「蒼穹の騎士、リュウソウスカイブルー!」
有翼の竜騎士が、リュウソウジャーはじまりの場所に降臨した。
「う、ウソだろ……?なんで──」
騎士竜たちとも深く関わっていたとはいえ、普通の人間であるはずのコタロウが。
当惑するエイジロウだったが、そういえばとあるできごとを思い出した。かつてはじまりの神殿を訪れたとき、彼が"原初のリュウソウ族"──ヨイチに、コタロウが憑依されたことを。
よもや、ヨイチがまた?一瞬そうも考えたが、彼とは明らかに纏う雰囲気も異なっていて。
周囲の混乱をよそに、コタロウの変身したリュウソウジャー……"リュウソウスカイブルー"は、悠然と動き出した。どこからともなく集ってきたドルン兵たちが、一斉に襲いかかってくる。
対する彼は、剣ももたずに徒手空拳で対応している。真っ先に接近してきた一体に強烈な肘打ちを叩き込み、身体がくの字に折れ曲がったところで顎を打ち貫く。
「ドルゥ……ッ」
断末魔の声をあげたドルン兵が倒れ込もうというところで、素早く長槍を奪い取る。そしてその得物を俊敏に振り回し、残る軍勢を寄せつけない。そして小柄な体躯ゆえ、ドルン兵たちの攻撃はただでさえ命中をとりがたい中で、彼らは一方的に翻弄されるばかりだ。
「す、げぇ……」
コタロウはリュウソウ族の騎士たちの旅路に遅れることなくついてきたような少年だ。知的な容姿が意外に思える程度には身体能力も高い。しかしそれは、あくまで常人の少年の範疇だったはずだ。それが、こんな──
「──リュウソウレッド!!」
「!?」
突然名を呼ばれて、びくっと肩が跳ねる。
「ここは私に任せて、キミはプリシャスを討て!!」
「え?いや……あんた結局誰なんだ!?ヨイチ……さんなのか!?」
「違う!……が、似たようなものなような、そうでもないような、かもしれない!HAHAHAHAHA!!」
「え、えぇ……」
この高笑いである。呆気にとられるしかないエイジロウだが、マスターたちのことも心配だった。──ここは信じてみても良いかもしれないと、本能が訴えかけてくる。
「……わかった、頼むぞ!」
走り去ろうとしたところで、
「あ、それともうひとつ!」
「うわ……っとと、なんだよ!?」
「……リュウソウケン、貸してくれない?」
「はあぁ!?」
リュウソウケンは竜装の騎士の魂である。おいそれと人に貸し与えるものではない……のだが、戦いながら精一杯の間隙を縫って「お願い!」などとやられてしまうと、エイジロウの性格上実に断りにくいのだった。
「あーもう、しょうがねーな……!ちゃんと返してくれよ!?」
「もちろんだとも!感謝する!」
リュウソウケンを受け取ったコタロウもといリュウソウスカイブルーは、ドルン兵の長槍を打ち捨てて見事な剣技を披露しはじめた。それを見ることなく、マックスリュウソウレッドは走り出す。
それと入れ替わるように、ソラヒコが駆けつけてきた。
「トモナリ、皆、無事か!?」
「あ、長老……無事は無事だけど──」
トモナリの視線が戦う"蒼穹の騎士"に向く。ソラヒコもつられてそちらを見た。彼はエイジロウのリュウソウケンを見事に操り、ドルン兵の群れを着実に分断、その数を減らしていく。
トモナリ以下村人たちは驚愕半分、称賛半分の気持ちで見守るばかりだったが、ソラヒコは違った。彼の剣捌きをひと目見た途端、彼は到底気の所為では片付けられない既視感を覚えた。
「!、おい……あいつ、誰だ?」
「誰って、コタロウですけど……でも、なんか急に別人みたいになって、不思議な力を使って──」
「……別人、な」
ソラヒコは何か確信を深めたようだった。そうこうしている間にも、蒼穹の騎士は最後の一体を貫き通したところだった。
「ドルゥゥ……」
「………」
一点の曇りもない勝利だった。村人の誰ひとりとして犠牲は出していない。その事実を噛みしめるようにリュウソウスカイブルーは息を吐く。
そのとき、ソラヒコが不意に口を開いた。
「人間の小僧の身体使っても腕は衰えちゃいねえようだな、──トシノリ」
「………」
「──お久しぶりです、マスター」
*
