【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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45.ブルー・ピリオド 2/3

 

 ぴちゃん、と、水滴の滴る音が鼓膜に響く。

 何度もそれが繰り返されるうちに、少年たちの意識はゆっくり覚醒へと向かっていった。

 

「……ん……」

 

──ここは、どこだ?

 

 市松模様の、白と黒の床。城内だろうか?ひとまず立ち上がろうとしたエイジロウだったが、身体の自由がきかないことにそこで気づいた。

 見下ろせば、椅子に座らされた状態で、胴体を鉄鎖でぐるぐる巻きにされていて。

 

「……よーやっと起きたかよ、クソ髪」

「!、カツキ……皆!」

 

 チッと舌打ちするカツキ、険しい表情を浮かべる仲間たち。皆揃って、エイジロウと同じ状態にあった。

 

「ンン〜、ようやくお目覚めかい?こんな状態でぐっすり眠れるなんて、さすがはリュウソウジャーと言うべきかな?」

「ッ、ワイズルー……!」

 

 ワイズルーだけではない、その隣には仮面の男──ロキマイナソーが控えている。いったい、何を始めるつもりなのか。殺そうというなら、目覚める前に息の根を止めることだってできたはずだ。

 

「キミたちには、これより私の用意したステージにて踊ってもらうでショータァイム!!」

「ステージだと……!?」

「ふざけるな!これ以上、誰がおまえなんかに!」

 

 怒りを露わにされても、ワイズルーはどこ吹く風だ。彼の頭にはもはや、己の図った通りにステージを運営することしかありえない。

 

「記念すべきファーストステージはぁ──」

「ドゥルルルルルル……」

「ンン〜……──クイ〜〜ズ!!」

「ハァ!?」

 

 呆気にとられたあと、口々に罵声を浴びせるリュウソウジャー一行。しかし、

 

「シャラ〜ップ!!静粛にできない坊やは……こうだっ!」

「ショータァイム!」

 

 ロキマイナソーの仮面がずれ、醜悪な素顔が覗く。その目から発せられた虹色の光が襲いかかったのは、カツキだった。

 

「がぁああ──っ!!?」

「カツキっ!?」

 

 苦悶は一瞬だった。その四肢がみるみるうちに縮小してゆき、彼は布でできたような手のひらサイズのオブジェクトへと変わってしまったのだ。

 

「こ、これって……!」

「……ぬいぐるみだよ。都市だと子供の玩具として売ってる──っ!」

 

 それだけにはとどまらなかった。ぬいぐるみと化したカツキは独りでに飛んでいき、ロキマイナソーの傍らにあるシェルフへとどめ置かれることとなった。

 

「おまえ……!返せよっ、かっちゃんを返せ!!」

「Ohコワ……アナタ二重人格?」

「ショータァイム……」

「ゴホン、オホン!……まあ良い。返してほしければ、我がステージを見事完遂するでショータァイム!!」

「ッ、ならば俺が相手だ!」テンヤが名乗り出る。「頭に詰め込んだ知識ならば、誰にも負けない自信がある……!」

「確かに……テンヤくんなら」

「っし、頼むぜテンヤ!」

 

 

「では第一問!デデン!!」

「……ッ、」

 

「貴様らリュウソウジャーが倒したドルイドンは何体でしょう?」

「な……そういうタイプのクイズか!?」

「そういうタイプのクイズなのだ!回答期限は30秒後、プリーズ!」

「ぬう……!」

 

 文句をつけていてもいたずらに時間を浪費するだけだ。テンヤが考え込むのに合わせて、エイジロウたちも記憶を掘り起こしはじめた。

 

「えっと、倒したドルイドンっていうと……」

「タンクジョウにガチレウスだろ?ゾラとウデン……あとなんだっけ、北に来てから倒したあいつ……」

「シグルトだったか。……トーヤ兄ィ、元気にしてるかな」

 

 奔放なショートの長兄のことはひとまず置いておくとして。

 

「その五体で全部、か?」

「いや……昔オセオンで、ロディの助けを借りて倒したヤツがいる。そいつを入れれば──」

 

