【完結】僕のリュウソウアドベンチャー   作:たあたん

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ドンオニタイジン買いました

でかすぎて固定資産税かかりそうだな!!!!!


46.蠢く闇の中で 3/3

 

 イズクとカツキ──疾風と威風の騎士、対する魔人サデンの剣闘は、一進一退を繰り返しながらいつ終わるとも知れず続いていた。

 

「オラアァァァッッ!!」

 

 烈しい咆哮とともに、火炎を纏った刃を振り下ろすリュウソウブラック。大ぶりな攻撃ゆえに隙も多いが、それをフォローするためにグリーンがいる。己のスピードとテクニックにまかせた奇襲への対応にサデンは力を削がれ、ブラックの見せる隙を突くことができない。むしろそれをわかったうえで、挑発のために攻撃を大味にしているようですらあった。

 

「ッ、……なかなかやるな、おまえたち」

「は、今さら気づいたんかぁ!?」

 

 今やふたりの騎士は完全に一体となっていた。劣勢に追い込まれたサデンだが、いっこうに切札を切ろうとはしない。──もとよりそんなもの、ないのではないか?

 ドルイドンであればそんなことはありえない。ありえない、ということは。

 

 イズクが疑念を抱いている間に、相棒は会心の一撃を放とうとしていた。

 

「ボルカニック──ディーノ、スラァァッシュ!!」

 

 赤熱した刃が振り下ろされ、膨大なエネルギーが火炎となって獲物に喰らいつく。サデンの漆黒の身体が紅蓮に呑み込まれていく。紛うことなき、直撃だ。

 これがマイナソー相手ならカツキは勝利を確信していたし、実際その通りになっていただろう。しかし相手はサデン、上級のドルイドンだ。

 

「──ぬうぅぅ……っ!」

 

 一本筋のような何かが閃いたかと思うと、炎の中から漆黒の塊が飛び出してくる。それはリュウソウブラックを仕留めんがために反攻に打って出た、サデンにほかならない。

 だが──繰り返すようだが、強竜装の一撃ではサデンを倒しきれないことはわかっていた。そして、彼らはふたり。

 

「──来いッ、リュウソウカリバー!!」

「!」

 

 そう叫んだのはブラックではなく──イズク、リュウソウグリーンだった。その手に伝説の剣が招来すると同時に、濃紺と黄金に彩られた高貴(ノブレス)の象徴をその身に纏う。打ち合わせるまでもない、完璧なシンクロの結果だ。ブラックが主、グリーンが従という組み合わせならば、最高の武器を使うのは前者だろうという思い込みを利用した。彼がサデンとの初戦においてリュウソウカリバーを使用したことがあるのも、それに拍車をかけていて。

 

「まさか、おまえが──」

「──うおぉぉぉぉぉぉッッ!!」

「いけやデェクゥゥゥ!!!」

 

 運命の決したドルイドンのつぶやきは、ふたりの少年騎士の咆哮によってかき消される。あとわずか、数センチ──刃がその身を貫けば、プリシャスのフォロワーはまたひとりこの世から姿を消すだろう。

 しかし次の瞬間、ノブレスリュウソウグリーンは敵味方双方にとって予想外の行動に打って出た。刃の軌道を上にずらし、サデンの頭部を狙ったのだ。それも、剣を突きだす勢いを可能な限り殺して。

 

 果たして刃先はサデンの顔面を直撃したが、それだけだった。それ以上は深く刺さらず、表面に亀裂を走らせるだけに終わった。半ば反射的に振るわれた相手の剣を避けるため即座にカリバーを引き抜き、後退する。

 当然、そこにはある意味ドルイドン以上の羅刹が待っているわけだが。

 

「クソデクてめェ、わざと外しやがったな!?何考えてんだ、ア゛ァ!!??」

 

 胸ぐらを掴まれ、あまつさえ剣まで向けられる。カツキの怒りはそれほどまでに凄まじいものだった。絆とよぶには雁字搦めの関係を長年続けてきた幼なじみをまっすぐ信頼し、ピリオドを託した結果裏切られた──そう考えるのも無理はない状況なのだ。

