【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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39.凍てつく翼 2/3

 

 ピーたんを包み込むようにして攫った漆黒の影。それはずるずると縮んでいき、やがてその頭部が"主"のもとへと到達した。

 

『連レテ来タゾ、フミカゲ』

「ご苦労、"黒影(ダークシャドウ)"」

 

 鴉のような頭部をもった影を"ダークシャドウ"と呼ぶのは、やはり鴉を模したような仮面で頭を完全に覆い隠した小柄な男だった。声色は低く鋭いが、年若くも感じる。いずれにせよ、年齢不詳。

 そしてそこにはもうひとり、青年の姿があった。

 

「いやぁ、いつもながら大したもんだ」

 

 フミカゲと呼ばれた男とは対照的な軽薄な口調。後ろに流した金髪に薄い顎髭、何を考えているのか読みがたい三白眼と、フミカゲほどではないにせよこちらも年齢を推し量り難い容姿をしている。ただ彼の場合、漆黒の軍服めいた衣装の背中から生えた一対の赤い翼という、鮮烈にも程がある特徴にまず目がいくのだけれど。

 

「うぇぇん、なんなんだよお前らぁ!オレが封印された状態だからって舐めると痛い目遭うぞぉ!!」

「!、この球体……喋るのか」

「へぇ、こりゃ興味深い。ゾクゾクするねぇ……な〜んて──ん?」

 

 かの青年?が顔を上げる。と同時に、BOOOOM!!とお決まりとなった爆音が辺り一帯に響き渡った。

 

「てめェらかプテ公盗ったンはあああああ!!!」

「!!」

 

 一気呵成に襲いかかるカツキ。フミカゲも青年も咄嗟に飛びのいたことで難を逃れたが、彼の振るう刃の追撃はなおも続いた。

 

「ひぇっ……恐ろしかぁ」

「ッ、ここは俺たちが!」

 

 フミカゲの足下から"ダークシャドウ"が飛び出し、カツキに喰らいつかんとする。一瞬目を丸くした彼は、しかし剣を振るってそれに対抗した。ふたたび起きる爆発により、重苦しい曇天に閉ざされていた世界が一瞬白く染まった。

 

『ウギャアッ!?』

「黒影!?」

 

 慌てて引っ込む黒影は、明らかに光が苦手なようだった。勢いに乗ったカツキが突撃しようとしたところで、イズクたちも追いついてくる。

 

「かっちゃんっ!!……って、相手人間じゃないか!?」

「人間だろーがコソ泥だ!!」

「だからってダメだよ、殺す気!?」

 

 フゥ、と有翼の青年はため息を零した。積極的に殺しにかかってこようとしているほうも止めようとしているほうも、相当な手練とみえる。それでも同数の対決ならばと思っていたら、その後ろからさらに複数の少年たちが駆けつけてきてしまった。

 

「あんたらか、ピーたんを攫ったのは!?」

「ピーたん美味しくないで!……たぶん!」

「……食用目的ではないんじゃねえか?」

「食用はないとしても、何が目的だ!?」

 

 次々に問い詰められるが、青年はまったく意に介さなかった。いちいち答えようという気もなかったのだ。

 

「……隊長、どうする?」

「だからもう隊長じゃないって。──決まってるでしょ?」

 

「──逃げる、一択♪」

 

 言うが早いか、彼らは揃って飛翔した。大尉と呼ばれた青年は翼を広げ、フミカゲは"ダークシャドウ"を己が身にマントのように纏わせて。

 

「ッ、待てやゴラアァァァァ!!」

「ちょっ、かっちゃん!……もうっ!」

 

 ブチ切れて追跡を開始するカツキに、いちおう彼の制止を試みながらも本音では戦闘態勢をとりつつあるイズク。相変わらずの幼なじみコンビに気圧されながらも、エイジロウたちも積極的に続いた。悪党?の手からピーたんを取り返さねば。

 

「ノビソウル!」

「マワリソウル!」

「オモソウル!」

 

 追跡&攻撃に特化しているふたりに対して、スリーナイツは様々なリュウソウルを使って捕捉を試みる。しかし彼らの飛翔は速いばかりか縦横無尽で、なかなかその射程圏に捉えることができない。

 それどころか、

 

「しつ……こいなァっ!!」

 

 飛び続けながら首だけこちらに傾けた青年が、次の瞬間翼から羽根を分離、射出した。

 

「!!」

 