マックスリュウソウレッドが、師たちの戦場へふたたび馳せ参じた。
「スンマセン、戻りました!」
「おぉっ!?も、もう片付いたんかっ!?」
プリシャスの攻撃を防ぎつつ、タイシロウが汗まみれの顔で振り向く。テンセイ、マスターピンク、ショータ──皆、無事だ。ただプリシャスも傷ついた様子はなく、一進一退の攻防が続いていたことを如実に表している。
「片付いたっつーか、なんつーか……」
「詳細はあとでいい。リュウソウレッド、手を貸せ!」
「う、ウッス!」
すかさず戦陣に割り込み、龍爪を振り下ろす。
薙刀の勢いをそのまま跳ね返され、小柄なプリシャスの身体は大きく後方へと弾き飛ばされた。
「ッ、マックスリュウソウレッド……!」
「プリシャス……!今度こそ年貢の納め時だぜ!」
初戦のときより自分はずっと強くなっている。マスターたちの助力もある。プリシャスにだって勝てる、勝ってみせるのだという自負があった。
「ハァ……本当にお前らは、いつもいつもいつも……!」
あふれる憤懣を抑えきれないプリシャス。殺す、殺す殺す殺す殺す殺す──そればかりが頭を支配している。
「こいつ、頭のネジ飛んでもうてるで……元々こんなんだったんか?」
「いや……もしかすると、アレの影響かもしれんな」
ショータの視線が頭上へと向けられる。村の上空に浮かぶエラス、あれから何もしてこないのがかえって不気味だが。
その言葉尻に反応したプリシャスが激昂する。
「エラス様を、"アレ"呼ばわりするな……!」
「ッ、来る!」
獲物を発見した肉食獣のごとく、腰を落としていくプリシャス。──あの構えは、
「また俺からパクった技かよ……!ンなもんで、今の俺に勝てると思うな!!」
同じ姿勢をとるマックスリュウソウレッド。その傍らに、マスター四人が陣取った。
「援護するでぇ、エイジロウ!」
「同時攻撃だ。確実に勝つ!」
「……っし、頼んます!」
マスターたちと肩を並べられることを頼もしく思いながら──エイジロウは、跳んだ。
「エバーラスティング、クロー!!」
同時に、
「いくでぇ──」
「「「「マスターズ、ディーノスラッシュ!!」」」」
同じくエバーラスティングクローを放ったプリシャスと、マスターたちの放ったエネルギーを受け継いだマックスリュウソウレッド。
互いがぶつかりあった瞬間、ひときわ激しい閃光が辺りを覆い尽くした。
*
一方、プリシャス本陣の戦闘は未だ膠着状態が続いていた。
「オラァ!!」
「ヌゥ!!」
BOOOM!!と激しい爆発音が響き、受け止めようとした大刀もろともヤバソードを呑み込む。しかし烈しい灼熱にも、彼はまったく怯むことはない。すぐさま飛び出し、斬りかかってくる。
「ッ、させるか!」
すかさず割り込むリュウソウブルー。ヒエヒエソウルの放つ冷気が一挙にヤバソードの身体を凍らせ、急激な温度変化によって彼を一時的に麻痺させる。
そこに、
「今だ……!──モサディーノスラッシュ!!」
ゴールドが頭上から飛び込み、電光の一閃を放つ。直撃を受け、ヤバソードは苦悶のうめき声をあげて仰け反った。
「グアァァァ……!」
「ッ、今度こそ……!」
ヤバソードの身体から瘴気が噴き出す。しかしそれと引き換えに、その傷痕は一瞬にして塞がれていった。
「駄目か……っ」
「くっ……ヤツは不死身なのか!?」
「生きてりゃ不死身なんざありえねえ」
むろん、生物であれば、の話だが。
「リュウソウ、族……!滅、ボォス……!!」
それしか意志の感じられない、斬られても血の一滴すら流すことのないこれは、本当に生物といえるのだろうか。表の言動とは裏腹に、カツキは己の価値観が揺らぐのを感じていた。もはや自分たちの敵はドルイドンですらない、得体のしれない何か──
一方で、キシリュウオーコスモラプターは徐々にガンジョージ・ツヴァイを押しつつあった。
「ヌウゥ……!なぜ、この程度の騎士竜の群れにィ……!」
「そんなの、決まってる!」
クラヤミガンから暗黒弾を放ちつつ、イズクが叫ぶ。
「僕らは、どんなつらい戦いだって生き抜いてきた……!そのたびに、成長しているからだ!」
「成長、だと!?」