 予想はできていたからこそ、イズクは落ち着いていた。

 

「聞いて、かっちゃん!これには理由があるんだ」

「ア゛ァ!!?」

 

 ブラックの憤懣が鎧の外にまで熱を排したときだった。

 

「……成長したと思っていたが、肝心なところは相変わらずだな。おまえたちは」

「……!」

 

 突然サデンが発した言葉に、カツキは言い知れぬものを感じてわずかに冷静さを取り戻した。およそ今までのドルイドンとしての言動とはかけ離れた雰囲気。まるで、古くから彼らを知っているような──

 

「イズク、おまえは発想は良いが、拙速に突っ走りすぎる。それがカツキの神経を逆撫でするとわかっているにもかかわらず、だ」

「……ッ、」

「そしてカツキ、おまえはイズクの一挙一動に感情をかき乱されすぎる。いつ何時でも冷静さを失うな……そう教えたはずだ」

「てめェ、は……」

 

 サデンの足元にばらばらと落ちる、覆面の欠片。顔を覆っていた手が徐ろに退けられ、露わになったのはウデンと同じ醜い化け物の顔──では、なかった。

 

「あ……」

「な……!?」

 

 カツキも……半ばその正体を察知していたイズクでさえも、思わず息を呑んでいた。

 それだけその光景は、衝撃的なものにほかならなかったのだ。

 

「マスター、ブラック……」

 

──敬愛していた師匠の顔が、そこにはあった。

 

 

 *

 

 

 

 幼なじみふたりとは距離を隔てた、しかし同じ洞穴の中にあって、残るリュウソウジャーの総力戦も続いていた。

 

「おぉぉぉぉ──ッ、アブソリュートディーノスラァァッシュ!!」

 

 ヒエヒエソウルの鎧を纏ったリュウソウブルーが、絶対零度におよぶ一撃を振り下ろす。それを身軽に避けたところに、コスモソウルの力を宿したゴールドがアンチエネルギー弾を放った。

 

「ッ、これは……」

 

 直撃は受けていないにもかかわらず、身体の芯から急速に冷えていく感覚。実際に体表の一部が凍りついていくさまを目の当たりにして、プリシャスは初めて当惑を露にした。

 

「コスモ……正確にはクラヤミソウルの生成する弾丸は、場のエネルギーを吸い尽くす」

 

 ゴールドが告げる。──つまり単純な冷却効果のあるヒエヒエソウルによる攻撃と組み合わせれば、たとえ命中をとれずとも標的を凍結に追い込むことができるのだ。尤も極寒の地に身体を慣らしているプリシャスが相手では、そこまで効力は及ばなかったが。

 

「ははっ……少しはやるようになったじゃないか。前は五人がかりでもボクに叩きのめされたっていうのにねぇ?」

「我々はあのときのままではない、絶えず腕を磨いているからな……!」

「前にエイジロウが言っていた。──俺たちは生きて、前に進み続けてるんだってな」

 

 ドルイドンは皆、強力だ。しかしそれが絶対のものであればあるほど、己の地位に胡座をかき、進歩を忘れていく。他のドルイドンを力で従え、駒として利用するプリシャスはその最たるものだったのだ。

 

「ふふふふ、はははは……!」

 

 その事実を突きつけられたプリシャスは、哄笑していた。リュウソウ族のガキどもがわけのわからないことを言っていると、彼の認識はその程度のものだった。

 

「そうかい。じゃあ、()()はどう説明するつもりかな?」

「何?──!」

 

 プリシャスが顎をしゃくった先──彼らの後方。

 

「く、うぅぅ……っ!」

「グハハハハ……!」

 

 嘲うガンジョージによって、ピンクが踏みつけにされていた。

 

「くそぉっ……!オチャコを放しやがれっ!!」

 

 怒れるマックスリュウソウレッドが飛びかかろうとするが、弾丸が無限に降りそそぐ中では容易に近づけない。ガンジョージの秘めたる火力は、その部分だけに限定すればプリシャスすらも遥かに凌ぐのではないかとさえ思われた。