 手裏剣のように飛んでくるそれらは、先端が鋭い光を放っていた。咄嗟に剣で弾こうとするが、そのぶん足は止まる。牽制としてはこれ以上ない攻撃だった。

 

「ッ、クソが……!」

「あの羽、何なんだ?つくりものじゃなさそうだ」

「マシラオくんの尻尾と同じようなパターンかも……!」

 

 この世界には少数だがいるのだ、尻尾や翼、吸盤などといった、別の動物の特徴を有して生まれてきてしまう人々が。

 彼らは常人では得がたい能力と引き換えに、多かれ少なかれ人間社会との乖離に苦しむことになる。オチャコが挙げたマシラオ少年、それに地下に集落をつくって暮らしているメゾウという青年もいたか。

 

「人間が小細工弄したところでなァ、俺らには勝てねえんだよォ!!」

「いやそれ悪役の台詞!」

 

 仲間たちの突っ込みや叱責も構わず、カツキが爆刃を振るう。雪が弾け飛び、溶融して局地的な雨が降る。それを避けながら、青年たちは長期戦を覚悟した。

 

「きみと同年代だろうに、やるなぁこの子たち……」

「ッ、我々とて負けてはいない!──"黒影"!」

『アイヨっ!』

 

 くるりと踵を返すと同時に、マントのごとく背中に纏っていた"黒影"がぐにょりと腕を伸ばす。どこからどう見ても影のかたまりとしか言いようのない姿だが、その手の先端は鋭く尖っていて。

 

「ッ!」

 

 咄嗟に躱すカツキだが、頬をわずかに掠め、血が噴き出す。飛び散ったそれが真白い雪原に紅い彩りを与える瞬間は、たとえ軽傷だと明らかであっても大きな視覚効果をもたらした。

 

「かっちゃんっ!!」

「チィ……っ!──デク、マブシソウルだ!そいつは光に弱ぇ!!」

「わかった!──マブシソウル!!」

『ピッカリーン!!』

 

 リュウソウケンから眩い光が放たれ、辺り一帯を純白で覆い尽くす。先ほどとは比較にならない光量に、"ダークシャドウ"は逃げるすべもなく晒された。

 

『ギャアアアアァァァ………』

「"黒影"ッ!くっ、面妖な術を……!」

 

 影が無残にもしゅるしゅると萎んでいく。飛翔のすべを失ったフミカゲは、歯噛みしながら地上に降り立った。一方で"隊長"と呼ばれた青年は空中にとどまり、フラット極まりない表情で状況を観察していた。

 

(駆け出しの勇者かそこらなら何人いようが関係なかばってん……こいつら、普通じゃなか)

 

 ふと、ドルイドンと戦っているという六人組の鎧騎士たちの噂を思い起こす。ここより南方では、ドルイドンの起こす事件が彼らによって解決へ導かれ続け、徐々に平和が戻っていっていると。

 そしてその六人組──リュウソウジャーの正体は、未だ年若い少年たちであるとも云われていた。半信半疑だったが、もしかしたら──

 

 "隊長"の思考が極まりつつあったそのとき、不意にショートが声をあげた。

 

「!、皆、攻撃を中止しろ!」

「ア゛ァ!!?」

「どうした、ショート?」

 

 耳を澄ますショート。そして次の瞬間、鋭い表情を浮かべてこう言った。

 

「ドルン兵の……大群の足音だ」

「!」

 

 身構えると同時に、吹雪の中からショートが言った通りの者どもが姿を現した。一糸乱れぬ所作で行進してきた彼らはいきなり攻撃を仕掛けてくることもなく、ぐるりとリュウソウジャー一行とふたりの"ドロボウ"を包囲してしまった。

 

「ッ、囲まれた……!」

「こいつらだけなら大したことねーわ!行くぞてめェら!!」

「おうよ!」

 

 ドルイドンが相手なら、とるべき行動はひとつ。彼らもまた円形に背中を合わせて敵に対峙すると、一斉にリュウソウルを構えた。

 

「「「「「「リュウソウチェンジ!!」」」」」」

『ケ・ボーン!!』

 

『ワッセイワッセイ!そう!そう!そう!』『ドンガラハッハ!ノッサモッサ!』

『ワッセイワッセイ!それそれそれそれ!!』『エッサホイサ!モッサッサッサ!』

 

 逆円陣を組んだ六人を、さらに取り囲み踊り狂う小さな騎士たち。そして、

 

『──リュウ SO COOL!!』

 

