山を駆け下りた一行。そこに広がっていた光景は、およそ一年ぶりに目の当たりにするものだった。
「やっぱり……」
「……うむ」
故郷の村──の、跡地。綺麗に抉り取られたような巨大なクレーターは、村が人智を越えた力によっていずこかへ消え去ってしまったことを示すものだった。
「話には聞いてたが……こんなことになってたんだな」
「……おう。でもこれで、全部もとに戻せる」
全部……むろん、永遠に失われたもの以外は。
すぅ、と深呼吸をして──エイジロウは、リュウソウカリバーを召喚した。飛来する"伝説の剣"。
「いくぞ。テンヤ、オチャコ」
「……うむっ」
「うん……!」
ふたりの声音にも、緊張その他様々な感情が入り混じっている。旅立ったその瞬間から、夢にまで見た帰還のとき。それはもう、彼らの手の中にある。
「……っし!」
片頬を叩き、エイジロウは意を決したように一歩踏み出した──
──のだが、
「!?、ぐっ、あ……がぁ……っ!!」
「!?」
「マスター!!?」
突如苦しみ出し、その場に蹲るショータ。真っ先に駆け寄ったのは意外というべきかやはりというべきかカツキ、次いでイズクだった。
「どうした!?おい!!」
「ッ、プリシャス……だ……っ」
「プリシャスに何かされたんですか!?」
胸元を掻き抱くように押さえつつ……息も絶え絶えで、ショータは応えた。
「俺は……プリシャスに心臓を奪われている……!」
「心臓、って……」
「奴は自分のチームをつくるとき、臣下たちが決して裏切れないよう心臓を奪うんだ……っ」
「あいつにそんな力が……」
「なんてヤツだ……!」
心臓の主が死ねば、それを囚えている符も消失する──つまり、符が手元にあるままなら間違いなく生きているということ。
リュウソウジャーに倒されたわけではないにもかかわらずいつまでも戻らないサデンに痺れを切らして、プリシャスが強硬手段に出たのだと推測できた。
「まずい……!我々はともかく、イズクくんとカツキくんが合流している状態で奴に見つかれば──」
「ッ、村は……お預けか……」
悔しいが、仕方ない。リュウソウカリバーさえあればいつでももとに戻せる村とショータの命、秤にかけるまでもない。
「ッ、おそらく、プリシャスはこの近辺にとどまっているはずだ……」
「ア゛?ンでそう言い切れンだよ」
「簡単な、話だ。……エラスがいるのは、この下だからな」
「え……!?」
エイジロウたちが生まれ育った地の底に、エラスが?
「じゃあ、二百年前マスターグリーンが破壊した村っていうのは……」
「……この村だ。不幸中の幸い、彼は最後の理性の欠片を振り絞って、住人たちの殆どを逃していたからな。再建も速かった……俺やこいつらの親のように、新天地を求めて旅立った者もいたが……」
「……知らなかった」
エイジロウたちが生まれる少し──リュウソウ族基準で、ではあるが──前の出来事であるにもかかわらず、大人たちはみな過去の惨禍に口を噤んでいたということか。「知らぬが仏という言葉もあるが、」と、テンヤが言葉に反して納得しがたい様子でつぶやいた。
「ッ、とにかく、俺はサデンになっていったん奴のもとへ戻る……っ」立ち上がるショータ。「まだ、斃れるわけにはいかない……っ」
「マスター……」
それにしたってまず、プリシャスの居処を掴まなければ。しかしそうしてショータがかのドルイドンの陣営に戻ったところで、その後の明確な展望があるわけではない。プリシャスの寝首を掻けるなら、とうにそうしているのだから。
せっかくふたたびこの地に立ったにもかかわらず、立ち尽くすしかない一同。──そのとき、不意にエイジロウがつぶやいた。
「……心臓を、取り戻せればいいんだよな」
「!」
「──なんとかなるかもしれねえ」
*
村の跡地近郊の谷間に、プリシャスは前線基地の構築を開始していた。周囲でドルン兵の群れが忙しく作業をしている中、彼はいの一番に設置させた玉座にふんぞり返っているだけだったが。
「さて、と。……いい加減、サデンも戻ってくるかな」
掌の上で符を弄びながら、つぶやく。先ほどまでぐしゃりと握りつぶしてみたり、千切れる寸前まで引き伸ばしてみたりと、散々に扱っていたのだ。