「せや!」オチャコも追随する。「最初から強く生まれてくるあんたらにはわからんやろうけど……つまり、そういうことや!」
「どういうことだ!?」
このドルイドンが理解できるまで付き合うつもりはない。このまま一気に、とどめを刺すだけだ。
「行くよ、デクくん!」
「うん!」
「「キシリュウオー、コズミックブレイカー!!」」
クラヤミガンから最大級のダークマターが放たれる。それはガンジョージ・ツヴァイの胴体に命中し──直接的な損傷を与える代わりに、その背後にあらゆるものを呑み込むブラックホールを生み出した。
「グッ、こ、んな、ものォ……!」
懸命に抵抗するツヴァイは、辺り一面に火砲をばら撒きはじめた。無差別な砲撃はかえって避けるのが難しい。キシリュウオーばかりか、地上で戦うカツキたちやヤバソードにまで文字通り飛び火した。
「ぐわぁっ!?」
「ッ、クソデク丸顔ォ!!てめェらこっち巻き込むなや!!」
「落ち着け、あいつらだってわざとじゃねえ……が、これはきつい」
「滅ボォォス!!」
確かに、下手に直撃ともなればみな消し飛びかねない。ヤバソードのみがそうなれば僥倖といえるかもしれないが。
「ごめん!でも……もう、ケリをつけるっ!!」
多少の砲撃程度、キシリュウオーは耐えてみせる。メインユニットたるティラミーゴが雄叫びをあげ、一挙に走り出した。
「「うおぉぉぉぉぉ──ッ!!」」
爆炎に塗れながら、突貫する赤と紫のボディ。そしてその手に握られるは、聖なる純白の剣。
──光り輝くそれが振り下ろされた瞬間、ガンジョージ・ツヴァイの運命は決まった。
「グワアァァァッ!!?」
聖なる力に肉体を蝕まれ、もはや抵抗の力を失ったツヴァイを吸い込むと、ブラックホールは役目を終えたかのように閉じて、消滅した。
「やった……!」
「よしっ、あとはヤバソードを!」
地上を見下ろす。相変わらず不気味なまでに大刀を振り回しているヤバソードだが、カツキたちも少しずつ相手の出方に慣れてきているようだ。こちらも勝利は見えてきているといえるだろう。
エラスの出方はわからないが、ヤバソードさえ倒せばプリシャスは一時的にせよ完全に孤立する。戦いの終わりは近いかもしれない──そんな楽観的な考えを抱いてしまう彼らは、完全復活を遂げたエラスが地上に姿を現したことを未だ知らずにいた。
*
戻って、対プリシャス。
「ぐ、アァア……っ」
「………」
ふたつのエバーラスティングクローのぶつかり合いで勝利を得たのは、マックスリュウソウレッドだった。以前の雪辱を完膚なきまでに果たした形である──むろん、マスター四人の助力もあってのことだが。
しかしプリシャスもさるもの、威力をある程度相殺したことにより肉体へのダメージは最小限に抑えている。薙刀を地面に突き立て、よろよろと立ち上がる。
「何故……何故っ、このボクが……!」
「ンなの、おめェが今見てるもんがすべてだっつの!」
胸を張るマックスリュウソウレッド。そう──彼の隣には今、マスターたちがいる。使命のため、仲間のために腕を磨き抜いた者たちが集う今、怖いものなど何もない。
「へへっ、言うようになったやんけ」
「負けてられないな。──そうだろ、ショータ?」
「……ああ、」
長らく独りで密偵に励んでいたショータとしては、正直耳の痛い部分もあった。もとより単独行動を好みがちな性質だが、弟子たちにはそれではいけないと教えてきたつもりだ。結果的にリュウソウブラックを受け継ぎ、一番弟子となったカツキなどはまったく言うことをきかないと嘆息してきたが、再会した彼は己の能力に高い信を置きつつも仲間たちと肩を並べて戦える騎士に育っていた。長らく傍にいただろうイズクの影響が大きいだろうが、あるいはこの少年も──
「さあ──次でとどめだ、プリシャスっ!」
「〜〜ッ!!」
地団駄を踏むプリシャスだが、ここから逆転しうるような打開策があるわけではない。──いや、ひとつあるとすれば。
『──……、──…………』
「!」
前触れなく頭上から響く、囁くような女の声。──エラスが、ふたたび蠢き出そうとしている。
「あぁ、エラス様……!あなたの忠実な長子であるボクをお助けください!!」