 騎士たちが鎧のパーツへと姿を変え、六人を球状に取り囲み──覆い尽くす。

 そうして露になった姿を目の当たりにして、予想だにしなかったフミカゲはただただ驚愕していた。

 

「!、あれは……!」

「………」

 

「──勇猛の騎士!」

「叡智の騎士ッ!!」

「剛健の騎士!」

「疾風の騎士!!」

「威風の騎士……!」

「栄光の騎士、」

 

 一斉に散開する六人。リュウソウケンを振るい、ドルン兵たちと斬り結びながら、やあやあ我こそはと名乗りを継いだ。

 

「リュウソウレッド!!」

「リュウソウブルー!!」

「リュウソウピンクっ!」

「リュウソウグリーン!!」

「リュウソウブラックゥ!!」

「リュウソウ、ゴールド!」

 

──正義に仕える気高き魂、

 

「「「「「「騎士竜戦隊、リュウソウジャー!!」」」」」」

 

 斬り捨てられたドルン兵たちがばたばたと倒れ伏す。一面の銀世界に現れた色鮮やかな六色が、青年たちの目に焼き付けられた。

 

(やっぱそういうこつか……さあて、どうするかね)

 

 流石にドルイドンを"敵の敵は味方"とする選択肢はない。彼らに加勢して恩を売っておくべきか、この混乱に乗じて逃げるか。普通なら後者だが、彼らとは一度きりの邂逅では済まないような予感が彼にはあった。

 戦場の端でじっと考え込んでいた青年は、背後から接近する影の存在にぎりぎりまで気付けなかった。

 

──ざり、

 

「!」

 

 雪を思いきり踏みしめる足音に振り向いたときには、コタロウ少年が飛びかかってきていて──

 

「よっと」

「ッ!?」

 

 子供の襲撃など寝ていても躱せる。それどころか、すれ違いざまにひょいと首根っこを掴んで捕まえてしまった。

 

「ははっ、行儀の悪い坊やだなぁ。キミも彼らのお仲間?」

「〜〜ッ、行儀が悪いのはどっちだよ……」

 

 コタロウは歯噛みした。このまま雪の中に放り出すこともできるだろうに、それをしないのは優しさのつもりか。腹立たしい。

 しかし片手がコタロウに費やされたことで、ピーたんに対する拘束は間違いなく緩んだ。──紅い猛禽類のような瞳が、ぎらりと輝く。

 

「チュチュチュチュチュチュチュン!!」

「ッ!?」

 

 鋭い嘴が唐突に手をつつきまくり、痛みに備えていなかった青年は思わずピーたんを取り落としてしまった。その隙を突いてコタロウも身を捩り、自らの意志で雪の中にダイブした。

 

「コタロウ〜!」

「ふぅ……ナイス、ピーたん」

 

 今度こそ放さないよう、しっかりと抱きしめる。ピーたんは何故か「キャーッ」と照れていた。

 

「ッ、」

 

 反射的に動くフミカゲだったが、その動きを押し留めたのは意外にも青年だった。

 

「──いいよ。こんなこそ泥みたいなやり方、リュウソウジャー相手じゃ最初っから通用しなかったんだ」

「………」

「それに、俺たちもぼうっとしてはいられないようだ」

 

 飄々とする青年たちを、ドルン兵たちの一分隊が取り囲んだ。戦場に人間がいれば、彼らが目をつけないわけもない。

 

「坊や、俺たちから離れないように」

「!」

 

 事実上の守護宣言に目を丸くしているうちに、ふたりはなんら躊躇することなく戦闘を開始した。

 

 

 一方、リュウソウジャー六人の戦闘は、順調に推移……していなかった。

 

「ッ、オラァ!!」

 

 リュウソウケンを振るい、長槍ごとドルン兵を両断しようとする。しかしその刃が到達しようとした瞬間、別のドルン兵が二体、両脇から割り込んできた。

 

「!?」

 

 ドルン兵同士で、仲間を庇った?今までにない敵の行動に呆気にとられたのもつかの間、今度は三位一体、見事な連携攻撃を仕掛けてくる。

 

「こいつら……っ!」

「!、カツキっ!!」

 

 咄嗟にメラメラソウルで強竜装を遂げたレッドが援護に入る。凍てつくものを融かす炎の一撃は、そのパワーによってドルン兵たちを力づくで押し飛ばした。

 

「チッ、援護なんざ求めてねー!!それよりここじゃブットバソウルが弱ぇ、メラメラよこせや!!」

「横暴だなもぉ……ほらよ!」

 

