【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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36.拝啓、友よ 3/3

 

 リュウソウジャーの面々はひたすらウデンから逃げ続けていた。

 

 しかし彼らの閉じ込められた異次元迷宮に出口はない。そしてウデンはどこまでも追ってくる。

 持ち前の健脚でようやく距離をとったテンヤだったが、その疲労は限界に達していた。

 

「ッ、くそ……ここまで、なのか……っ」

 

 ここで倒れるわけにはいかない。そう強く自分に言い聞かせても、ガクガクと笑う膝は言うことを聞いてくれない。力の抜けたそれががくんと折れ、倒れかかる──ところで、彼を支える者があった。

 

「テンヤ、大丈夫か!?」

「ッ、エイジロウ……くん……」

 

 無事で良かったと、荒い呼吸を繰り返しながらもエイジロウはにっかり笑った。その朗らかな笑みはいつだって、仲間たちに希望を与えてくれる。

 

「大丈夫、まだタマキセンパイがいる。──信じようぜ、俺らの最高の仲間を!」

 

 

 *

 

 

 

「がっ……は……っ」

 

 タマキの身体が、鎧もろとも串刺しにされている。鋭い剣に肉を裂かれ、彼は呼吸ができないとの思いに駆られた。

 ぼやける視界いっぱいに、親友の仇の顔がある。自分のことなど覚えていないだろう彼は、今ごろ勝利を確信しているに違いない。

 しかし──その無機質な態度が動揺へと変わるまでに、そう時間はかからなかった。

 

「ヌッ、ウ……!?」

 

 串刺しにした剣が、ぎちぎちに詰まった筋肉に挟み込まれて動かせない。

 

「捕まえ、た……!」

「……!」

 

 兜の中で、何かが鋭く光った気がした。

 しかしもう、遅い。次の瞬間、ガイソーグはウデンの胸部めがけて頭突きを炸裂させたのだ。そこに埋め込まれた、バックルめがけて。

 

 澄んだ破壊音とともに兜が砕け散り、不敵な笑みに染まったタマキの顔が露になる。その硬い装甲が粉々に砕けるほどの勢いだったのだ──ウデンのバックルにもまた、亀裂が走っていた。

 

──エイジロウたちの囚われた異空間に、光が差し込んだ。

 

「センパイ……!」

 

 やってくれたのだ、彼は。

 しかしウデンの分身体がもうすぐそこまで迫りつつある。追いつかれる──というところで、テンヤがエイジロウの背中を押した。

 

「エイジロウくん、きみが行くんだ!」

「!、テンヤ……!」

 

「きみと先輩に託した」──そう言って、テンヤは笑みを浮かべる。自己犠牲などでは決してない。彼らが必ず救け出してくれると、そう信じているから躊躇いなく送り出せるのだ。

 

「……ああ、任せろ!!」

 

 その想いをたがえず受け止めて、エイジロウは光の中へ飛び出していった──

 

 

「──お、らぁッ!!」

「グゥ!?」

 

 飛び出すと同時に力いっぱい炸裂した蹴りが、ウデンをよろけて後退させる。ぜえぜえと荒い呼吸を繰り返す、首から上だけを露にしたタマキの姿が目に入る。鎧ももう、あちこちボロボロだ。そんなになってまで、彼は自分たちを救けだそうとしてくれた──

 

「センパイ……あざっス!!ここからは一緒に──」

「………」

 

 返事はなかった。代わりにエイジロウが目にしたのは、かふっという弱々しい声とともに、赤黒い半固形物を口から吐き出すタマキの姿。

 

「え……?」

 

 呆然としている間に、その身体がゆっくりと膝から崩れ落ちる。それが何を意味しているのか──壁面の亀裂からゆっくりと水が滲み出すように、否が応なく理解らされていく。

 

「────センパイっ!!??」

 

 絶叫に近い呼び声とともに、エイジロウは倒れかかるその身体を抱きとめていた。同時に、掌を侵すべっとりと濡れた感触。それは生涯で二度目に味わうものだった。

 