 

「──大したものだろう、ガンジョージは?」

「!!」

 

 そちらに注意を散らしていたブルーとゴールドは、その隙をプリシャスに突かれる形となった。薙刀の一閃を防ぎきれず、揃って吹き飛ばされる。

 

「ッ、………」

「ぐ……っ」

「あははははっ!!」ふたたび、哄笑。「それがキミたちの絆ってやつかい?一見強固に見えて、誰かひとりが崩れりゃ脆いもんさ」

 

「ボクらは違う。ボクのチームはひとりひとりが最強なんだ、誰かが倒れるなんて……あり得ないんだよ……!」

「──ッ、」

 

 プリシャスが高らかに、実質的な勝利宣言を発したときだった。

 

「ふざけんなっ、何がチームや……!!」

 

 苦しみながらも勇ましい声を発したのは言うまでもない紅一点、リュウソウピンクだった。

 

「あんた、ワイズルーもクレオンも、このガンジョージってヤツも……ただ便利な手足として使ってるだけやんか……!」

「?、そうだよ?チームって、そういうものだろう?」

「ちっ……がう!!」

 

 起き上がろうとした彼女はしかし、ガンジョージの力強い踏みつけによりふたたび地に沈んだ。しかしその小さな肢体から、溢れんばかりの闘気は失われてはいない。

 

「チームってのは、みんなで嬉しいこと、悲しいこと、全部共有して……っ、誰かが困ってるときは、助け合える仲間の集まりのことを言うんやっ!!」

 

 自分たちリュウソウジャーは今まで、そうやってここまで戦い抜いてきた──だからこそそう至った結論だけは絶対に正しいのだと、彼女は信じていた。

 

「……ハァ、黙って聞いてれば。話にならないね」やれやれと首を振りつつ、「そういうキミを助けてくれる仲間は、どこにいるのかなァ?」

 

 論理的にはプリシャスの言を認めねばならない状況だった。ブルーとゴールドはふたりがかりでやっと拮抗していて、マックスリュウソウレッドはガンジョージの放つ砲弾の嵐に耐えるのが精一杯でいる。"助け合い"など、程遠い状況であるかのようにみえた。

 しかしプリシャスは、もうひとつの事実を知らずにいた。

 

「ぐう、お、おぉぉぉ……!!」

 

 今まで耐えるばかりだったレッドが──初めて、前進に至ったのだ。

 

「!、何……?」

「オチャコが、こんだけ漢らしいとこ見せてんだ……!男の俺が、止まってられるわけねえだろうが……っ!!」

 

 砲弾が鎧を貫き、エイジロウの肉体に焼けつくような痛みと衝撃を与える。それでも彼は、突撃を中断しようとはしなかった。漢は、一度決めたことは決して曲げないのだ。

 

 ふいに、今は亡き先達の顔を思い起こす。

 

(センパイ……!俺を、みんなを守ってくれ……!)

 

 肉体は傍に亡くとも、(ソウル)はひとつ。リュウソウジャー七人目の、大切な仲間だ。

 その想いにマックスリュウソウルが応えてくれたのかもしれない。──痛みが一瞬、無になった。

 

(今だ!!)

 

「エバーラスティングクロー!!!」

『イケイケソウゥル!!』

 

 目にもとまらぬ勢いで高速回転する鋼の身体。砲弾を浴びてなお衰えぬ劫火の灼熱球が、ガンジョージに直撃した。

 

「GWAAAAAAA!!??」

 

 その堅牢なボディも、紅蓮の龍爪を前にしては型無しというほかなかった。こちらに吹っ飛んでくる──それを察したブルーとゴールド、プリシャスも一斉にその場から飛び退き、哀れガンジョージは壁面に叩きつけられてしまうのだった。

 

「っし……!──オチャコ、大丈夫か!?」

「う、うーん……だいぶあかんかも……」助け起こされつつ、「でも……気合や!」

「よくやったぞ、エイジロウくん!」

「あとは、プリシャスを倒すだけだ」

 

