オォォォォ、と、兵たちの声が地鳴りのように響き渡る。
ドルイドンの兵団より数さえも劣るセイン・カミイノ守備隊側は、あっという間に押し戻されつつあった。部隊長であるヒトシの、できるだけ人的被害を減らすことを主にした指揮により、幸いにして雪原が赤く染まることは最小限に抑えられている。ただ正面切っての鍔迫り合いであるからには傷つく者が出るのは避けられない。勇敢にも最前線に出た兵士たちの負傷が取り返しのつかないものにならないうちに、ヒトシは着実に部隊を後退させていた。
「逃げるなッ、なんとしても大将首を獲れ!!」
敵に作戦を悟らせないために、あえて欺瞞の命令を声高に叫ぶヒトシ。沈着冷静、めったなことでは動じない彼も、今ばかりは声を裏返らせている──
「──ヒトシたちが退いてきたみたいだ。そろそろ出番だな」
ショートの発した言葉に、一同改めて気を引き締めた。敵が街に入れば、あとは自分たちの仕事だ。まずは敵の数を一気に減らす。そうして軍勢に穴が開いたところで敵陣奥深くに突撃し、大将たるドルイドンに戦いを挑む。他の討ち漏らしは、街の守備隊に任せることになっている──だから尚更、初撃で一体でも多くの雑魚を減らさねばならないのだ。
「っし……いくぜ、みんな!!」
──リュウソウチェンジ!!
その身に竜装の鎧を纏う少年たち。彼らは頷きあうと、それぞれの持ち場へと散開した。
それから程なくして、開いたままの西門に囮部隊が逃げ込んでくる。それを追いかけるようにして、ドルン兵たちがいよいよ街に侵入してきた。防衛のために最低限の道幅に改装されたメインストリートを、異形の兵士たちが埋め尽くす。これでは軍勢の数は活かせないのだが、敵の指揮官は兎も角ドルン兵にそんなことを考える知能はない。
そしてその先鋒が、最後尾の守備隊兵士らの背中をようやく捉えようかというときだった。
『オォォォォ!!マァァックス!!』
「!?」
にわかに響き渡る喊声。ひとり分のそれにもかかわらず、兵士たちの鬨の声にも劣らぬ声量に、ドルン兵たちの進撃は一瞬、停滞した。
そして、再開されることはなかった。
「うおぉぉぉぉぉッ、エバーラスティングクロー!!!」
彼らが最期に見たのは、錐揉み回転しながら迫りくる真紅の弾丸。人間大のそれに胴体を貫かれれば、ドルイドンの端くれとてひとたまりもない。
そして一、二体を貫通した程度で勢いは衰えず、"それ"は軍勢の中央に風穴を開けていく。ようやくその身が着地したときには、彼の周囲には爆炎によって融けた雪が水溜りをつくるばかりとなっていた。
「っし、穴ァ開けたぜ!──みんな!!」
呼びかけに応じ、仲間たちが次々と持ち場から飛び出してくる。まずハヤソウルを操るブルーとグリーンが先行し、ピンクがヒエヒエソウルで滑空しながらあとに続く。その小脇にはゴールドが抱えられていた。
「せっかくやしばら撒いたれ、ショートくん!」
「本当にばら撒くだけになるぞ」
捕まった猫のような態勢のまま、地上めがけてモサチェンジャーを連射する。狙いも何もあったものではない弾丸の殆どは雪に接触して飛沫を飛ばすだけに終わったが、それでも幾らかはドルン兵らを昏倒させることに成功した。
「………」
そんな仲間たちの奮闘を最後尾でじっと見つつ、ゆっくり歩を進めていくのはブラックだ。──その左手には、リュウソウカリバーが握られている。
実質的に彼専用となっているブットバソウルは、寒冷地にあってはその能力を大きく減退させる。むろん彼はその他のリュウソウルの扱いにも長けているものの、ショートがガンナー役を担うということで彼にしんがりの役目が回った形だ。
仲間たちが道を切り拓いたところで、一気に敵陣の最奥へと突撃する。そこで、大将の首を獲る──仲間への信頼が、要となる重責。
マスターブラックの親友だった男との再会は、少なからず少年の傷ついた心に楔を打っていた。ひとは、裏切るもの。どんなに信頼しあった友人であれ、親兄弟であれ、仲間であれ──子供が大人になり、老いていくように、その心は絶えず移ろいゆく。