「センパイ、センパイ!!」

「ッ、ごめ……ん……俺、には、これが、限界……だった……」

「そんな……っ、そうだ、カガヤキ──」

 

 カガヤキソウルを使おうとして手は、他ならぬタマキの手によって止められた。

 

「……もう、手遅れだ……っ」

「なに言ってんだよ、センパイ!!?」

「わか、るんだ……自分の、ことは……。俺のことより、早くあいつを……!じゃないと……皆の命が……!」

「でも……だけどっ!!」

 

 目の前のタマキの姿に、かつての親友が重なる。騎士ですらなかった彼は、タンクジョウの攻撃からエイジロウを庇ってその命を散らした。

 ああ、またなのか。また大切なものを守れず、こうして声を涸らすことしかできないのか。

 

(だったら、)

 

(だったら俺は、なんのために……!)

 

「──しっかりしろッ、リュウソウレッド!!」

 

 絶望に囚われかかるエイジロウを引き留めたのは、他ならぬタマキ自身だった。

 

「前を見ろ……!使命を果たせ……!俺が、できなかったことを、きみが……っ」

「……!」

 

 震えるタマキの手が、何かを差し出してくる。それは彼のもつ数少ないリュウソウルの片割れ──ガイソウルだった。逡巡は止められなかったが、それを受け取らないわけにはいかなかった。タマキの、(ソウル)を。

 

「後悔ばかりの、人生だったけど……最後にきみたちと旅ができて……俺は、本当に……」

 

 そのときだった。潤んだ瞳で自分を見下ろすエイジロウの背後──そこに、体格の良い少年が立っているのを、タマキは見た。

 

(あぁ、)

 

(ミリ、オ……?)

 

 ガイソーグになってからというもの、少しずつ靄がかかったように思い出せなくなっていった顔かたちが今、そこにある。彼が幻なのかそうではないのか──いずれにせよ今この瞬間に現れた意味を察して、タマキは心のうちでその問いをぶつけた。

 

(ミリオ……俺、何度も間違ってしまったけれど……)

 

(使命、果たせたかな……?やるべきことを、やれたかな……?)

 

 ずっとずっと、ミリオの影を追うばかりだった自分。半端者の騎士だった自分。そんな自分を天国でミリオがどう見ているか、想像するだけでこわくて眠れない夜を過ごしたこともある。

 でも、彼は──

 

(……ああ、)

 

(おまえは最高の騎士だよ、タマキ)

 

 ミリオは、確かに笑っていた。最期の瞬間までと同じ、頼もしくて、温かな笑みだった。

 

 タマキも、それに応えるように笑みを浮かべ──

 

 

 

 

 

「……セン、パイ……?」

 

 ほのかに口もとを弛めたまま、タマキは静かに目を閉じていた。幸せな夢を見ているような、安らかな眠り顔。でもそこに、彼の魂はもうなくて──

 

「……ッ、………」

 

 タマキの亡骸をその腕の中にかき抱いたまま、エイジロウは静かに肩を震わせた。まだ熱をもった身体──そして、リュウソウル。

 

「──おのれ……!」

 

 月並みな言葉とともに、ウデンが剣を振るった。ショートのそれをコピーした電撃が、逃げようともしないエイジロウに向かっていき──

 

──そして、爆炎となって呑み込んだ。

 

「………」

 

 ふう、ふうと呼吸を整えるウデン。これで二体始末した──などと、普段の彼ならば考えない。しかしリュウソウ族の小僧ふたりに──ひとりは命と引き換えだったとはいえ──出し抜かれたという事実は、彼を平常心ではいられなくさせていた。

 爆炎が晴れたとき、そこには真紅の騎士がこちらに背を向ける形で立っていた。タマキの骸は消滅──否、それに代わって、リュウソウレッドの手に巨大な鉤爪のような武装が握られていた。

 

「なんだ……それは?」

「………」

 