 竜装を解除し、ブラックに差し出す。それ以上の戦力を、今の彼はもっている。

 

「マックスリュウソウチェンジ!!」

『メラメラソウル!メラメラァ!!』

『マックス、ケ・ボーン!!──オォォォ、マァァァックス!!』

 

「連携なら……こっちだって敗けちゃいねぇんだ!!」

 

 己を奮い立たせるように叫びつつ──このドルン兵の軍団が今までとは違うことははっきりしていた。明らかに統制がとれているし、個々の練度も高い。今までなら生身でも優位をとれるような相手だったのに、マックスリュウソウチェンジや強竜装に頼らざるをえないのが良い証拠だった。

 

「北方のドルイドンが、これほどまでに強力だとは……!」

「あぁもうっ、粘る……!」

「それにしても、彼ら……」

 

 銃撃を牽制代わりにしつつ、ゴールドが"そちら"に目を遣る。コタロウを守りつつ、ドルン兵と戦う有翼の青年と黒面の少年──年齢不詳だが、所作や小柄な体格からの推測である──。彼らは生身の人間でありながら、その翼や"ダークシャドウ"と呼ばれる影を操って巧みに戦っている。

 

「やるな、あいつら。あいつらも勇者(ヒーロー)なのか?」

「泥棒するような人たちを、勇者とは思いたくないけど……」

 

 ただ以前デンキたちが言っていたように、勇者といっても千差万別である。特別なライセンスがあるわけではないから、中には野盗崩れのような連中もいないわけではない。旅の経験が長いイズクなどはそういう人間と遭遇したことも多々あったが──あのふたりからは、それらとも違う相応の実力があるようだった。

 

(とにかく、こいつらを早く片付けないと)

 

 プテラードンはコタロウの手に取り戻した。場をリセットして、改めて彼らと対峙しなければ──

 

 しかし着実にドルン兵同士の連携を崩し、その数を減らしはじめたところで、何処からか馬のいななくような声が響いた。

 

「!」

 

 その音に反応したのはリュウソウジャーたちだけではなかった。攻撃をとりやめたドルン兵たちが一斉に後退していく。それと入れ替わるように、重厚さと軽快さを兼ね備えた足音が接近してくる。

 果たして現れたのは、白と黒、二頭の馬に似た魔物に率いられた馬車だった。騎乗するは、全身を銀鎧で覆ったやはり馬面の怪人。

 

「おまえは……!」

「てめェがこの辺りにシマ張ってるドルイドンか!」

「如何にも」騎乗したまま、怪人が応じる。「私はルーククラスのシグルト。プリシャス様の忠実なる部下である!ちなみにこれらはわが愛馬、スキンとフリン」

「プリシャスの……!?」

 

 プリシャス──突如として宇宙から降り立った悪魔のようなドルイドン。今までに相対した中でも群を抜く実力の持ち主であった彼は、他のドルイドンさえも従えているのだ。

 

「プリシャス様の命により、貴様らを殲滅してくれる!!」

「ッ、やれるもんならやってみろってんだ!!」

 

 真っ先に突撃したのはマックスリュウソウレッドだった。相手はルーク、タンクジョウやガチレウスと同等、ウデンより下。ならば策など弄さず、徹底的に叩きのめす!

 

──そんな思考は、この馬面のドルイドンにはお見通しだった。

 

「私をルークと知って侮ったな?貴様らがチームであるように、我らも心を通わせワンチームである!──愛馬たちよ、行くぞォ!!」

 

 黒白の双馬が嘶きをあげ、次の瞬間走り出す。雪原の上でありながらスリップなどまったく恐れぬ急加速。それに対してマックスリュウソウレッドは、慣れない雪に足をとられフルスピードが出せずにいる。

 

「ッ、このォ!!」

 

 それでもすれ違いざまに爪を振るうが、見事な方向転換により避けられてしまう。

 

「ハハハハハッ、ウデン殿を倒したのは貴様だったな!あとでゆっくり料理してやる、そこで指を咥えてみていろ!!」

「ッ!」

 

 マックスリュウソウレッドが振り向いたときにはもう、シグルトは彼の仲間たちに迫りつつあった。

 

「さあ、誰から処理されたい!?」

「そっちこそ、舐めとったら痛い目見るよ!!」

 

 あえて飛び出したのはリュウソウピンクだった。ドッシンソウルで竜装した巨拳を構えて馬車の前に立つ。

 