しかしそれが、かつての師の教えをすべて欺瞞と打ち捨てていい理由にはならない。あのころの師の高潔な精神を、今、カツキは受け継いでいる。漆黒の竜装鎧とともに。
(あんたが今、どこで何をしてようが関係ねえ)
(──"勝って救ける"。あんたの教えを、俺は為す)
一方で、敵陣奥深くにまで浸透した騎士たちは最後尾のドルン兵たちを打ち倒したところだった。討ち漏らした少数については、付近に布陣する街の守備隊が駆けつけて対処している。大将を討てば、この戦闘は完膚なきまでの勝利で終わりだ──
──なのだが、
「ッ、そっち、いたか!?」
「いや……!右も左も、ドルン兵ばかりだ!」
襲いくる者たちを露払いしつつ、ブルー。空中から索敵しているピンクからも、「どこにもおらん!」という返答が下りてくる。
「ドルイドンめ、どこ行きやがった……!?街には入ったんだよな!?」
「入ったふりをして、すぐに離脱したとか……」
「──それはない」
「!」
聞き慣れた仲間たちのそれとは異なる声に、皆が咄嗟に剣を差し向ける。と、声の主を守るようにして兵士たちが布陣した。無骨な鈍色の鎧を纏った彼らは、ドルン兵ではなくれっきとした人間で。
「あ……ヒトシ!」
「……よう」
囮部隊の指揮を立派に勤めあげた最年少の隊長。ただきっちり額にかからぬよう立てていた藤色の頭髪はかなり乱れていて、わずかにだが血も流れている。
「おめェ、それ……」
「ん?……あぁ、かすり傷だ。こんなもの、演習でだってしょっちゅうある」
ごしごしと乱暴に血を拭うと、ヒトシは「それより、」と続けた。
「大将格のドルイドンが街に入ったのを確認したうえで、城門を閉鎖してる。そいつは間違いなく、この街のどこかにいるはずだ」
「そうか……」
「オチャコさん、もっと高度をとれるー!?」
「いやぁ……ごめん、無理そう……」
ヒエヒエソウルは装着者に飛行能力を付与するが、基となった騎士竜プテラードンのように高高度を自在に飛び回れるかというとそうではない。浮遊と、滑空が精々だ。
「──そう遠くには行っていないはずだ。雑魚はあんたたちがだいぶ減らしてくれたところでもあるし、捜索に人員を割く」
「わかった。僕らも捜してみる!」
ヒトシの言葉に応じつつ、グリーンは何か思い至ったように背後を振り返った。
「そうだ……かっちゃん!」
カツキは今、単独でこちらに向かっている。何事もなければこのまま合流することになるだろうが──どういうわけか、名状しがたい胸騒ぎを覚えた。
その頃カツキ──ブラックもまた、異様な気配を感じて立ち止まっていた。
「………」
リュウソウケンとリュウソウカリバー、ふたつの剣を握る両の手に、自ずと力がこもる。敵が間違いなく近くにいるという状況下、それでいて明確にその姿が見えないというのは彼ほどの少年でも緊張を強いられるものだった。
どこだ、どこにいる?──そうして気配を探るのに飽いた頃、ふいに視界の隅を漆黒の影がよぎった。
「!!」
振り向くと同時に、右腕を振り下ろす。果たして使い慣れたリュウソウケンの刃が、澄んだ金属音を響き渡らせる。
「……ほう、少しはやるようだな」
「!、てめェは……」
漆黒のボディに、縦長の唐松模様が特徴的な、ヒトツ目の怪人。その姿は、否が応でもカツキに限らずリュウソウジャーの記憶に刻みつけられたものだった。
(ウデン!?いや、違ぇ……)
この北方の地に足を踏み入れて早々に出逢ったケイゴとフミカゲが話していた。セイン・カミイノ攻略は今、ウデンに瓜二つのドルイドンが指揮していると。
「我が名は、サデン」
「!」
カツキの内心を見透かしたように、ドルイドン──サデンが告げる。くぐもった声は、本能的な部分に不快感を刻みつけるものに他ならなかった。
「渡してもらおう、リュウソウカリバーをッ!!」
「ッ!」
サデンの剣捌きはウデンのそれとはまったく異なり、なおかつ巧みだった。プライドの高いブラックだが、無理はせずいったん飛びのく。