 勇猛の騎士は答えない。その代わりに、

 

「一緒に戦おう、タマキセンパイ」

 

──いつまでだって、俺たちのソウルはひとつだ。

 

『マックス、ケ・ボーン!!』

「マックス、リュウソウチェンジ……!」

 

 ガイソウルの変化した新たなリュウソウル──"マックスリュウソウル"が、魂の叫びをあげる。

 

 空気をかき鳴らすような音を響かせながら、鎧のパーツが次々と鉤爪から飛び出し、リュウソウレッドの周囲を覆っていく。それはガイソーグの装着シークエンスによく似ていた。

 しなやかなリュウソウメイルの上からパーツが取りつき、真紅のそれを変化させながらひとつになっていく。

 

 やがてそれはガイソーグとリュウソウレッド、双方の面影を残した分厚く強靭な鎧へと姿を変えたのだ。

 

『オォォォォ!!マァァァックス!!!』

「──勇猛の騎士。マックス、リュウソウレッド……!」

 

 タマキの魂が今、ひとつとなった勇姿。

 先ほどまでとは比較にならない強烈な威圧感に、ウデンはぞわりと巌のごとき外皮が粟立つのを感じていた。見れば、リュウソウ族の血に濡れた剣がぶるぶると震えているではないか。

 

(恐れている?俺が?)

 

 リュウソウジャーのひとりとはいえ、年端もいかぬような小僧を。

 

「ありえん……ありえん!!」

 

 感情を爆発させたウデンは、己の顔面に手をかけると、それを握りつぶす勢いで剥ぎ取った。その中から、害虫のような醜悪な顔面が露になる。一つ目だと思われていたものは、単なる仮面の紋様にすぎなかったのだ。

 

「ウゥオォォォォォ──ッ!!!」

 

 雄叫びとともに、ウデンはマックスリュウソウレッドに斬りかかっていく。かの赤騎士は、鉤爪を構えたままそこから動こうとしない。ただ──鎧兜に隠れたそのルビーのような瞳には、絶えず憤激の焔が燃えていた。

 

「ヌウゥゥン!!」

 

 肉薄と同時に、力いっぱい剣を振り下ろすウデン。果たして防御も回避もとろうとしないマックスリュウソウレッドは、その刃の直撃を受けた。激しい摩擦熱が発生し、火花を散らす。

 

「………」

「……!?」

 

 ウデンは動揺を得た。──マックスリュウソウレッドは、剣戟をまともに受けたにもかかわらず微動だにしていない。その分厚い装甲は斬り裂かれるどころか、衝撃さえも装着者の肉体に伝播していないのだ。

 焦燥のまま、ウデンは何度も何度も標的に斬りつける。傷ひとつつかない。いよいよ攻撃が大振りになり、胴体ががら空きになったところで、

 

「グハァ……ッ!?」

 

 胴体に、鉤爪を突き立てられた。

 よろよろと後退するウデンだったが、マックスリュウソウレッドの攻撃はむしろここからが本番だった。相手が一歩引けば二歩も三歩も踏み込み、不屈の騎士の肉体が変化した鉤爪を振り下ろし、薙ぎ、叩きつける。

 その猛攻に、ウデンは防戦一方……否、やられっ放しだった。捕らえたリュウソウジャーの面々からコピーした必殺技で反撃しようとするも、技を出す寸前のところで強烈な一撃を受けて妨害される。まるで最初から見切られているかのように──

 

 考えてみればそれも当然のことだった。エイジロウは幾度となく仲間と稽古を行い、彼らの技を身をもって体験してきている。所詮そこからなんの捻りもないコピーなど、くるとわかっていれば脅威でもなんでもないのだ。

 

(センパイも、もっと長く一緒にいられたなら)

 

 自分を卑下しがちなタマキではあったが、その剣才は明らかだった。さらに時間を経て、肩を並べて戦い、稽古ももっとできていたなら。彼はきっとこの模倣主義のドルイドン相手に命を縣けることもなかったのではないか。