 一同が答にたどり着くのと、テンヤが声を張り上げるのが同時だった。

 

「──六体だ!」

「ンンンン〜〜……」

 

「正☆解!」

「ピンポンピンポンピンポン〜!」

 

 無駄に息があっているワイズルーとロキマイナソー。宿主とマイナソーは被食者と捕食者に近い関係性なのだが、案の定彼らはそんなことお構いなしのようだった。

 

「流石にイーズィーすぎたカナ?これは小手調べとして、続いてぇ〜……第二問!」

 

「この中で、キシリュウオーに倒されていないマイナソーはどれでしょう!?」

 

 ワイズルーたちの前に、複数の既視感あるマイナソーの姿が現れる。思わず身構える一同だったが、それらは微動だにせず、よく見れば身体が透き通っている。幻影の類のようだ。

 

「ぬぅ……!確かに見たことのあるマイナソーたちだが……!」

 

 テンヤは唸った。こう言ってはなんだが、倒したマイナソーは過去の存在である。倒した直後ならともかく、今となってはすぐに思い出せないのも無理はない。

 しかし、

 

(落ち着けテンヤ……。マイナソーとの戦闘に関してその能力の分析や戦い方についての反省など、幾度となく繰り返してきたことではないか。それを改めて思い起こせば……!)

 

 記憶を辿りに辿れば、いつどのように戦ったマイナソーであったかが見えてくる。当然、巨大化した際にどのナイトロボで戦ったかも。

 

「!、わかったぞ!」手を叩き、「左から二番目のマイナソーだ!!」

「!?」

 

 左から二番目──ジンマイナソーが頭を抱えて悶えている。「ガーン!!」という擬音が聞こえてきそうな勢いだ。

 

「ンン〜、答はァァ……どうだっけ……?」

「……ピンポン〜!!」

「あっ……だそうです」

「いやあんたもわかってなかったんかい!!」

「でもすげぇぜ、テンヤ!」

「本当に……!あのマイナソーはキシリュウネプチューンミルニードルが倒したんだ、ショートくん&モサレックスのスマートさとかっちゃん&ミルニードルのえげつな……ゴホン、パワフルさが融合した超カッコイイ形態で、特に金と黒の色味の良さはもう──」

「……テンヤよりおまえ向きだったんじゃねえか、このクイズ」

 

 そんな会話が繰り広げられている間に、いよいよ第三問──ファイナルクエスチョンである。

 

「ファイナル!ファイナル!ファイナルクエスチョンでショータァイム!!」

「ッ、来い!」

 

 なんでも答えてみせる──それほどの気概で臨むテンヤに対し、ワイズルーが繰り出した質問は、

 

「3万7215日前のこの場所の天気は!?」

「な……!?」

「ハァ!?」

 

 いきなり毛色の違う、それも無体にも程がある問いに、テンヤ以下全員が虚を突かれた。

 

「そんなん、わかるわけないやん!」

「卑怯だぞワイズルー!!」

「ンンンン〜最高の褒め言葉ァ……!そうは言っても天気なんて実質四択!晴れか曇りか雨か雪か!」

「ぬうぅ、おのれ……!」

「フハハハ、ほら、あと30秒だぞ〜?」

 

 考えてもわかるはずがない。せめて日にちから季節を割り出せば絞れそうではあったが、この逼迫した状況ではそんな余裕もなく。

 

「〜〜ッ、雪だ!!」

 

 結局、この地域に来てからいちばん遭遇率の高かった天候を答えるテンヤ。「答はァァ〜〜……」と溜めつつマイナソーの耳打ちを受けるワイズルーは、明らかに自分でも正解がわかっていない。

 

「アァァァァ〜〜……──ざんねえぇぇぇん!!」

「!!?」

「正解は晴れ!雲ひとつない快晴だったんだそうでぇす!!」

「てめっ、ウソつけ!!」

「ウソではなぁい、マイナソーがそう言っている!」

「正解他人任せって、そんなクイズあるかぁ!」

 