「は、そう言われてハイそーですかって渡せるほどなァ、コイツは安かねーんだよ!!」
言うが早いか、リュウソウカリバーを掲げるブラック。その身を覆うように、濃紺と金に彩られたマントが装着される。
「──ノブレス、リュウソウブラック……!」
「ほう……それが」
サデンが愉しげに喉を鳴らすのがわかる。姿はそっくりでも、ウデンとは随分性格も異なるようだ。ただ、能力のほうはわからない。今のところ使う素振りも見せないが、以前自分たちを閉じ込めた胴体のバックルは確認できる。一応、警戒したほうがよさそうだ。
むろん、だからといって及び腰になるつもりはない。マントを翻し、ブラックはふたたび歩を踏み出した。
「オラアァァッ!!」
「!」
"
そんな彼を前に──サデンは、くつくつと笑いはじめた。
「!、てめェ……何笑ってやがる!?」
「フ……存外、臆病な戦い方をするものだと思ってな」
「ア゛ァ!!?」
反射的に青筋を立てつつも、敵の挑発に乗せられるほど愚かではない。キレやすい性格なのは今さら言うまでもないが、彼の中には常に冷静な自分がいて、状況ととるべき行動を的確に分析している。しかしそれすらも殺してしまう事柄が幾つかあった。たとえば幼なじみのこと。──そして、
「そういえばかつて相まみえたな、おまえとよく似た黒衣の騎士に」
「……!」
ブラックの肩がわずかに揺れる。竜装の兜に頭部を覆っていなければ、その鋭い赤目がみひらかれるさまもまざまざと見せていたことだろう。
「臆病なのは悪いことではない。……リュウソウ族は野蛮に過ぎる、おまえはその象徴のような男かと思ったが、見立てが違ったようだ」
「……黙れ」
「似ているというのが癪か?そういえば、奴は同胞を捨てて我らについた裏切者だったな。今ごろはどこで何をしているのかも知らんが……」
そこでサデンが顔を上げた。妖しく光る一つ目が、ぎょろりと威風の騎士を見据える。
「ちょうどいい。おまえも奴のように、我らとともに来るか?」
「──黙れ!!」
かっと頭に血を上らせたブラックは、激情のままにサデンに斬りかかった。ふたつの刃が仇敵を容赦なく切り刻もうとする。
しかしそれこそがサデンの狙いだったのだ。マスターブラックにまつわることという、カツキの数少ない逆鱗を見事に狙い撃ってみせた。まるで先日の彼とヒザシとのやりとりを聞いていたかのように。
「あんなヤツと、俺を一緒にすんじゃねえ……!!」
「気に障ったか?だが事実、よく似ている。今はそんな気など微塵もなくとも、いずれおまえは奴と同じ道を辿る」
「うるせぇんだよクソがぁああ!!」
彼はもはや完全に冷静さを欠いていた。師とよく似ている──幼いころは周囲にそう言われるのを誇らしく思っていたし、ただ能力が高いだけでない、厳しくともあらゆるヒトモノを公平にみられる彼にそこはかとない憧れを抱いてもいた。彼の教えがなければ、自分は粗野で偏った考えに支配された人間に育っていたかもしれない。誰に対しても打ち明けたことのない、秘めたるカツキの卑屈な部分であった。
裏切者のマスターブラック。その事実が彼の心を蝕み、不信感を募らせている。"ひとは裏切るもの"──その想いは他者にのみ向けられたものではない。カツキはいつだって、いつか自分がそうなるのではないかという恐怖と戦ってきた。
「図星を突かれて激昂するか。まだまだ……甘いな」
刹那、サデンの剣がぎらりと光る。はっと我に返ったときにはもう、ブラックは凄まじい衝撃とともに弾き飛ばされていた。
「ぐっ……がぁ……」
「刃の閃きが見えなかったか。冷静さを欠けば、そういうことになる」
「……ッ、」
「やはりおまえは、俺とともに来い。もっと、強くしてやる……」
サデンが何故敵である自分に手を差し伸べるようなまねをするのか、このときのカツキは疑問に思いすらしなかった。敵に手心を加えられているという屈辱と、本質を見抜かれたという畏怖……こんな感情は初めてだった。ドルイドンの多くは己の武威を誇示することしか考えていない。しかしこのサデンという男は、もっと得体の知れない存在のように感じられた。