 しかし、現実に"もしも"はない。タマキは命と引き換えに、この強大な力を遺してくれた。

 

「だから……俺はァ────!!」

 

 鋭い爪ががりがりとウデンの表皮を削る。彼がその醜い顔を歪めて仰け反ったところで、全力の回し蹴りを見舞った。

 

「グガアァッ!!?」

 

 堪えきれないうめき声とともに、漆黒のボディがごろごろと砂礫の上を転がる。流石にというべきか、ウデンはすぐさま剣を地面に突き立て、態勢を立て直した。

 しかし、

 

「──いない……!?」

 

 一瞬目を離した隙に、マックスリュウソウレッドは忽然と姿を消していた。五感の鋭さにおいては人間は言うに及ばず、リュウソウ族をも遥かに凌ぐドルイドンの面々。ウデンもその例に洩れないのだが、にもかかわらずかの大敵の気配すらも感じられないのだ。

 

「どこだ……どこへ行った……!?──おのれぇ、出てこいぃぃぃ!!!」

 

 刹那──かき消えていたはずのマックスリュウソウレッドの気配が、何倍増しもの威儀と殺気となってウデンを押しつぶさんとした。

 

「!!、上か!」

 

 ならば先制攻撃だとばかりに頭上めがけて剣を突き出す。串刺しにしてやる──そんな目論みとともに放った一撃は、むなしく空を切った。

 

「な──グハアァァッ!!?」

 

 渾身の一撃が剣を真っ二つに叩き折り、ウデン自身の身体をも大きく引き裂いた。

 

「ガッ……ハァ……ッ」

「………」

 

 ウデンはもはや満身創痍の状態だ。剣は折れ、身体も大きく傷ついている。しかし手を抜くつもりはない──むしろ、ここからが本番だ。

 

「……オモソウル、」

『リュウ!ソウル!!』

 

 マックスチェンジャーにオモソウルを装填する。まだだ。これで終わりではない。

 

「メラメラソウル……!」

『強!リュウ!!ソウル!!!』

 

 さらにメラメラソウルを装填する。『アメイジ〜ング!!』と、チェンジャーが唸りをあげた。

 そして、

 

「──うぉらあぁぁぁぁぁッッ!!!」

 

 雄叫びとともに、鉤爪を地面に深々と突き刺した。リュウソウルの力が砂塵を巻き上げながら地を奔り、ウデンに襲いかかった。

 

「グワアァァ──!!?」

 

 超重力で押しつぶされかかったところに、ウデンは燃えさかる烈火の竜巻に閉じ込められた。

 苦悶の声をあげ、もがいているつもりだろう。しかしウデンはもう指一本たりとも動かせない。重力と劫火の二重奏は、如何にドルイドンであっても満身創痍の者に破れるはずがない。

 

 そしてここに囚われた時点で、ウデンの運命は決しているのだ。

 

「おまえに……俺()()のソウルは砕けない……!」

 

 エイジロウの脳裏に、タマキとの想い出が甦る。そのすべてが柔らかなものでは決してない。呪われた鎧に心を囚われた彼に、背後から斬りつけられたこともあった。

 でも、それでも、大切な仲間だったのだ。これから彼と──いや七人で、ともに旅ができると思っていた。戦えると思っていた。明るい未来をつくってゆけると、無邪気に信じていたのだ。

 その想いを裏切られるのは、これで三度目だ。その清算は、今この場で果たす。でなければ、前には進めない。

 

『エ〜クセレントゥ!!』

 

 爪が唸りをあげると同時に、マックスリュウソウレッドの周囲を紫紺のオーラが包み込む。──その瞬間、彼は見た。隣で剣を構える、ガイソーグの幻を。

 

「……センパイ……」

 

 彼は、何も言わない。ただ視線をかわして、静かに頷いてくれた。

 その幻をも己の糧として──レッドは、エイジロウは、爪を振りかざした。

 