 口々の反駁もなんのその、この場の支配者はワイズルーとロキマイナソーなのだ。後者の眼から発せられた光が、テンヤに襲いかかる。

 

「ぐあぁぁぁぁ──っ!?」

「テンヤっ!?」

 

 先ほどのカツキと同様、人形へと変えられてしまうテンヤ。そのまま人形同士並べられる姿は、ファーストステージにおけるリュウソウジャーの敗北を象徴していた。

 

「ッ、くそ……っ」

「クククク、落ち込むことはなァ〜い。まだまだステージは残っているでショータァイム!!」

 

 ロキマイナソーの手をとり、踊りだすワイズルー。訝るのもつかの間、ふたたび景色が変わった。

 

「──うわぁっ!?」

 

 一瞬の浮遊感のあと、背中に衝撃と痛みが襲ってくる。四方を暗闇に包まれた空間に、床と各々の姿だけがぼうっと浮かび上がっている。普通の場所でないことは明らかだった。

 

「どこだ……ここ?」

「!、鎖が外れてる……!」

「ほんまや!」

 

 手足の自由を確かめるのと、目の前にワイズルーとマイナソーが現れるのが同時だった。

 

「ハッハッハッハ、ネクストステージはアクションがあるから☆NA!自由に動ける喜びを噛み締めナサイ、崇め奉りナサ〜イ!」

「ふざけるな……!」

 

 唸るように言い放つと同時に、モサチェンジャーの引き金を引くショート。放たれた弾丸は──果たして、ワイズルーたちの身体をすり抜けてしまった。

 

「何……!?」

「フハハハ、そんなことをしても無駄でショータァイム!!何故なら今貴様らが見ているのは幻影にすぎないから!」

「ショータァイム……!」

 

 ギリリ、と歯を噛みしめる四人。この尋常ではない光景の広がる空間にしても、自分たちがマイナソーの術中に囚われたままであることは明らかで。

 

「……次は、何をさせる気だ?」

 

 眼前の幻影を口惜しげに睨みつけながら、イズクが訊く。結局今は、ワイズルーの設けたステージの上で踊るしかないのだ。その中で活路を見出すよりほかに手はない。

 

「フハハハハ、ダンスだ!」

「ッ、だから、何をして僕らを踊らせるつもりなんだ!?」

「What?いやだから、ダンス……」

「ダンスはわかったから、具体的に言わんかい!」

「いや、そうじゃなくて……」

 

 そんな噛み合わないやりとりを幾度か繰り返したあとで、ワイズルーが「ドゥワアァ〜〜!!」と奇声を発した。

 

「比喩でもなんでもなァ〜い!踊るのだッ、レッツ・ダンシング!」

「それならそうと最初から言え」

「言ってたやろがい!……まあ良い、というわけでふたり組つくってぇ〜〜」

 

 言われるがまま、渋々隣り合っている者同士で組む。エイジロウとショート、オチャコとイズクという組み合わせだ。

 

「組んだな、それではあちらをルックルック!」

 

 ワイズルーが指さした先──皆のちょうど中間地点に、椅子がふたつ置かれている。

 

「今から流れるミューズィックに合わせてダンスをしてイタダキマ〜ス!そしてミューズィックが止まったら、チームのどちらか片方が椅子に座るべし!」

「座れって……ふたつしかねえじゃねーか!」

「!、そうか……。椅子に座れなかったチームが負け、っつーわけだな?」

「ンンン〜……イグザクトリー!」

 

 当然、座れるのはふたり。ならば同じチームで共倒れだけは避けねばならない。

 

「──ショート、おめェに任せた!」

「わかった」

「デクくん、いつも通り疾風怒濤でいっちゃって!」

「ど、怒濤?」

 

 相談が終わったところで、ワイズルーが指をパチンと鳴らす。それと同時に、どこからともなく軽快な音楽が流れはじめた。

 

「さあさあ、レッツ・ダンシング!」

「……ッ、」

 

 意を決して相方と手を繋ぎ、踊り出す。とはいえ、村出身のふたりはこのようなダンスなどまったく経験がなくて。

 