プリシャスが叫ぶと同時に、エラスが動いた……文字通り。
「エラス様!?どこへ行かれるのですっ、エラス様!!?」
どこへともなく飛び去っていくエラス。よもやプリシャスを見捨てたのか?呆気にとられるエイジロウたちだったが、この機会を攻撃に活かすよりプリシャスは機敏だった。
「ッ、まあいい目的は達成できた……。さよなら、リュウソウ族のゴミクズども!」
「あっ、てめ──」
ふたたびコピーエバーラスティングクローを放つプリシャス。ただし地面に。
巻き上がった膨大な砂塵に紛れて、彼も逃亡を図ったのだ。恥も外聞もない行動だが、取り逃がしてしまったのはまぎれもない事実だった。
「ッ、俺追います!──マスターたちは村の守護を!」
「ほぉ〜、俺らに命令とはえろうなったなぁ?」
「あっ、いや……スンマセン!」
慌てて謝罪するマックスリュウソウレッドの肩を、タイシロウがぽんと叩いた。
「ジョーダンや。決着は託すで、エイジロウ!」
「……頼むぞ」
まだまだ衰えを知らないマスターたちである。本音を言えば自ら決戦の舞台で剣を振るいたい気持ちは当然あるだろう。
それでも彼らは大人として、エイジロウたちの一年間を信頼してくれている。
「……あざっす!」
一礼して走り出──そうとしたときだった。
「ちょーっと待ったぁぁぁ!!」
「!!?」
いきなり後方から響くシャウトに、完全に走り出す姿勢を整えていたエイジロウはそのままつんのめる形で転んでしまった。
「な、なんだよもう……」
人がいいカンジで再出撃しようとしているときに!顔を上げて後方を見遣った彼が見たのは、こちらに駆け寄ってくる空色の竜騎士の姿だった。
「えっ、何ナニ!?なんなんアレ!?」
当然その存在を知らない──エイジロウが「あとで説明する」と濁してしまったので──タイシロウたちは困惑している。まして野太い声に反して、体格は明らかに子供のものなので。
「えっとアレはコタロウなんだけど、コタロウじゃないっつーか……」
しどろもどろになっていると、スカイブルーの頭上から球のような何かが降ってきた。
「フン!」
「ぐぇっ」
よく見ればそれはソラヒコ長老で。蛙の潰れたような声を発する蒼穹の騎士の肩に両足をかけ、そのまま強制肩車を達成したのだった。
「ちょ、長老!?」
「皆、すまんな。コイツは昔っから人の言うこと聞かずに先走りよる」
「昔からって……」
何も知らないタイシロウたちは困惑するばかりだが、コタロウに何者かが取り憑いて今に至っているというところまではわかっているエイジロウははっとした。その"何者か"とは、ソラヒコの古い知人なのだ。それも口ぶりから言って、彼よりも若輩の──
そのとき、ショータも何かを察したかのように目を見開いた。
「その声、まさか……」
「そのまさかさ!──久しぶりだね、ショータくん」
グッと親指を立てる蒼穹の騎士。もっとも次の瞬間には、ソラヒコにぺしこんっと頭を叩かれる羽目になってしまったのだが。
「マスターブラック、あれが誰だか知ってるんスか?」
「……リュウソウグリーンだ、先代の」
「えぇっ!?」
「ウソやろ!?」
「本当だわ。この馬鹿、魂だけになって戻ってきよった」
ソラヒコの言葉に、若者たち──長老にかかればマスターたちもその範疇なのだ──は二の句が継げなくなる。
「HAHAHAHA……私の魂はずっとガイソーグの鎧に封じられていてね。それがキミの龍爪に変化したと同時に、解放されたのさ!」
「!、そうかそれで……いやでも、なんでコタロウの中に?」
「キミたちがはじまりの神殿を訪れたとき、コタロウ少年の身体に我々の祖先が宿っただろう。その副産物として少年の身体は霊媒体質になってしまったからね、彼を悪霊の類から守るために私が取り憑かせてもらったというわけだ!」
「偉そうにのたまうな、愚かもん!」
胸を張るトシノリの霊に、今度は拳骨が炸裂する。それは竜装の兜越しにも多大なダメージを与えたようだった。蹲る蒼穹の騎士を前に、ソラヒコの鉄拳制裁を身をもって知るエイジロウとタイシロウは揃って顔を青くした。かつての弟子相手には愛情表現なのかもしれないが、肉体はコタロウのものなのだ。彼の明晰な頭脳に傷がついたらどうしてくれる。