 

「──エバーラスティング、クロー!!!」

『イケイケソウゥゥゥル!!!』

 

 獣のように腰を落とし──跳ぶ。爪の放つ膨大なエネルギーが術者の身体をも吹き飛ばそうとする。

 

「……ッ、おォオオオオオ──!!」

 

 身体ごとドリルのように回転する。しかしそれさえも貫通力へと変えるべく、エイジロウは雄叫びをあげた。

 そして──彼はそのまま、ウデンの胴体に風穴を開けた。

 ずりずりと砂塵を巻き上げながら、マックスリュウソウレッドは着地を遂げた。ゆっくりと立ち上がる。しかしもう、背後になった仇敵を振り返ることはしない。

 

「ガッ……ァア、ア………」

「………」

「ア゛ァァァァァ────ッ!!」

 

 その全身に亀裂が広がっていき……ついに、爆ぜた。ウデン"だったもの"が、辺り一面に転がっていく。

 その中で唯一、レッドのもとに飛んできたものがあった。──バックルだ。

 

 手中に収まったそれがパキ、と音をたてる。タマキが入れてくれた亀裂がさらに広がり──ややあって、複数の人影がその中から飛び出してきた。

 

「ぬおぉぉっ!!?」

「きゃあぁぁっ!!」

 

 折り重なるようにして地面に倒れ落ちていくリュウソウジャーの面々。いちばん下になってしまったショートが「……重ぇ」とぼやく。

 ややあって態勢を立て直した彼らは、周囲を見回しながら状況を把握したようだった。自分たちが救出されたこと──ウデンが、倒されたこと。

 

「助かったぁ……!」

「エイジロウくん……!やってくれたんだな!流石だ!」

 

 エイジロウは答えない。目を見開いたまま俯いて、時が停まったかのように硬直している。

 

「……おい、あいつは」

 

 カツキの押し殺したような問いに、皆がはっとする。エイジロウはようやく顔を上げた。その表情がぐしゃぐしゃにゆがんでいく。

 

「……そんなのって、ないよ……」

 

 すべてを察したイズクのつぶやきが、彼らの心を象徴していた。

 

 

 *

 

 

 

 ふたたび賑わいが戻った市場も、夕刻を迎えて次々に店じまいを始めている。

 その中にあって、少年たちは置き去りにされたかのようにぼうっと佇んでいた。もはや言葉もない。ただ、時折オチャコが鼻を啜る音が響くばかりだ。

 

「………」

「……あの、皆さん」

 

 重苦しい雰囲気に気圧されながらも、コタロウがおずおずとあるものを差し出した。

 

「これ……手紙?」

「タマキさんからです。皆さん宛て……だと思います、たぶん」

 

 タマキもはっきりとそう言っていたわけではないが。

 もし彼ら宛てでなかったらとは思いつつも、コタロウは思いきってそれを開いた。「読みますよ」と断って、丁寧に書かれた文面を読み上げはじめる。

 

「──"親愛なる、リュウソウジャーの諸君"……」

 

──この手紙が読まれている頃、俺はもうきみたちのもとを離れているだろうか。

 ……こんなありきたりな書き出しであること、本当にすまない。思うところあって、俺は少し修行の旅に出ることにした。いや、勿体ぶる話でもないな。正直、今のままの俺ではこれから先、きみたちの足を引っ張るだけだと思う。ガイソーグの鎧の力に頼れなくなった今、自分自身の腕を磨かなければ、ドルイドンとの戦いにはついていけない。

 

「……当たり前のこと今さら言ってンなよ、クソが……っ」

 

 カツキの毒舌が力なく響く。朗読はなおも続く。

 

──これからぶつかるドルイドンは、今までより遥かに難敵になるだろう。でも今は、不思議と恐怖はないんだ。言い訳のようだけど、これは本当だ。きみたちが、いるから。

 