と、噂をすればというべきか。やや覚束ない足取りで、符に囚われた心臓の持ち主が帰ってきた。
「……プリシャス様、」
「ああサデン、無事だったんだね。全然音沙汰がないから、心配したよ」
「申し訳ありません。リュウソウブラックとグリーンを取り逃がしてしまい、追撃を行っている最中でした」
「そう。ま、いいよ。ガンジョージは死んでしまったけど……後釜はいくらでも生まれてくる。リュウソウジャーの連中もいずれ、疲れ果ててボクの軍門に下るだろう」
「………」
忠実なサデンが何も反応しないことに、プリシャスは違和感すら覚えなかった。エラスの力を恃みとする彼にとってはもう、ひとつひとつの駒の動きなど些末なことでしかない。
「ボクは今、すごく幸せなんだ。心臓なんて奪らなくても、ボクの忠実なしもべになってくれる仲間をエラス様が創ってくださる。──ごめんね、サデン?キミの心臓を奪ってしまって……」
「……いえ」
「君は優秀な部下だ、力もある。でもね、力があるとみんな、欲が出てくるじゃないか。君のことは信じてるけど、裏切らないとも限らない」
子供でもわかるくらい、明らかな矛盾を孕んだ発言だった。思わず"サデン"が、口を挟んでしまうほどには。
「……それは、信じてるとは言わないですよ」
「……何?」プリシャスの手がぴくりと反応する。「ボクに口答えするの?」
「!、いえ、そういうわけでは……」
慌てて弁解しようとするサデンだったが、プリシャスの機嫌を損ねてしまった以上何もかも無駄なことだった。
「!?、がっ、ぐぁ、アア……!」
符をぐしゃりと握りつぶす。激痛に襲われたサデンは悶え苦しみ、その場をのたうち回った。そんな配下の姿を認めて、プリシャスは愉悦を覚えた。長らく忠実に仕えてきたサデンだが、内心不満を溜め込んでいることくらいは想像がついた。それを真正面から叩き潰す行為だった。
しかしその性情がゆえ、プリシャスは足を掬われることとなったのだ。
「──おらぁッ!!」
不意に身を起こしたサデンが、掛け声とともに剣を一閃する。何が起こったかもわからぬうちに、プリシャスは右腕を切断されていた。
「な……ぐあぁぁぁぁぁッ!!??」
与えたものの何倍もの痛みを返されて、わけもわからずプリシャスは悲鳴をあげる。力を失った右手だったものからこぼれ落ちた符は、サデンの手に渡った。
「ば、かな……心臓を握られて、動けるはずが……!?」
「──握られてねえもんよ、最初っから」
「!!?」
サデンらしからぬ口調とともに、頸が外される。露わになったのは、
「リュウソウレッド……!?」
「……へへっ」
してやったりの笑みを浮かべると同時に、サデン……もといエイジロウはハヤソウルをリュウソウケンに装填した。「じゃーな!」と言い捨て、慌てて行く手を阻もうとするドルン兵たちを強引に突破して離脱していく。その間わずか二、三秒。
「ッ、オォォォォォ────ッ!!」
憤懣のままに、プリシャスは雄叫びをあげる。狡知においてもすぐれていると自負する彼にとって敵、それも切り込み隊長的な存在である勇猛の騎士に出し抜かれるとは思ってもみなかったのだ。
「……ッ、ハァ、ハァ……」
腕を失ったことは大した痛手ではない、こんなものはすぐに生えてくるからだ。それでも怒りに打ち震えていると、背後から無機質な声がかかった。
「プリシャス様、奴らはこの俺が」
「……そう。なら任せるよ──」
「──ガンジョージ、」
──斃れたはずのガンジョージが、そこにいた。
*
その頃、エイジロウを除くリュウソウジャーの面々とショータは峡谷の狭間に身を潜めていた。
「エイジロウくん、大丈夫かなぁ……?」
「予定通りなら、そろそろ戻ってくる頃合いだが……」
気遣わしげに西の方角を見遣るテンヤとオチャコ。むろんエイジロウを信じていないわけではないが、相手はプリシャスだ。戻らないサデンを不審に思い、なんらかの罠を仕掛けて待ち構えている──などということも、考えられる。
「エイジロウくんなら大丈夫だよ、きっと。──ね、かっちゃん?」
「フン……あのバカ、無理でも押し通しやがるからな」