「うお、ちょ、あっ……」

「俺に合わせればいいから」

「お、おう……。上手ぇな、ショート」

 

 「一応、慣れてるからな」と微笑むショート。辺境も辺境の海の王国の、であるとはいえ、彼は王族のひとりなのだ。こういうハイソサエティの技術をひととおり身につけていてもなんらおかしいことはない。しかしこうしてそのスキルを露にしていると、なおさら美形が際立つようである。同性で彼の顔を見慣れているエイジロウですらドキっとしてしまうくらいだから、その場で出逢った令嬢などは皆惚れてしまうのではなかろうか。

 どぎまぎしながらもショートの誘導でいちおう形になっているこちらのペアに対し、イズクとオチャコのペアは酷いものだった。

 

「痛だだだだっ!?オチャコさん足、足踏んでる!!」

「へぁ、あ、ごごごごめん!!?」

 

 謝るオチャコだが、単に踊りの酷さならイズクもまったく負けてはいない。おっとりした風貌に反して大雑把な彼に、細やかな所作を期待するほうが間違いなのだ。薬の調合などは必要に迫られて覚えたまでのことで。

 

「HAHAHAHA、坊やのお遊戯でももう少しましではないか☆NA!?」

「ッ、うるさい!!」

 

 そういうワイズルーとマイナソーはといえば、ひとつひとつの動作がやけに大袈裟なことを除けば意外なほどに無難なものだった。ダンスそのものに熱が入っている様子ではない。

 それもそのはず、この舞踏は手段でしかないのだ。そしてすべては、彼らの掌の上。

 

──不意に、音楽が止まった。

 

「!!」

 

 素早くエイジロウの手を放し、ショートは地面を蹴って椅子へ走った。イズクもコンマ一秒遅れてそれに続こうとしたのだが、

 

「!?、うわぁっ!」

「あっ、デクくん!?」

 

 慣れないステップなぞ踏んでいたせいで脚の神経が混乱していたのだろう、一歩を踏み出したところで盛大につんのめって転んでしまった。イズクを助け起こすべきか自分が役割を代わるか一瞬悩んで──騎士としての使命感から後者をとったオチャコだったが、その間の数秒は致命的だった。

 

「フハハハ、ギブミー!」

「あぁっ!?」

 

 一方の椅子にはショート──もう一方には、既にワイズルーが座っていた。

 

「そんな……っ」

「ッ、ごめん、オチャコさん……っ」

 

 唇を噛みつつ、謝罪の言葉を述べるイズク。しかしそこに根ざす感情も引っくるめて、ロキマイナソーの放つ光が呑み込んでしまう。

 

「ぐぁああああ──ッ!?」

「きゃあぁぁぁぁ──!?」

「イズク、オチャコっ!!」

 

 呼びかけも虚しく、ふたりもまた人形に変えられてしまう。──残されたのは、エイジロウとショートのふたりだけになってしまった。

 

「HAHAHAHA!いよいよ詰みだな、リュウソウジャー!!」

「ッ、まだ俺らがいる!!」

「そうだ。とっとと次へ進ませろ、俺たちは必ず勝つ」

 

 ワイズルーは意地悪くふたりの頭頂から爪先までを見回したが、そこに怯懦を感じ取ることはできなかった。彼らは未だ、この群青の道化師を打ち負かすつもりでいるのだ。

 実際、正面から斬り結べばそれは可能だろう。マックスチェンジャーとリュウソウカリバーの力をもつふたりなら、あるいはプリシャスだって抑え込めるかもしれないのだから。

 しかし、

 

(貴様らに、剣を握る暇さえ与えてはやらん)

 

 一滴の血も流れぬ戦いなら、勝利は我が手にあり。ほくそ笑みながら、ワイズルーは己の分身体たるロキマイナソーの指令を下した。「ショータァイム……!」と応じると同時に、彼はその能力を発動させる。

 果たして光に包まれたエイジロウとショートが次に飛ばされたのは、前者にとって既視感の大いにある街中で。

 