──ショートくんは、独りで戦っていた期間が長いだけあってそつがない。普段は少しずれたところもあるようだけど(俺が言えたことじゃないな、すまない)、時にはそれも強みになると思う。これからも独自の視点で、皆の支えになってほしい。

 

「……先輩、」

 

──カツキ、きみは変わった。口でなんと言っていようと、今の仲間をすごく大切にしていることが伝わってくる。でも実は責任感が強いところは相変わらずで……あまり独りで抱え込まないようにな。(これも俺が言えたことじゃないけど)

 

「実はってなんだ……クソ」

 

──イズクは昔から変わらず優しくて勇気もある。身体は小さくても、きみが人一倍努力してリュウソウジャーになったんだってこと、今なら納得がいく。実は頑固で独りで突っ走りがちなところは、カツキに似てしまったのかな。どうか無謀なことはせず、自分の身体も大事にしてほしい。

 

「……努力します、先輩……」

 

──オチャコさんはいつも元気いっぱいで、愛らしくて……そこにいるだけで、皆の癒しになっていると思う。もちろん、そのパワーが戦闘においても大いに役に立っているのは言うまでもないことだ。いつか、魔導士としても一流になれるといいね。

 

「褒めすぎやって……もう」

 

──テンヤくんはいつも生真面目で、第一印象としては正直、カツキ並に怖い人なのかと思っていた。でも本当のきみは鷹揚で、まっすぐで、いつもチームを縁の下から支えていた。この前も言ったけど、立ち止まって物事をじっくり考えられるのは、間違いなく貴重な才能だと思う。

 

「……う、ううううッ」

 

──そして、エイジロウくん。

 

「……!」

 

 思わず、手に力がこもる。

 

──きみは確かに漢らしくひたむきで、なんなら少し向こう見ずなところもある。でもそれ以上に、きみは誰より優しくて温かい。太陽のようなきみの眩さが、リュウソウジャーをひとつに紡いでいるんだと思う。……一度裏切った俺にこんなことを言う資格はないかもしれない。それでもあえて言う。その優しさを失わないでくれ。たとえその気持ちが何千、何万回裏切られようと。その優しさに救われる人が、この先もきっとたくさんいるはずだから。だから、どうか。

 

──長くなってしまった。要約ができないのは俺の文才のなさ……いや、やめておこう。とにかくきみたちは最高のチームだ。その中にわずかな間でもいられたこと、俺は誇りに思う。そしていつかまた、胸を張って戻ってこようと思う。皆でドルイドンを倒して、この星に平和を取り戻そう。そうしたら今度は、戦いと関係のない平和で賑やかな旅をしよう。コタロウくん、騎士竜の皆も、もちろん一緒に。

 

──……余白もなくなってきたので、これで最後にする。

 

──友よ、ありがとう。俺を騎士にしてくれて、本当にありがとう。

 

──またいつか、相まみえる日まで。 七人目のリュウソウジャー 不屈の騎士より

 

 

 つづく

 

 

 

 

 





「き、貴様はプリシャス……!」
「試練の断崖?」
「タマキセンパイの死、無駄にするわけにはいかねえもんよ」

次回「竜の試練」

「ボクはドルイドンを束ねる者、すべての強さを手に入れる者」

今日の敵<ヴィラン>

ウデン

分類/ドルイドン族ビショップ級
身長/189cm
体重/278kg
経験値/248
シークレット/魔法とも異なる不思議な術を会得したドルイドン。虚無僧のような被り物をしている以外は漆黒の装いで、剣の腕も立つ。しかしその真髄は左胸のバックルに標的を引きずりこみ、己の分身体と戦わせることでその技をコピーできるところにある。普段は冷徹で寡黙な振る舞いをするが、一つ目の仮面を外すとその悍ましい素顔とともに狂暴な本性を露にするぞ!
ひと言メモbyクレオン:リュウソウジャーのクビ獲るとか地味に快挙じゃね?でもコイツ、別のドルイドンの部下なんだってさ!ドルイドンがドルイドンに従うとか……変だよね〜。

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