「確かに」と、皆が同意する。自ずとほぐれていく雰囲気を感じとって、ショータは目を丸くした。イズクはともかく、カツキが他者の長所を──やや婉曲的な物言いとはいえ──認めるような発言をするとは思わなかったからだ。
「……五十年の重みというやつか、それとも──」
「ア゛?なんか言ったかよ、
「……おまえね……まあ、仕方がないか」
カツキなりに事実を受け止め、ショータを改めて受け入れようとしている真っ最中なのだ。昔から繊細でなおかつ潔癖なところのあった少年の成長を、改めて感じる。
もう子供扱いはできない。師匠だとか弟子だとかではなく、ひとりの人間として彼に向き合わなければ。
「……すまなかった、カツキ」
「──!」
ショータの発した謝罪に、場が一瞬静まり返った。
「……本当は、顔を合わせた時点で言うべきだったんだろう。だが……正直に言えば、俺はイズクに責められるまでは悪いことをしたとは思っていなかった。未熟なおまえたちをプリシャスと遭遇させるような愚を犯さなかったのだから、俺は正しかったんだ、と」
「………」
「俺は、ひとの気持ちというものを蔑ろにしてしまっていた。……イズクの言う通り、マスター失格だな」
「だから……この戦いが終わったら、おまえが俺に教えてくれ。おまえが見出した、騎士のあり方を」
五十年の想いを込めた、ショータの言葉。──それに寄り添うように、漆黒の竜が彼に寄り添った。
「そうか……そうだったな。おまえにも苦労をかけた、ミルニードル」
「……けっ」鼻を鳴らすカツキ。「ンな悟ったよーなことばっか言ってっと、あんた死ぬぞ」
「ちゃんと生き残れや、ハナシはそっからだ」
「……そうだな」
どこか刺々しいままだった師弟の間の空気。未だぎこちなさは残るけれど……それもきっと、遠くない未来に解消されるだろう。生きてさえいれば。
──と、そのときだった。
「うぅおぉぉぉぉぉぉ────ッ!!??」
「!?」
野太い悲鳴が唐突に響き渡る。何事かと声の方向を見遣った一同が目の当たりにしたのは、猛烈な勢いでこちらへ向かってくるエイジロウの姿。
「とめっ、誰か止めてくれえぇぇぇぇっ!!?」
「エイジロウくん、よもや暴走してしまっているのか!?」
「そのまんまの意味だな」
「あんのクソ髪ィ……──ッ、ヤワラカソウル!」
久々にクソ髪呼ばわりしつつ、真っ先に対応してくれたのはカツキだった。地面がぶにょんと沈み込み、その反動でエイジロウの身体が天高く舞い上がる。
「あ、」
「お、」
皆の視線がおもちゃを前にした猫のように忙しく動く。下から上、また下。程なくエイジロウは、ふかふかになった地面に叩きつけられてその激走を終えた。
「い゛っ、ててててて……っ」
「え、エイジロウくん大丈夫!?」
犯人?を除き、駆け寄っていく仲間たち。助け起こされたエイジロウは土埃まみれにはなっていたが、幸い怪我はないようだった。
「まったく、何事かと思ったぞ!?」
「へへへ……悪ィ悪ィ。おめェとかイズクみてーにはやっぱ扱えねえや……」ぼやきつつ、「っとと……マスターブラック、ばっちり取り戻してきたぜ、あんたの心臓!」
「!、……感謝する」
エイジロウから符を受け取り、己の胸元に当てるショータ。と、そこから何か光るものが吸い込まれてゆき、程なく符は燃え尽きるように消滅していった。
「これで、呪縛は消えたか」
「っし、心おきなくプリシャスをブッ飛ばす!」
その言葉をきっかけに、皆の思考がふたたび戦闘モードに切り替わる──刹那、
「これ以上、プリシャス様の邪魔立てはさせん……!」
「!」
響くいかめしい声。それと同時に空中から降下してきた大柄な影は、着地するやその重量のままに激しい揺れを辺り一帯にもたらした。
そうして現れた姿は、一行にとって衝撃的なもので。
「!、おまえは……ガンジョージ!?」
「どういうことだ、確かに俺たちが倒したはず……」
「──エラスの仕業だ」
「!」
背後からショータの冷静な、それでいて焦燥を滲ませた声が響く。
「エラスはその体内にインプットした地球の記憶を基に、あらゆるドルイドンを生み出すことができる。……まして同一個体なら、創造も容易いだろう」
「ッ、それじゃあ……」
エラスを倒さない限り、ドルイドンは無限に生まれてくる。しかしエラスは不可殺の存在で──