「……茶番はその辺にしてもらうとして、トシノリさん、あんたこれからどうするつもりなんです」
「ちゃ、茶番……ゴホ、オホン!」あからさまにショックを受けたのを誤魔化しつつ、「このリュウソウメイルを生成するのに無理をしたからね……。いつまでもつかはわからないが、リュウソウジャーの手助けができればと思う」
「だ、そうだ。どうする、この小僧の身の安全のこともあるが」
「……コタロウは、なんて言ってるんスか?」
何より重要なのはそこだった。先ほどの対ドルン兵の戦いは緊急避難と言うべきだろうが、ここからはふたたび敵陣に攻め込んでいくのだ。どれほど力があろうと、意志なき者を矢面に立たせるわけにはいかない。
しかし、
「僕、やります」
「!」
唐突に竜装が解除され、真剣なコタロウの顔が露わになる。声も口調もまぎれもない、彼自身のものだった。
「他人に身体を明け渡すのって妙な気分ですけど、こんな機会めったにないですから。最後くらい、一緒に戦わせてください」
「コタロウ……」
力もあり、意志もある。──ならばそれを覆しうる言葉を、騎士はもたない。
「わかった。いこうぜ、一緒に!」
「……はい!」
手を差し出すと、強く握り返される。この瞬間彼らは、ともに戦う同志へと歩を進めた。
「ハナシは済んだな。とっとと行け、駄弁っとる時間なんざありゃせんぞ」
「っとと、そりゃそうか……」
呼び止められていなければ追いつけたのでは?と内心思わなくもないが、たとえ幽霊だとしてもマスターグリーンがともにいるというのは頼もしい。あとは全速力で走るだけか。
そう思っていたらば、頭上に巨大な影が差した。
「しょうがねーな、オレが乗せてってやるヨ!」
「あ、ピーたん!?」
飛んできたのはヨクリュウオーのままのピーたんだった。「あの怪物は!?」と訊くと、
「あんなもん、そいつと同じタイミングで倒したもん!」
「悶々?」
「ってか誰だよオマエ!オレからリュウソウメイル勝手につくるなよナ!」
「それについては追々詫びよう!」ふたたびトシノリの人格が表出する。「頼む、プテラードン!」
「ピーたんと呼んでぇ!」
「ピーたん!!」
プテラードンの姿に戻ったその背中に飛び乗るふたり。たちまち翼をはためかせ、スカイブルーの巨躯が上昇していく。遠くなっていく地上の五人が、手を振っているのが見える。これが今生の別れに……なんて考えがふと浮かび、ぶんぶんと振り払う。この戦いを終わらせて、皆で笑って帰ってくるのだ。
それにしても、である。
「あんた、マスターだったんスね……。スンマセン、タメ口使っちまって」
「ん?HAHAHAHA、構わないさそんなこと!」鷹揚に笑いつつ、「キミたちは無論として……私より若いマスターたちに、すべてを託さざるをえなかった。特にショータくんには……──今さら敬われようなどとは思っていないさ。それより今は、ふたたび自分の意志で、大切なものを守るために戦えるのが嬉しい」
「あ……」
そうだ──彼はガイソーグという禁忌の力を得た代償に、二度と何かを守るためには戦えなくなってしまった。死してなお鎧に囚われていた彼の魂を救い出したのが、エイジロウたちだった。
「キミたちには感謝してもしきれない。……ありがとう、本当に」
「な、なんか調子狂いますね……コタロウの姿でそういうことされると」苦笑しつつ、「俺ら、目の前のことに全力で立ち向かってただけっスから。それで上手くいったこともあるし……そうじゃなかったこともあるし」
「うむ……そうだな。これと思ってしたことが、永い後悔のきっかけになることだってある」
「それでもキミたちは、その旅路を誇っていいと私は思うぞ!」
「……っス!」
ふたりが拳を突き合わせたときだった。
「──おいオマエら、プリシャスの足跡見つけたぞ!」
「!」
それは西の方角へと続いている。──その先では、彼らの仲間たちが死闘を繰り広げているのだ。
そこが最終決戦の舞台になるかもしれないという予感が、エイジロウにはあった。