子を見せながらも、こちらへ向かってくるのだから。

 マイナソーが肉薄してきた瞬間──動いたのは、拳を構成するパキガルーだった。正確には射出されたチビガルーが、その小さな体躯を活かして百烈拳を叩き込んだのだ。

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!」

「グアァァッ!!?」

 

 スケールに圧倒的な差があるとはいえ、殴打に特化した拳でボコボコに殴られれば多少のダメージになる。キマイラマイナソーは堪らず後退していた。

 

「分離できるオイラなら、いくら動いても問題ないだろ?」

「サンキュー、チビガルー!でもあぶねえから、いったん下がってくれ」

「わかってるって!決めるんだろ〜?」

 

 そう言うとチビガルーは、パキガルーのもとに戻ってきた。立っているだけでも、そのうち自重で倒壊しかねない。モサレックスの言う通り、短期決戦で決めるしかないのだ。

 

「そもさん、汝らに告げる!」

「総員、衝撃に備えるティラァ!!」

 

 これから起こることを想像し、レッドはリュウソウケンを足下に突き立てる。

 そして──叫んだ。

 

「ギガントキシリュウオー、マキシマムオーバーイラプション!!」

 

 全騎士竜たちが排出したエネルギーがひとつとなり、虹色の球体へと変わる。それを拳で、強引に撃ち出す──!

 

「シ……ネェェェッッ!!」

 

 焦燥に駆られながらも、マイナソーは最後まで己の意志を全うすることを選んだようだった。爪を振り上げ、エネルギー弾を弾き返そうとする。しかし九大騎士竜がともに放った一撃である──今までと一緒にされては堪らない。

 

 マイナソーは一瞬、それと拮抗した。しかし次の瞬間には、その爪が焼き尽くされていた。

 

「シッ……」

 

 高温は手に、腕に波及していく。もはやマイナソーには苦しむ猶予すら与えられなかった。

 

「シ……ヌ……」

 

 そのままマイナソーは焼失し──今にも憎しみの雨を降らせようとしていた黒雲が晴れていく。

 覗いたのは、目に痛いほどの紺碧の空だった。

 

「夜が明けていたのか……」

「なんか、長い夜やった気がする……」

 

「──でも、太陽は昇ったんだ」

 

(そうだろ、タマキセンパイ)

 

 湖のほとりの柔らかい砂の中に埋もれながら、タマキも目を細めていた。

 

「………ミリオ、俺は──」

 

 

 *

 

 

 

 街にすっかり平穏が戻った。ゆうべあれほど憎みあい、殴りあっていた人々も互いに自分が相手につけてしまった傷について謝罪し、はにかんだような笑顔で握手し水に流しあった。もとよりつくられた感情であるし、もしも抱えていた鬱憤があったとしても、思いきり爆発したことで晴れたことだろう。

 

「皆、なんかすっきりした顔しとる」

「雨降って地固まる、とはこのことだな!」

 

 窓から身を乗り出す叡智と剛健の両騎士を「危ないよ」と窘めつつ、疾風の騎士もまたまろい頬を綻ばせていた。

 

「──良かったな、イズク。タマキ先輩を救けられて」

「……うん。でもひとつだけ反省かな」

「?」

 

「僕は最初から、エイジロウくんたちのことを対等な仲間として見ているつもりだった。でも実際、どこかで一線を引いてたのかもしれない。タマキ先輩を救けるのも、自分ひとりでやろうとして……だから──」

 

 イズクはちら、と幼なじみのほうを見遣った。壁に凭れかかって皆と距離を置いているように見えるカツキは、しかし無邪気にはしゃぐテンヤとオチャコの背中を眺めている。その視線は、出逢ったころが嘘のように穏やかで優しい。エイジロウが斬られたとき誰より憤慨していたのも彼だった。

 口ぶりはともかく、カツキは変わっていっている。それに比べて自分はどうか。

 軽い自己嫌悪に陥っていたイズクだったが、その華奢に見える肩を叩かれて顔を上げた。

 

「おまえの自分のことでは後ろ向きになりやすいところ、確かに少しタマキ先輩に似てるかもな」

「うっ……はい、自覚はしてます……」

「でも、いいんじゃねえか。自覚できたところから反省して、少しずつ改めていけば。俺もずっとひとりで戦ってたから、おまえの気持ちは理解してるつもりだ」

「ショートくん……」

 