「何をごちゃごちゃと喋っている!!」
ガンジョージ……もといガンジョージ・ツヴァイが、一体目よろしく砲弾を解き放つ。いきなりの攻撃に一行は少なからず面食らったが、しかし既に倒した敵なだけあって対処も素早かった。
「させるか!──ギャクソウル!!」
『クルリンパっ!!』
あらゆる事象を"逆転"させる能力をもつギャクソウル。その作用を受けた砲弾が、くるりと向きを変えてガンジョージ・ツヴァイに襲いかかった。
「何だと──グハァッ!!??」
呆気なく爆破に呑み込まれる。むろんそのボディは、己の砲弾が内側から誘爆するようなことがあっても耐えうるだけの頑丈性を誇る。この程度で倒れるガンジョージ・ツヴァイではなかった。
「〜〜ッ、おのれェ!!かかれドルン兵ども!!」
「ドルドルーッ!!」
率いてきた手勢をけしかけるガンジョージ・ツヴァイ。口調もそうだが、他者を使う程度の知能は身についたというところか。だが根っこが変わらないならば、恐れる必要はない。
「ッ、」
「マスターブラック、ここは僕らに任せてください!」
剣を抜こうとするショータを、イズクがそう言って押しとどめた。カツキもそれに続く。
「五十年っつーのはでけえんだっつーこと、あんたに見せてやる」
「……ふ、相変わらず減らず口をたたくな」
シニカルな笑みを浮かべつつ、ショータは頷いた。
「心臓がまだ馴染んでないからな。おまえたちに任せる」
「よし来たっ!──みんな行くぜぇ!!」
「てめェが仕切んな!!」
もはやお約束となったそんなやりとりを皮切りに、六人が一斉に走り出す。ドルン兵たちと斬り結ぶのに、リュウソウメイルを纏うまでもない。
「──勇猛の、騎士ッ!!リュウソウレッドォ!!」
エイジロウが、
「叡智の騎士ッ、リュウソウ……ブルー!!」
テンヤが、
「剛健の騎士!リュウソウ、ピンク……どりゃあっ!!」
オチャコが、
「疾風の、ッ、騎士!リュウソウグリーン!!」
イズクが、
「威風の騎士ィ……!リュウソウブラックゥ、オラァ死ねぇぇ!!!」
カツキが、
「栄光の騎士──リュウソウ、ゴールド!!」
ショートが、剣戟とともに、名乗りをあげていく。
──正義に仕える、気高き魂。
「「「「「「騎士竜戦隊、リュウソウジャー!!」」」」」」
それが遂げられたときにはもう、ドルン兵たちは全滅していたのだった。
「さあ……次はおめェの番だ、ガンジョージ2号!」
「俺はそのようなダサい名前ではないっ、ガンジョージ・ツヴァイだ!」
「知るかボケっ、いくぞてめェらァ!!」
──リュウソウチェンジ!!
『ケ・ボーン!!──リュウ SO COOL!!』
甲高い叫びと笑い声が響き渡り、六人の身体を竜装の鎧が覆う。鮮やかな六色が、青空のもとに立ち並んだ。
「──うおぉぉぉぉぉぉッ!!」
吶喊。すかさず砲門を解き放つガンジョージ・ツヴァイだが、彼が火力にモノをいわせてくることは織り込み済みである。一斉に散開し、着弾を避ける。そして、
「ヒエヒエソウル!!」
「ドッシンソウルっ!」
まずブルーが彼の足元を凍らせ、踏ん張りを封じる。そして打擲の鎧を纏ったピンクが跳躍し、すかさず地面に拳を叩きつけた。たちまち深緑のオーラを纏った衝撃波が伝播し、ガンジョージ・ツヴァイに襲いかかる。
そこに、
「ハヤソウル!」
「久々にこれだァ!──ブットバソウルゥ!!」
強竜装からはどうしても一段劣る──少なくとも純粋な戦闘においては──通常の竜装。しかしながら、使い慣れたそれらを操るテクニックにおいては彼らはリュウソウジャー随一なのだ。
文字通り疾風のごとく駆け抜け、ヒットアンドアウェイの攻撃を仕掛けるグリーン。二次元機動の彼に対してブラックは三次元機動だ。起こる爆破の勢いを利用して縦横無尽に飛び回り、肉薄したところでそれを攻撃に振り向ける。実質彼専用となっている扱いの難しいリュウソウルなだけあり、純粋な破壊力では強竜装にもひけをとらない。
「性懲りもなく化けて出やがって……!もっぺん地獄に帰れやァ!!」
口調の違いからもわかるように、ガンジョージとガンジョージ・ツヴァイは厳密には別個体なのだが、彼にしてみれば些末なことだった。というかそもそも、彼とイズクはもとのガンジョージとは相まみえていないのだが。