(俺、は……こんな、ヤツに……)
勝てない──そう思ってしまう自分を、悔しいと感じる余裕もない。迫るサデンの足音を、処刑宣告のように聞いていた。
──刹那、
「バッカやろおぉぉぉ──ッ!!!あきらめるなんておめぇらしくねえぞおぉぉぉ────ッ!!!」
「──ッ!?」
大袈裟でなく、街中に響き渡るほどの大喚声。ブラックもサデンも、思わず耳を塞いでしまうのは致し方のないことで。
声の反響が収まったところで振り向き顔を上げれば、無人のはずの建屋の屋上に仁王立ちする人影があった。氷雪を多分に含んだ鈍色の雲の下でも、燦然と輝く金色の髪。
「!、おまえは──」
「オレはセイン・カミイノ市長、ヒザシもといプレゼント・マイクだ。お初にお目にかかるぜ、ドルイドンの大将さんよォ!」
このときサデンがわずかに身じろぎしたことは、カツキにもヒザシにも気づかれることはなかった。もとよりドルイドンは異形の姿で表情の動きなどはないから、感情を動作や言葉で表す。ゆえにそれがないと、極めて無感動な態度にみえる。
「あんた馬鹿かッ、何最前線まで出てきとんだ!!あんたがくたばったら俺らやこの街の兵士連中のやってきたことがパァなんだぞ!!」
「わかってっけど、居ても立ってもいられなくてよォ!」カカカッと笑ったあと、「……なぁカツキ。オレはあれから三日三晩考えたんだが、やっぱ受け入れらんねーんだわ。アイツが裏切ったなんて」
「……は?」
怒りを通り越して呆気にとられるカツキ。そんなことを言うためにわざわざここまでやって来たというのか?
「ヒトっつーのは、時の流れに揉まれるうち変わっちまう生き物だ。……それでもな、オレはアイツを信じるぜ。アイツは裏切ったりなんかしない」
「……ふざけんな……!だったらあんとき、マスターはどうして俺に剣を向けた!?」
「さあな。でも、そうしなきゃなんねえ事情があったってことなんだろうよ」
"合理的虚偽"──親友の口癖のひとつを、ヒザシは思い起こしていた。ときには仲間さえも欺く、それが使命のために必要ならば。幼くして騎士になった親友は、そういう自分なりの固い信念をもっていた。
「だから、大丈夫。──おめぇも、誰かを裏切ったりなんてしねえよ」
「!、………」
それまでの姦しいものとはまったく異なる、穏やかで、優しい声音。──遠い昔、ヒザシがまだ騎士として集落にあった頃、子供たちによく懐かれていたことを思い出した。そうだ、彼はただ喧しく、むやみに明るいだけの男では決してなかった。いつも周囲の人々に目配りをして、困っている者がいれば誰より寄り添っていたのだ。
事実彼の言葉に、傷ついた心が癒やされるのをカツキは実感していた。悔しいが、師と同年代のこの男には、器においてまだまだ及ばない。それは認めざるをえない。
(だとしても、)
「実力は……俺が上だ……!」
マントを翻して、威風の騎士は立ち上がった。鎧と兜に全身を覆っていても、その一挙一投足に覇気が漲っているのが伝わってくる。サデンは喉を鳴らした。
「ならばその力、試してやる。──来い」
「試すだけでてめェは終わる……!──メラメラソウル!!」
『紅蓮の劫火!ディメボルケーノ!!』
リュウソウカリバーの刀身が赤熱する。それと同時に、ブラックは地を蹴って走り出した。
「────、」
「アルティメットォ、ディーノスラァァッシュ!!!」
剣を構えて防御姿勢をとるサデンに対し、刃が振り下ろされた。刹那、凄まじい閃光が辺り一面に振りまかれる。そのあまりの眩さに、ヒザシは思わず目を細めた。
程なくして、その場の全貌が明らかとなった。
「………」
「ッ、やるな……それが伝説の剣と、おまえ自身の力というわけか」
巨大マイナソーすらも消滅させるほどの一撃を、サデンは耐えきった。むろん直撃をそのまま受けたわけではない。持ち前の剣捌きでエネルギーの流れを変えることで、自らへのダメージを最小限のものとしたのだ。