 形勢は間違いなく逆転した。並び立ち四人、対峙するプリシャスはしかし、くつくつと嗤っていた。

 

「調子に乗っていられるのも今この瞬間だけだ。──エラス様がおつくりくださったガンジョージが、その程度でやられるわけないんだからね……!」

「!、エラス……?」

 

 あのプリシャスが敬称をつけて呼ぶ名に違和感を抱いた一同だったが、すぐにそれどころではなくなってしまった。

 

「プリ、シャス……様の、タメニ……!──WRYYYYYYY!!!」

 

 満身創痍だったガンジョージが立ち上がったかと思うと、たちまちその身体が巨大化したのだ。その勢いは頭上の岩盤すらも突き破り、大量の巌をその場に降り注がせる。

 

「フフフ……あとは頼んだよ、ガンジョージ?」

 

 そう言い残し、砂塵に乗じてプリシャスは姿を消してしまう。追おうにも、巨大ガンジョージが完全に行く手を阻んでいた。

 

「ッ、ティラミーゴ!みんな!」

「まかせるティラ!」

 

 動き出す騎士竜たち。この場には騎士竜たちがほぼ勢揃いをしていて、総進撃ともなればかなりの戦力となりうる。しかし──

 

「皆さん!……ピーたん、駄目みたいです」

「何!?」

「駄目って、なんだ」

 

 コタロウの懐でぶるぶる震え続けるピーたんの姿。なるほどまともに戦えそうな状態ではない。プリシャスを目の当たりにしたことでトラウマが喚起されたなどというのは、普段の彼を知ればこそ信じがたいことだったけれど。

 

「……しょうがねえ、ピーたんなしでいくぜ!」

 

 

 彼らが選んだナイトロボはキシリュウオーファイブナイツ。そしてキシリュウネプチューンコスモラプター。

 先制パンチとばかりに前者がアンキローゼショット、後者がクラヤミガンによる同時射撃を実行する。果たして弾丸は命中をとるものの、等身大時にエバーラスティングクローですら貫き通せなかった鎧には効き目が薄かった。

 

「くそっ、やっぱ硬ぇ……!」

「──来るぞ!」

 

 反撃とばかりに、ガンジョージによる砲撃が降りそそぐ。単純だが規格外の破壊力をもつ灼熱の塊は、ナイトロボたちを容赦なく蝕んでいった。

 

「ぐうぅぅぅぅ──ッ!!」

 

 凄まじい衝撃に歯を食いしばって耐える。しかし直接それを浴びる騎士竜たちは堪ったものではない。轟音と砂塵を巻き上げて倒れ伏す二大巨人に、ガンジョージが迫る。

 

「──させんわ!」

 

 そこに、ディメボルケーノが援護に入った。火炎を吐き出しガンジョージを牽制する。さらに相手が怯んだ隙を突いて、パキガルーが跳んだ。

 

「だりゃりゃりゃりゃあ!!」

 

 さらに飛び出したチビガルーが、強かに拳を叩きつけ続ける。流石に堂に入った打撃だが、これもガンジョージに通用しているとは言い難かった。むしろ怒った彼の振るった文字通りのカウンターパンチが運悪く直撃し、吹っ飛ばされた彼はパキガルーに衝突した。

 

「う、うぅぅ……やられちった……」

「しっかりしろ、貴様ら!」

 

 やはり──強い。暴虐を恣にする城塞の擬人化のごときドルイドンを前に、彼らは歯噛みするほかない。

 そしてそれは、黙って見守っていることしかできないコタロウも同じことだった。

 

(このままじゃ、みんなが……)

 

 そんな焦燥に駆られると同時に、懐で震え続ける楕円形の感触を確かめる。気持ちはわかる、よくわかるけれど。

 

「──このままで良いの、ピーたん?」

「……!」

 

 落ち着いた、しかし秘めたる意思の強さを感じさせるコタロウの声に、ピーたんはようやく反応した。

 