「はあぁぁぁぁ……──どりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」

 

 肉薄と同時に拳を振るう、振るう、振るう!魔馬たちはそれを一身に受けながら、悲鳴ひとつあげずに突撃を継続している。

 

「スキンとフリンはどれほど痛めつけられようと、命ある限り命令を遂行する!貴様のような小娘に止められはせぬわぁ!!」

「──てめェの敵は小娘ひとりじゃねえんだよォ!!」

 

 右からブラックが、左からブルーとグリーンが迫っていた。狙いは騎手その者。なるほど悪くないと、シグルトは思った。

 悪くないだけで、予想しやすいにも程がある集団戦法だとも思ったが。

 

「フン!」

「!?」

 

 紅蓮を纏った刃が、シグルトの携えるスピアに受け止められる。そして反対方向から攻めたてるブルーとグリーンの斬撃は、もう一方の手中にある丸楯に弾かれてしまった。

 そして、

 

「きゃあぁっ!!?」

「オチャコっ!?」

 

 ついに押し負けたオチャコが吹っ飛ばされる。その勢いのまま十数メートルは前進したシグルトと馬たちだったが、スピードを落とさぬまま方向転換してふたたび襲いかかってきた。

 

「接近戦は不利だ、ここは俺が!」

『強・竜・装!!』

 

 ビリビリソウルの鎧を纏い、電光弾を乱射する。炸裂音をたてながら舞い散るそれらは時折降り積もった雪を飛沫へと変える。しかし肝心のシグルトには、一発も命中しない。

 

「ハハハハッ、下手な鉄砲数撃てど無駄弾だ!!」

「ッ、こいつ……!」

「──だったらでけぇ一発、お見舞いしてやらぁ!!」

 

 ついにマックスリュウソウレッドが再参戦した。進行方向に立ちふさがった彼は、手始めとばかりにマックスリュウソウチェンジャーにカルソウルを装填した。

 

『リュウ!ソウル!!』

「もう一丁!──コスモソウル!」

『強!リュウ!!ソウル!!!』

 

『アメイジィィング!!』──鉤爪が唸りをあげると同時に、マックスリュウソウレッドはその尖端を雪原へと突き刺した。途端、リュウソウルから発せられたエネルギー波が地を走り、シグルトへと襲いかかった。

 

「ヌゥ……ッ!?」

 

 それは直接的な攻撃などではなく、だからこそシグルトは避けきれなかった。小宇宙の力と無重力の力。ふたつが重なりあって、かのドルイドンをゼロ・グラビティの檻に捉えた。

 

「っし、今だ……!」腰を獣のごとく落とし、「エバーラスティングクロー!!」

 

 雪原を蹴ると同時に、激しい空気摩擦を起こしながら跳躍する。降りしきる雪を弾き飛ばすほどの錐揉み回転とともに、シグルトの首を狙う──!

 

「ムゥ、これがウデン殿を葬り去った技か……!」

 

 そればかりか、主プリシャスがわざわざ模倣を試みた必殺技。ルーククラスの自分が喰らえば、そのウデンと同じ運命を辿ることは必至だろう。

 一計を案じた彼は、思いもよらぬ強引な手段に打って出た。盾を構えて呪文を唱え──たちまち、巨大化へと至ったのだ。

 

「フン!」

「なっ──ぐほっ!!?」

 

 一瞬鼻白んだマックスリュウソウレッド、それが命取り?となった。同じく巨大化した丸楯を突き出され、なすすべなく弾き飛ばされてしまったのだ。

 

「エイジロウくん!?」

「エイジロウっ!!」

「ッ、痛てて……あのヤロー、なんつー無理矢理な」

 

 まあ、良い。相手がその気ならこちらも騎士竜たちを呼ぶまでだ。──しかしそう考えたのもつかの間、背後から伸びてきた影が一同を包み込んだ。

 

「うわぁ──!?」

「"黒影"、行くぞ」

『アイヨ!』

 

 吹雪のもたらす純白に融けるように、漆黒の影が消えていく。リュウソウジャーもろとも。

 

「ムゥ!?……妙な連中を味方につけおって!」

 

 誤解から憤激するシグルトだったが、すぐに気を取り直して馬車を走らせはじめる。この北の玄関口は、彼にとってホームグラウンド。身を隠しうる場所もすべて熟知している。

 

「首を洗って待っていろ、リュウソウジャー!」

 

 

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