「見事だ。ならば、
「!」
サデンが取り出した小瓶のような何か──それはプリシャスが宇宙恐竜を保管していたのと同じものだった。よもやと思ったのもつかの間、彼はそれを路地の彼方へと投げつける。
がしゃんと何かが砕ける音。そして、
「ウオォォォォォ!!!」
咆哮とともに現れたのは、アイスブルーの澄んだ皮膚をもつ巨人だった。筋骨隆々の身体に、白く濁った双眸が獣性を明らかにしている。
「ヨトゥンマイナソー。かつて古代のリュウソウ族の戦士が生み出したものだ、既に完全体に至っている」
「……!」
「おまえたちに、止められるかな」
そう告げると、サデンはす、と後退して建物の陰の中へと入っていく。黒い体色はあっという間に闇に溶け込んでしまった。
「待てやクソが!!……ッ、」
今まででいちばん不気味かつ腹立たしいドルイドン。できるならここで始末してしまいたかったが、あの巨大マイナソーは既にこちらを標的と見定めている。
「──かっちゃん!」
「カツキ!」
と、そこにようやく仲間たちが駆けつけてきた。すかさず「遅ぇ!!」と威嚇してしまうのはもう、反射としか言いようがない。仲間たちもそんな反応には慣れっこである。一緒にくっついてきたヒトシだけは引いているが。
「……こいついつもこんななのか?」
「いつもこんなだ!」
「そうか……大変だな。──それにしても、」ヒトシの目がぎょろっと上司の中の上司に向けられる。「何やってんです、市長」
「へへへ、ちょいと兵士鼓舞にな。でもあんなん出てきちまったし、もう戻るわ。リュウソウジャー、あと任せていいか?」
「とっとと失せろや」
「かっちゃん!!……敵がまだどこかに身を潜めてるかもしれません、お気をつけて」
「わかってんよ。じゃ、頼むな」
「……はぁ、護衛します」
彼らが後退していき、戦場に残るのは騎士と魔獣のみ。──いや、ここに新たな力持つ者たちが現れる。
「ピーたん、出番だ!」
「──もういるよォ!!」
早速飛来したのは、騎士竜プテラードン……ではなく、彼がティラミーゴと合体した姿のプティラミーゴだった。
「皆、目を開き空を見よ!」「見るティラ!」
「久々にオイラたちも出番だぜ!」
プティラミーゴの上に乗っていた騎士竜パキガルーが、躊躇なく地上へ飛び降りてくる。そこからさらにチビガルーが飛び出し、先手必勝とばかりにヨトゥンマイナソーを殴りつけた。
「パキガルー!」
「ってことは、もしかして──」
「おうよ!見せてやるぜ、オレたちのフュージョン!」
まだ見ぬ合体──その可能性を確信し、スリーナイツがそれぞれの持つソウルを掲げた。
──竜装合体!
プティラミーゴの身体が大胆にぐりんと回転し、ティラミーゴの頭部を覗く大部分をプテラードンによって構成された上半身を形作る。さらにその両拳にパキガルーが納まり、新たなるキシリュウオーが顕現した。
その名も、
「キシリュウオー、ジェット!!」
騎士たちを収容したキシリュウオージェットは、上空からヨトゥンマイナソーに襲いかかった。拳を叩きつけ、相手が悶えている隙に高速で離脱する。プテラードンのもつ飛行速度はまったく衰えていない。
「うおお速ぇぜ、キシリュウオージェット!」
「ハハハハッ、まだまだこんなもんじゃないぜぇ!!」
プテラードンの──調子に乗りやすい──性格が色濃く出ているのか、ぐるんと旋回してはさらにスピードを上げ攻めかかるキシリュウオージェット。捉えようと右往左往するヨトゥンマイナソーだが、鈍重さゆえか掠りもしない。いくら完全体のマイナソーといえど、空の王者にはかなわないか。
そう思われた矢先、ヨトゥンマイナソーは思いもよらぬ行動に出た。手近な家屋を巨大な手で掴むと、根元からごそっと抜き取ってしまったのだ。
「な……!?」
呆気にとられるリュウソウジャーを尻目に、マイナソーは獲得した家屋を両手で捏ねはじめた。石造りの強靭な建造物が形を歪められていく。やがてそれは丸々として表面は滑らかな、球状のオブジェクトと化してしまった。