「プリシャスが怖いのは仕方ないことだ。でも、それを言い訳にして何もしなかったら……きっと、きみは後悔する」

「う、うぅ……おまえに何がわかるってんだよぉ……!」

「わかるよ、少しだけなら。……現に僕だって、こうしてここで見ていることしかできないのが、つらい」

「!、あ……」

 

 そうだ──唯一ただの人間の子供でしかないコタロウが戦場においてできるのは、仲間たちを見守りその無事を祈ることくらいしかない。エイジロウたちが危機に陥ったとき、どれほど自分にも力があればと思ったことか。

 

(きみだって本当は、みんなを救けたいと思ってるんだろう)

 

 まだ、間に合う。できることはあるはずだ。ピーたんの身体を掲げるようにして、コタロウはその目をじっと見上げた。

 

「お、オレは……」

「ピーたん……!」

「う、ううう……っ」

 

「──プテラードン!!」

「!」

 

 英雄のごとき呼び声に、騎士竜プテラードンの心は奮い立った。

 

 

「──ト、ドメ、ダァ……!!」

「……ッ、」

 

 ガンジョージのもつ砲に、これまでとは比にならないほどのエネルギーが充填されていく。ダメージの蓄積によりまともに身動きがとれないナイトロボの体内で、エイジロウたちは戦慄した。

 

「やべぇ……!あんなもん喰らったら──」

 

 生き埋めでは済まない。ほぼ確実に、この洞穴ごと跡形もなく消滅することになるだろう。絶体絶命の危機、

 

 それを乗り越えうるとすれば、"彼"の存在しかありえない。

 

「そりゃあぁぁぁ──ッ!!」

「!?、ガァッ!」

 

 飛来した氷爪の一撃が、ガンジョージを吹き飛ばした。

 

「!、ヨクリュウオー……!」

『──皆さん、まだ生きてますか?』

「え、その声まさか……」

 

 ヨクリュウオーの体内──コクピットの中にいたのは、コタロウその人だった。リュウソウ族の、騎士竜に選ばれた者しか立ち入ることのできない場所に。

 

「神は言っている……!ここで死ぬ運命ではないと!」

「何それ?」

「カッコいいだろう!──それより皆、新たな合体だ!」

「新たな合体!?」

「キシリュウオーとキシリュウネプチューン、そしてヨクリュウオー……陸海空の力を合わせるんです!」

 

 そしてその瞬間、最大最強のナイトロボが誕生する。

 それを知った彼らに、躊躇う理由などあるはずがなかった。

 

「っし!やってやろうぜコタロウ、みんなっ!!」

 

──竜装合体!!

 

 キシリュウオーを中心とし、その胴体をヨクリュウオーが、四肢をネプチューンの一部が覆っていく。背中では水晶の翼がはためき、その降臨を世界に知らしめた。

 

「見参、」

 

──キングキシリュウオー!!

 

「WRYYYYYYYY!!!」

 

 新たな合体にも怯まない──怯むほどの知能もない?──ガンジョージが、雄叫びとともに砲弾をばら撒き散らす。しかしそれらが命中することはなかった。

 跳躍したキングキシリュウオーはそのまま、ガンジョージが開けた頭上の穴めがけて高く飛翔してしまったのだ。

 

「ナニィ!?」

「────、」

 

 右手のモサレックスヘッドを使って穴をさらに掘り進め──ついにキングキシリュウオーは、山の中腹から飛び出した。そこには緑の木々が生い茂っている。

 

「!、この景色、やっぱり……」

「そこを気にするのはあとだ、エイジロウくん!」

「わーってるって!」

 

 ガンジョージの放つ砲弾は、重力を無視して地上まで追いかけてくる。キングキシリュウオーはそれらを巧みにかわしつつ、雲上まで急上昇していった。

 

「く、雲の上まで来てもうた……!?」

「さぁて、この辺でいいか。──しっかり掴まってろよ、皆の衆!」

「は!?ちょ──」

 

 制止も間に合わないほどの猛烈な勢いで、キングキシリュウオーは急降下を開始した。エイジロウたちはともかく、生身かつ人間のコタロウに耐えきれる反動ではない。

 それでも、

 

「僕なら……大丈夫、です……!」

「!」

 