 そうだ──ショートも海のリュウソウ族唯一のリュウソウジャーとして、独りで戦い続けてきた。他人に背中を預け、ともに戦うということを、現在進行形で学んでいるところなのだ。

 同時に末っ子なせいか、存外に甘えん坊なところもあったりして──

 

(学ばなきゃいけないな、僕も……)

 

 密かに決意を固めるイズクを尻目に、「そういえば」とショートは視線を扉のほうへずらした。

 

「エイジロウたち、遅ぇな。先輩を連れてくると言ってたが……」

 

 そのときだった。扉が勢いよく開かれ──紫苑色の全身鎧が、姿を現したのは。

 

「!!」

 

 それは他でもない、ガイソーグだった。ガイソーケンを構えたまま室内に侵入してくる──場がにわかに緊迫した。

 

「タマキ先輩……だよな?」

「ッ、てめェまだ──!」

 

 鎧の呪いは解けたと思ったが、怨嗟の残滓が残っていなかったとも限らない。皆一斉にリュウソウルとリュウソウケンとを構えた。こんな狭い室内で戦いたくはないが、やるしかない──!

 

 そのときだった。鎧の背後から、ちらりと見慣れた赤毛が覗いたのは。

 

「──バァ!!」

「!?」

 

 それは言うまでもなくエイジロウだった。と思ったら、下半身の陰からコタロウも現れる。呆れぎみの後者に対し、前者は悪戯っぽい笑みを浮かべながら、徐にガイソーグの兜に手をかけた。露になったタマキの顔に色濃い影はなく、ただそわそわと落ち着かなさそうにしているだけだった。

 

「??、エイジロウくん、これはいったい──」

「ヘヘッ、ビックリしたろ?タマキセンパイ、自在にガイソーグを操れるようになったんだぜ!」

「だからってそんな、剣持って迫ってこなくてもええやん!」

「どうせならドッキリ仕掛けようと思ってさ。な、コタロウ?」

「……僕はやめたほうがいいって言いましたけどね。だって、ほら」

 

 コタロウが顎をしゃくった先には、凄まじい怒気を発する修羅、もといカツキの姿があって。

 

「クソくだらねえこと考えやがって……。覚悟はできてんだろうなァ、クソ髪にクソ陰キャ……!」

「い、いやその……俺はただ、エイジロウくんに言われて……!」

「なっ!?確かに言い出しっぺは俺っスけど、なんだかんだセンパイも乗り気だったじゃないスかぁ!?」

 

 仲間割れ?を始めるエイジロウとタマキだったが時既に遅し、爆ギレの騎士は今にも爆発しようとしていた。

 

「問答無用ォ、まとめて死ねぇぇぇ!!!」

 

──BOOOOM!!

 

 響き渡る爆裂音、怒号と悲鳴。終いにエイジロウとタマキが仲良く窓から放り出されたことでちょっとした騒動が巻き起こったのだった。

 

「いや悪戯はいかんぞ、悪戯は!」

 

 カツキを止めながらも一緒にぷりぷり怒っているテンヤがラストカットということで、兎にも角にも一件落着?である。

 

 

 つづく

 

 





「仲間ヅラして入ってこようとすんなよ、気持ち悪ィな」
「俺は要らない存在なんじゃないか?」
「誰にどう思われようが関係ねえ」

次回「絆」

「俺は俺の使命を果たす……!」


今日の敵‹ヴィラン›

キマイラマイナソー

分類/ビースト属キマイラ
身長/236cm〜48.8m
体重/288kg〜722t
経験値/666
シークレット/様々な怪物が合成された、ビースト属の中でも特に強力な"魔獣"に分類されるマイナソー。それぞれ意思をもつ頭部による隙のない戦闘スタイル、純粋な破壊力と自然発生した個体特有の進化の速さにより、これまででも最強クラスのマイナソーとなっている。また人々から憎悪の感情を吸収してそれを黒雲へ変え、雨を降らせることで広範囲に憎悪をばら撒くことができるぞ!
ひと言メモbyクレオン:俺が生んだマイナソーじゃねーもん、知らねーよバァーカ!!

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