「ウヌゥ……ヌウゥゥゥゥン!!」
そして──投げつけてきた。
「うわあぁっ!?」
慌てて回避するキシリュウオージェットだが、大きく態勢を崩してしまう。そこを狙ってさらにもう一発。今度は翼を掠め、ジェットは大きく吹き飛ばされた。
「ッ、なんてヤツだ……!」
「あんなの、直撃受けまくったらあかんで……!」
「それもそうだけど、街が──!」
ヨトゥンマイナソーの周囲には既に空洞ができつつある。ひとつ家を引き抜かれるたび、ひとつの家族が帰る家を失うのだ。戦後処理の中で行政がなんとかするのだろうが、ただでさえ疲弊しているこの街にこれ以上の負担はかけたくなかった。
「捨て身でいい、一気にブチ込め!」
「!、カツキ!」
ブラックの叫びに、皆の気持ちがひとつに纏まっていく。戦い勝つだけが騎士ではない。たとえどんな無理であっても、それが人々を守ることに繋がるなら──
「──押し、通すッ!!」
キシリュウオージェットは反転し、地面すれすれの低空飛行でヨトゥンマイナソーへの突撃を開始した。
「ヌウゥゥゥゥン!!」
マイナソーはなおも建物から球体をつくっては投げつけてくる。とにかくスピード重視で駆け抜けている中、回避行動は最小限だ。時折翼や身体の一部を掠め、ティラミーゴたちのうめく声が体内に響く。
「うおぉぉぉぉぉ────ッ!!!」
それでもと六人が、ティラミーゴが、プテラードンが、パキガルーが叫ぶ。すべては、守護者の使命を果たすために。
そしてついに、竜神は巨人に肉薄した。
「────、」
「キシリュウオー、ブリザードインフェルノ!!!」
右手に氷雪、左手に火炎を纏い──その両方を、一挙に突き出す!
「グガアァァッ!!?」
苦悶の声をあげながら後方へ吹き飛ばされるマイナソー。しかしその頑丈な身体は未だ崩壊へは至っていない。まだ終わりではないのだ、お互いに。
「トドメだ!」
「行けぇチビ公!!」
「チビガルーだあぁ──ッ!!」
叫びながら飛び出したチビガルーが、弾丸のごとく加速しながら拳を炸裂させた。
「!!!!!」
心臓部にそれを浴びたヨトゥンマイナソーは、くぐもった断末魔とともに爆発四散したのだった──
*
果たして、街を包囲していた軍勢は壊滅した。ようやく取り戻した平和。しかしまだ、すべてが終わったわけではない。
それでもこの勝利が、セイン・カミイノに希望の燈火を灯したことは確かだった。
「やっぱり、これほど達成感のあることはない。何十年旅をしていても、いつだってそう思うよ」
喜びあう街の人々の姿を見つめながら、イズクがつぶやく。それはリュウソウジャーの誰しもが共有する想いだった。──"彼"とて、例外ではなくて。
「カ〜ツキ」
「!」
ぼうっとしていたカツキの肩に、エイジロウが腕を回した。
「おめェのおかげで勝てたよ。あんがとな!」
「……けっ」鼻を鳴らしつつ、「たりめーだわ。てめェらまとめて、俺についてこいや」
「!、わぁお……」
不遜なその言葉、不器用な彼らしい。仲間たちは皆、そう思った。
「……いい仲間ができたじゃねえか、カツキ」
ヒザシもまた、それを感じとっていたのだった。
つづく
「キミたちに是非、僕主催の劇団に参加してほしいんだ☆」
「お、俺たちが!?」
「どこかで途轍もないエンターテインメントがはじまろうとしている予感……!」
次回「キラキラ☆大怪獣バトル」
「これが本当のエンターテインメントだ!」
今日の敵<ヴィラン>
ヨトゥンマイナソー
分類/ジャイアント属ヨトゥン
身長/54.0m
体重/9900t
経験値/800
シークレット/北方の伝説上の巨人を模したと思われるマイナソー。外見通り凄まじい腕力を誇り、徒手空拳のほか投石などを武器にする。また建物などのオブジェクトを丸め込み、投げやすい球状に変えてしまう力まで持っているぞ!
ひと言メモbyクレオン:リュウソウ族から自然発生?したっていうマイナソーちゃん!完全体ってことは……うわぁお。