「ここは……カサギヤの街じゃねえか!?」

「カサギヤ?」

「旅を始めてすぐの頃、暫く逗留してた街だ。でも、なんで今ここに……」

 

 北の地からは直線距離はもとより、天然の要害に阻まれて通常の手段では到底辿り着けない場所ではないか。むろん、逆もまた然りだが。

 しかしそのからくりはすぐにわかった。あれだけ賑わっていた街に、一切の人の気配が感じられないのだ。

 

「……現実じゃねえ、ここも幻影の世界か」

「……おう……」

 

「──フハハハ、イグザクトリー!」

 

 またしてもいずこからかワイズルーの声が響く。今度は姿も見えない、文字通り高みの見物と洒落込んでいるのか。

 

「私が貴様らとナイストゥーミーチューした記念すべきこの街をステージに、泣いても笑っても決着をつけるでショータァイム!!」

「ッ、今度は何やらせようってんだ!?」

「HAHAHA……知りたいか〜い?」

「勿体ぶんな……!」

「あらやだこわい……ならばロキマイナソー、アタック!」

 

 パチンと指を鳴らす音が響いた、次の瞬間だった。

 

「────ッ!エイジロウっ!!」

 

 何かが空気を薙ぐ音に反応し、ショートがエイジロウを押し退ける。刹那、彼の二の腕から鮮血が舞った。

 

「ぐっ……!?」

「ショートっ!」

 

 腕を押さえてしゃがみ込むショート。いったい何が?混乱するエイジロウに対し、彼は攻撃の正体を察知していた。

 

「ッ、……狙撃された……!」

「狙撃?銃か?」

「……ああ。多分、また──ッ!」

 

 ショートの言いかけた通り、二射目はすぐに来た。エイジロウは咄嗟に彼の肩を担ぎ、路地裏に連れ込む。その間にも大路には弾丸が降りそそぎ、煉瓦に風穴を開けていた。

 

「くそっ……あんにゃろう、どこから撃ってきてやがんだ」

「ッ、射線が読めねえ……」

 

 結局、ここも敵の掌中であることに変わりはない。弾丸を掻い潜り、敵の居処を掴む──それ以外に、自分たちに勝ち目はないのだ。

 

「ここに潜んでても時間が経つだけだ……俺、捜してくる!」

「ッ、なら俺も……!」

「その怪我で迂闊に動くのは危険だ!ここじゃリュウソウルも使えねえみたいだし……──大丈夫、任せとけって……な?」

 

 諭すように言うと、ショートはあきらめたかのように小さく息をついて、身体から力を抜いた。

 

「っし……!行ってくるぜ!」

 

 意を決し、エイジロウは路地裏から飛び出した。同時に弾丸が四方八方から降りそそいでくる。

 

(なんなんだ、これ……!一体どこから──)

 

 その答に辿り着くのは、エイジロウの頭脳では容易なことではなさそうだった。

 

 

 *

 

 

 

 同じ頃、どこか鬱々とした城内に抜き足差し足で忍び込む小柄な人影があった。

 

「おいコタロ〜……やっぱり外に戻ろうぜー?危ねぇよぉ〜……」

「何言ってるの、いざってときはプテラードンになって戦えるだろ」

「ヤダよぉ……オレ、プリシャス苦手なんだもん……」

 

 ぼやくピーたんを懐に抱きつつ、コタロウは城の奥深くへと進んでいく。ここはプリシャスの本拠地であり、彼やサデンと万が一鉢合わせるようなことがあれば戦う力をもたぬコタロウでは非常に危うい。いかにピーたんが護衛として付いていると言ってもだ。

 しかし今のところ、その気配は微塵も感じられない。あとはワイズルーの居処だが──

 

「……大丈夫、いざというときは私がいる」

「へ?」

「え?」

 

 ピーたんが懐で奇妙な反応を示すものだから、コタロウは不思議そうに目を瞬かせた。

 

「……僕、今なにか言ってた?」

「う、うん〜……たぶん?」

 

 独りでに出でたは声だけではない。身体の奥底から湧き上がってくる何かを、コタロウは感じていた。

 

 

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