 歯を食いしばりながらも、コタロウはそれに耐えていた。ならば、躊躇するだけ彼に対する侮辱というもの。

 

「──このまま、突っ込む!」

 

 猛烈な勢いでふたたび風穴へと突撃していくキングキシリュウオー。その身がかろうじて収まるだけの隙間、時折翼が岩壁と掠めて一部が削れるが、その程度のことで勢いが衰えるはずもない。

 

 そして彼らは、ついにガンジョージの目前に躍り出た。彼はふたたびエネルギーの大量充填を行っている真っ最中のようだった。細々とした砲弾ではキングキシリュウオーを止めることなどできないと学習したのだろう。

 しかしもう、遅い。名にふたつの"王"を冠するナイトロボの勝利は、既に確定していた。

 

「「「「「──キングキシリュウオー、ビッグバンエボリューション!!!」」」」」

 

 両腕のティラミーゴとモサレックス、そして胴体のプテラードン──そのすべてがもつありったけのエネルギーを、一挙に放出する。同時にガンジョージも最大級の火砲を放った。ぶつかり合う閃光と閃光。

 その輝きは辺り一帯を覆い尽くし、行き場を失ったエネルギーは風穴を逆流して天まで昇る光の柱が生まれた。

 

 やがて、それらが収まったとき。

 

「──絶対勝利だ、キングキシリュウオー!!」

「だから、何それ……?」

 

 無傷のキングキシリュウオーが、他の騎士竜たちとともに勝利の雄叫びをあげた。

 

 

 *

 

 

 

 サデンの正体が、マスターブラックだった。受け入れがたい以前に、理解できない事実。ドルイドンの中から人間、というかリュウソウ族が出てくるなど。しかしその風貌はきっちり五十年ぶん歳をとったマスターそのもので。

 

「……どういうことだ、てめェ」

 

 混乱の極みに達した結果、カツキは剣先をマスターブラックに突きつけていた。これまで敵対行動をとっていたという事実がある以上、それ以外にすべきことが思い至らなかったのだ。

 

「かっちゃん……!なんでサデンの中から出てきたのかはわ、わかんないけどっ、相手はマスターだ!これ以上はもう──」

「こんな小汚ぇおっさん、俺のマスターじゃねえ!!」

「むっ……」

 

 マスターブラック……を名乗る男は一瞬なんともいえない表情を浮かべたあと、取り繕うように顎の無精髭を撫でた。もとより身だしなみに頓着しない性質ではあったが、長らくドルイドンに化けていたのだ。

 

「まったく……口の悪さはさらに磨きがかかっちまったな。──まぁいい、話はほかの連中に追いついてからだ」

「ッ、勝手にハナシ終わらせてんじゃねえ!!」

「……カツキ、」

 

 嗜めるような物言いに、カツキは思わず口をつぐんだ。時が経ってもなお、かつての面影を想起させるその声音。

 

「時間がないんだ。……おまえたちがリュウソウカリバーを手にしたそのときから、既にカウントダウンは始まっていた」

「どういうこと、ですか?」

「………」

 

「"ドルイドンの母"──エラスが、完全復活を遂げようとしている」

 

 

──蠢く闇の中で、何かが鼓動を刻みはじめていた。

 

 

 つづく

 

 

 





「……誰、そのオジサン?」
「あなたは……!師匠失格だ!!」
「エラスはこの星と完全に一体化している」
「キミのことは信じてる、サデン」

次回「帰還」

「信じとったで、エイジロウ!」


今日の敵‹ヴィラン›

ガンジョージ
分類/ドルイドン族ナイト級
身長/192cm〜47.0m
体重/288kg〜705.6t
経験値/489
シークレット/"エラス"が新たに生み出した、頑丈な装甲と高火力が武器のドルイドン。幼児のようなたどたどしい口調とは裏腹に、プリシャスに対し高い忠誠心をもつ。リュウソウジャーとは一度きりの対決だったが、非常に厄介な強敵だったぞ!


※ひと言メモbyクレオンは、クレオンが行方不明につきおやすみします。
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