そしてツヴァイは、彼らの息もつかせぬ連続攻撃にどうにか耐え続けている。ナイトクラスの地力を砲弾の火力と鎧の頑丈さに全振りしているのだから、よほど規格外の攻撃でない限りは耐えきるのが摂理なのだ。
しかし今となっては、その"規格外"を放てる者たちがここにいる。
『マックス、ケ・ボーン!!──オォォォォ、マァァァッックス!!!』
「来いッ、リュウソウカリバー!!」
左右から迫る、マックスリュウソウレッドとノブレスリュウソウゴールド。業を煮やしたツヴァイはがむしゃらに火砲を放つが、直撃させられなければその進撃を止めることはできない。
「ショートっ!!」
「ああ!、────」
「エバーラスティングディーノスラァァッシュ!!」
「エクストリームダブルディーノスラッシュ!!」
ガンジョージ・ツヴァイを挟み込むようにして、ふたりがすれ違う。それと同時に放たれたのは、互いが己の最大級を出し切る渾身の必殺技であった。
「ガアァァァァ……!?」
苦悶の悲鳴をあげるツヴァイ。分厚いボディには今の攻撃で大きな裂け目ができ、絶えず火花が散っている。
立っていることさえできずに、彼はその場に片膝をついた。
「グ、ウゥゥ……!」
「っし、やったぜ!」
「喜ぶのは早ぇわアホ。あいつ、まだくたばってねえ」
カツキの言う通りだった。満身創痍にまで追い込まれたガンジョージ・ツヴァイは、獣のような唸り声をあげながらもこちらを睨み続けている。その闘志は未だ、ひと擦りの傷さえもついていないように見えた。
「俺は斃れん……!プリシャス様の、ためにも……っ!」
「ッ、プリシャスのためって、そんなにあいつが大事かよ!」
「大事に決まっているッ!!」
「なんで!?」
何故?理由など考えたこともないというか、考える時間がそもそもなかった。何せ彼は、つい数十分前にエラスによって生み出されたばかりなのだから。その足でプリシャスに合流し、命じられるままにリュウソウジャーと戦いに来たというだけだ。
「理由なぞない!俺はプリシャス様のために戦うのだ!」
「……哀れだな、おまえ」
プリシャスに恩義があるとか、その人格や力を信奉しているだとか──そういった理由さえない忠誠は、ただ虚しいだけだ。そしてそんな存在を生み出したエラス、利用するプリシャスに、彼らは改めて怒りを燃やした。
「……生まれてきたおめェに罪はねえかもしれねえ。でも……おめェがそれだけの存在だってんなら、今この場で倒すッ!!」
今度は六人並び立ち、同時に必殺の構えをとる。ボロボロのガンジョージ・ツヴァイの身体では、到底耐えることなどできないだろう。もはや運命は決した──かと、思われた。
しかしディーノ、まで発声したとき、この場にいる何ものをも原因としない地響きが彼らの行動を阻んだ。
「ッ!?」
「なんだ……!?」
この揺れ方は幾度か感知したことがある。──巨大化したマイナソーが、迫ってくるようなケースだ。
「まさか──」
誰ともなくそうつぶやくと同時に、頭上に影が差す。
顔を上げた彼らが目の当たりにしたのは、王冠を被った鎧武者の、ゾンビのなり損ないのような怪人だった。
「マイナソー!?──いや、違う……!」
「また新たなドルイドンか……!」
「──はははははっ、そうだよぉ?」
「!!」
新たに現れた巨大ドルイドンが喋ったのかと思ったが、そうではなかった。ドルイドンの右肩に腰掛ける、こちらは等身大の影。
「!、プリシャス……!」
「あんた、何しに来たん!?」
「何しに?──キミが言ったんじゃないか、リュウソウピンク」
「仲間は、助け合うものなんだろう?」
「……!」
ねっとりとした物言いに、ぞっとする。彼は巨大ドルイドンの肩から躊躇いもなく飛び降りると、ガンジョージ・ツヴァイに合流した。
「大丈夫かい、ガンジョージ?」
「プリシャス、様……。救援、感謝します……!」
「気にすることはないよ、キミは大事な弟だからね。それに──」
「──ボクらの新しい弟……最強の切札、"ヤバソード"の誕生を祝わなくちゃね」
「リュウソウ族……!──滅ボス!!」
その瞳には、ただ怨念のみが宿っていた。